• 大会ベストナイン(2014年夏)

    右投手 飯塚悟史(日本文理)

    日本文理の絶対的エースとしてチームを4強に導いた飯塚悟史(DeNA)。日本文理史上最高の投手と評しても過言ではないだろう。力感のないフォームから繰り出す切れのあるストレートにカットボール、スライダーを織り交ぜる安定した投球が光った。星稜の奥川(ヤクルト)の投球フォームを見た時に、飯塚の姿が浮かんだのは私だけではないはずだ(笑)。大分、東邦、富山商、聖光学院と派手さはないが、決して楽はさせてくれないチームを相手に次々と投げ抜いた姿は見事であった。2009年はノーマークの中で勝ち上がったが、この年はV候補としてマークされながらの堂々の進撃であった。

    左投手 今井重太郎(三重)

    2014年の夏の甲子園でも最も多くの球数を投げ抜いたのが、三重の鉄腕・今井重太郎であった。3季連続出場ながら、前年夏は安楽(楽天)擁する済美、選抜では岡本(巨人)擁する智弁学園に敗れ、東海地区では負けなしにも関わらず、全国での勝利が遠かった。迎えた最後の夏の甲子園は初戦で強豪・広陵を相手に9回に2点差を追いつく粘りを見せて、サヨナラ勝ちを収めると、大垣日大・城北・沖縄尚学・日本文理を次々撃破。特に準々決勝・準決勝は前年秋の神宮大会のファイナリストの2校を力で圧倒。今井の粘り強い投球と切れ味抜群のスライダーが光った。最後は決勝で大阪桐蔭の主将・中村の一打に沈んだものの、一気に壁を突き破る準優勝を達成。今井は間違いなく、この夏の主役の一人であった。

     

    捕手 岡田耕太(敦賀気比)

    豪打を誇った敦賀気比の4番捕手として、チームを4強入りに導いた立役者だった。打撃には定評がありながら、なかなか投手陣が固まらなかった敦賀気比だが、春ごろから平沼(日本ハム)が台頭して一気にチーム力がアップ。その2年生エースの持ち味である制球力を活かし、うまく相手打線にボール球を振らせて好投を引き出した。また、打撃でも5割を超える打率で強打線を牽引。特に2回戦で春日部共栄の好左腕・金子から放ったセンターバックスクリーンへのホームランは観衆や相手バッテリーの度肝を抜く当たりであった。5試合で58得点をたたき出した歴史的強打の中心に岡田耕太がいた。

     

    一塁手 小太刀諸飛(日本文理)

    強力打線を誇る日本文理においてシュアな打撃で3番を務めた好打者。新潟大会決勝の関根学園戦では1点ビハインドの9回裏に逆転3ランを放っており、そもそも小太刀の一打がなければ、この年の日本文理に進撃はなかったのだ。広角に打ち分ける柔らかい打撃が持ち味であり、強烈なプルバッティングが光った日本文理打線にあって小太刀のような長打力も秘めた巧打者が主軸にいることは、素晴らしいアクセントをもたらしていた。準々決勝では2本のタイムリーを放つなど、最後まで安定した内容の打撃でチームを5年ぶりの4強に導いた。

     

    二塁手 峯本匠(大阪桐蔭)

    大阪桐蔭の攻撃的2番としてチームに貢献した峯本匠。2年生時から俊足巧打のイメージはあったが、最上級生になって長打力もアップ。1番中村と2人、1番打者が並んでいるような感覚になる打線を形成した。特に明徳義塾の好投手・(西武)を打ち崩した2回戦、流し打ちで左中間スタンドに放り込んで度肝を抜いた敦賀気比戦は峯本なくして勝利はなかったと言っても言い過ぎではないだろう。また、セカンドの守備にも安定感があり、明徳義塾戦では代打・田中の放ったセンターへ落ちそうな打球をスライディングキャッチするスーパープレイを見せ、試合の流れを相手に渡さなかった。一時代前の2番セカンドとは一線を画すスケールの大きな選手であった。

     

    三塁手 香月一也(大阪桐蔭)

    2年生時から中軸を務めた大阪桐蔭打線の「顔」ともいえる打者が香月一也(ロッテ-巨人)であった。森友哉(西武)の一番弟子とも言われた打撃職人はシュアな打撃でヒットを量産し、2番峯本とのコンビで塁上を駆け巡った。この年の大阪桐蔭打線は下位打線が不調で「上位偏重」の傾向があったため、香月の安定した打撃はチームが勝ち上がるうえで非常に大きかった。中でも2回戦でいきなり実現した明徳義塾との大一番で、エース(西武)から放った先制2ランは、チームに勢いと自信をつける一打となった。現在はロッテから巨人に移籍しており、激戦区となっているセカンドの定位置奪取にむけて腕を磨いている。

     

    遊撃手 浅井洸椰(敦賀気比)

    2年生時から敦賀気比のショート兼中軸で選抜4強に貢献したチームリーダー・浅井洸椰。3年生となった最後の夏は安定した守備と打撃でチームを再び4強に押し上げた。特に守備面の安定感は出色で、広い守備範囲と強肩を活かしたスローイングで難しい打球をことごとく処理した。浅井の教えを受けて2学年下の林中も有数のショートストップへと成長を遂げた。また、打撃でもシャープなスイングでヒットを量産。3回戦では大会屈指の好投手である、盛岡大付の松本(ソフトバンク)から一発を放つなど、長打力もあるところを見せつけた。東監督をして「3番から6番(浅井、岡田、峯、御簗)は言うことがない」と言わしめるほどの打撃を見せ、まさに敦賀気比の強さの象徴であった。

     

    左翼手 中村誠(大阪桐蔭)

    前年秋に履正社にコールド負けを喫した大阪桐蔭を持ち前のリーダーシップで3度目の全国制覇に導いた主将。下級生時から3年生になれば主将にと西谷監督が決めていたほどの人間力の持ち主であった。もちろんプレーヤーとしての実力も十分であり、健大高崎戦に勝ち越しホームランに敦賀気比戦の先頭打者弾とチームに勢いをつける長打を放った。決勝の三重戦ではセンターの前に落とす逆転のタイムリーを放ったが、このしぶとい一打はこの年の大阪桐蔭の「粘り勝つ」野球を象徴するような当たりであった。中村誠の存在なくして、この年の大阪桐蔭の優勝はなかっただろう。

     

    中堅手 長野勇斗(三重)

    三重の核弾頭としてチームを準優勝に導いた長野勇斗。前年夏には済美・安楽の前に最後の打者となるなど、2季連続で悔しい甲子園となっていたが、最後の甲子園で思いを爆発させた。初戦は広陵とのV候補対決となったが、最終回に執念のヒットでつなぐと、2番佐田のタイムリーで追いついて延長で劇的なサヨナラ勝利。勢いに乗った三重打線は、長野の出塁を活かして、1試合平均6点近い強打線を武器に勝ち上がった。特に準決勝では日本文理の好投手・飯塚を攻略。長野も見事な流し打ちのタイムリーを放ち、広角に打ち分ける器用さを見せた。最後は大阪桐蔭・中村の決勝打をすんでのところでつかめなかったが、三重県勢として久々の決勝進出を果たし、留飲を下げた。

     

    右翼手 脇本直人(健大高崎)

    「機動破壊」をスローガンとする健大高崎にあって、「打」の中心としてどっかり中軸に座ったのが脇本直人(ロッテ)だった。足をあまり上げないノーステップ打法ながら、繰り出す打球は外野手の頭をことごとく超えていった。安定したミート力に加えて、下半身のため込んだ力を打球に乗せるのがうまく、力と技を兼ね備えた打者であった。準々決勝の大阪桐蔭戦ではあわやホームランかという打球を放ったが、浜風に押し戻されて惜しくもライトフライに。あの打球が入っていれば、勝敗がひっくり返ってもおかしくなかっただろう。また、「打」の中心ながら「足」の速さも一級品であり、走塁・守備の高いレベルにある、3拍子揃った選手であった。