蘇る名勝負

智辯和歌山vs駒大岩見沢 2008年夏選手権 3回戦

更新日:

大会NO.1スラッガー爆発、脅威の全員攻撃で逆転勝利

出場したプロ野球選手…坂口真規(巨人)、岡田俊哉(中日)、西川遥輝(日本ハム)

2008年夏の甲子園3回戦の試合である。この大会は選抜上位校が軒並み姿を消し、優勝争いは混とんとしていた。

チーム紹介

智辯和歌山

その中にあって、和歌山大会で4試合連続ホームランの大会No.1スラッガー坂口(巨人)を擁して、選抜でベスト8まで進んだ智弁和歌山が優勝争いの中で少し抜きん出ようとしていた。

1回戦で済美を2年生エース岡田が6安打完封。2回戦では好左腕田中を擁する春の関東チャンピオンの木更津総合と早くも優勝候補同士でガチンコ対決。中盤に田中のストレートを狙い撃ちして、逆転。17安打と力で相手を圧倒した。特に4番坂口は2試合で5安打と復調。選抜で14-3と不振だったが、この夏は本領を発揮しようとしていた。上位から下位まで切れ目なくつながる打線とエース岡田の貫禄のピッチングで順調に駒を進めた。

しかし、1回戦が14安打で3点、2回戦が17安打で5点と何とも効率の悪い攻撃。高嶋監督
「試合の中でエンジンのかかりが遅い」と漏らし、主将・勝谷も「野球になってない」とフラストレーションがたまっていた。

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駒大岩見沢

一方、同じく春夏連続出場の駒大岩見沢。選抜では開幕戦で21世紀枠の成章に3-2と敗戦。
エース小川(ヤクルト、この当時はライアン投法ではなかった)。看板の打線が抑え込まれてしまった。

 

そして、皮肉にも今大会でも開幕戦に登場。相手も春と同じく初出場の下関工業となった。しかし、今度は打線が強力援護。相手のサイド右腕2人を攻略し、8点をもぎ取った。エース板木も終盤捕まるも前半のリードを活かして8-6で逃げ切った。2回戦では盛岡大付の剛球左腕鴇田に前半パーフェクトに抑え込まれるが、4回に7番佐藤のセンターバックスクリーンへの豪快なホームランで先制。その後は、盛岡大付の3投手を打ち込み、8-3で勝利した。

 

打線は松本及川を中心に長打力を秘める。及川は盛岡大付属戦から調子を取り戻し始めた。7番に4番を打つ力のある佐藤が控えているのも大きい。本格派も軟投派も打ち崩し、対応力がある。投手はエース板木が左サイド気味からプレート幅をいっぱいに使った投球で好投。選抜より落ち着いて投げられており、リリーフに沼館も控えていることから思いきって投げられている。

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ちなみに智弁としては2年前の駒大苫小牧に続く北海道の駒大勢との対戦。
マー君に抑え込まれた試合をスタンドで観戦していた1年生たちが借りを返すことができるか!?

また、1985年の選抜で両校は対戦しており、このときは3-1で智弁和歌山が勝っている。

 

魔の8回、ミスも絡み打者一巡。

智辯和歌山

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 2 0 0 11 2 15
0 1 0 0 0 2 0 0 0 3

駒大岩見沢

 

智辯和歌山 芝田→林→岡田

駒大岩見沢 板木→沼館→小川

 

下馬評では智弁和歌山が有利。打力に関しては駒大岩見沢も力はあるが、
なんせ今大会の智弁打線の勢いはすさまじく、板木でもある程度の失点は覚悟しなくてはならないところ。

終盤まで僅差で食らいつきたい。

 

しかし、当初の予想と反して試合は静かな投手戦となる。
2回に駒大岩見沢が7番佐藤のタイムリーで先制すると、5回に智弁が期待の1年生西川(日本ハム)のタイムリーなどで逆転。
だが、駒大岩見沢・板木の内外角に散らす投球にどうも智弁打線は的が絞れない。
智弁の方はというと捕手が控えの平野であり、先発もエース岡田ではなく、3年生左腕・芝田芝田も好投は見せるが、
どこか落ち着かない雰囲気があった。

 

そんな中、駒大は6回に1年生西川のエラーでランナーを出すと、復調した5番及川のセンターオーバーのタイムリーで同点。智弁の変わった2番手サイド右腕からも逆転打を放ち、3-2と試合をひっくり返す。継投のすきを突かれてしまった。

 

智弁和歌山はこれまでと同様スロースターターぶりがたたり、1点ビハインドのまま8回を迎える。
ただ、3番手のエース岡田の好投で少しずつ流れは変わり始めていた。

 

そして、いよいよ8回表。このまま優勝候補が力を出し切れずに負けてしまうのか…。
そう思い始めた矢先に2番芝田がライト前の軽打で出塁。
クリーンアップも打つ力のあるこの打者が2番にいることが智弁の強みか。

 

続く3番勝谷に送りバントの指示はなし。高嶋監督らしい強硬策に勝谷は基本に忠実なセンター前ヒットで応える。
バントも盗塁もあり得たこの場面での強硬策に勝谷は試合後
「難しい局面でしたけど、まあ要はヒットを打てってことです」とコメント。

 

最高のおぜん立てをされたところでこの日ノーヒットの4番坂口が登場。1塁にいた勝谷

坂口にバックスクリーンを指さして「センターに返せよ」と指示。打席の坂口もうなずく。

そして、板木の投じた真ん中高めの真っすぐを坂口は上からたたくと自らホームランを確信。
センターバックスクリーンを超える逆転のスリーランとなり、一気に試合をひっくり返した。
この場面で引っ張らずにセンターに素直に返せる技術が智弁の智弁たる所以か。

 

その後、5番森本も綺麗なセンター返しを見せると、続く6,7番の送りバントを連続で板木が処理ミス。投手が小川に代わっても猛攻は続き、2番芝田のセンター前への2点タイムリーに3番勝谷もバックスクリーンへスリーランホームラン。愚直なまでのセンター返しのバッティングには震えが来た。

 

そして、この男が打席に向かう。4番坂口がこの回2度目の打席へ。高嶋監督も普段はセンター返しを指示するが、この局面ではスタンドを指さし「狙え!」の指示。変わった右投手小川の高めに浮いた変化球を引っ張った打球は、打った瞬間それとわかる特大のレフトスタンドへのホームランとなった。大会史上初の1イニング2ホームランである。

 

その後、9回にも2点を加えて最後は岡田が締め、結局15-3の大差で智弁和歌山のベスト8進出が決まった。

 

まとめ

やはり智弁和歌山の8回の攻撃はすさまじく、ジョックロックの鳴り響く中あっという間の逆転劇であった。そして、1イニング2発を放った坂口。しかし、これは決して坂口1人でできることではなく、打者1巡させる攻撃力が不可欠。基本に忠実な打撃で後ろにつないでいった智弁のスタメンメンバーの力があってこそのものである。この日智弁ナインは9人全員で伝説となった。

 

最後に駒大岩見沢に触れると、戦力差があるなかで終盤までよく食らいついていた。板木も春から比べるとかなりコントロールがよくなり、的が絞りにくい投球を披露していた。

それだけに坂口へのあの1球とその後のバント処理ミスが悔やまれる。しかし、打線も一時は逆転するなど駒大岩見沢として久しぶりの上位進出を果たした戦いぶりは見事であった。

 

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