2002年春の選抜甲子園振り返りまとめ

2002年

優勝候補の大本命だった報徳学園が28年ぶりの頂点に輝いた。前評判は圧倒的だったが、決して楽な勝ち上がりではなかった。チームの合言葉の全員野球でつかんだ栄冠だった。

前評判の高かった近畿勢が初戦で次々と姿を消す中、強さを見せたのは中国・四国勢だった。個々の力もさることながらしたたかさ・勝負強さを兼ね備えたチームが多かった。特に四国勢はすべてベスト8入り。レベルの高さを示した。

報徳学園vs浦和学院 2002年夏 – 世界一の甲子園ブログ

優勝した報徳学園は初戦でいきなり昨夏優勝の日大三と対戦。1回戦屈指の好カードとなった試合で初回に2点の先制を許したが、じわじわと追い上げ、最後は主将荒畑が決勝ホームラン。エース大谷(ロッテ)は徐々に調子を挙げて2失点完投。昨夏優勝メンバーの日大三・幸内をして「今まで見た中でNo.1の投手」と言わしめた。続く広陵・浦和学院戦も相手の2年生エースの西村(巨人)、須永(元日本ハム)を打ち砕いて逆転勝利。準決勝・決勝は横綱相撲で寄り切った。打線は3試合連続の逆転勝利を成し遂げたが、その理由は下位までの層の厚さによるものだろう。大会序盤は上位陣が軒並み不振だったが、5~8番を打つ石井、前山、木下、大谷が大当たり。相手投手からすれば4番バッターが4人も5人も続くような感覚だったろう。木下が夏は1番を打ちたいというようにチーム内競争も激化していく。エース大谷は序盤に苦しい投球が続いたが、外角低めと高めの真っすぐで空振りを奪い、勝負所で変化球を低めに集めて我慢の投球を展開。大会終盤になるにつれて調子を上げ、結局5試合を一人で投げぬいた。優勝候補と呼ばれる力そのままに頂点に立ち、次なる目標は松坂擁する横浜以来の春夏連覇。その力は十分に持っている。

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徳島の100回大会史 2強に割って入った鳴門工 - 高校野球:朝日新聞 ...

準優勝の鳴門工業はあれよあれよの快進撃。甲子園に「サクラサクラ」の応援歌が鳴り響いた。丸山濱永のバッテリーは小学生からの付き合い。息の合ったプレーを見せた。丸山は得意のカーブが低めに決まってリズムを作り、味方の攻撃につなげた。濱永は4番としてもチームを引っ張った。打線は準々決勝の広島商業戦で19得点の大爆発。佐坂は1試合6安打を記録し、パワーヒッターの山北や主将の梅原を中心に打ちまくった。かと思えば、準決勝では延長102本のスクイズで関西の好投手・宮本(元日本ハム)を攻め落とすなど多彩な攻撃を見せた。2回戦の大体大浪商戦では9回に見事な中継プレーでホームでアウトにするなど守備でもバッテリーを盛り立てた。試合前にベンチから大声を出すという流行りのメンタルトレーニングを取り入れるなどプレー以外の面でも新しい風を吹かせた。個々の力はそこまで高くないチームが無印の準優勝。見事な戦いぶりだった。

大会No.1投手(2002年選抜) 宮本賢(関西) – 世界一の甲子園ブログ

関西はエース宮本(日本ハム)を中心に貫禄の戦いぶり。智弁和歌山・九州学院・尽誠学園と強豪校を次々に力でねじ伏せた。エース宮本は140キロのストレートとスライダーを配して初戦は強打の智弁和歌山を4安打に封じ込めた。足のある九州学院に対してはランナーを釘づけにして盗塁を許さず、わずか90球で完投。昨年敗れた尽誠学園も投打に圧倒した。打線も多湖・水北が出塁し、宮本・萬浪・田井が返すパターン。下位打線もしぶとく食らいつき、7点、5点、10点と宮本を援護。角田監督の「どんな相手からも4点取る」という言葉を実行した。昨秋関西をやめて大学の監督になるかもしれなかった角田監督を引き留めようと一丸になったチームは甲子園でもまとまりを見せた。それだけに準決勝で鳴門工・丸山のカーブを交えた丁寧な投球を打ち崩せなかったのが悔いが残る。夏に向けて二番手投手の育成とともに好投手を崩すすべを身に着けていきたい。

第74回選抜高校野球大会より その1 | 福井商業高校野球部OB会 ...

福井商業は投打の柱の活躍が光った。エース中谷は昨年の選抜で打ち込まれた悔しさをばねに成長。気迫の投球で4試合すべてを完投した。強気なピッチングで相手を押し込む投球はチームの攻撃に弾みをつけた。打の柱は4番赤土。2回戦の津田学園戦では満塁ホームランを含む2発、7打点。桑田・清原・松井に並ぶ記録だった。昨年からの経験者が残っているとはいえ、個々の力がそこまで高いわけではないチーム。しかし、「福井商業でやりたい」と集まった選手たちを中心に「勝って強くなる」チームを体現。準々決勝では実力では上の明徳を相手に初回に奪った8点のリードを守り切って勝利を掴み取った。最後はエース中谷が力尽きて報徳学園に敗れたが、その姿は福井の高校野球の第一人者としての誇りに満ちたものだった。

広島商 2002春 - YouTube

広島商業はエース和田の力投でベスト8入り。伝統校が久しぶりに躍動した。初戦は樟南の好投手岩崎と対戦。初回に3点先取される苦しい展開となったが、右打者がベース寄りに立って、インサイドを封じ徐々に岩崎を追い込む。アウトコース中心の真っすぐとスライダーを狙い撃ちし、守っては堅い守備で岩崎を盛り立てて、終わってみれば6-3の完勝。2戦目は21世紀枠の鵡川を相手にエース和田の好投で1-0の完封勝利。伝統校らしい緻密な野球で、相手のヒット性のあたりもポジショニング勝ちでアウトにするしたたかさ。

打線も徹底したゴロ打ちでしたたかに得点を奪った。高校野球のお手本のようなチームがスター選手不在ながらも貫禄を見せた大会だった。

がんばれ尽誠【チームの横顔】-四国新聞

尽誠学園は2年連続のベスト8入り。しかし、昨年とは中身が違う。スター選手に左右の2本柱がいて堂々優勝候補だったチームと違い、大会前に騒がれる選手は不在。しかし、初戦からとにかく先手を取って相手を攻めまくる野球で主導権を握った。持ち味である打力を活かして初戦は水戸短大付属の宮本、舟生、海老根の2年生投手3人を相手に四死球も絡めて大量12点。途中追い上げられながらも9回に突き放した。2戦目は新湊の好左腕荒瀬に8回まで0点に封じられたが、9回に4番碩野のタイムリーを皮切りに一挙4得点。エース井上が2失点完投とまたしても9回に勝負強さを見せた。準々決勝で因縁の関西戦に敗れたが、見事なベスト8であった。

朝日新聞デジタル:〈32〉2002年「四国の年」 - 香川 - 地域

明徳義塾は優勝を狙える戦力ながらベスト8に終わったが、常連校らしいそつのない野球を見せた。1戦目、2戦目ともに金光大阪の吉見(中日)、福岡工大城東の松本と大会屈指の好投手が相手だったが、打席の立ち位置を工夫して相手の決め球のスライダーを殺し、真っすぐ1本に絞って狙い撃ち。特に、2,3,4番の沖田、森岡(ヤクルト)、筧(元オリックス)の3人の左打者は猛威を振るい、吉見からスリーベース、スリーベース、ホームランと圧倒した。エース田辺も被安打は多いながらも丁寧な投球を披露。馬淵監督は常々「馬淵商店じゃなくて馬淵商事じゃないとあかんのよ」というように今年は選手個人個人が考えて動けるチームになっている。準々決勝では福井商業に初回8失点で1996年選抜の借りを返されたが、終盤2点差にまで迫る姿には1998年に明徳相手に大逆転勝利を飾った松坂擁する横浜の姿がダブって見えた。夏こそは悲願の全国制覇を目指す。

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浦和学院は関東勢唯一の8強入り。関東一の実力と呼ばれていた高校が地力を発揮した。初戦は同じくV候補の平安と対戦。中盤まで1-1の同点だったが、6回に内田、大久保のタイムリーで一気に突き放し完勝。4番の田爪は3打数3安打と大爆発。右サイドに対する左打者というアドバンテージもあったが、スイングスピードが半端ではなかった。エース須永もあカーブを軸に相手の巧打者・今浪(日本ハムーヤクルト)を封じ込めて1失点完投勝利。2戦目は延岡工業の好投手・七條(元ヤクルト)の失投を逃さず、着実に加点。須永(日本ハム)、鈴木の左腕2人で13三振を奪って7-0で完勝した。準々決勝では報徳学園相手に守備の乱れから逆転負け。力は決して劣っていなかったが、経験値の差で敗れたか。夏こそ大本命相手にリベンジしたいところ。

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2回戦で敗れたが、広陵は初戦で中京大中京を下して存在感を見せた。2年生エース西村は重いストレートを武器に5安打完封。相手の俊足トップバッター三瓶も4-0と塁に出さず、仕事をさせなかった。打っては4番中林の先制ツーランなど11安打で圧倒。得点にはすべて長打が絡み、好左腕・中根を打ち込んだ。報徳学園に敗れた試合も押し込んいたのは広陵であり、バント処理のミスから敗れたが、力は決して劣っていなかった。22年ぶりの夏へはベスト8の広島商業を破らねばならないが、出てこれる力は十分に秘めている。主将・黒川、3番黒田ら昨年からの経験者を軸に夏を目指す。

その他では21世紀枠の鵡川が初戦打棒が大爆発。12得点で地元・三木高校に完勝した。エース鬼海も2戦目は1失点完投。投打に実力を示し、北海道に新たな強豪が誕生した。

大体大浪商は開幕戦で優勝候補にも挙げられた二松学舎大付に5-4と競り勝った。2年生バッテリーの村田(巨人インディアンス)-川村の強気の投球と4番松井のホームランが出ればサイクルヒットの活躍で強豪を撃破。これで大阪勢は対東京勢春夏通算9連勝となった。

新湊の荒瀬は前評判通りの好投で強打の愛工大名電を1失点完投。注目の強打者・堂上(中日巨人)を完璧に封じ込めた。

福岡工大城東のエース松本は初戦16奪三振の力投。関東チャンピオン・宇都宮工のエース八城とのサイドハンド対決を延長11回サヨナラ勝ちで制した。

九州学院の3番千代永は初戦でバックスクリーンに特大ホームラン。湿り気味だった打線の中で存在感を示した。

津田学園のエース多田は144キロと今大会最高のスピードを披露。札幌日大を2点に封じた。

延岡工業の眼鏡の4番バッター佐藤は初戦逆転満塁ホームランを放ち、チームの全得点をたたき出す5打点の活躍。印象に残る打者だった。

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