全国高等学校野球選手権大会 各大会振り返り

【振り返り篇】2003年夏の甲子園

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大会全体

常総学院が木内監督の最後を飾る見事な初優勝を果たし、大会は幕を閉じた。
全体的に東高西低となったこの大会は関東勢がベスト8に3校残るなど好調。
また、中国勢は出場5校がすべて初戦を突破した。
一方、選抜出場校など強豪の集った近畿勢は1校もベスト8に残れず、
ここ2年好調の続いていた四国勢も3回戦までですべて姿を消すという意外な結果となった。

 

強豪が同じブロックに集ったこともあるが、今大会は2回戦で強豪が続々と姿を消した。特に倉敷工―今治西の試合からは、今治西・広陵・PL学園・明徳義塾・近江・智弁和歌山と6試合連続で大会前に優勝候補に挙げられていたチームが姿を消すという波乱の展開となった。3回戦を迎えるに当たって、優勝候補は常総学院・東北・平安あたりにかなり絞られたといっても過言ではないだろう(もちろん光星学院や桐生第一なども力のあるチームではあったが)

 

また、この大会はホームランが大会を通じて12本と少なかった。強打のチームが大会序盤で姿を消したことはあるだろうし、好投手が多かったことも影響しているだろう。前年までの打力優位の状況から一転して、投手優位の大会となった。そのためか、長打よりも機動力で試合を動かす展開が多く、高校生らしい試合が多かったともいえる。

優勝校振り返り

それにしても、常総学院の木内マジックは実に見事であった。代打を送ればその打球が相手のエラーを誘発するし、スリーバントスクイズや思い切った継投策など多士済々の戦術。木内監督のすごいところは、よく「甲子園でも自分たちの野球を貫く。甲子園に来たからと言ってよそ行きの野球をしたら負ける」というチームが多い中、この監督はそのよそ行きの野球で勝ってしまうのである。

しかも、大会後のコメントで「3回戦までは手堅い野球、準々決勝からはガンガン打たせた」と大会の中でも野球を変えるなど、もう自由自在。しかし、一見やりたい放題に見えて、その内実は選手の特徴をしっかり把握して、力を発揮できるように仕向けているのである。

そして、選手も普段から考える野球を実践しており、決勝では剛腕ダルビッシュに対して、
監督からの策なしで自分たちの考える力で攻略した。
素晴らしい監督であり、素晴らしい選手である。木内監督は甲子園の稀代の名将であった。

準優勝校振り返り

東北は準優勝を果たし、白河の関越えまであと一歩に迫った。ダルビッシュ(日本ハム―レンジャース)に何かと注目が集まる中、背番号18の眼鏡のサイドスロー真壁の救援や主将片岡のリーダーシップなどチームとしての力の高さを示した。特に、1番家弓、3番大沼、4番横田、6番1年生加藤真壁ダルビッシュなどとともにそのまま残るため、いよいよ来年悲願の全国制覇を目指す態勢は整った。また2年生に負けず、捕手・佐藤や宮田・古川の二遊間コンビなど3年生も力を示した。そして、やはりこの人抜きには語れない。優勝こそ常総学院に譲ったが、選手として最も注目されたのはダルビッシュだったろう。

特に3回戦の平安戦でも服部との投げ合い、三振の奪い合いは見事であった。延長11回で服部17個、ダルビッシュ15個という
数の多さ。注釈するまでもないが、両者とも強打のチームなのである。それに対して、この三振の多さは二人の実力を図るに申し分ないものであろう。特にダルビッシュは、普段変化球を決め球に使うことが多いが、この試合は直球主体に押すピッチングが目立った。服部の力に触発されたのだろう。間違いなくこの大会の主役はダルビッシュ有であった。

ベスト4振り返り

桐生第一は戦前の評価こそそこまで高いものではなかったが、ベスト4に進出。開幕戦で地元兵庫の神港学園に大勝して勢いに乗り、その後は樟南・小松島・岩国をことごとく1点差で退ける試合巧者ぶりを見せつけた。投手は外角の変化球で打たせて取る伊藤から速球派の藤田につなぐ継投で全5試合を投げ切った。

打線でも3番の藤田は毎試合2安打を記録する活躍。その他にも巧打の1番備前島や4番2年生の篠崎、開幕戦でランニングスリーランを放った菊池など大物うちはいないが、しぶといバッターが多かった。集中打が光り、2,3回戦は全得点を1イニングのうちに奪って、樟南のエース田畑や小松島のシンカーの使い手・大和を攻略した。全国制覇した1999年夏以来の進撃で甲子園でも上位でおなじみの高校になってきた感がある。

 

江の川は初めてのベスト4入り。何といってもエース木野下のスローカーブを駆使した投球が光った。速球打ちの練習をしている強豪チームには実に効果的。ストレートの球速は120キロ台なのだが、80キロ台のスローカーブとの緩急が効いており、各打者のタイミングを外していった。準々決勝までの3試合で2完封失点はわずか1という安定感であった。

打線はチーム打率1割台、4試合で6得点という貧打線。正直近年この打撃成績で夏の4強に進んだチームはあまり記憶にない。しかし、勝負強さが目立ち、6得点はすべてタイムリーによるもので、少ないチャンスをものにした。島根県勢としては大正12年の松江中以来のベスト4入り。見事な戦いぶりで、今大会好調な中国勢を象徴する存在であった。

 

ベスト8振り返り

大会前、聖望学園は好投手須永を擁して全国的にも優勝候補だった浦和学院を2安打1失点に抑え、県決勝では春日部共栄も完封したエース松村に注目が集まったが、いざ本番では猛打爆発。2試合連続で先発全員安打を記録した。初戦の香川西戦では8,9番を打つバッテリーの田島松村がホームランを放ち、3回戦の天理戦では5回までで先発全員安打を放つという迫力であった。

準々決勝では江の川・木野下のスローカーブに翻弄されたが、同校として初のベスト8入り。浦和学院を撃破した実力は十分に示した。

 

光星学院は2年ぶりのベスト8入り。ここ4年でベスト4が1回、ベスト8が2回とすっかりベスト8の常連になり、東北勢を牽引する存在である。大会前は打率8割の日向端を中心に強打が注目されたが、本番では桑鶴の好投が目立った。内外角を丁寧に突く投球で決定打を許さず、木更津総合・小泉、倉敷工・陶山という好投手との投げ合いを制した。

打線は好投手との対戦が続いたため、チーム打率こそ高くないが4番田中をはじめとして、少ないチャンスできっちりタイムリーを放って得点する姿が目立った。主将明戸は下位打線ながら高打率をマークし、桑鶴を好リードで引っ張るなどチームを牽引した。

 

今大会最大のサプライズといえば岩国だろう。初戦で出場8大会目にしてようやく初戦を突破すると、2回戦では優勝候補の広陵を撃破。バッターがベースぎりぎりに立ってインコースを封じる戦法で、広陵・西村や福井商・稗田を集中打で飲み込んでいった。投手・大伴も序盤に失点しても我慢強く投げ切ってチームを初のベスト8まで導いた。

 

鳥栖商業も左腕重野の力投で初のベスト8入り。初戦はスラッガー堂上(中日)を擁する強打の愛工大名電だったが、スライダーを内外角に丁寧に配し、強力打線を5安打1失点に抑えた。準々決勝で前回出場時と同じく常総学院に敗れたが、佐賀県勢として優勝した1994年の佐賀商業以来久々のベスト8入りを果たした。

3回戦まで

その他のチームとしてはやはり左腕服部を擁した平安が印象に残った。1回戦・2回戦と前々年度、前年度の優勝校である日大三、明徳義塾を連続撃破した。3回戦では前年明治神宮大会で敗れている東北と延長11回の死闘。最後はサヨナラ負けを喫したが、3試合連続で失点は1。服部の好投を含め、ディフェンス力は大会でも指折りの好チームであった。

 

昨夏のファイナリストの智辯和歌山と明徳義塾はともに2回戦で敗退。ともに強豪を相手に競り負けた。

智辯和歌山は2年生左腕・滝谷が成長。初戦は安定感ある投球で長野工打線を抑え、打線も5番山崎の3ランで6得点し完勝した。しかし、2回戦の常総学院戦は初回から守備のミスで失点するなど波に乗り切れない展開。打線も12安打を放ちながら3点にとどまり、最終回の満塁のチャンスも活かせなかった。常総がこの一戦を境に乗っていっただけに智辯としては悔しい敗戦。1994年選抜決勝のリベンジを許した。

 

明徳義塾は初戦で横浜商大・給前に大苦戦。6回途中までノーヒットに抑え込まれるも終盤球威が落ちたところで一気に逆転。底力を見せた。しかし、2回戦は平安の服部相手に再三ランナーを出すも初回の1点のみ。終盤8回に同点の場面で4番にスクイズのサインを出して失敗するなどらしくない攻めが見られた。最後は主将・沖田のダブルプレーで試合終了。もどかしい展開を突き崩せなかった。

 

好投手は多く、上で挙げたチーム以外にも広陵・西村、木更津総合・小泉、倉敷工・陶山、近江・小原、小松島・大和、沖縄尚学・広岡、福井商・稗田、今治西・豊嶋などが大会を彩った。西村は初戦は貫禄の投球で東海大甲府打線を完封。しかし、2回戦は岩国のしたたかな作戦の前に攻略され、同地区の高校に足元をすくわれた。

 

また、初戦で敗れはしたものの横浜商大・給前の強気の投球は観衆を魅了し、前年覇者の明徳を追い込んだ。長野工は初戦で智辯和歌山と対戦。麻場兄弟のバッテリーが息のあったコンビで強豪を終盤まで抑えた。

中越の小さなエース畔上は小気味いい投球で相手打線を封じ込んだ。日南学園の2年生投手のは一発を浴びたものの、ストレートの質は高く将来が楽しみな投手だった。

 

また、打者では日南学園戦で逆転2ランを放った富山商・二瀬、2年生ながら宇治山田商のエースで4番をつとめた江川(ソフトバンク)、柳ヶ浦のスラッガー吉良(近鉄)、日大三の2年生長距離砲・佐々木、東海大甲府・仲澤、神港学園の1年生4番柳田など、吉良以外は下級生の強打者も目立った。復活出場のPL学園の1番小窪(広島)は2試合で8打数6安打と大当たり。名リードオフマンぶりを発揮した。

 

1回戦は接戦・逆転ゲームが多く、福井商―盛岡大付、八頭―小山、静岡―長崎日大、天理―秋田、東北―筑陽学園など好試合が続いた。

 

大会初日に登場した必由館は光星学院を相手に持ち味の機動力野球全開で試合をリード。終盤に逆転されたが、持ち味を十分に出した戦いだった。同じく初日に登場した金沢はエース成出が打ち込まれる中、中盤に小技を活かした攻めで一気に同点に。しかし常に先手を取られる展開で押し切られ、県大会決勝で遊学館を倒した勢いを持続できなかった。

 

旭川大高・愛工大名電・日大東北は好投手を相手に打線が沈黙。相手投手の決め球を攻略しきれなかった。

 

市立岐阜商は3度目の出場だったが沖縄尚学の広岡に完封され、今回も初得点はならず。次回出場に初勝利・初得点をかける。

 

香川西・都雪谷・羽黒は初めての甲子園。大差で敗れはしたが、学校の歴史を刻んだ夏となった。

 

そして、最後にどうしても触れなくてはならないのが降雨コールドで再試合となった倉敷工―駒大苫小牧戦。駒大苫小牧は分厚い投手層と強力打線を擁し、満を持して同校初勝利を狙っていた。陶山の調子が悪かったこともあり、序盤で8-0とリードしたが、雨でまさかのノーゲームとなった。言葉で切り替えろというのは簡単だが、高校生にはなかなか難しいもの。「明日は2回戦のつもりで臨む」と言っていたが、やはりやりにくかっただろう。また、再試合の陶山は別人のような投球でスライダーはキレッキレであった。天候ばかりはどうしようもないので、大会本部を責めるわけにもいかないが、駒大苫小牧としてはやりきれなさが残っただろう。逆にこの試合を勝った倉敷工は2回戦で今治西も倒し、3回戦進出。大会の風雲児的存在となった。

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