• 2015年夏の甲子園振り返りまとめ

    2020年05月10日

    東海大相模の45年ぶりの優勝で幕を閉じた。高校野球100周年ということもあり、大会前から異様な盛り上がりを見せており、大会に入ってからもその熱気にふさわしい試合が見られた。特にベスト4に入った4チームにはそれぞれ東海大相模・小笠原、仙台育英・佐藤世那、早稲田実業・清宮、関東一・オコエと注目のスター選手がおり、盛り上がりを加速させた。

    選抜もそうだったが、東高西低の流れは変わらず、ベスト16に西日本は5校、ベスト82校しかおらず、近畿・中四国はベスト81校も残らないという寂しい結果になった。一方、関東・東北は安定して勝ち進み、ベスト8のうち6校を占めた。

    優勝した東海大相模は左の150キロ左腕・小笠原、右のスライダーの光る吉田凌と他校がうらやむ陣容で45年ぶりの甲子園制覇を果たした。大会に入ると準々決勝以外すべての試合で初回に先制点をたたき出した。1番千野、2番宮地の思い切りのいいバッティングでかき回し、3番杉崎の勝負強い打撃で先制するパターンが目立った。4番豊田は決勝で4安打。5番磯網は7打席連続ヒットを記録。下位の長倉・竹内も強打を誇り、すきのない打線であった。モットーのアグレッシブな野球は守備でも光り、関東一戦ではバントヒットを決められたと見るや、すぐに切り替えて3塁の飛び出したランナーを刺す思い切りの良さ。走好守投すべてに洗練された攻撃的野球で100周年を飾るにふさわしい優勝チームであった。

    仙台育英は春夏通じて3度目の決勝進出だったが、白河の関越えはならなかった。しかし、決勝で4点差のビハインドを跳ね返した戦いぶりは素晴らしく、東北の粘りを見せた。エースの佐藤世那は県大会では序盤KOなど不振を極めたが、重いストレートと高速フォークを武器に甲子園で復活。準決勝では清宮擁する早実の強力打線を封じた。また、打線の破壊力は東海大相模に引けを取らず、1回戦の明豊戦では新記録となる10本のツーベースを放った。それだけに、決勝で5番佐々木良介がけがで欠場し、6番紀伊が途中交代して、この打線のストロングポイントだった56番を欠いてしまったことが悔やまれる。守備では堅実な守りで佐藤世那を支え、準決勝では見事なサインプレーで2塁ランナーをけん制死させた。決勝で敗れたとはいえ、スケールの大きなチームで成し遂げた誇れる準優勝であった。

    東京勢の2校は投手力が不安視されていたが、大会に入ると見事な進撃を見せた。

    早稲田実業は1年生清宮が素晴らしい活躍。19打数9安打2ホームランと過去出場した1年生の中でも最高の成績を収めた。また、清宮が自由奔放に活躍できる雰囲気を作った主将・加藤をはじめとする上級生たちも見事であった。大会前不安視されていた投手力もエース松本が成長。球威・球速ともそこまであるわけではないが、試合を重ねるたびにコントロールが磨かれていき、東海大甲府や九州国際大付属といった強打のチームを封じ込んできた。都大会準決勝では日大三も完封しており、この夏最も成長した選手の一人といっても過言ではないだろう。打線は1番俊足の山田が出塁し、清宮・加藤・金子・富田の36番で返すパターンで得点を積み重ねた。特に清宮・加藤・富田は3人で5ホームランと破壊力抜群であった。早実が勝つときはいつも大会前の評価は高くなくても、試合になると全員が120%の力を発揮するのである。都大会前の評価を考えると、甲子園準決勝まで進出したのはさすが早稲田実業、さすが和泉監督といったところであった。

    関東一高は東東京大会を圧倒的な打撃で勝ち進み、打力のチームとして臨んだが、甲子園では1試合ごとに異なる試合展開となった。初戦の高岡商業戦ではオコエが打って走って大活躍。3塁打2本に、初回の1塁強襲で2塁を奪う走塁で序盤に8得点。しかし、そのリードを6回までで吐き出すまさかの展開。最後はキーマンである6番捕手・鈴木のタイムリーで勝ち越し、12-10で勝利した。3回戦は熱闘甲子園やアメトークでもお馴染みとなった中京大中京戦。戦前は投打に安定する中京大中京の有利が予想されたが、関東一のバッテリーが奮闘。ランナーを出しながらもオコエのスーパー背走キャッチなどで得点を免れ、最後は長嶋のサヨナラホームランで1-0で勝利してベスト8進出。準々決勝では興南との接戦となったが、9回にオコエが興南の変則サウスポー比屋根から決勝ツーラン。3試合ともそれぞれ劇的な試合展開で勝ち進んだ。最後は優勝した東海大相模に力負けしたが、印象に残るチームであった。

    花咲徳栄は東海大相模を最も苦しめたチームといってもいいだろう。浦和学院が秋春の関東大会を連覇していたようにこの年の埼玉のレベルの高さを十分に示していた。投手は右の鎌倉から左の2年生高橋昴への継投が確立しており、打線も1番久々宇、4番大滝をはじめ強打者が並んでいた。東海大相模戦で吉田凌のスライダーを攻略して序盤での降板に追い込んだ姿は見事であった。

    秋田商業は何といってもイケメン左腕成田翔の好投が光った。初戦の龍谷戦では3安打1失点完投。3回戦の健大高崎戦では相手の機動力に精神を削られながらも最後は延長10回を制して完投勝利。打線も終盤に粘りを見せて成田を援護し、見事にベスト8進出を果たした。

    九州国際大付属は若生監督が退任し、元プロの楠城監督が就任。しかし、このチームの豪快なカラーは継続し、らしい勝ちっぷりで初のベスト8進出を果たした。特に2回戦の大阪偕星との試合は見ていて爽快になる打撃戦で、大会のベストゲームの一つに挙げられるだろう。4番山本武白志は3ホームランを放ち、長打力をアピールした。

    プロ出身の楠城監督は打撃練習で「ボールの下をたたいてスピンをかけ、ホームランになるようなフライを打て」と指導。低いゴロを打たせる高校野球の指導とは真逆であるが、後々プロで活躍するスラッガーを育てるつもりならこの指導は理に適っている。年々プロ出身の指導者が増えていく中で指導法も変わっていくかもしれない。

    興南は春夏連覇以来、久しぶりの出場。聞くところによると、我喜屋監督が校長先生でなくなり、仕事が減って監督業に従事できるようになって強さが戻ったとのこと。野球に専念させてあげてよー(笑)。大会では2試合連続の逆転勝ちと粘りを発揮。2年生エース比屋根のクロスファイヤーは見事に右バッターの懐に突き刺さった。最後はホームランを打たれたが、4打席目までオコエをきりきり舞いさせた。5年ぶりの出場で復活を印象付けた。

     

    その他のチームでは100周年に帰ってきた第1回大会優勝校の鳥羽が印象に残った。スター選手はいないが、逆方向にはじき返すつながりのいい打線・コントロールのいい投手の松尾とそれを支える堅守など高校生らしい好チームであった。試合中随所に目配り・気配りの効いている場面があり、高校野球の見本といえるチームであった。

    花巻東は選抜優勝投手の平沼から18安打を放って勝利。平沼が本調子でなかったこともあるが、東北勢のレベルの高さを示した。花巻東はここ7年で4度甲子園に出場し、これで計9勝。すっかり強豪校の仲間入りを果たした感がある。

    中京大中京はエース上野を中心にさすが伝統校という勝ち上がり。上野は回転のいいストレートで内外角をつき、3回戦では幼馴染の関東一・鈴木大智と名勝負を演じた。打線も強力だっただけに、関東一戦は拙攻で序盤のチャンスをつぶしたことが惜しまれる。

    健大高崎は機動破壊を合言葉に優勝も視野に入れて望み、12回戦は貫禄の勝ち上がり。3回戦では秋田商業の成田を自慢の機動力で苦しめたが、最後は好投していたエース川井が決勝打を浴び、万事休す。捕手・柘植のバッティング不振も響いたか。

    2回戦敗退組では大阪偕星学園が自慢の打力を発揮し、大阪桐蔭を打ち破ってきた実力を示した。津商業は初出場らしからぬ落ち着いた試合運びで智弁和歌山を下した。

    投手では、東海大甲府・菊池、広島新庄・堀、上田西・草海など2年生の好投が光り、来年へ期待を抱かせた。

    1回戦では史上初の3試合連続の延長戦があるなど接戦が多く、見ごたえのある好試合が続いた素晴らしい大会であった。