完封勝利数 都道府県別ランキング(2010年~2019年)

コラム

第1位 埼玉県 11勝

2010年選抜1回戦 花咲徳栄 4-0 嘉手納 投手:五明

2012年選抜2回戦 浦和学院 2-0 三重 投手:佐藤

2012年夏1回戦 浦和学院 6-0 高崎商 投手:佐藤

2013年選抜2回戦 浦和学院 4-0 土佐 投手:小島

2013年選抜準々決勝 浦和学院10-0北照 投手:小島→山口

2015年選抜1回戦 浦和学院 2-0 龍谷大平安 投手:江口

2015年選抜準々決勝 浦和学院 5-0 県岐阜商 投手:江口

2015年夏3回戦 花咲徳栄 1-0 鶴岡東 投手:鎌倉→高橋昴

2017年夏1回戦 花咲徳栄 9-0 開星 投手:綱脇→清水

2018年夏2回戦 浦和学院 9-0 仙台育英 投手:渡辺

2018年夏3回戦 浦和学院 6-0 二松学舎大付 投手:渡辺

 

前半期は浦和学院、後半期は花咲徳栄が甲子園を席巻。それぞれ全国制覇を達成し、一躍全国屈指の強豪への階段を駆け上がった。浦和学院は21世紀に入ってから初戦敗退が続いた苦しい時期があったが、2012年にエース佐藤で春夏2勝ずつを上げて復活。翌2013年には2年生エース小島(ロッテ)の活躍で悲願の全国制覇を成し遂げた。

一方、花咲徳栄は2015年から2019年まで5年連続で夏の代表切符を獲得。剛腕・高橋昴(広島)の快投や綱脇・清水(中日)の2枚看板を擁しての全国制覇は記憶に新しい。岩井監督の思い切った調整法も功を奏しており、春以降敢えてノースローの時期を設けることで投手の調子を取り戻す方法で結果を残した。これからも埼玉の高校野球を引っ張る存在になりそうだ。

2013年春の選抜甲子園振り返りまとめ – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2017年選手権1回戦 花咲徳栄vs開星(3日目第2試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

第2位 大阪府 10勝

2011年選抜1回戦 履正社 4-0 総合技術 投手:渡辺

2012年夏準決勝 大阪桐蔭 4-0 明徳義塾 投手:藤浪

2012年夏決勝 大阪桐蔭 3-0 光星学院 投手:藤浪

2014年選抜1回戦 履正社 11-0 小山台 投手:溝田

2014年夏3回戦 大阪桐蔭  10-0 八頭 投手:田中

2015年選抜1回戦 大阪桐蔭 8-0 東海大菅生 投手:田中

2016年選抜1回戦 大阪桐蔭 9-0 土佐 投手:高山→徳山

2017年選抜1回戦 大阪桐蔭 11-0 宇部鴻城 投手:高山→香川→柿木

2017年選抜2回戦 履正社 1-0 市呉 投手:竹田

2018年選抜準々決勝 大阪桐蔭 19-0 花巻東 投手:柿木→横川→森本

 

やはり大阪桐蔭・履正社の2強による勝利がずらりと並ぶ。大阪桐蔭は2012年に春夏連覇を果たしたエース藤浪(阪神)をはじめとしてストレートに力のある投手がすらりと並ぶ。練習からゲーム形式で自軍の強打者を相手に投げていることもあり、実戦で力を発揮できる投手が多い。自チームのライバル同士の競争も苛烈であり、藤浪と澤田(オリックス)のように他チームなら圧倒的なエース級の投手が複数いるケースも多かった。

これに対して履正社は自主性を重んじるチーム方針に現れるように、クレバーな投手が多い印象。2011年の選抜初戦で完封勝利を挙げた左腕・渡辺は最たる例であり、決して球威・急速に恵まれた投手ではなかったが、横の角度を活かした投球で総合技術打線を翻弄した。2014年の溝田もそうだが、体格に恵まれなくとも工夫した配球とコントロールで打ち取る投手が目立った。

持ち味の違う強豪がレベルを引き上げる大阪はこれからも強豪として君臨しそうだ。

2017年選抜1回戦 大阪桐蔭vs宇部鴻城(6日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2017年選抜2回戦 履正社vs市呉(6日目第2試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

第3位 東京都 8勝

2010年選抜準々決勝 日大三 10-0 敦賀気比 投手:山崎

2010年夏1回戦 早稲田実 2-0 倉敷商 投手:鈴木

2011年夏準々決勝 日大三 5-0 習志野 投手:吉永

2011年夏決勝 日大三 11-0 光星学院 投手:吉永

2012年選抜1回戦 関東一 1-0 別府青山 投手:中村

2015年夏1回戦 早稲田実 6-0 今治西 投手:松本→服部

2015年夏3回戦 関東一 1-0 中京大中京 投手:阿部→金子

2018年選抜1回戦 日大三 5-0 由利工 投手:中村→井上

 

東京都が第3位にランクイン。2010年から2011年は日大三が一時代を築き、山崎(オリックス)・吉永の絶対的エースが計3完封を上げた。また、2012年の選抜でベスト4に進出した関東一の2年生エース中村(広島)のストレートは素晴らしい回転数のボールであった。

そして、特筆すべきは2015年の選手権でベスト4入りを果たした早稲田実と関東一。同年の春季東京大会で大成した両校のスコアは18-11であり、ともに投手力に大きな課題を抱えていたが、複数投手制で徐々に戦力を整備していった。加藤(早稲田実)、鈴木(関東一)という捕手の好リードもあって、それぞれ今治西・中京大中京と常連校を相手に完封勝利を達成。夏大会開始前はこの両校がベスト4まで勝ち上がるとは思えなかったが、素晴らしい快進撃を見せた。

大会No.1投手(2012年選抜) 中村祐太(関東一) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

関東一vs中京大中京 2015年夏 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2015年夏の甲子園振り返りまとめ – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

第4位 北海道 7勝

2010年選抜1回戦 北照 2-0 秋田商 投手:又野

2011年選抜2回戦    北海 1-0 天理 投手:玉熊

2013年選抜1回戦 遠軽 3-0 いわき海星 投手:前田

2013年選抜2回戦 北照 7-0 菰野 投手:大串

2014年選抜1回戦 駒大苫小牧 3-0 創成館 投手:伊藤

2015年選抜1回戦 東海大四 3-0 豊橋工 投手:大沢

2015年選抜準々決勝 東海大四 1-0 健大高崎 投手:権→大沢

 

2000年台中盤に駒大苫小牧が一世を風靡した後は、やや低迷期を迎えていた北海道勢。しかし、その快進撃が北海道のその他のチームに持たらした芽吹きが、2010年代に入って確実に芽吹き始めた。

名将・河上監督に率いられた北照は2010年には長身エース又野、2013年には技巧派左腕・大串を擁してそれぞれ選抜8強を達成し、完封勝利も挙げた。また、北海道屈指の伝統校・北海も、2011年に2年生エース玉熊が近畿王者・天理を完封し、8強入りを果たした。完封勝利こそなかったが、2016年夏にはエース大西も擁して準優勝を果たしている。

2015年に細身の右腕・大沢が率いた東海大四も選抜で準優勝を達成しており、その時の指揮官・大脇監督や北海の平川監督は同世代の駒大苫小牧・香田監督に大きな影響を受けたとのこと。北海道勢の限界を次々と突破した駒大苫小牧の戦う姿が10年の時を経て、確実に道内のレベルを引き上げていた。

また、北海の玉熊や大西、北照の大串、東海大四の大沢と決して体格や球威に恵まれていたとは言えない投手達が、コントロールよく丁寧に投げ分ける投球で結果を残したのも大きな意味がある。駒大苫小牧に次ぐ優勝校が現れるのも、決して遠い日の出来事ではないだろう。

大会No.1投手(2015年選抜) 大沢志意也(東海大四) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

第4位 青森県 7勝

2011年選抜1回戦 光星学院 10-0 水城 投手:秋田

2011年夏準決勝 光星学院 5-0 作新学院 投手:秋田

2012年選抜1回戦 光星学院 3-0 北照 投手:城間

2012年夏2回戦 光星学院 4-0 遊学館 投手:城間

2012年夏準々決勝 光星学院 3-0 桐光学園 投手:金沢

2013年夏1回戦 弘前学院聖愛 6-0 玉野光南 投手:小野

2019年夏1回戦 八戸学院光星 9-0 誉 投手:後藤→山田

 

2010年代に入って快進撃を見せたのが八戸学院光星(元光星学院)。強力打線が看板のチームだが、投手力も高く、実戦派の好投手が多かった。2012年に春夏連続準優勝を達成した時は、城間・金沢の2枚看板がそれぞれ完封勝利を達成。金沢は桐光学園の松井裕樹(楽天)を向こうに回して3安打完封勝利を果たした。「キレ」で抑える城間、「球威」が持ち味の金沢の2本場下は強力であった。

また、2013年夏は弘前学院聖愛が初出場。青森出身選手だけで果たした甲子園は、県内のレベルが上がったことを如実に表していた。本大会でもサイド右腕・小野が玉野光南打線をわずか4安打で完封。甲子園常連校を相手に堂々の戦いを見せ、この大会でベスト16進出を決めた。

2012年夏の甲子園振り返りまとめ – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

第6位 群馬県 6勝

2010年夏1回戦 前橋商 3-0 宇和島東 投手:野口

2013年夏1回戦 前橋育英 1-0 岩国商 投手:高橋

2013年夏2回戦 前橋育英 1-0 樟南 投手:高橋

2014年選抜2回戦 桐生第一 4-0 広島新庄 投手:山田

2014年夏2回戦 健大高崎 10-0 利府 投手:川井→高橋→石毛→松野

2018年夏2回戦 前橋育英 2-0 近大付 投手:恩田

 

2010年代に入って健大高崎と前橋育英の2強に伝統校・桐生第一を加えた3校のハイレベルな争いが続く群馬県。

2013年に初出場初優勝を果たした前橋育英・高橋光(西武)の快投は鮮烈だった。1回戦の岩国商業戦では自慢の真っすぐで押して9者連続三振を奪い、完封勝利を挙げると、2回戦では一転して打たせて取る投球で樟南打線を相手に2試合連続完封を達成。試合ごとにその日の状況を見極めて投球スタイルを変える柔軟性を見せた。

一方、桐生第一は2014年に2年生エース山田が広島新庄との2回戦で、引き分け再試合にも関わらず完封勝利を達成。長身から繰り出す角度のあるボールは準々決勝でも優勝した龍谷大平安を苦しめた。また、機動破壊が持ち味の健大高崎や小さな好投手・野口を擁した前橋商も完封勝利を達成。この10年間での群馬勢の躍進は目覚ましいものであった。

2013年夏の甲子園振り返りまとめ – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

第6位 石川県 6勝

2010年夏1回戦 遊学館 11-0 一関学院 投手:土倉

2011年夏1回戦 金沢 4-0 伊勢工 投手:釜田

2018年選抜2回戦 日本航空石川 10-0 膳所 投手:重吉→杉本→大橋

2019年選抜1回戦 星稜 3-0 履正社 投手:奥川

2019年夏1回戦 星稜 1-0 旭川大 投手:奥川

2019年夏準決勝 星稜 9-0 中京学院大中京 投手:奥川→寺沢

 

2010年代後半に入って伝統校・星稜が林監督の元、復活を遂げた。エース奥川は2019年の春夏の甲子園で計3完封を達成。MAX154キロの速球と高速スライダーはあの松坂大輔(西武)にも引けを取らないボールであり、星稜史上最高の投手といっても全く過言ではないだろう。決勝での逆転3ラン被弾が悔やまれたが、まさに高校球界最高峰の投手であった。

また、名将・浅井監督の最後の夏となった2011年の金沢は剛腕・釜田(楽天)がこれまた150キロ台の速球を武器に完封勝利をマーク。星稜と並ぶ石川の伝統校は、浅井監督の標榜する「丁寧な野球」で2回戦では聖光学院・斉内との投手戦も制し、同校史上初めて夏の1大会2勝を記録した。

2019年選手権1回戦 星稜vs旭川大高(2日目第3試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2019年選手権準決勝 星稜vs中京学院大中京(13日目第2試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

第6位 福井県 6勝

2010年夏1回戦 福井商 6-0 いなべ総合 投手:長谷川

2013年選抜3回戦 敦賀気比 3-0 盛岡大付 投手:岸本

2014年夏1回戦 敦賀気比 16-0 坂出商 投手:平沼

2015年選抜1回戦 敦賀気比 3-0 奈良大付 投手:平沼

2015年選抜準決勝 敦賀気比 11-0 大阪桐蔭 投手:平沼

2016年選抜1回戦 敦賀気比 1-0 青森山田 投手:山崎

 

2013年の選抜4強以降の敦賀気比の躍進が素晴らしい。速球派サイド右腕・岸本(中日)、抜群のコントロールとキレを誇る優勝投手・平沼(西武)、長身からの剛速球を誇った山崎颯(オリックス)といずれもプロ入りを果たした好投手を擁し、計5完封を果たした。強力打線が光る敦賀気比の屋台骨を支えたのが彼らの投球だったのは間違いないだろう。

また、2013年夏を最後に出場のない伝統校・福井商も2010年にエース長谷川が完封勝利を記録。2年前の夏に1アウトも取れずに降板した悔しさをばねに、速球主体の投球で相手打線を押し切った。近年は苦戦が続いているが、復活を待つオールドファンの期待に応える戦いぶりを見せられるか。

2015年春の選抜甲子園振り返りまとめ – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

第10位 神奈川県 5勝

2010年夏3回戦 東海大相模 3-0 土岐商 投手:一二三

2011年選抜準々決勝 東海大相模 2-0 鹿児島実 投手:野田

2012年選抜1回戦 横浜 4-0 高知 投手:柳

2012年夏1回戦 桐光学園 7-0 今治西 投手:松井

2018年夏1回戦 横浜 7-0愛産大三河 投手:板川→及川

 

2010年代に入ってから東海大相模が力を増し、横浜と代表の座を二分するようになった。2010年夏はエース一二三(阪神)が8回途中までノーヒットピッチングを展開し、1安打完封。春先からサイドスローに変えてのこの投球内容は、末恐ろしいポテンシャルの高さを示していた。翌年の2011年選抜でも打線のチームと言われながら、準々決勝で右腕・近藤が鹿児島実業を完封。この大会唯一打線が抑え込まれた試合でエースが会心の投球を見せた。

また、忘れてはならないのが2012年の桐光学園・松井裕樹(楽天)の投球だろう。桐光学園にとって長い間超えられない壁だった横浜高校を初めて直接対決で下しての出場となり、スタメンの過半数を下級生が占める若いチームでもあった。その初戦となった今治西戦は松井が自らホームランを放ち、22三振を奪って完封勝ち。この日の松井の調子なら、この大会で優勝した大坂桐蔭でも打てたかどうか…と思ってしまう。

大会No.1投手(2012年夏) 松井裕樹(桐光学園) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

第10位 奈良県 5勝

2011年選抜1回戦 天理 8-0 大館鳳鳴 投手:中谷→西口

2016年選抜1回戦 智辯学園 4-0 福井工大福井 投手:村上

2016年選抜準々決勝 智辯学園 6-0 滋賀学園 投手:村上

2017年選抜1回戦 智辯学園 9-0 熊本工 投手:松本

2017年夏2回戦 天理 6-0大垣日大 投手:坂根

 

天理・智辯学園の2強が引っ張る奈良県も10位にランクインした。智辯学園は2016年にエース村上が2完封を上げ、決勝では自らサヨナラ打を放って初優勝を達成。村上は肩の開きの少ない投球フォームから右打者のインサイドを的確に突くコントロールが光った。

対する天理は、2017年に中村良二監督(近鉄)が就任して初めての甲子園で4強入り。初戦は2年生左腕・坂根が9安打を浴びながらも大垣日大打線にホームを踏ませず、見事完封発進を果たした。大型ながらもろさの目立つ時期もあった天理だが、2017年は個々に目立つ選手はいなくとも一体感のある好チームであった。

2016年春の選抜甲子園振り返りまとめ – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2017年選手権2回戦 天理vs大垣日大(6日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

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