• 花巻東vs彦根東 2018年選抜

    大記録に迫った大会屈指の好左腕

    タレント軍団の大阪桐蔭をどこが倒すかが注目された2018年の選抜大会。その大阪桐蔭の準々決勝の対戦相手を決める試合で歴史に残る劇的な試合が展開された。

    彦根東は夏春連続の甲子園出場。前年夏の甲子園の開幕戦でも好投したエース左腕・増居は回転数の多い速球とクレバーな配球で攻略が非常に難しい投手だ。秋の近畿大会では同じ滋賀の近江に準々決勝で3-4と逆転負けを喫し、出場は不利かと思われた中で選出。投手力が評価される選抜大会において、増居の存在は大きかっただろう。

    打線も練習環境に恵まれない中、バッティングセンターでの練習で磨いた集中力を武器にエースを援護。2回戦の慶應義塾戦では捕手・高内の逆転3ランが飛び出し、4-3で夏に続いて初戦突破を果たした。

    一方、花巻東は前年夏に2005年以来続いていた夏の隔年出場が途絶え、県内のライバル盛岡大付に連続出場を許した。負けられない思いの強いこの年の代は、2年生の長身右腕・西舘と技巧派左腕・田中大の2人を軸に東北大会で準優勝して出場権を獲得。スター選手はいなくとも総合力で勝ち上がるチームであった。

    初戦は強力打線の東邦と対戦。前年秋に東海大会決勝まで練習試合も含めて負けなしというV候補の一角を相手にエース左腕・田中大が好投。打たせて取る投球で当時2年生の石川(中日)、熊田という強打者たちを緩急で翻弄し、打線も相手のミスに乗じて着実に加点。5-3というスコア以上に圧倒した内容で初戦突破を果たした。

    延長10回、ついに決壊が崩れた

    2018年選抜3回戦

    彦根東

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
    0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
    0 0 0 0 0 0 0 0 0

    花巻東

     

    彦根東  増居

    花巻東  新田→伊藤

    2013年夏にも両校は対戦しており、その時は花巻東が彦根東の技巧派左腕・平井を機動力で揺さぶって9-5と快勝している。総合力の花巻東vs好左腕を擁する彦根東という観点では、今回も互いに同じようなチームであり、焦点は花巻東の増居を花巻東が機動力も絡めてどう攻略するかに絞られていた。

    試合が始まると、増居は前評判に違わぬ好投を披露する。初戦の慶応戦ではややボールのばらつきがあったが、この日はコントロールもまとまり、キレのある速球主体の投球で花巻東打線を寄せ付けない。

    一方、花巻東は先発に意表をついて右腕・新田を起用。しかし、先頭打者に死球を与えたところで佐々木監督はすぐに右腕・伊藤にスイッチする。だが、この継投がズバリ的中し、伊東はスライダーを武器に要所を締める投球で彦根東打線に得点を与えない。彦根東としてはこの日の増居の調子なら1点あれば勝てる展開だっただけにはがゆい攻撃が続く。

    両チーム決め手を欠いたまま試合は最終回に進み、9回表彦根東は先頭の1番宇野が内野安打で出塁する。犠打でランナーを2塁に進めるが、初戦でホームランを放った4番高内は敬遠され、後続が打ち取られてチャンスをものにできない。

    花巻東はこの大会は期待の2年生西舘が本調子でなかったが、伊藤が見事な投球で彦根東打線を封じ込めた。菊池や大谷のようなスーパーエースの印象が強い花巻東だが、4人の継投で4強まで勝ち上がった2013年のように複数のタイプの違う好投手を育てられるのも、このチームの強みだ。

    そして、8回まで無安打投球を続ける増居もついに9回のマウンドへ上がる。さすがに疲れが見える中で2つの四球を与えるが、最後は3番阿部を三振に切って取り、9回無安打無得点を達成。しかし、非常にも味方の援護がないため、試合は継続していく。

    10回表の攻撃を3人で終わらせた花巻東・伊藤に対して、増居は徐々に重圧を深めたか。10回裏ついにその時は訪れた。先頭の4番紺野が増居の133球目となるストレートをライトにはじき返して、大記録が途絶える。増居にとっては悔しい初ヒットであった。

    そこからは雪崩のように花巻東の攻撃が続いた。代打・八幡に対してはストライクがなかなか入らず四球を与えると、6番上戸鎖はバスターで三遊間を破り、無死満塁に。ようやく花巻東らしい野球が見られると、最後は代打・藤森が犠飛を放って3塁走者が生還。花巻東が無安打無得点負けの窮地を脱し、見事サヨナラで準々決勝進出を決めた。

    まとめ

    花巻東はその後、準々決勝で優勝した大阪桐蔭に大敗したが、強打の東邦、そして好投手を擁したこの日の彦根東を下しての2勝は立派であった。劣勢でも全員野球でしのいで、持ち味のかき回す野球で勝ったこの試合は、甲子園経験豊富な佐々木監督にとっても特別な勝利になったのではないだろうか。ライバルの盛岡大付とは全く持ち味の違う花巻東。対照的な両校がこれからも岩手の野球を引っ張り上げることになりそうだ。

    一方、敗れた彦根東にとってはエースの大記録を打線が後押しできない悔しい敗戦となってしまった。伊藤を相手にランナーが出なかったわけではないが、要所でコーナーに決まるスライダーに打ち取られ、チャンスを逸した。ただ敗れはしたものの、環境が十分でない状況で激戦の近畿を勝ち抜いての2季連続出場は大変立派であり、公立の雄として存在感を見せた大会となった。

    【好投手列伝】滋賀県篇記憶に残る平成の名投手 2/2 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

    花巻東「10回初ヒットからサヨナラ勝ち」センバツ高校野球 花巻東対彦根東 20180331 – YouTube