常総学院vs中京 1987年夏

1987年

伝統校に挑んだ初出場校

1987年の選手権大会は数多くの好投手が登場した大会であった。選抜優勝のPL学園の野村(横浜)、橋本(巨人)、岩崎の3本柱をはじめとして、尽誠学園・伊良部(ロッテ)、沖縄水産・上原(中日)、東亜学園・川島(広島)、帝京・芝草(日本ハム)、函館有斗・盛田(大洋)など、いずれ劣らぬ好素質の投手が大会を彩った。

そんな中にあって大会も準々決勝まで進み、それぞれ好投手を擁する初出場校と伝統校がベスト4の椅子をかけて激突した。

常総学院は創部わずか4年での甲子園出場。選抜は他校の不祥事による緊急出場となり、初戦で明石に0-4と完敗したが、この経験が夏に活きた。初戦で福井商を下して初勝利を挙げると、3年前に取手二を全国制覇に導いた名将・木内監督のタクトによって常総の選手たちが暴れまわる。

2回戦では沖縄水産・上原(中日)、3回戦では尽誠学園・伊良部(ロッテ)といずれものちにプロ入りした好投手を打ち崩し、投げてはエース島田(横浜、現監督)が連続完封。白に赤字のユニフォームも当時は非常にフレッシュで、初出場ながら侮れない存在になりつつあった。

一方、中京は4年ぶりの出場だったが、出てくるとさすがにしぶとい強さを持つ。名将・西脇監督に率いられたチームは制球力に長ける2年生エース木村(巨人)に、首藤後藤(巨人)と左右の長距離砲を擁した打線と、充実の戦力で大舞台に臨んできた。

1回戦は伊香に11-1と大勝すると、2回戦では過去2度にわたって甲子園で敗れている池田と対戦。選抜で4強入りした実力校を相手に9回裏の土壇場でスクイズを決めて追いつくと、10回裏にも伝家の宝刀・スクイズを決めてサヨナラ勝ち。警戒されながらも確実に決めてくる勝負強さに蔦監督も脱帽であった。3回戦は鹿児島商工を相手に3番首藤の2本のホームランなどで4-1と快勝。堂々8強に名乗りを挙げてきた。

 

8回に一気の逆転劇

1987年夏準々決勝

中京

1 2 3 4 5 6 7 8 9
4 0 0 0 0 0 0 0 0 4
2 1 0 0 0 0 0 4 × 7

常総学院

 

中京    木村

常総学院  島田

伝統校と新鋭校の対照的な組み合わせ。試合は序盤から激しい攻防となる。

1回表、中京は2試合連続完封中のエース島田を攻め、2番高梨の内野安打で出るとすかさず盗塁。伝統校らしく揺さぶりをかけると、常総に動揺が出たか、3番首藤のエラーにボークも絡んで2,3塁となる。ここで4番後藤はカーブを引き付けてセンターにはじき返し、まず1点。ここまで調子の出てなかった4番に待望の1本が飛び出す。

さらに5番小倉がスクイズを決めて2点目を取ると、その後も7番伊藤、8番木村に連続タイムリーが飛び出して一挙4点を先制する。伝統校のそつのない攻撃の前に連戦のエースがつかまる苦しい立ち上がり。初回、なかなかストレートが走らない中での中京の速攻は見事である。島田は初回だけで実に42球を費やした。

しかし、これでめげないのが初出場校の勢いか。常総も1回裏にすぐさま反撃に出る。体格は小柄でもパンチ力のある打者が並んでおり、1番江原がヒットで出ると2番橘原には強攻策でタイムリー三塁打を放ってすぐに1点を返す。。さらに1アウト後に4番福井もライトへ2塁打を放って2点目。初回の中京の勢いをかき消すには十分な攻撃だった。

さらに、2回裏には初回にヒットを放っている1番江原が、今度は木村の速球をとらえてラッキーゾーンへのホームランとし、1点差に詰め寄る。中京・木村、常総・島田ともに立ち上がりはやや体に重さがあるのか、ストレートをとらえられる場面が目立った。

しかし、3回以降は両投手が立ち直って一転して投手戦になる。島田は緩急を活かした投球に切り替えれば、木村は抜群のコーナーワークで立ち向かっていく。1,2回を終わって何点入るのかと思われた試合はその後、スコアが動くことなく8回まで進む。

そして、その流れが一気に変わったのは8回裏だった。

常総は簡単に2アウトを取られるが、ここから福井の死球と島田のライト前ヒットでランナーをためる。打線は下位で、打席にはこの大会初打席の増田。中京としてみれば脅威には感じていなかっただろう。ところが、この増田が真ん中に入ってきたカーブをとらえると、打球はダイブしたセンターの前で弾んで、そのまま転々と転がる。2人の走者が一気に生還して常総が逆転に成功する。

さらに攻撃の続く常総は木内監督の秘蔵っ子の1年生仁志(巨人)が、ショックの浮かぶ木村から初球を右中間にはじき返す。中京外野陣がもたつく間に打った仁志自身もホームに帰り、この回一挙4点の猛攻で試合をひっくり返した。

土壇場で3点のリードをもらった常総学院・島田は9回の中京の攻撃を落ち着いて打ち取り、ゲームセット。常総学院が劇的な逆転劇で4強進出を決めた。

まとめ

常総学院はその後、準決勝では東亜学園の好投手・川島(広島)を相手に8回裏に島田のホームランで追いつき、延長で相手の悪送球からサヨナラ勝ち。決勝は春夏連覇を果たしたPL学園の総合力に屈したが、この試合も最後まで王者を苦しめた。今や茨城を代表する強豪校となった常総学院だが、そのデビューとなった大会はなんとも鮮烈な戦いぶりであった。

一方、中京は翌年の春も木村がエースとしてチームを牽引し、選抜に出場。しかし、ベスト8を目指した3回戦でエース木村が完全試合目前から逆転2ランをあび、宇部商に敗れてしまう。この敗戦のショックからか、夏は県大会でよもやの初戦敗退。そこから1997年の選抜まで一度も出場できず、名門・中京が長い冬の時代を迎えることとなった。

【名勝負】昭和62年夏準々決勝 中京 対 常総学院 – YouTube

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