• 2017年春の選抜甲子園大会前予想

    2020年09月14日

    今年はこの男を中心に高校野球界が回りそうだ。早稲田実・清宮幸太郎。1年生の夏から甲子園で2ホームランを放った怪物スラッガーもついに最終学年を迎えた。主将としてチームを引っ張り、早稲田実を王貞治以来の春の全国制覇へと導けるか。あるいはほかの強豪校が待ったをかけるのか。

    大会前の雑誌で前評判が高いのが、履正社、早稲田実、日大三、福岡大大濠、大阪桐蔭の5校。この第一集団を夏春連覇を狙う作新学院、春連覇を狙う智弁学園や常連校の仙台育英、明徳義塾、好左腕を擁する静岡に昨年春夏4強の秀岳館らが追う展開になりそう。地区ごとで見ると近畿勢、関東勢、九州勢あたりが力がありそうだが、冬場の練習を超えてどこが力をつけているだろうか

    優勝候補の筆頭に挙げられるのは昨秋の神宮大会を制覇した履正社。国体と神宮大会の秋秋連覇を達成し、今最も勢いに乗っている強豪校だ。投手陣は最速145キロを誇るエース竹田が君臨。一つ上の先輩・寺島(ヤクルト)から薫陶を受け、リリースの瞬間に力のこもる投げ方で球速以上にキレがある。神宮の決勝では早稲田実の強力打線を抑え込んでおり、安定感は今大会でも随一の投手だ。ここに長身左腕・松井、速球派・田中も控えており層も厚い。打線は今大会屈指の左右の長距離砲の安田・若林が引っ張る。安田は高校通算45ホームランの左のスラッガー。神宮決勝では清宮とアーチの競演を演じた。どっしりとしたフォームは松井秀喜氏を思い起こさせる。本番では四死球も増えるだろうが、その中で甘い球を確実にとらえたい。右のスラッガー若林は広角に打ち分けられ、秋はチームトップの打点を稼いだ。安田の後を打つため、彼の活躍次第で相手は安田と勝負せざるおえなくなる。このほか俊足巧打のトップバッターの石田、センス抜群の2年生筒井、同じく昨秋急成長を見せた2年生の大型二塁手・松原、打撃もいい竹田・片山のバッテリーと好打者がずらり。これまでバント主体の攻撃のため、大量ビハインドを背負うと苦しい展開になることも多かったが、今年のチームは打って返すこともできる。今回節目の10回目の甲子園となるなにわの強豪校が満を持して優勝を奪いに行く。

    今大会最注目の早稲田実も戦力充実。王貞治氏以来の選抜優勝を狙う。3番の清宮は1年夏以来の甲子園。すでに高校通算ホームランは79本を数え、100本の大台も見えてきている。類まれな才能に満足せず、木製バットを使っての練習などで己を高めてきた主砲はその辺の半速球ならスタンドにぶち込む力を持つ。昨秋の東京大会では日大三の左腕・櫻井に5打席連続三振を喫したが、これもきっと成長の糧にするだろう。その試合で清宮の不振をカバーした2年生4番の野村も素晴らしいバッター。右方向にも伸びる打球で日大三戦ではライトにサヨナラ2ラン。昨秋は4ホームランで18打点と抜群の勝負強さを発揮。この長距離砲2枚は履正社の安田・若林と双璧だろう。また、7番を打つ新2年の橘内も秋は5割以上の打率を残した好打者。下位まで強打者が並ぶ打線は大会でも上位の力がある。一方、アキレス腱となっているのが投手力。1年夏から登板している服部がピリッとしない中、スピンの効いた真っすぐが武器の中川が台頭したが、まだ柱は定まっていない状況。秋は5人が登板したが、この中から誰が抜けだすか。清宮は主将としても抜群のリーダーシップを発揮。「GO!GO!GO!」(飛距離5メートル、球速5キロ、体重5キロあっぷ)と具体的な目標設定でチーム力を向上させてきた。和泉監督曰く、すでに精神力は夏のチームレベルという今年の早稲田実。出場すれば、早稲田の大応援団とともに一気に勝ち進む、そんな雰囲気を持つ。周囲の早稲田実包囲網を突き破れるか、投手陣を打線がカバーしたい。

    その早稲田実を最後の最後まで苦しめた日大三は攻撃力ならば、早稲田実の上を行くかもしれないチーム。投打のポテンシャルは今大会でもトップクラスの存在だ。1番の井上は選球眼がよく、長打力もある理想のトップバッター。小技の効く2番大西がつないだ後、主将の櫻井、長身の長距離砲・金成、広角に打ち分ける比留間と強力クリーンアップが待ち受ける。4番の金成は昨秋不調に苦しむも東京大会終盤に復調。早稲田実戦は3ランを含む5打点をたたき出した。何より、金成が不調でもコールドで勝ち進んだ打線の底力がすさまじい。下位にも溝口、津原と長打力のある打者が控えており、相手投手は息が抜けない。エース左腕の櫻井は昨秋の活躍で一気にブレーク。特に早稲田実戦では清宮から5三振を奪うなど14奪三振を記録した。あの清宮が完全に手打ちのスイングでくるくるバットが回るシーンは衝撃だった。最速144キロの速球と鋭いスライダーでイニング数を大きく上回る三振を奪った。まだ投手経験が浅く、コントロールはアバウト。これで4角を突くコントロールがついたらどんな投手になるのか、末恐ろしい存在だ。左腕エースに長打力のある打線、逆転での選出と、どこか2010年に左腕・山崎(オリックス)を擁し、準優勝して決勝でも興南・島袋(ソフトバンク)を苦しめたチームとダブって見える。当時の再現、あるいはそれ以上を狙える力を持つチームだ。願わくば小池都知事の言う通り、決勝で東京決戦をして早稲田実にリベンジしたいだろう。楽しみな存在だ。

    上記3チームに比べてディフェンス力で勝負するのが、九州王者の福岡大大濠。エースの三浦銀二は九州大会で3試合連続完封の離れ業。土台のしっかりしたフォームから繰り出す144キロの速球とカーブ、スライダー、チェンジアップをコーナーにちりばめる安定感抜群のピッチング。スタミナも抜群で昨秋は公式戦を一人で投げぬいた。1年上の阪神入りした先輩・浜地を目標に鍛え上げてきた実力が花開いた。女房役の古賀は今大会注目の捕手の一人。新チームになってから始めたのが信じられないくらい、好リードと2塁送球1.8秒台の強肩でエースを引っ張った。難攻不落のこのバッテリーを崩すのは容易ではない。唯一抑えきれなかったのが早稲田実の強力打線。本番でのリベンジに燃える。打線は上位打線に力がある。1番久保田は長打力があり、出塁して3番古賀、4番東で返すのがパターン。東は昨秋は不調だったが、パワーは十分の強打者。5番の稲本も好打者であり、東の後でランナーを返す。古賀は勝負強い打撃でまさにチームの要となる存在だ。夏は8強入りがあるも、春は意外なことにまだ勝利はない。初勝利はもちろん、優勝争いに加わる力を持つ。昨年春秋とレベルの高い九州大会を連覇しており、プロ輩出率の高い福岡県で育んだ力を見せる時が来た。

    甲子園の常連・大阪桐蔭は唯一の3年連続出場。今回は発展途上の素材型のチームだが、乗せると甲子園の戦いを熟知しているだけに怖い存在だ。選手層が厚く、投手陣は140キロカルテットを形成。エースの徳山は一昨年から神宮のマウンドを踏むなど経験豊富。速球とスライダーで押す持ち味が昨秋はよく出ており、近畿大会を3試合中2試合完投。その他、左腕の井上、2年生の146キロを記録する根尾、同じく2年生の長身左腕・横川と誰が出てもポテンシャルの高い投手陣だ。打線はなかなか軸が定まらないなかで2年生が中心となりそう。投手でもショートの守備でもスター性を見せる根尾は打撃でも秋の智弁学園戦でホームランを記録。鋭いスイングはすでに上級生レベルだ。長打力の光る1番藤原やミート力の高い中川らタレントぞろいの2年生たちはおそらく本気で来年の100回の記念大会での優勝を狙っているだろう。3年生も黙ってはいない。思い切りのいい打撃の3番山本、主将の福井ら他チームなら中軸クラスがゴロゴロ。捕手の岩本が骨折で出場できないのは大きな痛手だが、主将の福井がカバー。思えば藤浪(阪神)を擁した2012年選抜でも同じように4番の田端の骨折でチームが一丸となって勝ち抜いた。今回も勝ち上がれば、苦境をばねに勝ち上がるのが桐蔭の伝統になりそうだ。まだまだ新戦力も多く、メンバーは固まり切っていないが、その分計り知れない伸びしろを持つチーム。今大会も大阪桐蔭からは目が離せない。

    この5チームを追うチームは多い。

    まずは連覇を狙うこの2チーム。

    昨年夏に驚異の急成長を見せて優勝を果たした作新学院は史上5校目の夏春連覇を狙う。昨夏からのメンバーは鈴木、添田の12番のみだが、今この北関東の強豪校には勝利の伝統が根付いている。昨秋も勝ち上がりながら成長を見せて関東大会を制覇した。中心となるのはエースで4番の大関。左腕から繰り出す速球は130キロ台ながらスライダー、チェンジアップとのコンビネーションでひょうひょうと投げる。前年のエース今井(西武)の成長を身近で見ており、最高のお手本がそばにあった。昨夏はボールボーイでの出場だったが、今回はチームの中心での帰還で腕を撫している。攻撃はチーム打率こそ3割に乗っていないが、集中打、勝負強さは一級品。鈴木、添田の俊足コンビを中心に積極果敢な小針野球で相手をかき回していく。3番の中島のバットが命運を握っているだろう。4番の大関は昨秋は不調も四死球をよく選んでおり、数字以上に貢献が目立った。下位にも七井、加藤らしぶとい打者がおり油断ならない存在だ。神宮大会では明徳義塾に昨夏準決勝のリベンジを許したが、それもいい経験にしてこのチームはさらに強くなりそうだ。中京大中京以来となる春夏連覇と夏初連覇の両方達成に挑む。

    昨年の選抜覇者の智弁学園は史上3校目の春連覇を目指す。中心となるのは昨年から出場している3番太田、4番福元。ともに昨年甲子園でホームランを放っている2人だ。新チームでは主将の福元を1番に抜擢。打線に勢いをつける目的でおいており、昨秋は好結果を出した。長打のある福元をいきなり迎えることで相手バッテリーにプレッシャーを与えることができる。3番の太田は小坂監督をして「これまで指導した野手の中でトップクラス」という実力の持ち主。スイングスピードが速く、昨夏はセンターバックスクリーンに1発を叩き込んだ。この2人以外にもセンス抜群の西岡や左向など実力のある打者が揃う。昨年と比較し、足の使える打者も多く、攻めのバリエーションは豊富。攻撃力では前年を上回る力を持つ。投手陣はエース右腕松本が君臨。最速146キロを記録する本格派で、スピードでは前年の優勝投手・村上を凌駕する。気持ちのムラも徐々になくなってきており、本番での好投が期待される。左腕の岩井もコントロールがよく計算できる存在だ。昨年はノーマークで勝ち上がったが、今回は前年覇者として注目される存在。その中で選抜2連覇に挑む。

    仙台育英と明徳義塾の甲子園常連の2校もそれぞれ地区大会を制して出場を決めている。

    仙台育英はここ5年で2年おきに3度東北大会を制覇。2年前や4年前のような絶対的優勝候補と言われる力はないが、それでも優勝戦線に食い込む力は十二分に宿している。エース左腕の長谷川は怪我を乗り越えて昨秋は躍動。防御率は0点台を記録し、安定感抜群の投球を披露した。最速143キロの速球とスライダー、カーブで三振を奪える。神宮の初戦では履正社相手に8四死球と制球が乱れたが、本番ではリベンジを狙う。センターの佐川やショートの西巻も登板できるが、柱は長谷川になりそうだ。2年前のエース佐藤世(オリックス)の弟の佐藤令も控える。打線の中心は1年生から甲子園を経験している1番の西巻。2年前の夏の決勝では東海大相模・小笠原(中日)からヒットを放つなど、そのセンスは2年先輩の平沢(ロッテ)も認める逸材だ。走好守3拍子揃ったプレーで見せる。チーム打率こそ高くはないが、上位から下位まで満遍なく打ち、打力は決して低くない。神宮で抑え込まれた履正社・竹田を想定して冬場は練習に励んできた。みちのくの強豪が東北勢悲願の初優勝を狙う。

    明徳義塾は昨年4強のメンバーを中心に四国大会を制覇。馬淵監督をして優勝を狙えるという戦力で春の頂を狙っている。エース左腕の北本は速球のスピードこそ速くないが、多彩な変化球を駆使して打たせて取ることができる技巧派左腕だ。昨選抜では平安の強力打線に捕まったが、一年を経て球威が増しており、リベンジに燃えている。打線は注目の強打者・西浦を中心に得点力が高い。西浦は走攻守3拍子揃ったプレーヤーで、昨夏の甲子園の嘉手納線で満塁弾を放つなど、技と力を兼ね備えた左のスラッガーだ。新チームから4番に座り、打線の絶対的柱である。3番の勝負強い今井、5番のパワーヒッターの谷合とクリーンアップは強力。下位にも7勝負強い打者がおり、明徳らしく小技も巧みだ。馬淵監督の采配も込みで得点力は跳ね上がるだろう。バランスのとれた戦力を有するが、昨秋の公式戦2敗はともに完封負け。特に福岡大大濠の三浦銀二には完璧に封じ込まれた。選抜では好投手をいかに崩すかが優勝できるかのカギになりそうだ。

    静岡には今大会屈指の左腕・池谷がいる。強打を誇った2年前と違い、今回は守りのチームで臨む。最速144キロの速球とカットボールで三振の山を築く池谷は今大会注目の左腕の一人。速球には切れがあり、打者のバットを押し込む力がある。右腕の竹内も東海大会決勝で7回途中までノーヒットピッチングを展開。140キロ台のストレートを持っており、池谷・竹内の左右2枚看板を誇る投手力は今大会でも5本の指に入るだろう。神宮では早稲田の強力打線に池谷がつかまったが、本戦では抑え込む力を持っている。打線は安本、堀内(楽天)、内山の超強力クリーンアップを擁した2年前ほどの圧力はないが、上位打線は振れている。1番大石がチャンスメークし、稲角、成瀬、小栁の中軸で返すのがパターンだ。失点が計算できるだけに確実に得点を積み重ねたい。1にも2にも1番大石の出塁が鍵を握りそうだ。ここ数年復活の気配を見せている東海の名門校が2年前のベスト8以上の成績を狙う。

    昨年春夏4強の秀岳館は九州大会ではベスト4止まりも伸びしろの豊富なチームだ。投手陣は昨年も甲子園のマウンドを踏んだ左腕の川端・田浦の2枚看板。ともに最速143キロの速球を武器にする本格派左腕で熊本大会から2人の継投で勝ち上がってきた。2人ともイニング数を上回る三振を取っており、ピンチにも強い。4番捕手の九鬼(ソフトバンク)が抜けた穴は新たに幸地が埋める。2塁送球は九鬼のタイムを上回る逸材は打撃でも4割台の打率を残し、完全に先輩の穴を埋めた。打線では34番に廣部、木本と経験者が座る。廣部はポイントまで引き付けて振りぬくパワーヒッターで、昨年は春夏ともホームランを記録。打線の軸として活躍が期待される。投手の田浦は非凡な打撃を見せるなど、打者陣の層の厚さは昨年に決して劣らない。鍛治舎監督就任4年目に突入し、猛練習で鍛え上げた体力・打力はどこにも引けを取らない自信を持つ。昨年夏に北海にまさかの敗北を喫した悔しさは全員が共有。この春こそ悲願の全国制覇を成し遂げるつもりだ。

    地区ごとで見ていくと昨年躍進した近畿勢は上記3チーム以外も力のあるチームがいる。

    近畿大会準優勝の神戸国際大付属は7年ぶりの出場。注目捕手・猪田を中心に上位をうかがう。投手陣は黒田・岡野の左右2枚看板。黒田は小柄ながら切れのある真っすぐとスライダー、カーブをコントロールよく投げ込む好投手。決め球のチェンジアップは左右どちらの打者にも有効だ。右の岡野は最速145キロを記録する本格派。スライダーとのコンビネーションで打者を打ち取る。打線はチーム打率377厘と強力。近畿大会準決勝では大阪桐蔭相手に得点はすべてホームランという破壊力。3ホームラン5点で強豪との力勝負に勝った。4番の猪田は近畿大会2試合連続ホームランの打てる捕手。チームトップの14打点で12四死球を選んでおり、OPSの高い選手だ。1番俊足の森田が出塁して3番片岡、4番猪田の1発のある中軸で返すのが一つのパターンではあるが、下位にも長打力のある打者が控えており、どこからでも得点できる打線には自信を持つ。例年と比べて小柄な選手が多いが、守備・走塁など基本がしっかりしているうえで1発もあるチーム。対戦相手としては実にやりにくいチームだろう。今回で春夏5回目の甲子園だが、初戦突破は大西(ソフトバンク)、正木らを擁して4強入りした2005年選抜だけ。あとは惜しい負けが続いている。今回こそは初戦を勝ち抜いて上位を狙う。

    昨年8強の滋賀学園も要注意なチーム。昨年は2年生バッテリーを中心とした守りと馬越を中心とした打線がかみ合って快進撃。しかし、今年はバッテリーがそのまま残り、神村、棚原の2枚看板。打線も7点打線を標榜し昨年以上の力を持つ。前年を上回る成績を残す可能性は十分あるだろう。エースの神村は昨秋は絶不調。勝ちはしたものの、智弁和歌山打線に打ち込まれるなど不安を残した。そんな中で技巧派右腕の棚原が台頭。切れのあるチェンジアップとスライダーを低めに集め、近畿の準々決勝では前年のリベンジに燃える報徳学園を再び1-0のスコアで返り討ちにした。打線は1番の真藤が急成長。初回から塁に出てチームを引っ張り、昨年からの経験者の小浜、後藤へつなぐ。後藤は昨年より長打力が出てきており、今大会注目の捕手の一人だ。知念、武井、中西ら上位から下位まで満遍なく打ち、履正社戦ではやぶれたものの15安打を放ち、力を見せた。投打に役者はそろっており、あとはエース神村の復活を待つのみ。昨年の経験を活かし、湖国初の全国優勝へ視界良好な戦力だ。

    関東地区で侮れないのは前橋育英、健大高崎の好調群馬勢。

    前橋育英は昨夏に続く出場。分厚い投手陣はさすが守りの野球の前橋育英。144キロを記録する右腕・吉澤に関東大会3試合無失点の左腕・丸山、大型右腕の根岸に昨春の関東大会で関東一高を1安打完封した皆川と大阪桐蔭並みの投手層の厚さを誇る。昨夏は嘉手納の強力打線を前にディフェンスが決壊したが、今回はそうはさせない布陣だ。打線も例年以上に力強く、高打率を残した3番戸部、主砲の飯島に、打撃もいい皆川、吉澤ら好打者が並ぶ。昨秋の関東大会では慶応相手に3点ビハインドを跳ねのけるなど決してディフェンスだけのチームではない。自慢の守備は9試合で12失策と課題を残したが、冬場の練習で解消してきた。投打に力のあるチームで今度は春の優勝を取りに行く。

    対照的に機動破壊が合言葉の健大高崎だが、今年は投手力も高い。長身サイド右腕の伊藤に速球派の小野、高速スライダーが武器の向井ら多士済々な布陣。例年左腕と右サイドの技巧派の多い健大高崎だが、今年は右の力のある投手が揃っている。打線は例年通り機動力を有するが、今年は打力も高い。3番の左のスラッガー安里に大阪から野球留学で来た2年生の4番山下はともに破壊力を有する。下位の打力がもう少し上がればさらに抜け目ないチームになりそう。戦力の分厚さはこれまでで一番と青柳監督も自信を見せるチーム。過去2度にわたり全国制覇への壁となった大阪桐蔭は今回も出場。リベンジを果たして優勝を狙いたい。

    好投手を擁して全国制覇を狙うのは東海大市原望洋と熊本工の2校。

    東海大市原望洋は前年に絶対エース原(ロッテ3位)と2枚看板を組んでいた金久保がエースに成長。最速147キロの速球に難攻不落のスライダーで相手打者を牛耳る。昨秋は13試合に登板し、10関東。スタミナにも自信を見せる。関東大会では山梨学院、前橋育英と前年夏の甲子園出場校を連続撃破。強豪にも名前負けしない強さを持つ。打線は大物打ちはいないが、つなぎで対抗。1番捕手の宍倉を中心に切れ目のない打線を形成。4番も務める金久保の負担を全員で軽減する。過去甲子園には2度出場も初戦敗退が続いている。3度目の正直からの上位進出へ期待がかかる。

    熊本工には最速149キロをマークする本格派の山口翔がいる。バランスのいいフォームから繰り出す速球と多彩な変化球を持つ逸材。昨夏は熊本大会で全国ベスト4の秀岳館をあと一歩まで追い詰めた。本人は選抜で早稲田実の清宮、履正社の安田との対戦を熱望。強い相手ほど燃える気持ちの強さも持っている。打線は熊工らしい足を使った攻撃が得意。バント・盗塁・エンドランなど流れるような攻めで相手のすきを逃さない。山口が少ない失点に抑えて、打線は少ない好機を足でものにする。戦い方に迷いがなく、伝統校らしいしたたかなチームだ。秀岳館に熊本の盟主の座を譲る気はさらさらなく、本番でライバルよりも上の結果を残したい。

    福井工大福井は北信越大会で優勝し、神宮大会でも履正社と接戦を演じた。元大阪桐蔭コーチの田中公隆氏が来て打力がアップ。トップの北川が左打席から強烈な打球をお見舞いし、井上、山岸、吉田の中軸はみな4割台の打率を残した。勝ちこそしたが、履正社の投手陣もたじたじの迫力だった。左腕の摺石は手元で伸びるストレートと切れ味抜群のスライダーで見た目以上に打ちにくい投手。同じくスライダーが武器の右腕加藤と競い合っており、2人とも全国で通用する打ちにくい投手だ。出場しても初戦敗退か1勝どまりの続いている動向だが、2年連続出場の今年は期待が持てる。県内のライバル・敦賀気比に負けない活躍を見せたい。

    同じく2年連続出場の札幌第一は富樫・前田の左腕2枚看板が強力。速球派の富樫、カーブが武器の前田とタイプの異なる2人で2年連続秋の北海道をものにした。上出一人だった前年よりも厚い投手陣を誇る。打線は去年より強力なのは間違いなく、1番宮澤、3番柴田、4番高階とチャンスに強い打者が並び、下位の打者も高打率を記録。チーム打率39分の強力打線を形成する。昨年に続き、神宮でも1勝を挙げたが、履正社には力負け。この悔しさをばねに初戦敗退に終わった昨年選抜の借りを返しに行く。

    札幌第一と神宮で接戦を繰り広げた宇部鴻城は4番ショートの嶋谷に注目。鋭いスイングで野手の間を抜く中距離ヒッターだが、秋は5割近い打率を残したチームの顔。中国大会決勝では4安打を放って優勝に貢献。ショートの守備でも三遊間深いあたりをアウトにするなど広い守備範囲を誇る。打線は1番古谷、5番荒武も力があり、上位打線で得点を重ねる。投手陣は左腕の早稲田が軸。球威・球速がそれほどあるわけではないが、テンポとコンビネーションで抑え込む実戦派左腕だ。神宮でサヨナラ負けした悔しさをばねに2年前果たせなかった初戦突破を目指す。

    夏春連続出場の盛岡大付属は三浦、平松の左右強力2枚看板が君臨。三浦は昨夏の甲子園以降不調に陥ったが、切れのあるボールを持つ打たれ強い左腕。右腕の平松は140キロの速球とスライダーが武器の本格派で、三浦からエースナンバーを奪い取った。打線の軸は3番の植田。昨夏創志学園の高田(巨人)から1発を放った強打者はストレートに力負けしないフルスイングを見せる。上田の前にいかにチャンスを作れるかが重要になりそうだ。昨夏は同校初の甲子園2勝をマーク。壁を突き破りそうな予感があり、今年の春も躍進を誓う。

    創志学園は前年トップバッターでチームを引っ張った難波がエースで4番となり、戻ってきた。最速145キロの速球に多彩な変化球を駆使。速球のスピードでは1年上の高田(巨人)に劣るが、フィールディングなど投手としての総合力は難波の方が上との声も。選抜での好投に期待がかかる。攻撃は1番俊足の主将・山本がキーマン。昨年ほど機動力はないが、チーム打率は高く、打って勝つ力を持つ。新2年生の台頭もあり、まだまだ打力は伸びている。過去3度の出場で1勝止まりだが、目標はベスト4に設定しており、その力は十分ありそうだ。攻守に難波の負担をいかに軽減できるかが勝負になりそうだ。

    地元の伝統校・報徳学園は昨年手にできなかった近畿6番目の椅子を手にした。左腕エース主島を擁した前年よりチーム力は劣るが、まとまりのあるチーム。何より長年チームを率いてきた永田監督が最後の甲子園。監督の花道を飾ろうと選手は燃えている。センスあふれる1番の小園は1年生からレギュラーの逸材。昨年の練習試合では横浜の藤平(楽天)から練習試合でホームランを放つなど3拍子揃った選手だ。主砲の篠原やしぶとい打撃が売りの2番永山、6番池上ら好打者をちりばめ、得点力は決して低くない。投手陣は長身右腕の西垣が成長。冬の走り込みで球威を増した。戦力的に万全とは言えないが、その分伸びしろのあるチーム。名門校が台風の目となる可能性はある。

    九州大会準優勝の東海大福岡は元福岡工大城東の杉山監督が就任し、力をつけた。東海大五時代に一度出場しているが、校名変更後初の甲子園となる。エースの安田は小柄な体ながら巧みな投球が光る右サイド。コントロールは抜群でスライダー、シンカーの左右の揺さぶりで打者を惑わす。熊本工の山口に投げ勝つなど、九州大会では3試合連続1点差勝利の原動力となった。打線は日替わりでヒーローが生まれる打線。勝負強さは天下一品で一番有安を筆頭に抜け目のない打線を形成する。ロースコアの粘りの野球で活路を見出す。レベルの高い九州地区でもまれているだけに侮れない存在だ。

    愛知から選抜初出場の至学館はミラクル出場。東海大会の準決勝で中京大中京相手に9回に3点差をひっくり返すなど奇跡的ともいえる逆転劇を重ねた。投手陣は2011年夏の出場時と同じく継投でしのぐ。左変則サイドの川口は出所の見えにくいフォームで打者を幻惑。球筋になれたところで右上手の新見にスイッチして的を絞らせない。打線はクリーンアップが強力。足と小技も絡めて一気に大量点を奪う試合が目を引いた。甲子園では相手投手のレベルも上がるだけに簡単にはいかないが、相手のすきを逃さない攻撃を見せたい。激戦区愛知の代表として甲子園でも上位を狙う。

    高岡商業は7年ぶりの選抜。左腕エース土合に長身右腕の伏見、速球派左腕・山田と豊富な投手陣を擁する。土合は球速こそ速くないが、手元で伸びる球質の持ち主で主将としてもチームを牽引する。打線も4割打者5人を並べるなど強力。足を絡めた攻撃もでき、得点力は高い。北信越大会では準決勝の日本文理戦で5点ビハインドを跳ね返すなど粘りもある。選抜では同校初となるベスト8を目指す。

    神宮大会枠をつかんだ高田商業は粘りのチーム。近畿大会では9回に4点ビハインドを追いつくなど観衆を沸かせた。コントロール抜群の左腕・古川は巧みな投球で打者を抑え込む。打線は送りバントを絡めた堅実な攻めで確実に得点。3番山崎、4番大久保には1発もある。履正社にコールド負けしたとはいえ、奈良の決勝では智弁学園と接戦を演じた実力の持ち主。神宮枠と侮ったら痛い目に合いそうなチームだ。

    市呉は広島から初出場。地元呉市は大いに沸いた。昨年度からエースの左腕・池田は抜群のコントロールで好投。巧みなコーナーワークでバットの芯を外した。打線は広島らしい機動力野球で相手を揺さぶり、得点を重ねた。1番普家、3番近藤は4割近い打率を残したポイントゲッターだ。守備も内外野ともに鍛え上げられ、すきがない。穴のない負けにくい野球で一戦必勝で挑む。

    帝京大五は48年ぶり2度目の選抜。高校時代に帝京高校で準優勝投手となった小林監督に率いられ、長い時を経て甲子園に戻ってきた。投手陣は左腕・岡元と右腕・佐藤が安定。岡元は小柄ながら切れのあるボールを投げ込み、スライダー、チェンジアップ、シンカーと球種も多彩。佐藤はコントロールの良い投手で、2人とも計算の立つ投手だ。打線は小技を絡めた攻撃が持ち味。選球眼がよく打てなくても点を取るすべを持つ。四国の決勝では明徳に大敗も小林監督は目標は全国制覇に置いている。冬を経てパワーアップを図っており、選抜での成果が楽しみだ。

    21世紀枠は不来方、多治見、中村の3校。

    不来方は何とチームの人数が10人での出場。130キロ台中盤の速球を持つエース小比類巻を中心に守りで食らいつく野球を展開。それ故に練習時間のほとんどは打撃に当て、弱点強化に努めてきた。過去の池田、中村のように少人数で旋風を巻き起こせるか。

    多治見は昨秋の岐阜大会で優勝。一般選考された至学館とも接戦を演じており、確かな実力を秘める。右サイドの河地、右スリークオーターの奥村という技巧派投手陣を主将佐藤を中心とした打線が援護したい。持ち前の機動力を活かせるかで勝負が決まりそうだ。

    中村は昨秋明徳義塾を破って県大会優勝。エースの北原は低めを丁寧に突く投球が持ち味で打たれ強い投手。中軸は一圓、北原、中野と昨年からの経験者が並び、強気な攻撃も見せる。山沖投手を擁して準優勝した40年前の再現を狙う。