2017年春の選抜甲子園振り返りまとめ

2017年

史上初の大阪勢同士の決勝戦となった今大会は大阪桐蔭の5年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた。

戦前からの予想通り打高投低の展開となり、清宮・安田を筆頭に好打者が多く活躍した大会となった。ただ、試合展開は打ち合いが多かったが、大会を通じて好投手も多く登場し、今後が楽しみだ。。

また、地区ごとで見ると前年に引き続き近畿勢が好調。九州勢も3校がベスト8入りし、ベスト8のうち実に6校を近畿・九州勢が占めた。一方、東日本勢は2年連続で4強に1校も残れず。西高東低の展開となった。昨夏は東日本勢が盛り返しただけに、今年の夏も意地を見せられるか。

優勝したのは大阪桐蔭。5年ぶり2度目の選抜優勝で、この10年間で実に5回の全国制覇。驚異的な頻度で優勝を勝ち取り続けている。昨年は高山・吉澤ら3年生中心のメンバーだったが、夏の大阪大会で北陽にうっちゃられて早期敗退。新チームは2年生中心の若いメンバーでスタートし、粗削りなチームの印象があった。しかし、今大会ではエースの徳山が成長した姿を披露。140キロ台の速球でインコースを果敢に攻め、スライダー・フォークも交えて打ち取っていった。ピンチにも強く、大事な場面でコントロールを間違わない安定感があった。一方、打線では2年生の山田が大活躍。長いリーチを生かした打撃ながら、インコースも巧みにさばく打撃で5試合で12安打を記録。チームトップの8打点をマークした。決勝で2ホームランの藤原や中軸の中川・根尾ら才能豊かな2年生は今後どこまで成長するのか楽しみな存在だ。その下級生たちを抜群のリーダーシップで引っ張ったのが主将の福井。正捕手の岩本の怪我により急遽代役捕手での出場となったが、岩本と2人で配球について話し合い、見事に勤め上げた。縁の下の力持ちとしてチームを支え、大阪桐蔭のチーム力の高さを示した。2012年の主砲・田端の骨折や、2014年の主将・中村の骨折など、アクシデントを乗り越えての優勝は大阪桐蔭の伝統となりつつある。今大会は成長途上のチームとして臨んだ中で、全国制覇を達成。今後どこまで強くなるか末恐ろしい存在であると同時に、しばらく大阪桐蔭時代が続きそうなそんな予感のした大会となった。

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準優勝の履正社は3年前に続いて2度目の決勝への挑戦も全国制覇達成はならなかった。昨秋の国体・神宮を制覇し、優勝のチャンスだっただけに惜しまれる結果となったが、それでも全国屈指の強豪としての力は存分に示した。1回戦でいきなり日大三との優勝候補対決となったが、左腕・櫻井のスライダーを落ち着いて攻略。9回に一気の集中打で相手を飲み込んだ。エース右腕の竹田は投球フォームに悩んでいたが、徐々に修正して復調。準々決勝の盛岡大付戦では終盤までノーヒットピッチングを展開した。回転数の多いボールで相手を詰まらせる投球が光った。打線は序盤は3番安田、4番若林の調子が上がらない中でそのほかの打者が活躍。特に濱内は下位打線の起点となる活躍。9番西山の逆方向への打撃も光った。安田は準々決勝以降復調。準決勝では報徳・西垣から初回にライトスタンドへ叩き込んだ。どっしりとした構えから鋭いスイングを見せた。決勝では大阪桐蔭とのライバル対決に惜敗。やはり最後は2人目以降の投手力と安田・若林以外の長打力の差が出てしまったか。今回は履正社優勝の流れが見えた大会だっただけに惜しまれる結果だったが、それでも2度目の準優勝は立派。全国の頂点への道筋ははっきりと見えている。夏こそは大阪桐蔭へのリベンジを果たし、悲願の全国制覇を狙う。

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今大会のサプライズの一つは報徳学園の躍進だろう。大会前の評価は近畿6番手の存在だったが、初戦は21世紀枠の多治見を相手に21得点を奪っての大勝。1番小園はライト方向へ思い切り引っ張る打撃でホームランを含む3安打を放てば、2番永山は俊足を活かして5安打を記録。12番が出て4番篠原、6番池上にタイムリーが飛び出す展開で初戦に快勝した。2戦目はエースの西垣が初戦に続く無失点投球で完封勝利。昨秋は直球が130キロ台中盤にとどまっていたが、今大会では140キロ台中盤を記録。落差の大きいフォークと合わせて大事な場面で三振を奪った。準々決勝では福岡大大濠の控え投手陣を打ち込んで快勝。準決勝の履正社戦では2番手池上が切れのあるボールで好投し、終盤まで主導権を握った。最後はエース西垣と2番手池上のスタミナが尽き、守備の乱れもあって敗れたが、基本に忠実な守備とセンターから逆方向へコンパクトに振りぬく打撃で着実にヒットを量産。毎試合相手より多いヒット数を記録した。永田監督最後の大会で集大成ともいえる野球を披露。どことなく2009年選抜ベスト4の時と似た雰囲気を感じさせるチームが意地を伝統校の意地を見せた春だった。

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秀岳館は昨年から3季連続の4強入り。またしても悲願の決勝進出はならなかったが、メンバーが変わっても安定した力を見せた。なかでも素晴らしかったのが左腕・川端の成長。昨年からマウンド経験豊富だったが、真っ向から振り下ろすストレートは最速148キロを記録し、切れも抜群。全試合に登板し、高田商業戦、健大高崎戦では完投勝利をマーク。カットボールやスライダー、フォークも交えて4段階の球速で打者を翻弄した。もう一人の左腕・田浦も球威ある速球で打者のバットを押し込み、好投。敗れはしたが、準決勝でも優勝した大阪桐蔭の打線を終盤まで2得点に封じた。夏に向けて実力の高い2人の左腕がいることはチームにとって心強いだろう。メンバーの大幅に入れ替わった打線は3番木本、4番廣部の調子がいまいち上がらない中でも威力を発揮。前年と比較して走力の高さも見せ、一気の集中打で試合を決める場面が目立った。2ストライクに追い込まれてのノーステップ打法ももはや同校の代名詞。簡単には凡退しない攻撃を見せた。準決勝では優勝した大阪桐蔭を相手に田丸が力投。結果的に大阪桐蔭打線を最も抑え込んだチームとなった。けがを押して出場した半情や当たりの戻ってきた3番木本なども活躍を見せたが、一歩及ばなかった。ここ3季の準決勝はすべて惜敗。最後の一押しが何かを求めつつ九州屈指の強豪は夏に進む。

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準々決勝で敗退したチームも素晴らしい戦いぶりでコマを進めた。

同校初のベスト8進出を決めた盛岡大付は看板の強力打線がさく裂。永年初戦敗退の続いた時期もあったが、今回でさらにワンステップ上り詰めたと言えるだろう。初戦は高岡商業との乱打戦。取っては取られの展開となったが、14番で11安打と上位打線が爆発。最後は2番林のサヨナラヒットで幕となった。2回戦では前年度覇者の智辯学園を相手に左腕・三浦が好投。130キロ台の速球とスライダー、チェンジアップで相手打線を寄せ付けずにわずか4安打で1失点完投。打線も再び2番林が起点となる活躍。1番植田から始まり、鋭いスイングで圧力をかけて、初戦完封の智辯学園エース松本を飲み込んだ。準々決勝では最終的に履正社に力負けしたが、中盤までは互角の展開を見せた。県内のライバル花巻東(菊池雄星や大谷翔平ら好投手を輩出)を倒すために徹底的に打力を鍛え上げてきた成果が現れ始めており、今年は三浦・平松と左右の好投手も擁する。甲子園でのさらなる最高記録の更新へ向けて期待は高まるところだ。

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福岡大大濠は引き分け再試合を経ての8強入り。日程の厳しさも相まって優勝こそならなかったものの、地力の高さは随所に発揮した。エースの三浦銀二は今大会登板した投手の中でも最も完成度の高い投球を披露。140キロ台の速球とスライダーをコーナーに配して、ストライクゾーンを広く使う大人のピッチング。抜群のコントロールでピンチも落ち着いてしのぎ、滋賀学園との引き分け再試合をすべて一人で投げぬいた。打線では8番の樺島が初戦の創志学園戦で爆発。思い切りのいい打撃で1試合2ホームランをマークした。中学時代は早稲田実の野村らとともに全日本代表に選ばれた実力を見せつけた。打線の中心の3番古賀、4番東はスロースターターだったが、徐々に本領を発揮。滋賀学園との再試合では古賀が左中間に放り込み、パンチ力を見せつけた。守備でもエースを好リードで盛り立て、創志学園戦では満塁から犠飛の返球を前に出てカットし、3塁を狙ったランナーを刺すこう判断を見せた。最後は三浦に続く2番手投手の不在が響いたが、九州王者としての実力は十分に示した。夏に向けて課題は明確になっているだけに、三浦の負担を攻守でいかに軽減できるかがかぎとなりそうだ。ライバル東海大福岡など強豪がひしめく福岡大会を勝ち上がって夏こそ全国制覇を狙いたい。

https://www.youtube.com/watch?v=qFUffGE0oBc

健大高崎も引き分け再試合を経ての8強入り。今年は看板の機動破壊に加えて打力のベースもアップ。素晴らしい戦いぶりを見せた。初戦の札幌第一戦では好左腕の富樫・前田を粉砕。主将で1番の湯浅が故障で出場できない中で代役の今井が3安打の活躍。2年生の山下が満塁弾を放つ活躍を見せ、111と大勝した。2戦目の福井工大福井戦では得意の足を絡めた攻撃を披露。9回は1アウト23塁で2塁ランナーが牽制で挟まれる間に3塁ランナーが生還。機動力野球で引き分け再試合に持ち込むと再試合では強打がさく裂。山下が再び満塁弾を放ち、102で相手を退けた。打線の力は出場を重ねるたびに上がってきている印象があり、足と強打の融合で今年も甲子園を魅了した。また、投手陣では右サイドの伊藤が安定した投球を披露。左打者へも外へ落ちるボール球を振らせて打ち取っていた。準々決勝では伊藤が疲れからか、球威・切れともに不足して打ち込まれたが、日程的に厳しかったのが事実。大量ビハインドを背負って秀岳館の好左腕・川端を相手にするのはいかに健大高崎でも分が悪かったか。夏に向けて伊藤と双璧をなす投手の育成が重要になってくるだろう。速球派右腕・小野の成長がカギを握る。ここ数年の甲子園で最も安定した戦いを見せている同校。悲願の全国制覇へ向けて着実に歩を進めている。

https://www.youtube.com/watch?v=GB3FZrrTk1o

東海大福岡は前評判は高くない中でベスト8進出。エース安田の力投とチャンスを確実に生かす攻撃が光った。安田は両コーナーをいっぱいに使った投球とテンポの良さで初戦は神戸国際大付属打線を翻弄。近畿でも屈指の破壊力を持つ打線に全くと言っていいほど仕事をさせなかった。特に試合途中からは凡フライの山を上げさせており、安田の真骨頂ともいえる投球だった。対照的に東海大福岡の攻撃陣は確実にたたきつける打撃で神国の好左腕・黒田を攻略。2得点はいずれも内野ゴロエラーだったことが効果を表していた。2戦目は注目のスラッガー清宮を擁する早稲田実と対戦。清宮のインハイを果敢に攻める投球で活路を見出し、決定的な仕事はさせなかった。打撃でも4番遠藤の活躍などで大量11得点。明確な意図を持った攻撃ができていて、早稲田のウィークポイントである投手力に付け込んで試合を決めた。準々決勝で大阪桐蔭に敗れはしたものの、3試合とも自分たちの野球がしっかりできていた試合だった。夏はライバルの福岡大大濠と雌雄を決する戦いになる。エース安田の負担をできるだけ少なくするためにも、2番手投手の育成と打力のさらなる強化が求められそうだ。

https://www.youtube.com/watch?v=Gorp6AIIid4

ベスト16で敗退したチームにも力のあるチームは多かった。

選抜連覇を狙った智辯学園は1回戦で大会屈指の速球投手・熊工の山口翔と対戦。福元・太田と昨年の優勝メンバーが注目される中で初戦は3番西岡が大活躍。タイムリー2本を含む3安打を放ち、ポテンシャルの高さを見せつけた。中盤には重盗で加点するなど、昨年より攻撃力が高くなったところを見せつけた。エースの松本は膝の故障が心配されたが、力の抜けたフォームから繰り出す真っすぐに熊工打線は力負け。出したランナーはわずか5人で完封勝利を飾った。最終回には太田がホームランを放つなど、90と思わぬ大差で圧勝した。しかし、2回戦では盛岡大付属の左腕・三浦の前に完敗。チェンジアップにタイミングが合わずわずか4安打1得点に終わった。エース松本も我慢の投球を続けたが、中盤以降

攻略され、51で敗れた。試合展開としては6回のバントミスが痛かったが、結局投打ともに力負けの印象は強かった。松本の怪我からの完全復調に福元・太田の活躍があれば、その強さは誰もが認めるところ。夏は神野など好野手がそろう天理も控えているだけに、奈良大会を突破するのはいばらの道だが、投打ともに鍛えなおして、今度は夏の全国制覇を目指す。

https://www.youtube.com/watch?v=_aH2M2Q21vs

東海王者・静岡は初戦で21世紀枠の不来方と対戦。いきなり1点を先制されるも打線がエース池谷を強力援護。主軸の大石が3安打するなど結局12-3で大勝を収めた。そして、大会を通じてもインパクトを残したのが大阪桐蔭との1戦。初回にいきなり6点を失う苦しい展開もその裏つながる打線が大阪桐蔭の先発左腕・横川をとらえてすぐに同点に。鈴木(西武)、安本、堀内(楽天)、内山らタレント軍団だった2年前ほどのこの力はないが、センター中心に素直に打ち返す打線の得点能力は決して劣っていなかったし、すぐに失点を取り返すメンタルの強さも素晴らしかった。そして、2回以降の池谷のピッチングはまさに圧巻。全国トップクラスの大阪桐蔭打線を相手にallストレートの投球で圧倒。切れ・スピードともに本物の真っすぐを前に猛者ぞろいの大阪桐蔭打線が手も足も出ない姿は衝撃だった。最後はスタミナ切れで敗れたが、夏に向けて大きな収穫を得た試合だった。東海屈指の名門公立校が意地を見せた春だった。

https://www.youtube.com/watch?v=nF1wZfqtB_U

大会前最も注目を集めていた早稲田実業は清宮・野村を中心とした打力は評判通り。初戦は明徳義塾相手に常に先手を取られる展開となったが、9番を打つ野田が3安打4打点の大活躍。秋は1番を打っていた打者をこの打順におけるあたりに早稲田打線の層の厚さを感じた。9回には清宮の存在に威圧されたか、明徳の投手が失策。試合の流れをたった一人で変えてしまうこの男はやはり只者ではなかった。ただ、2回戦の東海大福岡戦は懸念されていた投手力の弱さが出て大量失点。ストレートに力のある投手は何人かいるが、大事な試合を安心して任せられる投手がいないことが夏に向けての課題になりそうだ。それでも何点差があってもあきらめずに追いかける打力と精神力の強さは素晴らしく、一時8点差がある中で3点差まで詰め寄った粘りは素晴らしかった。野村・橘内ら2年生にも強打者が並んでおり、打力の高さは全国でもトップクラスだろう。夏は強敵・日大三が立ちはだかるが、怪物・清宮の夏を予選で終わらせないためにも、一にも二にも投手力の強化が最重要課題になりそうだ。

https://www.youtube.com/watch?v=K7CkvXJii_4

夏春連覇を狙った作新学院は初戦で帝京第五を相手に猛打爆発。犠打を使わない作新らしい攻撃で走って打ってかき回した。前年夏優勝のメンバーこそ2人しか残っていなかったが、作新の強さは継続していた。エース左腕大関ものらりくらりとかわす投球を披露。昨年のエース今井(西武)とは違ったタイプの投手だが、好投を見せた。2戦目の秀岳館戦は2-3と惜しくも惜敗。中盤で負ったビハインドを跳ね返せなかったが、8,9回の攻撃は素晴らしく、相手左腕・川端を攻めつけた攻撃は力強かった、夏に向けて大関に次ぐ投手の養成が求められるが、戦うごとに強くなる北関東の伝統校は夏も要注意の存在だ。

https://www.youtube.com/watch?v=QkVsa8SubcA

同じく北関東の強豪・前橋育英も昨夏に続いての出場。こちらは分厚い投手層を武器に安定感のある戦い。初戦で先発した左腕・丸山は140キロ台の力のあるストレートを軸に好投。昨秋から課題だった守備も成長を見せ、無失策で5-1と完勝した。ただ2戦目の報徳学園戦は先発・根岸の立ち上がりの乱れをつかれて一挙4失点。打線が相手エース西垣の速球とフォークに苦しめられて結局完封負けとなった。この試合も無失策と守りの前橋育英らしい戦いはできていたが、全国レベルの投手相手にビハインドを跳ね返せるだけの打力はなかった。夏は健大高崎との一騎打ちとなるだけに打力のさらなる強化を目指したい。

https://www.youtube.com/watch?v=nmgFPYaN4dc

引き分け再試合で敗れた2校は大会で大きな印象を残した。

滋賀学園は初戦で延長14回の死闘を経験。2枚看板の投手陣のうち、昨年からのエース神村が投げられない中で、もう一人の右腕・棚原が力投。沖縄出身の彼が投じた宜野座カーブに東海大市原望洋の各打者のバットは空を切った。打線は相手エースの金久保の速球とスライダーに苦戦するも14回についに攻略。上位打線が4連打と火を噴いた。2戦目は九州王者の福岡大大濠と対戦。好投手・三浦の前になかなか得点が奪えなかったが、3人目の投手・宮城が好投。こちらもスライダーを武器に決定打を許さない投球を見せた。再試合では宮城が相手捕手の古賀に決勝2ランを浴びるも、大会を通じて最も投手層が厚いチームの一つだった。夏に向けて打力のさらなる強化とエース神村の復活が叶えば、滋賀勢初の全国制覇も夢ではないだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=Yhp115_4drQ

福井工大福井は初戦で優勝候補の仙台育英と対戦。序盤から左腕・摺石が西巻をはじめとする相手上位打線につかまり、苦しい展開。攻守にミスも目立ったが、持ち前の打力で強引に逆転勝利。大会屈指の好左腕・長谷川を打ち崩した。ある意味同校らしいと言えばらしい勝ち方。2戦目は健大高崎と壮絶な打ち合い。この試合でも序盤4点を先行されながら上位から下位まで切れ目なく、振り切れる打線で相手投手陣を攻略した。ただディフェンス面では相手の機動力を封じきれず。やはり試合になると守備面でもろさが見られ、9回はトリックプレーで同点に追いつかれてしまった。再試合では投手層の差が出て思わぬ大差となったが、両チームに大きな力の差がないことは誰もが知るところ。夏はさらに持ち前の打力が活きる戦いとなるだけに、2番手投手の育成と守備力の強化で春夏連続出場を目指す。

https://www.youtube.com/watch?v=ZRqWKL_JMTA

広島から初出場の市呉は開幕戦に登場。技巧派左腕・池田の粘り強い投球と機動力を活かした攻撃で接戦に持ち込むと、9回表に2点ビハインドから8番上垣内、9番池田の連続長打で追いつく粘りを見せた。相手投手陣の細かい継投にも惑わされずにつなぐ攻撃を見せた。エースの池田は結局12回を投げて相手打線をわずか4安打に抑える好投。チェンジアップを効果的に配した。2戦目は優勝候補の大本命・履正社と対戦。ここでも池田は緩急をうまく使った投球を披露。立ち上がりに4番若林に浴びたタイムリーによる1点のみに抑え込んだ。ただ打線が履正社のエース竹田に力負け。ストレートにつまった内野ゴロが多く、得点をにおわせる場面はあまりなかった。ただ2試合通じて持てる力は出し切ったのは事実。この経験を強豪ひしめく夏の広島大会にどう活かすか。戦いは始まっている。

https://www.youtube.com/watch?v=39OUFVEPcdY

今大会は初戦で優勝候補が姿を消すシーンも目に付いた。

大会屈指の好カードとなった日大三履正社の試合。日大三は初回から履正社の竹田に襲い掛かり、2点を先取。エース左腕櫻井も切れ味抜群のスライダーで履正社の上位打線を序盤は完全に封じ込んだ。中盤以降ひっくり返されたが、78回に反撃。13番の3連打や9番津原のタイムリー3塁打であっという間に追いつく破壊力を見せた。ただ、8回裏に追いついたところでなお1アウト3塁で追い越せなかったのが痛かった。竹田がそれまで隠していたフォークボールを有効に使って抑え込むと、9回に岡部・櫻井が打ち込まれて万事休す。それまで封じていた履正社・安田にもレフトオーバーにはじき返された。最後はスタミナ不足という結果になったが、優勝候補大本命を瀬戸際まで追い詰めた実力は本物。夏は早実を倒しての西東京代表の座を狙う。

https://www.youtube.com/watch?v=ExZcVMoqMME

仙台育英は序盤から1番西巻を中心に上位打線が機能。福井の左腕・摺石を攻め立てて常に先手を取る展開で、リードを奪っていた。甲子園常連校の勝ちなれた様子がうかがわれていたが、終盤に福井打線に大会屈指の左腕エース・長谷川が攻略されて逆転負け。相手の打力に強引に押し切られた格好になった。チームとして痛かったのはやはり4番で捕手の尾崎の不在。年明けの練習で眼窩底骨折。驚異的な速さで回復を見せていたが、やはり欠場を余儀なくされた。長谷川も昨秋見られた制球難は克服していたが、失投を見逃さなかった相手打線が上であった。2年周期で秋の東北大会をここ5年で3度優勝。優勝候補に挙げられたその過去2回のチームと比べてもポテンシャルは決して劣らないだけに夏こそはフルメンバーで臨んでリベンジを果たしたい。

https://www.youtube.com/watch?v=PislEs9m8UM

明徳義塾は初戦で早稲田実と対戦。大会屈指の好カードとして注目された。初回から早稲田実の先発・池田の立ち上がりをとらえて3点先取。西浦・今井ら昨年4強のメンバーがヒットを放ち主導権を握った。1点差に迫られて迎えた8回裏には主砲・谷合がセンターバックスクリーンへ特大のホームラン。チャンスを確実に活かす打撃と堅い守備を見せ、勝負は決したかに思われた。しかし、9回表に1点を返されると、あと一人の場面で投手ゴロをエース北本が痛恨のエラー。ネクストバッターズサークルに控える清宮の存在が気になったか、普段では考えられないミスだった。その後、清宮・野村に連続四球を与えて押し出しで同点。最後は延長10回に9番野田に決勝打を浴びた。試合を通してみると、清宮は1安打、野村は2安打と主軸を相手に北本はよく投げたが、7番橘内、9番野田にそれぞれ3安打を浴びてしまい、早稲田実打線の総合力の前に屈してしまった印象だ。これで直近4大会で3度目の初戦敗退。相手が敦賀気比、竜谷大平安、早稲田実と強豪ばかりで致し方ない面もあるが、初戦に無類の強さを誇っていた強豪が今、もがき苦しんでいる印象だ。

https://www.youtube.com/watch?v=nQ3lnN4_kyQ

打撃のいいチームが多かったこともあり、初戦で敗退した好投手も多かった。

熊本工のMAX149キロの剛腕・山口翔はストレートのスピードは出ていたが、制球難と智辯学園の足を使った攻めに沈んだ。2年生の多いチームだけにまだまだ成長途上。夏は強豪・秀岳館を倒しての甲子園出場を狙う。

https://www.youtube.com/watch?v=iWbXmhWa6Vo

東海大市原望洋のエース金久保は前評判にたがわぬピッチングを披露。140キロ台中盤の速球とスライダーで昨年からの経験者が多く残る滋賀学園打線をきりきり舞いさせた。最後は延長戦のなか疲労で打ち込まれたが。今大会出場投手の中でも屈指の実力を見せた。

https://www.youtube.com/watch?v=HNZpdOe0bYQ

神戸国際大付属の左腕・黒田も好投を披露。味方打線の援護がなく、失策に泣くなど不運が重なったが、小柄な体から繰り出す切れのあるボールで10三振を奪った。個々の能力は高いチームなだけに惜しまれる結果となったが、まだ夏が残っている。

https://www.youtube.com/watch?v=_aH2M2Q21vs

九州王者の福岡大大濠と初戦で対した創志学園のエース難波はチーム戦略上、先発を回避。ただ先発した左腕・秋山が相手8番樺島に1発を献上。途中から登板した難波も樺島に2打席連続となる1発を浴びて失点。打線は9安打を放ったが、好投手三浦銀二相手に序盤の5失点はあまりに痛かった。これで3季連続でレフトスタンドに1発打ち込まれての敗戦(昨春は高松商の植田、昨夏は盛岡大府の植田、塩谷)、全国レベルの長打力の前に苦戦を強いられている。

https://www.youtube.com/watch?v=nBNWK5x5Gx0

2年連続出場の札幌第一は健大高崎の前に思わぬ大敗を喫した。富樫・前田の強力左腕2枚看板に宮澤・高階ら強打者の並ぶ打線を擁し、昨年より個々の能力は上のチーム。しかし、健大高崎の機動力を意識しすぎたかペースを乱し、序盤から大量失点。チーム打率3割9分を誇った打線も四死球で再三塁上をにぎわせながら、健大高崎・伊藤のシンカーを攻略しきれず、1点に終わった。レベルの高い南北海道で常に上位に進む実力はあるだけにあとはその実力を甲子園でいかに出し切れるか。平常心と甘いボールを1球で仕留める技術を課題に再び夏の舞台を目指す。

https://www.youtube.com/watch?v=2paGWmhLENE

高岡商業は初戦で盛岡大付属と大乱戦。点を取った次のイニングには必ず取り返し、もしくは取り返される戦いの中で、1番から4番の上位4人で8打点を荒稼ぎ。打力の高さを見せたが、エース土合が8回にまさかの熱中症。延長10回にタイムリーを放った中村も足がつって交代と選抜にしては珍しいアクシデントとなった。最後は延長10回に逆転サヨナラ負けを食らったが、敗因は思わぬところに転がっていた印象で、改めて甲子園で1勝する難しさを感じさせられる試合となった。

https://www.youtube.com/watch?v=RGW1nE7aWX0

開幕戦で市呉と延長戦の死闘の末に敗れた至学館だったが、随所に持ち味は発揮。新美と川口のタイプの違う両投手と機動力を絡めた攻撃で終始試合をリードしていた。夏は東邦や中京大中京ら強豪私学を押しのけて戻ってきたい。

https://www.youtube.com/watch?v=rWPvroPA4KI

高田商業・宇部鴻城はともに初戦で4強入りした秀岳館・大阪桐蔭の前に力負け。ビッグイニングを作られて苦しい戦いとなった。高田商業は夏に向けて天理・智弁学園の強力打線にいかに対していくか。エース左腕古川を中心とした守備を武器に立ち向かっていく。宇部鴻城は4番ショートの嶋谷というスタープレーヤーがおり、ここ数年は甲子園での経験も十分積んでいるだけに、早稲田・荒武、百留ら左腕投手陣が踏ん張って再び夏の舞台を目指したい。

https://www.youtube.com/watch?v=dxNsK8TgWMU

https://www.youtube.com/watch?v=rblr36T2vu0

帝京第五は初戦で前年夏王者の作新学院と対戦。小柄ながら力のある左腕・岡元が果敢に挑むも序盤から配球ミスで失点を重ねてしまった。打線も持ち前の選球眼で作新の左腕・大関を攻め立てたが、再三のチャンスを逃してしまった。だが、9回に1点を返した粘りは夏につながっていきそう。1985年の選抜準優勝投手の小林監督(ロッテ)のもと、帝京第五の強豪への道は夏へと続いていく。

https://www.youtube.com/watch?v=BO9y0hUZJyg

21世紀枠で出場した3校はともに初戦敗退となったが、甲子園に確かな足跡を残した。

49回大会の準優勝以来の出場となった高知・中村は前橋育英の分厚い投手陣の前に打線が沈黙。しかし、技巧派右腕・北原は多彩な変化球を武器に好投。2013年夏の王者を5点に抑え込んだ。打線も最終回に粘り強さを発揮して1点を返した。3番の一圓の打撃が光った。

https://www.youtube.com/watch?v=tprFNheTldA

不来方は東海王者・静岡と対戦。初回にいきなり速球派左腕・池谷の立ち上がりをとらえて先制するなど鍛え上げてきた打撃を披露。9安打で3点を奪った。部員わずか10人ながらエースで4番の小比類巻を中心に一枚岩の戦いを見せた。夏は盛岡大付や花巻東など強豪ひしめく岩手を勝ち抜けるか注目される。

https://www.youtube.com/watch?v=YX5yokx0zrs

昨秋の岐阜チャンピオンの多治見は常連校・報徳学園と対戦。初回から報徳の足を絡めた攻撃に翻弄されて失点を重ねる展開。打線も報徳の長身右腕・西垣のフォークボールにタイミングが合わずに21-0とまさかの大差で敗北した。野球の怖さを思い知らされる結果となったが、それでも大舞台を経験できたのは事実。夏に再び戻ってくることが期待される。

https://www.youtube.com/watch?v=v9rz4yelonk

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