• 大坂桐蔭の前に立ちはだかった好投手列伝 3/3

    2022年01月07日

    平成に入ってからの出場だけで、春夏合わせて全国制覇8回、64勝14敗の勝率8割2分と圧倒的な成績を残す大阪桐蔭。プロ野球選手も多数輩出し、今や最強のチームと言っても過言ではない存在となっている。だからこそ、そんな大阪桐蔭に対して甲子園で勝利を収めた投手は、錚々たる面々が顔を並べている。今回は、その好投手を順にご紹介したい。

    大坂桐蔭の前に立ちはだかった好投手列伝 1/3 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

    大坂桐蔭の前に立ちはだかった好投手列伝 2/3 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

    2016年選抜 2回戦 木更津総合 4-1 大阪桐蔭

    木更津総合

    1 2 3 4 5 6 7 8 9
    0 0 4 0 0 0 0 0 0 4
    1 0 0 0 0 0 0 0 0 1

    大坂桐蔭

    早川隆久(木更津総合→楽天)

    2015年の選抜4強メンバーから中山、永廣、吉澤の3人が残った大阪桐蔭。夏の大阪大会では準々決勝で大阪偕星学園に2-3と惜敗したが、積極的に2年生の野手を起用していったことが翌年の新チームに活きた。

    前年の選抜で準決勝のマウンドを経験した左腕・高山(日本ハム)がエースとして一本立ちすると、経験者を固めた上位打線が投手陣を強力援護。秋季近畿大会で12年ぶりに優勝し、神宮大会では4強と結果を残した。高山は神宮準決勝の高松商戦で150キロをマークし、一躍マスコミが注目する存在に。好不調の波があるとはいえ、ポテンシャルは高く評価された。

    選抜では高松商の神宮優勝によって神宮枠で選出された伝統校・土佐と対戦。エース高山が安定した投球で試合を作れば、1番中山・2番永廣、3番吉澤の選抜経験組が得点を量産し、9-0と完勝を収める。上位打線に攻撃のバリエーションが豊富なことがこの年のチームの強みであった。

    その大阪桐蔭と選抜で再びぶつかったのが木更津総合であった。エース早川(楽天)は前年の選抜も経験済みで、1年秋の公式戦では自責点0で投げ切った実力者。ここ10年間の千葉県の投手で見てもNo.1と言われたエースがチームを関東大会優勝に導いた。打線は派手さはないものの、勝負強い打者が並んでおり、関東決勝では常総学院との打ち合いも制した。

    神宮大会で近畿王者の大阪桐蔭に2-5と敗退し、リベンジを期した大会は、奇しくも一つ勝てば大阪桐蔭との対戦が実現する組み合わせに入った。初戦は札幌第一と対戦。直前の練習試合で智辯和歌山打線を抑え込んでいた好投手・上出から中盤に押し出しなどで着実に加点すると、早川は抜群のコントロールを武器に最終回の2失点のみに抑え、5-2で無難に初戦を突破した。

    神宮の再戦となった対決は、初回に大阪桐蔭の3番吉澤がいきなりホームランを放って1点を先制する。しかし、3回に木更津総合打線が腰痛で調子の出ない高山をとらえて5安打を集中し、一挙4得点で逆転に成功。早川はすべての球種をカウント球にも決め球にも使える投球で、狙い球を絞らせず、大阪桐蔭打線を1失点で完投。4回以降はわずか1安打しか許さない投球で近畿王者を沈め、見事リベンジを果たした。

    その後、早川は準々決勝でも秀岳館打線を相手に好投。最終回に逆転サヨナラ負けを喫したが、大会一の破壊力を誇った強力打線を相手にも好投を見せ、大会No.1の安定感を示した。その後、夏の大会でも8強入りし、早稲田大学でもエース格として君臨。現在は楽天の未来のエースとして期待を一身に受けている。

    対して、大阪桐蔭は経験者を並べた上位打線と比較し、4番以降の打者陣が仕事ができなかった。エース高山も腰の影響で本来の投球ではなかっただろう。同年夏は関大北陽のエース清水のスローボールにフライを打ち上げさせられて1-2で敗退。前評判の高いチームだったが、この年はなかなか結果を残すことができなかった。

    【好投手列伝】千葉県篇記憶に残る平成の名投手 3/3 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

    2016年春の選抜甲子園振り返りまとめ – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

     

    2017年夏 3回戦 仙台育英 2-1 大阪桐蔭

    大坂桐蔭

    1 2 3 4 5 6 7 8 9
    0 0 0 0 0 0 0 1 0 1
    0 0 0 0 0 0 0 0 2

    仙台育英

    長谷川拓帆(仙台育英)

    2017年の選抜で履正社との大阪決戦を制して2度目の選抜制覇を果たした大阪桐蔭。根尾(中日)、藤原(ロッテ)、中川ら才能豊かな2年生を擁していたが、チームの根幹を支えていたのは、徳山(DeNA)-福井のバッテリーや坂之下-泉口の二遊間、強打の山本ダンテ武蔵ら、堅実なプレーの光る3年生たちだった。

    大阪大会では準決勝で履正社との再戦を制すると、興国や大冠といった強豪との打撃戦にも打ち勝って、春夏連続出場を決めた。甲子園では米子松陰との初戦を危なげなく制すると、2回戦ではエース徳山が智辯和歌山打線に12安打を浴びながらも粘り強く投げ抜いて1失点完投。バッテリーを中心としたしぶとい守りを武器に3回戦へコマを進めた。

    ただ、その大坂桐蔭にも懸念事項が2点あった。一つ目は大阪大会で爆発した打線がここにきてややピークから落ち気味だったこと。特に根尾や藤原ら左打者陣が智辯和歌山の黒原(広島)ら相手の左投手を打てていない現状があった。

    そして、もう一つは1回戦最終ブロックに入ってしまったこと。2回戦の智辯和歌山戦の後、中一日で仙台育英と対戦し、さらに組み合わせ抽選の結果、準々決勝では中村奨(広島)擁する広陵との対戦が決まった。4日間で全国屈指の強豪3校との対戦とあっては、さすがにすべてエース徳山に託すのは厳しい状況であった。

    この1回戦最終ブロックは日程的に最も厳しく、過去にこのブロックに入って優勝したチームを見ても、2010年の興南や2011年の日大三のように頭一つ二つ他校より抜け出た存在であった。西谷監督にとっても頭の痛い日程だっただろう。

    その大阪桐蔭と3回戦で対戦する仙台育英は、言わずと知れた東北屈指の強豪校であり、この年も秋季東北大会を制覇していた。しかし、神宮大会では同じ大阪の履正社に1-5と力負け。エース長谷川の制球が安定せず、打線も履正社のエース竹田の前に封じ込まれた。雪辱を期した選抜では福井工大福井を相手に常に先手を取っていたが、終盤相手の力強い攻めに長谷川が屈し、4-6で逆転負けを喫した。

    秋春ともに全国での1勝が遠かった仙台育英。しかし、夏の大会では東陵との引き分け再試合を制すると、決勝ではライバルの東北を7-2で圧倒。2年前の甲子園決勝を経験した1番西巻(ロッテ)を中心に好調な打線と長谷川の好投がかみ合い、代表切符をつかんだ。甲子園では、初戦で滝川西を打力で圧倒すると、2回戦では長谷川の低めのスライダーが威力を発揮し、日本文理との投手戦を1-0でものにした。

    強豪同士の一戦は3回戦ラストのナイトゲームに。大阪桐蔭は先発のマウンドに2年生柿木(日本ハム)を送った。大阪府予選では打ち込まれる場面も目立った右腕だったが、この日は予想をはるかに上回る快投を見せ、仙台育英に付け入るスキを与えない。試合途中、エース徳山が救援の準備でブルペンへ向かう場面もあったが、試合が進むにつれてそのシーンも見られなくなった。

    しかし、肝心の打線が仙台育英・長谷川をとらえられない。特に左打者が長谷川の外へ逃げるスライダーをとらえきれず、凡打の山を築いてしまう。8回に3番中川のタイムリーで先制点を奪うが、試合の流れはどっちにあるとも言えない状況で、最終回に突入した。

    その後の結末は多くの高校野球ファンが知っている通り。9回もマウンドに上がった柿木は3番、4番を打ち取って2アウトを奪うが、そこからランナーを2人ためてしまう。後続をショートゴロに打ち取るも、送球を受けたファースト中川がベースをうまく踏めずに満塁に。これまで数々の逆転劇を演じてきたみちのくの雄が個のスキを逃すはずもなく、最後は馬目のセンターオーバーのサヨナラ2塁打で試合は幕となった。

    仙台育英は続く準々決勝はさすがにエース長谷川が先発はできず、広陵打線に序盤から畳みかけられて10-4と大差の敗北を喫した。しかし、前年秋に歯が立たなかった履正社と同じ大阪代表、しかも高校球界の王者に君臨する大阪桐蔭を倒した自信は「仙台育英」というチームに新たな力を宿したことだろう。現在は須江監督が佐々木監督から指揮を受け継ぎ、チームの強化に努めている。

    対する大阪桐蔭は柿木の好投が皮肉なことに試合前に想定していた投手起用をブレさせてしまったのかもしれない。正直、あの日の柿木の投球で変えるという選択肢はなかなか浮かばないだろう。結果として最も緊張感のある最終回を、最も自信を持つ布陣とは違う形で臨むこととなった。やはり日程上の難しさが最後は災いした結果となった。

    ただ、この敗戦の悔しさをばねにスキをなくしたチームは、翌年に2度目の春夏連覇を達成。苦汁をなめた柿木はエースとして準決勝・決勝を一人で投げ抜き、見事優勝投手に輝いた。

    2017年選手権3回戦 大阪桐蔭vs仙台育英(11日目第4試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

    【好投手列伝】宮城県篇記憶に残る平成の名投手 4/4 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

    2017年選手権2回戦 仙台育英vs日本文理(9日目第3試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

     

    2021年選抜 1回戦 智辯学園 8-6 大阪桐蔭

    大坂桐蔭

    1 2 3 4 5 6 7 8 9
    0 0 0 0 0 2 1 3 0 6
    4 0 0 0 0 3 1 0 × 8

    智辯学園

    西村王雅(智辯学園)

    前年にコロナウイルスの影響で春夏の甲子園がなくなった2021年世代。交流試合の開催はあったとはいえ、2020年の1年間、公式戦の経験不足はどのチームも否めないものがあった。

    その中で大阪桐蔭は、左腕・松浦(日本ハム)、右腕・関戸の2枚看板を中心とした分厚い投手陣と野間、繁永の1,2番を筆頭にスピード感あふれる攻撃陣がかみ合い、大阪大会を制覇。近畿大会でも順調に勝ち上がり、決勝で智辯学園に敗れたとはいえ、準優勝を成し遂げた。

    春夏連覇を果たした2018年以来の甲子園に向け、戦力は十分。ただ関戸・松浦ともに制球がやや不安定な面もあり、2人のポテンシャルを考えるとまだ本来の物ではない印象だった。

    その大阪桐蔭と初戦でぶつかったのは、まさかの智辯学園。今大会からフリー抽選となった影響がもろに出た形となった。大阪桐蔭にとっては2度は同じ相手には負けられないという意地があったことだろう。

    その智辯学園は1年生から投手陣の中心を担ってきた左腕・西村、右腕・小畠が順調に成長。1年夏から4番を務めてきた左の主砲・前川(阪神)に加えて右の主砲・山下も加わり、戦力はより厚みを増していた。

    特に山下は前年秋の近畿大会でホームランを連発。大阪桐蔭戦でも一発を放っており、それまで近畿大会でやられっぱなしだった大阪桐蔭という壁を越えた自信は殊の外大きかっただろう。また、技巧派のエース左腕・西村は投球フォームが安定し、1年生の時と比較して横の角度はやや減ったものの、ボールのキレとコントロールの精度は格段に増していた。

    いきなり激突した近畿を代表する強豪対決。その立ち上がり、西村が大阪桐蔭打線を三者凡退で退けたのに対し、智辯学園打線は制球の定まらない大阪桐蔭・松浦を攻略する。押し出しで1点を先制すると、なお満塁から6番植垣がカウントを取りに来たストレートを狙い打ち。走者一掃のタイムリー2塁打となり、初回に一挙4点を奪った。

    これで勢いを得た智辯学園・西村はコーナーを丹念に突く投球で序盤はパーフェクトピッチングを展開。いい当たりが正面を突くのも、きっちりコースに投げられていたからだろう。中盤に2点を返されると、直後に味方打線が2番手関戸から3得点。例年はミスの少ない大阪桐蔭だが、この日は守備のミスも目立った。終盤に大阪桐蔭打線も本領を発揮しだしたが、時すでに遅く、8-6のスコア以上の会心の内容で智辯学園が初戦突破を果たした。

    その後、智辯学園はベスト8まで勝ち進むも、準々決勝では西村が序盤から明豊打線に捕まって4-6と惜敗。しかし、雪辱を誓った夏は西村・小畠ともに安定した投球で決勝まで勝ち進み、準優勝を飾ったのは記憶に新しいところである。

    一方、大阪桐蔭は投手陣の不安定さが出てしまった結果となった。ただ、夏は大阪大会を苦しみながらも勝ち上がり、甲子園では東海大菅生との雨中の激闘を制して初戦を突破。松浦は雨が降りしきる中でも粘り強く投げ抜き、選抜から成長した姿を見せた。

    2021年選抜1回戦 智辯学園vs大阪桐蔭(4日目第2試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

    2021年選手権1回戦 智辯学園vs倉敷商(2日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

    2021年選手権2回戦 智辯学園vs横浜(8日目第4試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

    2021年選手権準々決勝 智辯学園vs明徳義塾(13日目第3試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

    2021年夏 2回戦 近江 6-4 大阪桐蔭

    大坂桐蔭

    1 2 3 4 5 6 7 8 9
    3 1 0 0 0 0 0 0 0 4
    0 0 1 1 1 0 1 2 × 6

    近江

    山田陽翔(近江)

    選抜で松浦・関戸の2枚看板が打ち込まれて初戦敗退を喫した大阪桐蔭。その悔しさをばねにエース松浦が成長し、不調の関戸に代わって竹中・川原ら控え投手が成長して大阪大会を粘り強く勝ち抜いた。

    また、打線は相変わらず強力で、大阪大会準決勝の北陽戦では両チーム2桁得点の打ち合いをものにした。特に3番池田(オリックス)の勝負強さは特筆もので、大阪大会決勝では自らサヨナラ打を放って甲子園を手繰り寄せた。

    甲子園初戦では花田・前田・藤原がホームランを放ち、初回から大坂桐蔭らしい豪快な得点パターンを見せると、投げてはエース松浦が粘投。最後は雨の中で降雨コールドゲームになってしまったが、投打に成長した姿を見せた。

    その大阪桐蔭と対峙したのが、湖国の強豪・近江。2018年、2019年と好投手・林を擁して2年連続出場を果たした強豪だが、春先まではなかなかチームがまとまらず、多賀監督も匙を投げかけた状態だった。

    しかし、最上級生を中心にミーティングを繰り返して、自らきつい練習に身を投じると、滋賀大会では2年衛生エース山田から3年生右腕・岩佐への継投で次々と勝ち抜き、代表権を獲得。ともに140キロ台中盤の速球と落ちるボールを投じる本格派右腕2人の継投は威圧感十分であった。甲子園初戦では日大東北と降雨再試合となったが、8-2で圧勝。好調さを維持して同じ近畿の横綱にぶつかった。

    試合は立ち上がり、ボールが浮き気味の山田から大阪桐蔭が満塁のチャンスを作ると、6番宮下が走者一掃のタイムリー2塁打を放ち、3点を先制する。さらに、2回には8番松尾がセンターバックスクリーンに一発を放り込み、4-0。この時点で誰もが大阪桐蔭の圧勝を想像した。

    しかし、ここから山田は変化球を低めに集めて立ち直りを見せる。すると、近江打線はスクイズの1点を皮切りに、5番新野のホームランなど大技小技で得点。終盤にはついに同点に追いつく。大阪桐蔭相手にこれだけ劣勢になりながら、試合を立て直したチームもかつてなかった気がする。

    大阪桐蔭は先発・竹中が粘り強く投げていたが、終盤に降板すると、8回裏に2番手川原がつかまってついに近江が6-4と逆転。2番手岩佐への継投も見事にはまり、近江が会心の逆転劇を決めた。

    これで勢いに乗った近江は、その後も強打の盛岡大付・前年秋の近畿大会で敗れた神戸国際大付を破り、4強に進出。分厚い投手陣で勝ち進んだ2001年、2018年とはまた違った形での上位進出はチームに新たな自信を与えただろう。エースで主砲の山田が残った新チームは今、来たる選抜に向けて着々と準備を始めている。

    一方、大阪桐蔭は選抜では智辯学園、夏は近江と同じ近畿のチームに敗退する結果に。しかし、それはこれまで近畿を牽引してきた大阪桐蔭を目指して。その他の近畿地区のチームの力が向上した結果であろう。その成果を大阪桐蔭自身が受け止める結果になったのはある意味皮肉な結果ではあったが。

    新チームはこの試合でホームランを放った松尾を3番捕手に据えて再び秋の近畿大会で優勝。神宮大会も初制覇し、あの松坂大輔(西武)を擁した横浜高校以来となる1年間公式戦無敗を目指して牙を研いでいる。

    2021年選手権2回戦 近江vs大阪桐蔭(10日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

    2021年選手権1回戦 近江vs日大東北(7日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

    2021年選手権3回戦 近江vs盛岡大付(12日目第4試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

    2021年選手権準々決勝 近江vs神戸国際大付(13日目第4試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

    まとめ

    いかがだったでしょうか?大阪桐蔭という王者を倒すだけあって、それぞれ魅力のある投手がずらりと並んでいましたね。強豪校と好投手のつばぜり合いがこれからも高校野球ファンを楽しませてくれるでしょう。