• 東海大相模vs天理 1992年選抜

    優勝候補に食らいついた試合巧者

    ラッキーゾーンが撤廃されて初めての大会となった1992年選抜。スラッガー・松井秀喜(ヤンキース)の豪打が注目されていたが、ふたを開けると、ベスト4に東海大相模・帝京・浦和学院と関東勢3校が残り、強さの際立つ大会となった。

    そんな中で唯一近畿勢で残った天理と大会屈指の好投手・吉田(近鉄)を擁する東海大相模が準決勝第一試合で顔を合わせた。

    大会No.1投手(1992年選抜) 吉田道(東海大相模) – 世界一の甲子園ブログ

    東海大相模は昭和52年の夏以来実に15年ぶりの甲子園であった。横浜や桐蔭学園、横浜商といった県内のライバルに押されがちだったが、この年は速球派右腕・吉田の投球と機動力のある攻撃がかみ合い、常盤台、南部、PL学園と撃破した。特にPL学園戦は相手の2年生エース松井(のちの松井稼頭央)を攻略し、エース吉田が4安打で完封。高校球界の王者を倒し、いよいよ勢いに乗ってきていた。

    対する天理。前年は剛腕・谷口(巨人)を擁して春夏ともに優勝候補に挙げられながら2戦目で敗退。しかし、この年はエース西岡をはじめとして小柄な選手が多い中、しぶとい野球で米子商、広島商と1点差で撃破した。準々決勝ではのちのホームラン王・松井秀喜(ヤンキース)を擁する星稜と対戦。神宮大会も制した優勝候補を相手に終盤に一気呵成の攻めで5点を奪って試合をひっくり返し、会心の逆転劇を演じて4強に進んだ。

    1点をめぐる攻防をしのぎ、17年ぶりの決勝へ

    1992年選抜準決勝

    東海大相模

    1 2 3 4 5 6 7 8 9
    2 0 0 0 0 0 0 1 0 3
    1 0 0 0 0 0 1 0 0 2

    天理

     

    東海大相模  小川→吉田

    天理     西岡

    出場してくるとさすがに強さを見せる東海大相模に対して、例年のような大型チームではないものの「うまさ」が光る天理。東西の強豪同士の試合は初回から動く。

    1回表、東海大相模は天理・西岡の立ち上がりを攻め、1番岩永西岡得意のスライダーをとらえてライト前ヒットで出塁。その後、犠打と四球などで2アウト1,2塁となって、5番中村はアウトコースやや甘めのスライダーを完ぺきにとらえてセンターの頭上を破り、2点を先制する。この大会4試合連続の先制点である。

    一方、東海大相模は決勝を見据えてか、エース吉田ではなく左腕の小川を先発に送る。しかし、天理も立ち上がり鋭い攻めを見せ、内野安打の1番小寺を2塁に進めると、3番山崎が1回表の中村の打球とほとんど同じところに運ぶタイムリー2塁打を放ってたちまち1点差に詰めよる。

    だが、ここから天理の攻めに焦りが出始める。早くエースの吉田を引きずり出さなくてはとの思いからか、再三塁上をにぎわせながらもなかなかチャンスをものにすることができない。3回には1塁ランナーがけん制で刺されてタッチアウトとなり、その後に3番山崎に3塁打が出るという悪循環。さらに、4番大西のスクイズは外されてまたしてもランナーがタッチアウトと、いつもの天理のうまさがこの試合に限っては垣間見えない。

    なんとか吉田が出てくる前に同点にしたい天理は5回にも小川を攻めて2アウト満塁と絶好の先制のチャンスをつかむ。しかし、ここで相模の村中監督はついに吉田をマウンドに送り、吉田は5番山本を三振にとってこの回も天理は得点を挙げることができない。天理にとっては実にもやもやする展開で前半戦を折り返した。

    だが、試合前から吉田の速球対策をしてきた成果が出たか、7回裏に当たっている3番山崎がこの日4本目となるヒットで出塁。ここですかさずスチールを試みると、捕手の送球がそれて相模の野手陣がもたつく間に山崎は一気にホームを突き、捕手のタッチをかいくぐって間一髪で同点に追いつく。あれだけチャンスを作りながら得点できなかったが、相手のミスから得点が転がり込んできた。

    ようやく同点に追いついた天理。スライダー、シュートを武器に2回以降は無失点で踏ん張っていた西岡だったが、同点になった直後に魔が差す。1番岩永に四球を与えると、犠打で送ってランナー2塁から3番柴田にインサイドのボールをうまく運ばれて相模が1点勝ち越し。西岡にとっては同点になったことでこれ以上はやれないという心境が出てしまったか、やや慎重すぎる投球になってしまった。

    1点を追う天理は9回裏、相手のミスなどから1アウト1,2塁の絶好機を迎える。ここで打席には巧打者の2番峯岡だったが、嶋監督はセオリー通り送りバントを命ずる。しかし、この采配が結果的に仇に。続く3番山崎はこの日4打数4安打と絶好調であり、相模バッテリーは満塁策を選択。4番大西をストレート3球勝負で三振に切って取り、東海大相模が原辰徳(巨人)を擁した1975年以来実に17年ぶりの決勝進出を果たした。

    まとめ

    東海大相模は久々の出場ながら、エース吉田を中心とした攻める野球で決勝まで進出。激戦区・神奈川の代表だけあって出てくると簡単には負けないところを見せた。しかし、帝京との決勝では1点差を追う9回裏にランナーを2塁においてヒットが飛び出すも、2塁走者がホームで刺されてタッチアウトに。2度目の選抜決勝も寸前で優勝旗は逃げていった。門馬監督のもと、選抜初制覇を果たすのはそれから8年後のことである。

    対して天理は戦力で上回る相模を向こうに回して再三チャンスを作って押しこんだが、この日は焦りもあってかこの年の天理らしい巧みな攻撃がはまらなかった。だが、例年と違ったしぶといチームカラーでの快進撃は、「こういう野球でも勝てるんだ」という新たな自信をチームに与えた。同年夏も連続出場し、準々決勝で東邦との激闘に敗れはしたものの、3勝を挙げてベスト8に進出したのだった。

    第64回センバツ 東海大相模vs天理 – YouTube