• 智辯和歌山vsPL学園 2000年夏

    関西の新旧王者による死闘

    1994年の選抜以来となる両校の対戦。ともに甲子園で優勝経験があり、高校球界の超強豪として君臨していた両校が2000年夏の3回戦で再び相まみえることとなった。

    智辯和歌山は3季連続の甲子園で前年夏がベスト4、選抜が準優勝と着実に階段を上ってきていた。最後の夏、目指すは全国制覇のみ。3番武内(ヤクルト)、4番池辺を中心に下位まで長打力のある打線は全国でもトップレベルの破壊力があり、一発で一気に流れを引き寄せる怖さを秘めていた。一方、投手陣は選抜でエース格だった左腕・白野が不調。2年生右腕の中家と野手兼任の山野の二人を中心に回していた。

    優勝候補筆頭として臨んだ大会初戦は、新潟大会で防御率0点台の好投手・五十嵐を擁する新発田農と対戦。先生を許すも、5番後藤のホームランで追いつくと、中盤以降は武内のホームランが飛び出すなど、14-4と大差で圧倒した。しかし、バントミスなど細かいプレーに課題が残った。

    2回戦は初回に後藤が頭部への死球で退場するアクシデントが発生する。相手エース高橋を打ち崩し、代役の1年生捕手・岡崎も奮闘したが、7点リードの終盤に中京の集中打を浴びて、1点差に迫られるも、岡崎が好送球で1塁走者を刺すなど、土壇場で踏ん張り、1点差で辛くも逃げ切った。

    一方、PL学園は2年ぶりの夏の甲子園出場。横浜と春夏と激闘を演じた前々年、田中一(横浜)・覚前(近鉄)・七野(横浜)などで強力打線を擁し、選抜4強入りした前年と比較し、この年はエース朝井(近鉄)、4番今江(ロッテ)が2年生と若いチームであった。打線は1番荘野から左打者と右打者がジグザグにつながる相手にとってはいやらしい打線を形成。エース朝井は先輩の桑田と同じように、ストレートとカーブのみで勝負するスタイルで好投を見せる。捕手で主将の加藤(ソフトバンク)とのコンビも抜群であった。

    大阪大会では国木(広島)擁する上宮、前年夏に苦杯をなめた北陽、新興勢力の履正社といずれ劣らぬくせ者たちを次々と接戦で撃破。特に上宮戦は先行される苦しい展開となったが、最後は2番手の下敷領から5番・奥野がサヨナラ2ランを放ち、「逆転のPL」健在をアピールした。

    甲子園では明徳義塾、中京大中京、智辯和歌山と強豪がひしめくブロックに入った。初戦はID野球を掲げる札幌南と対戦。序盤から相手守備陣の乱れに乗じて得点を重ねると、投げては朝井から宮内への完封リレーで7-0と完勝した。

    そして、2回戦は明徳義塾との競合対決。6季連続出場中の常連を相手に2回に先制すると、3回には相手エース三木田の多彩な球種に惑わされず、朝井の2ランなど一挙6得点の猛攻を披露。機動力も絡めつつ、打者一人で投げれる球種を一つ奪っていくような、抜け目のない攻めを見せた。投げては朝井が強打の明徳打線を4失点で完投。桑田2世と謳われ、投打にわたる活躍で競合がいよいよ乗ってきた印象であった。

    お互いの持ち味を出し尽くした激戦は、長打力の智辯に軍配

    2000年夏3回戦

    智弁和歌山

    1 0 4 2 2 0 0 0 2 11
    0 0 1 0 2 2 2 0 0 7

    PL学園

     

    智弁和歌山  中家→山野

    PL学園    朝井→宮内

    試合前の焦点は朝井が強打の智辯和歌山打線をいかに封じ込められるかであった。一方、投手陣に不安を抱える智辯和歌山としてはスキのないPLの攻めを相手にやはりある程度の失点は覚悟せざるをえない状況となっていた。

     

    立ち上がり、朝井に対していきなり智辯和歌山打線が襲い掛かる。1番小関、3番武内がともに朝井のカーブに狙いを定めてヒットを放ち、1アウト1,3塁のチャンスを作ると、4番池辺のサードゴロがサード清水の悪送球を呼んで、1点を先制する。試合巧者のPLらしからぬ失点。続く6番山野のセンター前ヒットでホームを狙った打者を荘野が好返球で刺したが、いやな形で先制点を奪われる。

     

    2回表を無失点で切り抜け、立ち直りのきっかけをつかみかけたかに見えた朝井だったが、3回表に智辯打線に真の恐怖を見せつけられる。2アウトランナーなしから3番武内を相手に四球を与えると、打席には最も怖い4番池辺を迎える。朝井は自慢の真っすぐを投じるも、高めに浮いたボールを池辺がとらえると、打球はセンターバックスクリーンに悠々と飛び込む2ランホームランとなる。自身のあるボールをとらえられた朝井は茫然と打球を見送るしかなかった。

     

    続く5番後藤は朝井のカーブをとらえてセンター前ヒットで出塁。真っすぐを打たれ、カーブも打たれて我を失った朝井に対して、6番山野は再び真っすぐをとらえると、打球は左中間スタンドへ飛び込む2ランとなって5-0。智辯和歌山の恐るべき長打力を前に、百戦錬磨のPLナインも「野球をしていて初めて怖かった」と脅威を感じていた。朝井は後続を打ち取ったが、この回でマウンdのを降りた。

     

    3回裏にPLが1点を返すも、智辯和歌山打線の追撃は収まらない。リリーフした宮内はサイドハンドながら球威のあるタイプ。しかし、そのボールをものともせず、4回表に武内のフェンス直撃にタイムリーなどで2点を追加すると、5回表には再び山野が今度は右中間スタンドに飛び込むホームランを放つなど、9-1と大きくリードを広げる。とらえたらほぼ外野深くまで運ぶ智辯和歌山の打力は往年の池田やPL学園をも凌駕するものであった。

     

    5回を終えてまさかの8点ビハインド。PLナインにとっては想定外の展開だったが、王者はここから地力を発揮する。5回裏、腰痛で本来の球威ではない中家に対して3番中尾、5番奥野がタイムリー2塁打を放ち、2点を返す。点差は6点だが、ファイティングポーズを取る姿勢は崩さない。

     

    この反撃に呼応するかのようにPLナインは守備で踏ん張る。智辯和歌山の強烈な打球は内野手や投手の宮内が素晴らしい反応で好捕。守りからリズムを作ると、6回裏には1番荘野、2番清水がともにセンターから逆方向への打撃でタイムリーを放ち、点差は4点に。基本に忠実な打撃に走塁間に必ず進塁する抜け目のなさ。王者の王道の野球が徐々に智辯和歌山を追い込んでいく。

     

    追撃ムードが最高潮となった7回裏、PL打線は代わった2番手の山野にも襲い掛かる。2アウトから6番加藤のサード強襲ヒット、7番徳重のヒットエンドランで1,3塁とチャンスを拡大する。ここで8番宮内が山野の甘く入ったストレートをとらえると、打球は左中間フェンスを直撃。走者2人を迎え入れ、一気に2点差に詰め寄る。それまでコツコツとつないで得点を挙げてきたPLについに会心の一打が飛び出した。球場のムードはPL一色。智弁ナインも顔色を失う展開となった。

     

    智弁の背中を射程圏内にとらえたPLは8回裏にもランナーを2人ためてチャンスを作る。ここで、打席にはここまで無安打の4番今江が入る。山野の甘く入ったスライダーをとらえた打球はしかし、レフト正面のライナーとなり、得点には至らない。続く5番奥野もキャッチャーフライに打ち取られ、PLは大きなチャンスを逃す。

     

    すると、それまで押されっぱなしの智辯が反撃に転ずる。先頭の後藤がこの日チーム4本目となるホームランをレフトスタンドへ叩き込むと、北橋にもタイムリーが飛び出して11-7。大きな大きな追加点を挙げた。その裏、PLも意地の反撃で2人ランナーをためるが、最後は1番荘野がセカンドゴロでゲームセット。智辯和歌山が19安打11点の猛攻で大一番を制し、ベスト8に名乗りを上げた。

    まとめ

    智辯和歌山にとっては同じ近畿の強豪をがっぷり四つで下しての勝利であり、6年前の勝利とはまた違う意義があった。あの時は勢いに乗っての勝利という感覚もあったが、今回は自慢の長打力で堂々正面からねじ伏せた、そんな感覚の試合であった。PLのさすがの粘りの前に苦しめられたが、ぎりぎりで踏ん張れたことはナインに大きな自信を与えたことだろう。この大会100安打、11ホームランと次々打撃記録を塗り替え、3年ぶり2度目の栄冠を手にすることとなる。

    一方、PL学園にとってはショックの残る敗戦であった。走攻守にスキのないチームを作り上げてきたが、智辯和歌山の長打力は高校野球界の常識を飛び越えるものであった。この翌年、朝井・今江を中心とする新チームに期待がかかったが、秋は大阪桐蔭に1-4と敗戦。夏は不祥事でまさかの出場辞退となった。ここから冬の時代を迎え、最終的に休部になることを考えると、この年が現実的に優勝を狙えた最後のチームであったかもしれない。高校球界の主役が入れ替わったという意味でも、大きなターニングポイントとなったゲームであった。

    【平成12年】智弁和歌山 vs.PL学園【高校野球】 – YouTube

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