明徳義塾vs滝川第二 1999年選抜

1999年

V候補に挑んだ大会屈指の右腕

1999年の1回戦でいきなり大会屈指の好投手とV候補が激突した。

明徳義塾は前年の甲子園で春8強、夏4強と躍進。PL学園、横浜にそれぞれサヨナラ負けしたが、馬淵監督にとっては全国で戦える手ごたえを感じた年となった。その時のメンバーから残った倉繁、松元、井上を上位に置き、下位にも安並、平峰ら巧打者が並んだ打線は破壊力十分。四国大会3試合で29得点をたたき出し、前年のチームに引けを取らなかった。

対照的に投手陣は1997年から2年間、寺本(ロッテ)、高橋一(ヤクルト)の2枚看板を中心に回してきたため、新戦力の台頭が望まれていた。ここで出てきたのが1年生左腕の増田。四国大会決勝で鳴門工打線を4安打完封するなど、左腕から多彩な変化球を繰り出す投球は見た目以上に打ちづらかった。昨年はあと少しで逃した優勝を目指し、新生・明徳が甲子園に乗り込んできた。

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一方の滝川第二は選抜は3年ぶりの出場。山本監督の指導には定評があり、この世代は有力選手がこぞって入学してきた。中でもエース福沢卓宏(中日)は140キロ台の速球と高速スライダーを武器にする本格派であり、近畿では比叡山・村西(横浜)、神戸弘陵・西嶋らと並んで注目の好投手であった。

また、打線も長打力のある1番熊崎を筆頭に、中村公(中日)・吉田・今村・小西と強打者がずらり。秋の近畿大会では優勝したPL学園を相手に7回まで2-2と食らいつき、準々決勝敗退ながらもその実力を高く評価された。甲子園経験者こそいないものの、大会出場校中でも上位に位置する学校の一つだっただろう。

延長10回、4番のバットで決着

1999年選抜1回戦

滝川第二

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 2
0 0 0 0 0 0 2 0 0 3

明徳義塾

 

滝川第二  福沢

明徳義塾  増田

優勝を狙う四国王者・明徳義塾としては初戦から難敵と対峙することとなった。一方、滝川第二としては、一昨年から続く兵庫県勢の連敗が6まで伸びており、連敗ストップの期待もかけられての出陣となった。

試合は序盤から滝川第二・福沢、明徳義塾・増田が好投。福沢は最速142キロを記録した真っすぐとスライダーで押せば、明徳義塾の増田はカーブを低めに制球し、滝川第二打線に付け入るスキを与えない。

ただ、試合前は「剛」の福沢に対して、「柔」の増田という印象だったが、増田の方が2回に3者連続三振を取るなど、序盤から三振ラッシュを見せる。決してスピードボールがあるわけではないが、柔らかい肘の使い方から投じる変化球を前に滝川第二打線はなかなかバットでとらえることができない。

これに対して、福沢はスピードボールこそ持っているものの、この日は丁寧に低めを突く投球が光る。上位から下位まで切れ目のない明徳打線に対して、とにかく甘くならないことを意識し、スライダーの出し入れも駆使しながら打たせて取っていく。ただ、1番の好打者・倉繁には1,2打席とヒットを許しており、タイミングが合っている感じはしていた。

また、この試合は両チームの内外野が好守で投手を盛り立て、ランナーが出ても刺殺されるなど、総合的なディフェンス力の高さを感じさせた。5回までは両チームともに、なかなか得点が入る気配が漂ってこない。。

そんななか、グラウンド整備が済んだ6回に入って試合が徐々に動き出す。滝川第二は簡単に2アウトとなるが、1番熊崎が四球で出塁すると、2番浜本、3番中村公がしぶいヒットを連ねて満塁のチャンスを迎える。新2年生の増田もバタバタしかけたところだったが、先輩捕手の井上が落ちついてリードし、同じく捕手で中軸を務める4番吉田鉄をサードゴロに打ち取る。前年の横浜戦を経験しただけあって、少々のことでは取り乱さない。

すると、この踏ん張りに、ここまで再三チャンスを逃してきた打線がついに応える。四球で出た8番増田を犠打で送れずに2アウト1塁となるが、ここで当たっている1番倉繁が福沢の力のある速球をセンターへタイムリー2塁打してまず1点。さらに2番松元もタイミングを外されながらうまいヒットを三遊間に放ち、滝二のショート石井の飛び込みも追いつかず、2点目のタイムリーとなる。

昨年、PL・上重、日南学園・春永、関大一・久保(DeNA)など数々好投手と対戦してきた倉繁と松元。この大事な場面で剛腕・福沢から力と技でヒットを連ねてみせた。

2点ビハインドで最終回を迎えた滝川第二。しかし、地元の期待を背負ったチームが意地の反撃を見せる。1アウトから4番吉田鉄、5番今村が短長打を放って2,3塁のビッグチャンスを迎えると、6番のパワーヒッター小西がレフトへはじき返してまず1点。その後、2アウトとなるが、8番瀬川が三振を喫するも振り逃げとなって土壇場で同点に追いつく。

互いに譲らずに、期待に違わぬ投手戦になり、試合は延長戦に。しかし、最後に力尽きたのは福沢の方であった。

延長10回裏、1アウトから2番松元がインサイドの変化球を芸術的なバットコントロールで2塁打に。嫌な打順に嫌な打者がいるものだ。3番井上のショートゴロで2アウト3塁となり、打席には4番西岡。甲子園経験者の3人を差し置いて4番を張る実力者に対し、滝川第二は四球も視野に勝負を挑むはずだった。

しかし、カウント0-2からアウトコースぎりぎりを狙ったスライダーがやや甘く入ってしまう。これを西岡が逃さずセンターに返して松元が3塁から生還し、明徳がサヨナラ勝ちで1回戦を突破した。

 

その後、明徳は2回戦で東海王者の海星と激突。地区大会王者同士の好勝負が期待されたが、増田が初回に海星の4番加藤に先制2ランを浴びる。打線も海星のエース岡本(西武)の前に1点しか奪えずに1-5と完敗を喫した。前年は上位まで勝ち進んだ明徳だったが、この後しばらく2回戦の壁に苦しむこととなる。悲願の全国制覇を達成したのは2002年の出来事であった。

一方、滝川第二は優勝候補を追い詰めながら最後は詰めの甘さが出てサヨナラ負けを喫した。しかし、この試合で確かな手ごたえと収穫を得たナインは夏の兵庫大会で圧倒的な勝ち上がりを見せて春夏連続出場を達成。甲子園でも朝倉(中日)・岡本(阪神)の両輪を擁した東邦、フォークの冴える牛田(横浜)がエースの徳島商と難敵を下すと、3回戦では前の試合で明徳を下していた長崎日大二もサヨナラ勝ち。見事な快進撃でベスト8へ進出した。

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