• 横浜vs広陵 2008年夏

    2回戦で実現した2003年選抜決勝の再戦カード

    2008年夏の選手権大会は2回戦で実力校同士の好カードが多く実現した。大阪桐蔭vs金沢、清峰vs東邦、仙台育英vs福井商、智辯和歌山vs木更津総合、浦添商vs千葉経済大付などが挙げられるが、中でも高校野球ファンの注目を集めたのが、2003年選抜の決勝カードの再現となった横浜vs広陵の試合であった。

    広陵は前年夏に野村(広島)-小林(巨人)のバッテリーを中心に夏3度目となる準優勝を達成。しかし、ディフェンスの堅かった前年のチームから一転し、この年は1番上本(広島)、3番林を中心とした攻撃型のチームであった。

    広島大会決勝では前年夏に競り勝った総合技術に一時2-9と大量リードを許したが、総合技術の好投手・水野から打線が集中打を放ち、一気の逆転劇で終わってみれば12-9と勝利を収めていた。この試合で3本の犠飛を放つなど、好機で確実に外野へと運ぶ打者の技術の高さが光った。

    一方、投手陣は速球派右腕・中田(広島)、技巧派右腕・前田、春季中国大会で20三振を記録した左腕・森宗の3本柱。ともに高いポテンシャルを誇るが、好不調の波が激しいのが難点であった。甲子園初戦の高知戦では一時5点のリードを集中打で追いつかれるなど、粗さも見られ、ディフェンス主体だった前年のチームと違い、やや守りには不安を覚える戦いぶりだった。

    対する横浜は松本、小川、筒香(パイレーツ)ら左の強打者を並べた打線とエース土屋(ロッテ)の好投で秋季関東大会を優勝。神宮でも順調に勝ち進み、敗れはしたものの決勝で常葉菊川と4-5と接戦を演じた。この世代のトップクラスのチームとの位置づけだったが、V候補として臨んだ選抜では北大津に2-6とまさかの完敗を喫する。

    カウント0-3からでも強攻してくるという、セオリーをかわす北大津の野球にかく乱され、自分たちの持ち味を全く発揮できなかった。再度自分たちの緻密な野球を再考させられた横浜は小倉コーチのもとで足元を見つめなおし、南神奈川大会を順当に勝ち抜いて優勝を果たす。

    甲子園初戦の浦和学院戦では県予選の不調から7番に降格していた筒香が先制2ランを放つ活躍を見せて復調。エース土屋も14安打を浴びながらも5失点で踏ん張り、まずは選抜の借りを返す初戦突破を果たした。

    シーソーゲームを決定づけた1年生のランニングホームラン

    2008年夏2回戦

    広陵

    1 2 3 4 5 6 7 8 9
    1 1 0 0 1 0 0 1 0 4
    0 1 1 2 1 2 0 0 × 7

    横浜

     

    広陵  森宗→中田→前田

    横浜  土屋

    ともに初戦は打線が好調だが、投手力にやや不安を抱えるスタートとなった両チーム。2003年の選抜決勝では3-15と惨敗を喫していた横浜にとってはリベンジを期す戦いとなった。

    試合は初回の初球からいきなり動く。1回表、広陵のトップバッター上本崇が土屋の高めのストレートをたたくと打球はレフト席に飛び込むホームランとなり、1点を先制。2003年夏には兄の上本博(阪神)もホームランを放っており、史上初の兄弟での先頭打者ホームランを達成した。この後、さらにランナー1,2塁と攻め込むが、土屋はなんとか後続を断つ。

    2回に入っても調子の出ない土屋に対して、広陵はランナー1塁からエンドランを決めて1アウト1,3塁のチャンスをつかむ。ここで再び上本がインハイのボールをたたいて左中間を破り、1点を追加。しかし、1塁ランナーはホームまで生還できず、続く2番下川のセンターフライでホームへ突っ込むもタッチアウト。序盤アップアップだった土屋に2回までで5安打を放ちながらも1点止まりだったのは痛かっただろう。

    広陵の先発は初戦で登板のなかった左腕・森宗。左打者が主力の横浜に対して登板させたが、こちらも序盤からコントロールがばらつく。2回に8番小田にタイムリー2塁打を許すと、3回には復調した2年生4番筒香に同点タイムリーを許し、早くも3回でマウンドを降りる。

    土屋が徐々にリズムを取り戻す中で横浜は4回裏に2番手で登板した速球派右腕・中田を攻略。元気者の1年生大石のタイムリー3塁打で勝ち越すと、広陵守備陣の乱れを突いて一気にホームインする。1年生の一打で波に乗った横浜に対し、広陵は序盤に主導権を握り損ねた形でビハインドを背負うこととなる。

    それでも、攻撃力に自信を持つ広陵は5回表に当たっている9番長谷部のヒットからチャンスを作り、3番林のタイムリーで1点を返す。ところが、横浜内野陣の一瞬のスキを突いて積極的に2塁を狙った林がセカンドで刺されてしまい、1アウト1,3塁のはずが2アウト3塁に。後続も打ち取られて結局チャンスを活かしきれなかった。

    5回裏にもそつなく1点を追加した横浜が5安打5点なのに対して、広陵は8安打で3点。横浜のそつのなさが広陵の積極性を上回った形となった。

    すると、後半は横浜がじりじりと差を広げていく。元来速球に強い打者の揃う横浜の打者はストレートで押す中田の投球をとらえて6回に4安打を集中。ついにヒット数でも広陵を上回り、7-3と大きくリードを広げる。

    なんとか反撃したい広陵は8回に1点を返すも、横浜の二遊間の好守備に阻まれてチャンスを拡大できず。最終回にもランナーを出したが、最後は1番上本が打ち取られてゲームセットとなり、大敗した2003年の選抜のリベンジを果たす形で横浜が3回戦進出を果たした。

    まとめ

    横浜はその後、仙台育英・聖光学院を下して4強に進出。準決勝で優勝した大阪桐蔭に敗れたが、東の横綱として存在感を示す大会となった。横浜高校が夏に8強以上に進んだのはこの年が最後となっており、小倉コーチが部長としてベンチ入りした最後の夏の甲子園でもあった。常連校ばかりを相手に4つの勝利をマークし、緻密でそつのない横浜野球を存分に見せつけた年だった。

    一方、広陵にとっては何とも惜しまれる敗戦となった。積極的なミスは責めないという広陵の方針通りに果敢に攻めていったが、この試合では結果的にその積極性が裏目に出る形となった。野手陣のポテンシャルでは前年を上回るかもと言われたこの年のチームだったが、それだけでは勝てないのが野球の難しさ。この後、如水館や広島新庄の台頭もあり、夏は準優勝した2017年まではなかなか勝ち上がれない年が続くこととなる。

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