2019年春の選抜・甲子園大会前予想

2019年

前年は大阪桐蔭が圧倒的な力で春夏連覇を達成。金足農・吉田(日本ハム)の快投もあり、スター選手が甲子園を沸かせて異常な盛り上がりを見せた。そこから1年経ち、新チームでの選抜を迎えることとなったが、前年の大阪桐蔭のような突き抜けたチームは不在。その中でV候補の一番手に上がるのは、前年夏のメンバーを多く残す北信越王者の星稜になりそうだ。

V候補筆頭

星稜の強みはなんといっても奥川(ヤクルト)-山瀬(巨人)のバッテリーだろう。前年の春夏と聖地を経験した奥川は140キロ台後半の伸びのある速球と高速スライダーを武器とする本格派右腕。昨年までは好投手の一人という位置づけだったが、この秋の戦いで一気に世代屈指の右腕に上り詰めた。山瀬との息の合ったバッテリーを崩すのは容易ではない。

打線は記録的な猛打で石川大会を制した前年のチームから、メンバーが入れ替わったものの、破壊力場決して劣らない。1年生からメンバー入りした内山(ヤクルト)に知田と若い中軸の周りを東海林、福本、打撃もいい奥川ら上級生が固め、神宮では広陵、高松商といった地区の優勝校を圧倒した。従来の手堅さにパワーも加わり、充実の陣容となっている。

2015年には敦賀気比が福井勢として初優勝を達成。ライバル県に先を越された悔しさをばねに、紫紺の優勝旗を奪いに行く。

二番手集団

星稜を追う2番手集団もスキがなく、後を追う。

昨秋、突如として快進撃を見せ、星稜を神宮決勝で倒したのが札幌大谷。秋の北海道を初めて制すると、神宮大会ではあの駒大苫小牧以来となる北海道勢としての全国優勝を達成した。その野球の中身を見ていくと、「したたかな」印象が強い。中高一貫で指導体制を築いていることで、選手の特性に合わせた指導ができており、スター選手がいるわけでないが、投打ともに適材適所で役者がそっている。

打線は攻撃的な2番釜萢を置いたことで、つながりが増し、4番西原、5番石鳥といったパワーヒッターの前に初回からランナーをためて回す場面が増えた。北海道大会では逆転勝利が、神宮では先行逃げ切りが多く、多彩な勝ちパターンを持ったチームと言える。ただ打つだけでない、バント・機動力を絡めた野球で局面を打開できるのが強みだ。「柔」も「剛」も兼ね備えた印象で、いい意味で初出場らしさは全くない。

また、投手陣も球威のあるエース西原に加えて、神宮大会であわやノーノ―の快投を演じた右サイドの太田や1年生の阿部、増田とタイプの違う投手が次々に登板し、好投を見せた。相手打線のタイプに応じて、投手起用をズバズバ的中させる船尾監督の手腕が素晴らしかった。西原は神宮決勝で星稜打線を1安打1失点で完投。甲子園での快投に期待がかかる。

投打に層の厚い「新・北の王者」が初出場での栄冠奪取に燃えている。

一方、神宮準決勝で星稜に敗れた高松商も3年ぶりの選抜出場で上位を伺う。神宮を制覇し、選抜でも準優勝を達成した3年前のようなタレント集団ではないが、身の丈に合った守りの野球ができる強さが彼らにはある。

エース香川は細身の体格からキレのあるボールを投じる好左腕で、秋の大会では故障を抱えながらも力投して四国大会制覇に貢献した。速球派右腕・中塚のめどが立ったことも心強く、左右2本看板を形成。3年前と比較しても投手力は引けを取らない。また、大塚-谷口の二遊間を中心に守備も安定しており、ディフェンス力の高さは大会随一だ。

打線は大物うちこそいないものの、コンパクトな振りで後ろにつなぐ打者が多く、得点力は決して低くない。主将を務める1番飛倉、パワーのある主砲・立岩を中心に、着実に4点以上は奪いそうな打線だ。名将・長尾監督に率いられた四国王者が3年前に果たせなかった全国制覇に挑む。

神宮大会で星稜にコールド負けを喫した広陵だが、投打ともポテンシャルは非常に高い。

エース河野は小柄な体格からは予想もつかない球威のあるボールを投じ、MAXは140キロ台後半をマーク。ボールの力で打者のバットを押しこむことができる右腕だ。同じく本格派の右腕・森、長身左腕・石原の両投手もそれぞれボールの質は一級品であり、安定感が備われば一気に河野に追いつく可能性を秘めている。力のある3投手を中井監督がどう使い分けるか。

打線は昨秋の中国大会準決勝で創志学園のプロ注目右腕・西(阪神)を終盤の集中打で一気に沈めたように、広陵らしいつながりの良さを持つ。1番宗山、2番中富、3番金澤という打って走れる上位打線を軸に、機動力と長打力を兼ね備えた攻撃陣は相手にとって脅威だ。神宮で星稜の奥川に歯が立たなかったが、その悔しさをばねにジャンプアップを狙う。

近畿王者の龍谷大平安ももちろん優勝争いに絡んでくる。昨年甲子園通算100勝を達成したメンバーからは主将の水谷しか残らなかったが、チーム力を落とすことなく戦い抜いた。

エース野沢は抜群の制球力とキレを誇る左腕で、投球の組み立てが多彩。近畿大会では強打の履正社打線をわずか3安打で完封しており、技の投球で強打者をきりきり舞いしてみせた。近畿地区でも屈指の実力派左腕と言えるだろう。カーブが武器の左腕・豊田も力があり、左の強力2枚看板でマウンドを守る。大型右腕・橋本などほかにも有望な投手が控えており、連戦にも不安はない。

野手陣は昨夏を経験した主砲・水谷を軸に、成長株の1年生スラッガー奥村、巧打の6番三尾と様々なタイプの打者が並ぶ。決して派手さはないが、近畿決勝で逆転サヨナラ勝ちを収めたように勝負強さが光る打線である。特に奥村は近畿大会準々決勝でサヨナラ打を放ったように、ここ一番で一打を放つ姿は、プロ入りした兄(ヤクルト)の姿が重なるところがあった。

ここ数年安定した強さを見せる龍谷大平安。神宮で乱れた守備力が整備できれば5年ぶりの優勝も見えてくるはずだ。

明石商も夏春連続の出場。狭間監督の元で兵庫大会の上位常連となったチームが最盛期を迎えている。

投手陣は宮口・中森(ロッテ)の右腕2枚看板が安定。中森は1年生から甲子園のマウンドを経験しており、140キロ台中盤の速球に多彩な変化球を交える投球は上級生に混じっても引けを取らないものになっている。3年生右腕・宮口は抜群のコントロールを誇り、安定感では中森の上を行く。そのほかにも左腕・杉戸ら多彩な陣容をそろえており、大会でも指折りの投手陣を形成する。

投手陣を支える攻撃陣は、狭間監督の多彩な攻撃に応えられる柔軟さを併せ持つ。こちらも1年生から起用されている1番来田(オリックス)を筆頭に、捕手ながら2番を務める水上(楽天)、主将で勝負強い打撃を見せる3番重宮、投手も務めるスラッガー安藤と役者がそろう。ランナーが3塁に進めが伝家の宝刀スクイズを駆使し、着実に1点を奪ってくる。接戦になればなるほど強さを発揮するチームだ。

筑陽学園は昨秋に初めての九州王者に輝いた。2003年に同校を初めて甲子園に導いた江口監督の元、選抜初出場ながら優勝争いに絡む力を持つ。

投手陣は力のある3投手でマウンドを守る。エース西は3人の中で最も安定感があり、抜群のコントロールで試合を作る。試合終盤を締めくくる右腕・西舘はストレートの力に最も威力があり、角度もあるため相手打者にとっては厄介だ。スライダーの光る左腕・菅井と合わせ、3者3様の投球を見せる3人の継投で終盤まで主導権を握り続ける。

打線は、ともに親が甲子園決勝経験者の中村(西日本短大付で1992年夏優勝)と福岡(樟南で1994年夏準優勝)の2人を中心にタレントが揃う。中村は打率こそ低かったものの、思い切りのいいスイングを見せ、1番として突破口を開く。長打力のある福岡やシュアな打撃の弥冨らの中軸にいかにスコアリングポジションで回して得点を積み重ねたい。

投打に層の厚さを見せるチームが優勝戦線をかき回すか。

関東準優勝ながら、高い地力を誇るのが春日部共栄。決勝戦こそ桐蔭学園に先行を許して逃げ切られたが、総合力ではトップクラスに位置する。

エース村田は最速146キロの速球を武器とする本格派。自慢のスピードボールを活かして、多彩な変化球とのコンビネーションで打ち取っていく。捕手・石崎との相性も抜群で、相手の狙いを外して打たせて取るなど、柔軟さも併せ持つ。秋の試合をほぼ一人で投げ抜いたようにスタミナも十分であり、本多監督が自信を持って送り出すエースだ。

打線は関東で屈指の破壊力を秘める。関東大会準々決勝では横浜のプロ注目左腕・及川(阪神)から2ホームランを放つなど、速球に全く力負けしないのは魅力的だ。打線でも4番村田、5番石崎のバッテリーが中心にはなるが、下位までシャープは振りが徹底されており、しかもここぞの場面での集中力が凄まじい。もともとは手堅い攻撃が持ち味のチームだが、今回は強打で局面を打開することも可能だ。

好バッテリーを中心に埼玉の強豪が全国制覇を目指す。

東邦は2年連続の選抜出場。昨年は初戦敗退に終わっており、雪辱に燃える。

打線は今年も強力。特に3番石川(中日)は天性の長打力と勝負強さを誇り、1年秋の公式戦では選抜を決める逆転サヨナラ2ランも放っている。そのほかにも左の主砲・熊田や巧打の光る松井・杉浦、下位打線ながら一発放り込む力を持つ吉納と多士済々な陣容を誇る。打線の力では間違いなく、出場校中でも5本の指に入るだろう。前年夏は花巻東の技巧派左腕・田中大にひねられたが、同じ轍を踏むつもりはない。

課題は投手陣。石川を軸に考えてはいるが、昨秋の戦いでは安定感抜群とは言い難かった。やや野手投げであり、理詰めの投げ方というよりはセンスでコーナーに投げ分けている感はある。良い方にはまれば、無双しそうな感はあるが、果たして。左腕・植田やサイドの奥田などタイプの違う投手も使い分けながら、勝ち進んでいきたい。

平成最初の王者が平成最後の栄冠をつかめるかどうかは一にも二にも投手力次第と言えそうだ。

ダークホース

桐蔭学園は昨秋に関東大会を24年ぶりに制覇。勝ち上がるたびに力をつけていった。

投手陣の柱は左腕・伊礼。左スリークオーターでプレートの目いっぱい1塁側を踏んで、右打者のインサイドを突いてくるため、非常に横の角度がある。決め球のスライダーを有効に活かしながら、安定して試合を作ることができ、監督の信頼が厚い。球威のある右腕・山崎も成長株であるが、まずは伊礼の先発で間違いないだろう。

打線の軸は3番ショートの森(DeNA)。チームを引っ張る世代屈指の内野手は、昨秋の関東大会の常総学院戦で逆転サヨナラホームランを放つなど、スター性は抜群だ。走攻守3拍子揃った彼の前にいかにチャンスを作って回せるかと下位打線の底上げが課題か。神宮大会で1得点に終わり、コールド負けを喫した屈辱を強打で晴らしたいところだ。

習志野は2009年以来10年ぶりの選抜出場。試合巧者が久々の選抜で暴れるか。

投手陣はタイプの違う複数の投手を擁するが、エースは本格派右腕の飯塚。伸びのある真っすぐは相手打者のバットの上を通過するほどの回転の良さを見せる。技巧派左腕・山内とアンダーハンドの岩沢が試合を作り、軟投派の球筋に慣れたところで飯塚がリリーフするのが必勝パターンと言えそうだ。名将・小林監督の継投のタイミングが勝負のカギを握る。

打線は、大物うちはいないものの、細かい攻撃のできる嫌らしさを持つ。1番竹縄、2番小沢、3番根本の上位打線は犠打、盗塁、エンドランなど多彩な攻撃に対応でき、初回から相手守備陣をかき回す。まだ秋の段階では打順が定まっていない印象もあり、冬場の練習で新たに選手が出てくる可能性も大いにある。こちらも小林監督の起用に注目が集まる。

国士舘も2009年以来10年ぶりの出場。過去の選抜で強さを発揮してきた名門が真価を発揮できるか。

投手陣は白須、山崎の技巧派右腕2人でまかなう。昨秋の東京大会ではすべての試合を3点以内に抑えており、安定感が光る。白須が先発して山崎がリリーフするのが、基本線。2人とも変化球主体に打たせて取る投球であるため、内野陣の堅守も大事になるが、黒川-鎌田の二遊間を中心に安定している。ディフェンス面に大きな不安はないと言えるだろう。

打線は長打力はさほどではないが、国士舘らしい機動力を活かした攻めで終わってみれば少なくとも4~5点は奪っている印象だ。。黒川、松室、渡辺伸の上位打線は特に俊足ぞろいであり、彼らの出塁が相手投手に圧力をかけるだろう。下位打線にも勝負強い鎌田ら好打者が控えており、打線全体で穴となる打順はない。総合力の高い攻撃で、活路を見出していきたい。

市立和歌山は近畿大会ベスト8ながら優勝した龍谷大平安に善戦したことが評価され、選出された。

2年生エースの岩本は左腕から多彩な変化球をコーナーに投げ分けて打たせて取る投球が持ち味。ストレートのスピードは130キロ台だが、手元で差し込むキレがあり、見た目以上に打ちにくい投手だ。2番手には4番も務める本格派右腕の柏山が控えており、連戦への不安もない。内外野の守備陣も鍛えられており、ディフェンス力は大会でも上位だ。

一方の打線は、上位陣には力のある打者が並ぶ。シュアな打撃の1番山野、意外性のある2番下井田が出塁し、パンチ力のある3番緒方と主砲・柏山で返すのがパターン。特に緒方はチャンスでの勝負強さが光り、チームが困ったときに貴重な一本をたたき出す。下位打線がやや弱いのが気がかりであり、ここを強化できれば上位進出も十分可能だ。

智辯和歌山は4季連続の甲子園出場。中谷新監督になって初めての甲子園を迎える。

打線は、センターラインに捕手・東妻(DeNA)、ショート・西川、セカンド・黒川と昨年の準優勝経験者が並び、打線でも中心を担う。シュアな打撃でかつ長打力のある3番黒川をパンチ力のある2番西川と4番東妻で挟み、この3人でまずは投手陣を崩しに行く。そのほかにも新2年生の1番細川(日本ハム)、巧みなバットコントロールを見せる5番根来など強打者が並び、得点力は昨年に劣らないだろう。

一方の投手陣は昨秋の近畿大会準決勝で明石商に0-12とコールド負けを喫した。右本格派の池田陽、左の技巧派・池田泰を中心に戦ったが、捕手・東妻のインサイドワークも含めて厳しい現実を突きつけられた。昨年は苦しいところでエース平田が踏ん張って勝利を呼び込んできたこともあり、今年も早く軸となる存在が出てきてほしいところだ。

啓新は春夏通じて初めての甲子園出場。北信越大会では星稜と引き分け再試合を演じた実力校だ。

投手陣は長身右腕・安積とサイド右腕・浦松の2本柱で成り立つ。安積はオーソドックスなタイプの右腕だが、コントロールよく内外・高低に投げ分けることができ、試合を壊さない安定感がある。安積の球筋に慣れたところで、変則サイドの浦松が登板するため、相手打線にとってはやりにくい投手陣だ。浦松のストレートは非常にキレがあり、打者一巡目はなかなか攻略は難しいだろう。

一方の打線もしぶとい打者が並び、簡単には凡退しない。チーム打率以上に厄介な打線だ。3番穴水、4番竹原はポイントゲッターとしての期待が高く、相手投手が落ち着く前の初回に好打を見せる。下位にもスイッチヒッターの古川など面白い打者が並んでおり、勝負所での大事な一本が期待できそう。昨秋と同様に競り合いでの強さを発揮できるか。

強打掲げ上位へ

八戸学院光星は昨秋、7年ぶりに東北大会を制覇、夏春連続の甲子園出場で、上位進出を狙う。

打線の要は3番ショートの武岡(ヤクルト)。昨夏の甲子園でも活躍した好打者は、確実性と長打力を兼ね備えており、この世代の野手ではトップクラスの実力者と言えるだろう。4番近藤も広角に長打を打ち分ける好打者で、このコンビを封じ込むのは容易ではない。光星学院らしい鋭いスイングで全国の好投手に襲い掛かる。

投手陣の軸はエースの後藤。ストレートにスライダー、カーブを交えて打たせて取るオーソドックスなタイプだが、抜群のコントロールで昨秋の防御率は1点台をマーク。大事な試合では完投勝利を収めてきたようにスタミナにも不安はない。そのほかにもサイド右腕の山田や左腕・横山ら様々なタイプの投手がいるが、選抜は後藤を中心に回りそうだ。

盛岡大付は2年ぶりの選抜出場。今年も破壊力抜群の打線を引っ提げ、大舞台に乗り込む。

今年の打線は、植田、比嘉らホームランバッターを並べた2年前と比較して長打力では劣るものの、つながりの良さと振りの鋭さでは全く引けを取らない。1番・峰、3番岡田を中心に下位まで切れ目なくつながっていき、強打で局面を打開することができる。前年から経験豊富な小野寺、及川をどの打順に持ってくるかなど、楽しみがつきない打線だ。

一方、投手陣はエース左腕の阿部が柱となる。小柄な体ではあるが、低めに丁寧に多彩な変化球を集め、秋の東北大会では3試合を完投。試合を任すに十分な信用を得た。後ろには木内、大谷といった本格派右腕が控えており、終盤の短いイニングを阿部との特色の差でかわすことができそうだ。投打ともに今年はつながりが良く、再びの快進撃に期待したい。

山梨学院は吉田監督就任以来着々と力をつけ、今回は夏春連続の甲子園出場。強打を引っ提げて今度こそ上位進出を狙う。

打線は、昨夏の甲子園でホームランを放った野村を中心に例年以上の破壊力がある。野村は「山梨のデスパイネ」の異名を持つほどに、ツボにはまった時の打球は果てしなく飛んでいく。2番菅野、3番相沢との3人の並びは関東大会で対戦した投手達を震え上がらせた。菅野が打ってチャンスを拡大する場面が多く、1番渡辺の出塁率がカギを握りそうだ。

投手陣の中心となるのは打線でも3番を務める相沢。際立ったボールはないものの、緩急とコントロールを武器に巧みに相手をかわすことができる。そのほかにも、左腕・駒井、サイド右腕の佐藤、技巧派の中込と多彩な陣容が揃う。昨夏は高知商との壮絶な乱打戦で敗退しただけに、今回は先手を取った継投でリズムをつかみたい。

履正社は昨年は大阪桐蔭の後塵を拝したが、今年は2年ぶりの選抜出場権を獲得。強力打線で初の大旗を狙う。

これまで犠打を駆使した手堅い攻撃が目立った履正社だが、安田(ロッテ)を擁した2017年あたりから強攻策も目立つようになってきた。今年も3番小深田(DeNA)、4番井上(阪神)という左右の大砲を中心に、核弾頭・桃谷、巧打の内倉、打撃もいい捕手・野口と好打者が並ぶ。過去の履正社の打線と照らし合わせても最高レベルの力を有しており、大会随一の攻撃力を誇る。

打線と比べて懸念されていたのがとうしゅじんだが、昨秋の戦いを通じて左腕・清水が急成長。近畿大会準々決勝では福知山成美打線をわずか3安打で完封し、チームの選抜行きを決定づけた。躍動感のあるフォームから繰り出す速球は伸びがあり、スライダー・カーブとのコンビネーションも冴える。右腕・植木も計算が立っており、層の厚さにも問題なし。打線の援護があるだけに、最少失点で切り抜ける投球をしていきたい。

明豊は選抜大会は今宮健太(ソフトバンク)を擁した2009年以来10年ぶりの出場。川崎監督になってからは初めての出場となる。

打線は上位打線を中心にタレントぞろい。九州大会4試合で7ホームランと破壊力がある。1番主将の表はパンチ力があり、初回から一発長打で主導権を奪う。中軸の野邉、布施はともに速球・変化球ともに柔軟に対応する打撃技術を持ち、相手の決め球を狙い打っていく。下位にも打率4割越えの成田が控えており、チーム打率は3割7分6厘をマーク。3試合で25得点をたたき出した2017年夏と比較しても全く引けを取らない打線である。

投手陣は2年生左腕の若杉が軸となる。キレのある変化球を武器とする技巧派で、スライダー・チェンジアップで相手のタイミングを外すのがうまい。決してストレートのスピードが飛びぬけているわけではないが、昨秋はイニングを上回る三振を奪ったように、手元でのボールの伸び、キレが素晴らしい投手だ。そのほかにも大畑、寺迫といった右の本格派が控えており、厚い投手層を誇る。

好投手擁す

津田学園は本格派右腕・前(オリックス)を擁して17年ぶりに選抜出場。2年前の夏を経験したメンバーも残っており、充実した戦力を誇る。

前は182㎝、87kgの恵まれた体格から繰り出す威力のある速球が持ち味。スピードだけでなく球威・キレもある本物の「真っすぐ」であり、まるで大学生・社会人の投手が投げているような迫力を併せ持つ。多彩な変化球も駆使して秋の大会では投球イニング数をはるかに上回る三振を奪っており、対戦相手にとっては攻略困難な投手だ。

打線は1年夏に甲子園を経験した石川、藤井に東海大会で3試合連続ホームランを放った前川で形成する中軸が充実。特に前川は長打力があるだけでなく、確実性と選球眼も兼ね備えており、チャンスメークもポイントゲッターもできる頼れる4番だ。下位打線にも打撃のいい前が控えているが、やはり得点のカギは中軸が握っているだろう。

横浜は夏春連続の甲子園出場。未完の大器と言われた左腕・及川(阪神)がエースに成長し、関東8強からの選出となった。

及川は1年生からエースとしての期待がかかったが、イップスによる制球難で苦しい時期を過ごした。しかし、2年夏を前に復調気配を見せ、甲子園の花咲徳栄戦でも好投。新チームになってからは150キロを記録した速球とスライダーを武器に勝ち上がった。ただ頼れる球種がこの2つのみであり、どちらかの制球が崩れると途端に単調な投球になる。関東大会準々決勝の春日部共栄戦でコールド負けを喫しており、この課題をどこまで克服できているか。

一方の打線は下級生がスタメンに5人並ぶ若い布陣となった。昨夏の甲子園をランニングホームランを放った内海を筆頭に、強打者というよりは好打者タイプが並び、つながりの良さで勝負する。内海、冨田、度会の3人はいずれも公式戦の打率は4割を超えており、この3人でチームの打点の半分をたたき出してきた。やはり1,2番の出塁がカギを握ることになりそうだ。

福知山成美は小柄なエース小橋を中心に今年は守りの野球で選抜出場権をGET。井本監督になってからは初の甲子園で躍進を誓う。

小橋は回転のいい速球を武器とする好投手。内外に投げ分けるコントロールも抜群で、ストレート主体に投球を組み立てることが可能だ。2年春の練習試合ではのちに春夏連覇を達成する大阪桐蔭打線も2点に封じ込めて自信をつけた。小橋以外の投手陣の経験値が少ないのが不安材料だが、冬場の練習を乗り越えてどこまで力を伸ばしているか。

打線は従来の福知山成美の強打、強打のイメージとは異なり、今年は小技も駆使しながらの戦いとなる。前チームから主軸を務める東原はバットコントロールに優れた好打者であり、長打力こそないものの、巧みにミートしてヒットを積み重ねる。攻撃型2番人知とのコンビで初回から相手ディフェンス陣をかき回したい。2014年に続く龍谷大平安とのアベック出場となるが、今回は先に負けて帰るわけにはいかないだろう。

大分は夏2度の出場経験があったが、選抜は初めての出場。バッテリーを中心とした守りの野球で初勝利を狙う。

チームの中心となるのは、長尾ー江川のバッテリーだ。制球力抜群のエース長尾と強肩、インサイドワークが冴える江川が組む九州屈指のバッテリーは安定感抜群。九州大会でも2勝を挙げ、優勝した筑陽学園に対しても延長にもつれ込む好試合を演じた。相手の狙い球を外し、緩急もつけながら打たせて取る投球で、守りから攻撃のリズムを作る。

一方、打線は公式戦のチーム打率は3割6厘と決して目立つ成績ではないが、3番江川・4番中尾とポイントゲッターが定まっている分、チームとしての方針は明確だ。江川は九州大会3試合で11打数5安打と当たっていたように、好投手が居並ぶ選抜でも頼りになる存在だ。冬の間に下位打線の強化がそこまで進んでいるかが勝敗のカギを握りそうだ。

石岡一は21世紀枠だが、好投手・岩本を擁し、一般枠を食う力を秘める。

岩本は最速147キロの速球を武器とする本格派右腕。スライダー、カーブの精度も高く、要所ではチェンジアップで打者のタイミングを外してくる。大会出場校のエースの中でも確実に上位にランク付けされる好投手と言えるだろう。秋の公式戦では強豪・藤代に惜敗したが、全国の舞台でどれだけの投球を見せてくれるか楽しみな投手だ。

エースを援護したい打線は、秋の戦いではスタメンに2年生が6人並んでおり、川井監督曰く、「まだまだ流動的」である。その中でも4番を務める飯岡は選抜でおそらく主軸を担うことが予想される。打率こそ2割7分3厘だったが、パンチ力のある打撃で一発長打が期待でき、要所での一本でエースを助けたい。失点が計算できるだけに1点1点積み重ねる攻撃をしたいところだ。

旋風期待

市呉は2017年に続いての開幕戦登場となる。広島代表らしい機動力野球で今回も勝利成るか。

エースは技巧派右腕の沼田仁。右スリークオーターから3種類のスライダーを丁寧に投げ分け、内野ゴロの山を築く。四死球から崩れる心配はなく、相手打者との駆け引きがうまいのが特徴だ。沼田仁以外の投手にはまだ不安があるが、昨秋の大事な試合はほぼ一人で投げ抜いたようにスタミナの不安はない。選抜では沼田仁の完投が理想形になりそうだ。

打線は主将の沼田歩を中心に走ってかき回す野球で1試合平均7点以上を奪った。沼田歩は打って走れる好打者で、チーム唯一といっていい長距離砲でもある。大事な場面で確実に一本を出すことができ、頼りになる存在だ。ランナーが出ると、スチール、エンドランで相手バッテリーに圧力をかけ、多彩な攻撃で得点を重ねる。延長の激闘を制した2017年の戦いの再現なるか注目だ。

伝統校・米子東は粘り強い戦いぶりで昨秋は中国大会準優勝。1996年以来の選抜勝利を狙う。

エースは技巧派左腕・森下。昨秋の公式戦は失点こそ多かったものの、最後まで粘り強くコーナー・低めを突く投球で、ほとんどの試合を一人で投げ切った。変化球の種類が多く、投球の引き出しが豊富なのが持ち味だ。捕手・長尾の好リードも光り、1試合の中で巧みに組み立てを切り替えてくる。選抜でも技巧派の真骨頂を見せたい。

打線は1番岡本(巨人)、主砲・福島悠を中心に、従来の鳥取代表と比較してパワフルさが光る。岡本は188㎝の長身から迫力あるスイングで強烈な打球を放つ。秋の打率は3割2分3厘を記録しており、確実性も兼ね備える。岡本が出塁して同じくパワーヒッターの4番福島悠が返すのが得点パターンで、この2人の存在がチーム打率2割4分2厘以上の迫力と得点力をもたらしている。

松山聖稜は昨年に続いて2年連続の出場。3度目の正直で甲子園初勝利を狙う。

2015年夏はアドゥワ(広島)、昨年春は土居(ロッテ)とともに絶対的エースを擁しての出場だったが、今回は2年生エース平安山が軸となる。昨秋は先発に抑えに都フル回転した右腕は、安定感ではチーム随一。右腕・根本との継投策で大事な試合をものにしていった。根本は188㎝の長身から繰り出す角度のある速球が持ち味。選抜までにコントロールの精度をどれだけ磨けているか。

打線は昨年と同様に足の速い選手が多く並ぶ。1番大村・2番坂本はともに3割5分近い打率で高い出塁率を誇り、ミート力と選球眼で相手投手を苦しめる。昨年の選抜も経験した4番折田を中心に大物うちはいないが、後ろへつなぐ意識は非常に高い。秋の戦いが終わってから新しいメンバーとの入れ替わりも頻繁に行われており、ベンチメンバーも含めて誰が出ても遜色はない。

日章学園は夏は2002年に出場があったが、選抜は初めての出場となる。

投手陣は石嶋→寺原の右腕2人での継投が基本線。石嶋は球速こそ120キロ台だが、キレがあるため空振りを取れる。腕が遅れてくるため、相手打者にとってはフォームも目くらましになっており、見た目以上に打ちづらい投手だ。寺原はチェンジアップをつかった緩急が魅力であり、宮崎大会では防御率0点台で投げ抜いた。タイプの違う2人をフルに生かし、失点を防いでいく。

打線は毎年強打が魅力だったが、昨秋の戦いはやや爆発力にかける面もあった。軸となるのは4番平野。昨秋の九州大会準決勝の明豊戦では3-10とコールド負け寸前の7回に気迫の一打で併殺崩れをもぎ取り、選抜出場につなげた。上位打線は強打の2番深草、打撃もいい5番石嶋を中心に強力。下位打線の整備が進めば、さらに得点力は増しそうだ。

札幌第一は神宮大会枠で2年ぶりの代表切符を獲得。3度目の出場で選抜初勝利を狙う。

投手陣は絶対的エースはいないが、枚数は豊富。本格派右腕・野島、サイド右腕の近藤、左腕・畠山とタイプの違う投手の継投でしのいでいく。野島は恵まれた体格から繰り出す球威のあるストレートを武器としており、まずは彼のストレートで相手打線を封じ込めてから、継投で目先を変えていきたいところだ。

打線は、公式戦8試合で7ホームランを放ったように破壊力抜群。菊池監督も自信を見せる。打率5割の3番大坪、昨年から主軸を務める4番村田、俊足も光る5番大宮で組む中軸は確実性と長打力を兼ね備えており、チームの得点の大半をたたき出した。過去の選抜では木更津総合、健大高崎と関東勢に苦杯をなめてきた。今回も奇しくも関東勢の山梨学院が相手であり、今回は勝利したいところだ。

熊本西は夏は1985年に出場経験があるが、選抜は初出場となる。

エース霜上は右スリークオーターから繰り出す回転のいい速球とスライダーで打たせて取る投球が持ち味。秋の戦いはほとんど一人で投げ抜き、主将としてチームを牽引した。投手としての成績で際立つ数字はないが、大事な場面でコーナーに投げ切る技術と精神力を兼ね備えており、実戦に強い投手だ。

打線はコンパクトなスイングが光り、チーム打率は3割4分7厘を記録。長身の4番堺はリーチの長い打撃で、外角のボールも巧みにはじき返す。下位にも俊足の7番末永、高打率の9番久連松と味のある打者が並んでおり、得点力は高い。機動力も絡めて序盤から先手を奪い、エースのピッチングを楽にしたいところだ。

富岡西は野球どころの阿南市から初めての甲子園出場となる。

投手陣の柱は昨秋の公式戦を一人で投げ抜いた右腕・浮橋。最速140キロの速球に加え、スライダー・カーブ・チェンジアップ・カットボール・ツーシームと多彩な変化球で狙い球を絞らせない投球が光る。相撲、円盤投げなど多種目を経験してきたことで体の柔軟性も高く、しなやかなフォームからキレのあるボールを投げることができる。

打線は、小川監督が打ちだすノーサイン野球で活路を見出す。練習で細かい状況設定を行い、選手同士が状況に応じて自らアイコンタクトでサインを出し合う大人の野球を展開する。打撃でも4番を務める浮橋のまわりを高打率の3番坂本、5番吉田が固め、勝負所ではエンドランを仕掛けて得点を奪ってきた。全国の舞台でどこまで通用するか非常に楽しみだ。

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