• 浦添商vs千葉経済大付 2008年夏

    2回戦で実現したV候補対決

    2008年の選手権大会の優勝争いは絶対的な優勝候補がおらず、混とんとしていた。選抜王者の沖縄尚学は沖縄大会決勝で浦添商の立ち上がりの猛攻に屈して敗退。選抜準優勝の聖望学園、同4強の東洋大姫路に至ってはまさかの県大会初戦敗退という憂き目にあった。また、神宮大会決勝を戦った常葉菊川、横浜の両校も選抜で力を発揮しきれずに早期敗退し、絶対的な存在ではなくなっていた。

    そんな中、選抜王者の沖縄尚学を破った浦添商とエース斎藤を軸に選抜4強で唯一夏に戻ってきた千葉経済大付が2回戦で激突。早くも優勝争いを占う大一番が行われることとなった。

    浦添商は2年生時からエースを務める伊波がエースに君臨。140キロ後半をマークする速球とスライダー、カットボールなど多彩な球種を武器に春の沖縄大会を優勝し、九州大会でも準優勝と徐々に調子を上げてきていた。迎えた沖縄大会決勝では打線が沖縄尚学のエース東浜(ソフトバンク)から初回に5点を奪う猛攻を見せ、このリードを守り切って1997年以来11年ぶりとなる出場を果たした。

    神谷監督の元で生活面を厳しく指導され、「凡事徹底」のスローガンのもとで規律を取り戻した。元来機動力に力を入れているチームであり、打者走者は一塁を駆け抜けてアンツーカーまで走り切るほどの徹底ぶりを見せていた。大物うちこそいないものの打線はミート力の高い打者が並び、得点力は高く、相手をかき回す攻撃ができた。

    迎えた1回戦は好左腕・辛島(楽天)を擁する飯塚と対戦。打線が中盤以降、辛島の変化球に対応して得点を重ねれば、投げてはエース伊波が手元で動く変化球を武器に打たせて取ってわずか98球で完封。無三振、無四球という省エネピッチングで7-0と危なげなく1回戦を突破した。

    一方、千葉経済大付はエース(巨人)を擁して秋の関東大会を制した前チームの方が前評判が高く、この年のチームは主戦・斎藤(巨人)にかかる負担が大きいと思われていた。現に秋の関東大会では準々決勝で土屋(ロッテ)、筒香(レイズ)、倉本(DeNA)を擁する横浜に3-5と惜敗し、関東5校目でかろうじて選抜出場を果たした。

    しかし、選抜では初戦で興譲館を斎藤が完封して3-0とは好発進すると、3回戦では前年優勝の常葉菊川と対戦。松本監督の敷いたポジショニングがずばり的中して、強力打線を封じ込めると、打線も4番稲葉の2ランなどで常葉菊川のエース戸苅をKO。7-2とまさかの完勝で王者を沈めた。その後、準々決勝では長野日大に7店のリードを追いつかれるも、延長でサヨナラ勝ちし、見事4強進出。前年を超える結果を残した。

    だが、選抜4強帰りで迎えた春の千葉大会で衝撃の結果が待ち受ける。木更津総合の好左腕・田中に無安打無得点試合を喫し、17-0で惨敗してしまう。この結果を受けて危機感を持った松本監督はエースの斎藤を4番に据える荒療治を敢行。斎藤に大黒柱としての自覚を持たせるために行ったが、これが功を奏して斎藤は投げては好投、打っても16打数6安打と結果を残し、春夏連続の甲子園出場を決めた。

    チーム状態を上げて迎えた選手権1回戦は近大付と激突。粘りの野球が身上の相手に対して、斎藤が重いストレートを武器に9回の1失点のみの抑えて完投勝利をおさめ、こちらもまずは危なげなく初戦を突破した。

    千葉経済大付・斎藤を飲み込んだ機動力野球

    2008年夏2回戦

    浦添商

    1 2 3 4 5 6 7 8 9
    5 2 3 0 0 0 0 2 0 12
    2 0 0 0 1 0 6 0 0 9

    千葉経大付

     

    浦添商     伊波

    千葉経済大付  斎藤→吉野→斎藤

    千葉経済大付・松本監督にとっては2年前の夏に続く沖縄勢との対戦。その時は八重山商工のエース大嶺(ロッテ)をとらえて終始試合をリードしながらも、土壇場で追いつかれて逆転負けを喫していた。この戦いはある意味では2年前の雪辱戦でもあった。

     

    しかし、立ち上がりスライダーのコントロールが定まらないエース斎藤に対して浦添商打線が襲い掛かる。この日打順を組み替えて1番に座る漢那が内野安打で出塁すると、犠打で2塁に進む。3番伊波のヒットと4番山城の四球で満塁となると、5番宮平はサードへの強襲安打で浦添商が先制点をもぎ取る。

     

    ストレートでしかストライクの取れない千葉経済大付バッテリーに対し、ここから浦添商の機動力と打棒が牙をむき始める。6番仲間の打席で斎藤が暴投すると、3塁にランナーに続き、2塁ランナーの山城も躊躇なくホームへ向かう。一瞬のスキをついて2点を奪うと、さらに6番仲間は間髪入れずにストレートをライト線にはじき返す。さらに8番新田はスクイズを見事成功させ、縦横無尽の攻めで一気に5点を奪った。

     

    反撃したい千葉経済大付は1回裏、2アウトから3番内藤伊波のストレートを完ぺきにとらえて右中間を破る3塁打を放つ。1年生時から試合に出ていた主将がチャンスメークすると、ここで4番齋藤が大仕事をやってのける。真ん中寄りに入ったカットボールを強振した打球は左中間スタンドに飛び込む2ランホームランとなり、一気に2点を返す。斎藤を4番に据えた効果が出た打席となった。

     

    これで立ち直るかと思われた斎藤だったが、2回になってもスライダーの制球が定まらない。1回に続いてヒットで出た漢那を2塁において、伊波がストレートを狙い打ち、1点を追加すると、さらにバッテリーのスキをついて三盗を敢行。これが悪送球を誘い、この回2点を挙げる。斎藤はせっかく取り返した2点をすぐに吐き出してしまった。

     

    猛攻の止まらない浦添商は3回にも先頭の仲間がセンターへのヒットで一気に2塁を陥れると、7番当山加、9番新田が続けざまにタイムリーを放つ。9点目を失ったところで斎藤は降板。浦添商のスピード感あふれ、なおかつスキを逃さない走塁、そしてストレートを確実に仕留める鋭い打撃の前になすすべもなく失点してしまった。この回、代わった吉野からも1点を追加し、序盤で8点の差がついてしまう。

     

    完全に浦添商ペースと思われた試合だったが、千葉経済大付もあきらめない。5回に1番重谷のタイムリーで1点を返すと、中盤以降は徐々に伊波のボールに対応し始める。初戦は手元で動くボール(カットボールなど)でタイミングを外して勝った伊波だったが、千葉経済大付打線の鋭いスイングが徐々にそれを許さなくなってきた。

     

    そして、迎えた7回裏、ついに千葉経済大付打線が伊波を完全に攻略する。先頭の7番八坂が失策で出ると、8番久保田はライトへの2塁打でつなぐ。ここで9番樋口は内寄りのボールを強振すると打球はレフトスタンドへ飛び込む3ランとなり、一気に点差は4点に縮まる。動揺する浦添商バッテリーに対し、1番重谷、3番内藤、6番が次々と長打を放ち、あっという間に1点差に詰め寄る。選抜4強の意地とプライドが詰まった猛攻であった。

     

    追い上げた千葉経済大付は8回からマウンドに再び斎藤を戻す。しかし、これを待っていたと言わんばかりに再び浦添商打線が斎藤を攻める。2番上地のヒットとエラーでランナーを2人ためると、5番宮平は3塁線を破る2塁打を放つ。外野が処理にもたつく間に1塁ランナーの山城も一気にホームインし、貴重な2点を追加。ここでも浦添商の機動力が活きた。

     

    8回以降、点差を詰められた伊波は本来のストレートとスライダーで押しまくる力の投球で千葉打線に立ち向かう。一球ごとに雄たけびを上げるかのような気迫の投球で8,9回は一人のランナーも許さないパーフェクトピッチングを展開。序盤、終盤と激しい攻防の続いた試合を制し、浦添商が3回戦へとコマを進めたのだった。

    まとめ

    浦添商にとっては自慢の機動力を活かした会心の試合運びだっただろう。一つ先の塁を狙えとはよく言われるが、彼らは二つ三つ先の塁まで狙わんかのごとく、凄まじい圧力を相手守備陣にかけ続けた。また、いくらストレートが多いとわかっていたとはいえ選抜であれだけ相手打者を苦しめた千葉経済大付・斎藤の重い速球をことごとく鋭い打球ではじき返した打撃も見事であった。

    また、動くボールが通じないとみるや力勝負に切り替えたバッテリーの判断も素晴らしく、こっちが伊波の素の姿かとある意味納得させられるような投球だった。この後、準決勝で常葉菊川の猛打に沈んだが、自分たちの持ち味を存分に発揮した夏となった。

     

    一方、敗れた千葉経済大付にとっては何とも悔やまれる試合だった。大黒柱のエース斎藤の成長によって手にした夏舞台だったが、その斎藤が打ち込まれたときにチーム全体に動揺が走ってしまった感は否めなかった。2年前に続いて沖縄勢の勢いに押されてしまい、終盤の打線の反撃が見事だっただけに序盤の失点を1点でも食い止められていればと悔いが残る結果になってしまった。

    4強入りした浦添商と互角に渡り合っただけに、千葉経済大付が優勝する力を秘めていたことは確かだっただろう。

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