• 激戦ブロック 2011年選抜

    大会開催直前の3月11日に未曽有の大災害が東北を襲った2011年。頑張ろう日本の合言葉を掲げて始まった選抜大会は、神宮大会優勝の日大三を中心に回ると予想された。そんな中で打倒日大三の有力校がこぞって集結したのが、最終組のDブロック。初戦から強豪校同士がつぶし合う激戦区となった。

     

    一昨年の神宮で優勝、昨年の選抜ベスト4を経験したメンバーを多く残す大垣日大阪口監督も自信を持つ戦力を有する。2年がかりで強化したチームが集大成を迎えている。エースの葛西は左サイドハンドから内外角に投げ分ける投球で打者を打ち取る。抜群のコントロールとボールの切れで相手の打者に自分の打撃をさせないのが持ち味だ。球威・球速の不足と連投への不安はあるが、昨年からの経験でカバーする。打線は左打者を多くそろえ、スピード感あふれる攻撃を披露。核弾頭のは先頭打者アーチを放つなど、パワーも兼ね備えており、1回から攻撃のリズムを作る。後藤高田葛西時本と昨年からの経験者の並ぶ上位は迫力がある。これに昨秋から急成長した3番星野が加わり厚みのある攻撃をする。また、名将・阪口監督の相手の裏をかく戦法も健在。豊富な練習量で小技も繰り出す。守備はセンターラインに経験者を並べ、すきがない。心配といえば葛西に続く投手の不在だが、ここを打線の援護と固い守備で支えきれれば2007年に目の前で逃した紫紺の大旗を手にすることも可能だろう。

    その大垣日大を神宮で破ったのが九州王者・鹿児島実。杉内2世の異名をとる左腕・野田(西武)は身長167センチと小柄だが、最速143キロのストレートにチェンジアップ、カーブを交えた投球内容は本格派そのもの。昨秋は10試合連続で公式戦完投するなどスタミナも抜群だ。2番手以降に不安を残すため、選抜はエースに託すことになりそうだ。打線は1番ショートの平山が俊足を生かして出塁。クリーンアップには三者三様の好打者が並ぶ。3番には好打の主将・豊平、4番にはシャープな振りで左右に打ち分ける浜田、そして5番にはパワーヒッターの揚村が座る。中軸の破壊力では出場校中でも随一の存在。下位にいる野田黒木のバッテリーも勝負強い打撃を見せる。随所に伝統の送りバントも交えて攻撃にリズムを生み出す。鹿実らしく守備も鍛えられており、強豪ひしめく九州を制した実力がうかがえる。神宮の決勝で日大三に力負けした悔しさをばねに冬場の練習でさらなる成長が見込める。狙うはもちろん前回出場以来15年ぶり2度目の全国制覇だ。

    関東大会優勝の浦和学院は2年生エース佐藤の好投が光った。球速は130キロ台とそこまでスピードはないが、スローカーブを駆使した緩急自在の投球は下級生とは思えない老獪さを見せる。その他ツーシームやカットボール、スライダーと球種は多彩。相手に的を絞らせない投球ができる。神宮準決勝では日大三・菅沼にスローカーブを狙い打ちされ、3ランを被弾。緩急の「急」をもう少し上げたいところか。打線でも1番を打つ佐藤が左打席からシュアな打撃を見せる。甲子園でも1番投手佐藤が見られそうだ。後ろを打つ中軸は主将の小林沼田日高はともに昨秋3ホームランをマーク。6番石橋も5割を超す打率を残す。県2回戦から神宮の準決勝まで9試合連続の2桁安打を放った強力打線だ。ここ最近関東大会では何度も優勝するもなかなか全国に行けなかったが、ついに全国の切符を手に入れた。今年から取り入れた日本代表に似たユニフォームで全国の頂点を狙う。

    昨夏準優勝の東海大相模は強力打線を擁して昨夏逃した優勝を虎視眈々と狙っている。1~3番に渡辺(中日)、臼田田中を並べた打線は機動力豊か。1番渡辺はファーストストライクを逃さない積極打法でストレートにはめっぽう強い。そして、塁に出すと2番強打の臼田とのエンドランで相手をかき回し、3番田中が返してあっという間に相模のリズムに引き込んでいく。叔父が柳葉敏郎という4番捕手の佐藤はチーム2位の6長打を放ち、長打力を持つ。5番の菅野(ロッテ)も1発の力を秘め、打力に関しては大会でも屈指の存在だ。問題は投手力。右のエース近藤は130キロ台後半の速球にカーブ、スライダー、チェンジアップを交ぜて緩急を駆使した投球を見せるが、1試合平均の四死球が3.7個と制球力に課題を残す。そして、近藤以外の投手陣は全くめどが立っておらず、笠間長田らで競争を促している状況。打線は強力だけに投手陣次第で優勝を狙える。

    関西は2年連続の出場。前年からの経験者を擁し、昨秋の中国大会は無失点で優勝。中国地区では抜群の安定感を誇った。その戦いの中心となったのは前年から経験豊富な、堅田水原の左右の2枚看板だ。左腕の堅田は左スリークオーターから140キロを超えるストレートとカーブ、チェンジアップに切れ味抜群のスライダーを交える。ボールの切れで抑え込むタイプで見た目以上に差し込まれる。ピンチの場面でギアチェンジするクレバーさもあり、今大会注目の左腕だ。課題の立ち上がりを乗り切りたい。右の水原は対照的にボールの力で抑え込む本格派。普段はショートを守るが、ピンチで登板して140キロを超す真っすぐで相手を押し切る投球を見せる。この2枚看板を擁する投手力は大会でも屈指だ。打線は4番の渡辺雄(横浜)に注目。昨年選抜では興南・島袋(ソフトバンク)から3安打を放った。1,2番の小倉妹島の機動力も光る。その他、福井堅田水原と経験者が並ぶ打線は確かな得点力を持つ。失点は計算できるだけに先制して優位に試合を運びたい。ディフェンス力で岡山東商以来に岡山勢優勝を目指す。

    東北は主将・上村がエースで4番とチームの軸を担う。東北大会決勝では強打の光星学院を3失点で抑えて競り勝つなど、丁寧な投球で活路を見出す。また、打線もしぶとく得点を重ね、神宮大会初戦では金沢の150キロ右腕・釜田(楽天)から小刻みに得点を奪ったように勝負強さが光る。投打とも力のあるチームだが、気がかりは被災による練習不足。満足なコンディションで臨むことは難しそうだが、幸いにも登場するのは1回戦最後の試合。この日程をうまく活かして調整していきたい。

    報徳学園は夏春連続の甲子園出場。1年生時に甲子園を経験したエース田村(西武)の好投で近畿大会をしぶとく勝ち抜いた。田村は伸びのある速球を軸にスライダーを交えて三振を奪う。スタミナも抜群で、選抜を勝ち抜くうえで田村の右腕がカギを握っているのは間違いない。打線も昨年から4番の越井勇を軸にしぶとさが持ち味。近畿大会準々決勝では京都成章を相手に終盤に4点差をひっくり返し、「逆転の報徳」の健在ぶりをアピールした。チーム内競争も激しく、甲子園のおひざ元の名門校が3度目の選抜制覇を狙う。

    城南はエースで4番の竹内を旗頭にジャイアントキリングを狙う。竹内は長身から繰り出す角度のあるボールが持ち味。大型投手にありがちなもろさはなく、ストライクゾーンできっちり勝負できる。打っても一発を放つ力を秘めており、彼の活躍次第でチームが乗っていきそうだ。初戦で報徳学園と対戦するが、2007年の選抜でも高知の室戸がエース森沢の好投で報徳を倒したように、四国の公立校の地力は侮れない。アップセットの可能性は十分ありそうだ。