蘇る名勝負

智辯和歌山vs柳川 2000年夏選手権 準々決勝

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剛腕・香月のリベンジの夢、夏の夜空に散る

出場したプロ野球選手…武内晋一(ヤクルト)、香月良太(近鉄→オリックス→巨人)

智弁逆転伝説第3弾!20世紀最後の名勝負であろう。智弁和歌山の逆転劇といえばこの試合といえるかもしれない。

 

両チーム紹介

智辯和歌山

智弁和歌山は超のつく強力打線を持つ優勝候補筆頭。昨年夏からベスト4、準優勝と確実に階段を上っており、この夏は優勝しか見えていない。大会に入っても、好投手とうたわれていた新発田農業・五十嵐、中京大中京・高橋、PL学園・朝井宮内を次々とノックアウト。特に3回戦のPL学園戦では山野の2打席連続を含む4本のホームランを浴びせ、PLの選手に「野球をやっててはじめて怖かった」と言わしめた。

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ただ、投手には不安を抱えており、絶対的エースは不在。選抜の準々決勝で柳川を完封した左腕白野が不調。そのため、基本は2年生の中家からリリーフエース山野につなぐパターンだが、2人ともそれほど球速・球威があるわけではなく、どちらかというと打たせて取るタイプ。そのバックが3試合で7エラーなのだから不安にもなろうものである。柳川・香月相手に大量失点は許されないため、まずは守りが肝要か。

 

柳川

一方の柳川は剛腕・香月と強力打線を擁し、この年の九州最強チームである。選抜で智弁和歌山に武内のタイムリー1本で敗れた悔しさをばねに練習。けがをした時期もあったが、ストレート・カーブに加えて新球ナックルを習得し、投球に幅が広がった。

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打線も松尾・永瀬・犬塚のクリーンアップを中心に池田・宮城・胡子と好打者がずらり。得点力では決して智弁和歌山に引けを取らない。2回戦では1回戦で19奪三振の大会タイ記録を作った浦和学院・坂本から初回に集中打で4得点。相手のすきを逃さない集中打が光る。

 

不安といえば、大会直前に不祥事により監督交代があったことだが、新監督の平田監督がうまくまとめ、選手も団結していよいよ打倒智弁和歌山を果たすところまでやってきた。

 

8回に悪夢が待っていた…

柳川

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 3 0 0 3 0 0 0 0 0
0 0 1 1 0 0 0 4 0 0

智辯和歌山

11
0 6
7

 

智辯和歌山  中家→松本→山野

柳川   香月

 

試合は序盤完全に柳川ペース。腰痛で本来の調子でない智弁和歌山・中家から5回までに10安打5得点。しかも、4番永瀬、5番犬塚、6番胡子と打つべき人が打っての得点である。代わった松本からもボークで1点もぎとり、6-2とリードする。

 

一方、香月は3回戦の瀬戸内戦でできた豆の影響かストレートが走らず、カーブの切れもいまいち。しかし、智弁のカーブ狙いを見越して真っすぐを多めに混ぜた捕手・永瀬の巧みなリードとコースをつく丁寧な投球で智弁の反撃を2点に抑えていく。

 

ここまで完全に主導権を握られ、試合前3点勝負と踏んでいた智弁・高嶋監督は内心あきらめムード。リリーフした山野も「どうやって砂を持って帰ろうか」と考えていた。

しかし、ただでは転ばないのが智弁打線。打ってないときでも磨き上げた選球眼で球数を投げさせ、フルスイングでプレッシャーを与え続けていた。

 

そして、8回表柳川にまずいプレーが飛び出す。6回以降再三のチャンスで得点できていなかったなか、1番池田が長打を放ち、これをレフト井口がそらしてしまう。しかし、3塁で止まるはずだった池田はホームへ突入。そらした後は無駄のない動きで打球を処理した井口の好返球もありホーム手前でタッチアウトとなる。このとき4点差にも関わらず、少し重苦しいムードが漂った気がしたのは気のせいだったか…。

 

八回裏智弁スタンドでは応援歌・ジョックロックが流れ出す。追い上げ時に使う十八番の応援歌。そんな中、智弁は1アウト後打席に3番武内が向かう。選抜で香月から決勝打を放ったこのバッターは球威が落ちたところを見逃さなかった。甘いストレートをフルスイングしたあたりはライトスタンドへあっという間に吸い込まれた。得点は1点だが、香月の自信を打ち砕くには十分な一発。この後、池辺が死球、後藤センター前ヒットで1アウト1,2塁。

 

ここで打席に向かうはリリーフエース山野。普段はチームメートから「何考えてるのかわからん」と言われるB型の自由人はこの大会乗っていた。打てば、PL戦で2打席連発、投げれば終盤のピンチを抑え込むという大車輪の活躍。そんな彼はこの緊迫した場面でも「ここで打てばホームランで同点かー」などと考えながら打席に立つ。そして、柳川・香月の高めに入ったカーブを思い切りすくいあげた打球はレフトスタンドへ高々と舞い上がり、スタンドへと吸い込まれた。そして、この後耐え続けていた香月の血豆は破れたという…。

 

この後試合は完全に智弁ペースとなるのだが、豆が敗れストレートしか投げられなくなった香月はそれでも智弁和歌山に立ち向かい、9,10回を抑えていく。痛がる素振りなど一切見せずに。その姿に柳川ナインだけでなく智弁ナインも心を動かされていた。3番武内は「あんななっても投げ続けてる。かっこええわ」と感嘆していた。

 

しかし、そんな投球にもいつしか限界は来てしまう。11回裏2アウト1,2塁で打席には5番後藤。アウトコースの真っすぐを振りぬいた打球はライト線を破り、2塁からキャプテン堤野が生還してついにサヨナラ勝ち。完全にセーフでライト胡子が突っ伏しているにも関わらず、しっかりホームのカバーに入った香月。彼は最後まで戦う姿勢を崩さなかった。

 

まとめ

智弁和歌山にとってはおそらくこの夏最も苦しかったであろう試合。それでも不利な展開の中、大会No.1投手のすきを逃さなかった。自分たちのやるべきことをどんな展開でもやり続ける強さが彼らにはあった。また、最後もまでファイトを見せ続けた香月も見事。投手の向かっていく姿勢とはこういうことを言うのだと思わされるような終盤のピッチングであった。おそらく、この試合で勝っていても香月の状態を考えると優勝はできなかったかもしれない。しかし、この夏智弁和歌山を最も苦しめたのはという問いには、多くのものがこう答えるだろう。

「それは柳川・香月である」と。

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