2019年選手権決勝 履正社vs星稜(14日目第1試合)

2019年

大会14日目第1試合

履正社

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 3 0 0 0 0 2 0 5
0 1 0 0 0 0 2 0 0 3

星稜

 

履正社  清水→岩崎

星稜   奥川

選抜の再戦となった強力打線と剛腕の激突は、履正社打線が奥川(ヤクルト)を攻略。6試合連続2桁安打の豪打で大会NO.1投手を崩し、大阪勢としては昨年の大阪桐蔭に続いて2年連続の全国制覇を成し遂げた。

試合

履正社は準決勝まで5試合連続の2桁安打と打線好調。霞ヶ浦・鈴木(広島)、津田学園・(オリックス)、明石商・中森(ロッテ)とドラフト候補の剛腕をことごとく沈めてきた。その破壊力の源はやはり、選抜での星稜・奥川との対戦で完封負けを喫したことだろう。この経験を機に「試合の中での対応力」をテーマに好投手を打ち崩す術を極めてきた。

1番桃谷、3番小深田(DeNA)、4番井上(阪神)を中心に上位から下位までスキがなく、振りの鋭さも強さもトップクラス。一方、懸念されていた投手陣もエース左腕・清水と2年生の岩崎の2本柱が確立。特に準決勝で岩崎が完投勝利を収めたことで清水を丸々1試合温存できたことは大きい。決勝でいよいよ奥川とのリベンジマッチの機会が巡ってきた。

 

対する星稜は絶対的エース奥川を擁するが、破壊力ある打線と層の厚い投手陣の援護で奥川に負担をかけすぎずに勝ち上がってきた。奥川は3回戦の智辯和歌山戦で23三振を奪うなど、150キロ台のストレートに高速スライダー、チェンジアップは超高校級だ。大会序盤はやや調子の出きらない戦いぶりだったが、福本のサヨナラ弾で智辯和歌山との死闘を制したことで投打ともに状態が一気に上向いてきた。

打線は3番知田、4番内山(ヤクルト)の2年生コンビを中心にこちらも上位から下位まで当たっており、様々なタイプの投手に対応できる。元来手堅い攻撃が持ち味だったが、今大会は強攻で活路を見出す場面も多くみられ、強気の攻めでエースを援護したい。2回戦、準決勝と控え投手陣の奮闘も目立ち、そのぶん奥川も本調子で決勝の舞台に臨めそうだ。

 

焦点はもちろん履正社の強力打線vs奥川となる。1回表、ここまで5試合連続で初回にヒットを放っている1番桃谷をショートゴロに打ち取り、無難な立ち上がりに思われた奥川。しかし、2番池田がチェンジアップを狙ってレフト線にはじき返して3塁打とし、履正社がチャンスを迎える。星稜バッテリーにとってプレッシャーのかかる場面だったが、3番小深田はインコース攻めで、4番井上はスライダー主体の攻めで封じ、難を逃れる。

履正社の先発は準々決勝以来のマウンドとなる清水。1回裏、星稜の上位打線を3人で打ち取り、ボールは走っている印象だったが、2回裏につかまる。先頭の4番内山に三遊間を破られると、犠打で2塁へ進塁。2アウトからこの大会絶好調の7番岡田がストレートをとらえると、打球はライトフェンス直撃の2塁打となって星稜が大きな先制点を手にする。

1,2回と奥川の前に無得点の履正社だが、いずれもヒットは飛び出しており、選抜のように手も足も出ない印象ではない。先制点を奪われた3回表にいよいよ奥川攻略にかかる。2アウトから2番池田、3番小深田の2年生コンビが慎重にボールを選んで連続四球をもぎ取ると、打席には4番井上。前の打席で三振に取られたスライダーに的を絞ると、初球の高めに浮いたスライダーをバット一閃。打球は高々と舞い上がって左中間スタンドに飛び込み、履正社があっという間に逆転に成功する。

4番井上の狙いを絞った打撃も見事だったが、四球を選んだ池田小深田の選球眼も見逃せない。奥川のコーナーを突くボールに対してしっかり見極めができており、際どいボールはファウルでカットして星稜バッテリーを苦しめた。豪打に目が活きがちな履正社打線だが、ボールの見極めという基本ができていたことで活路を見出した。

今大会ここまでわずか1失点の絶対的エースが初めて打ち込まれた星稜。3回、4回と履正社の清水からチャンスメークするが、中途半端な走塁もあってなかなな得点に結びつかない。エースが打たれたことでチーム全体にやや動揺が走っている感は否めず。清水も伸びのある真っすぐとキレのあるスライダーを腕を振って投げ込んでいき、3-1と履正社2点リードで前半戦は終了する。

奥川も4回以降は踏ん張って得点を許さないが、履正社な毎イニングランナーを出していき、星稜にプレッシャーをかける。奥川がスライダーの制球にやや苦しんでいることもあったが、各打者がしっかりボールに目がついていっており、ストレートを力強いスイングではじき返すことで星稜バッテリーの選択肢を狭めていく。

3回以降無得点の星稜だが、こちらも毎回ヒットは飛び出しており、チャンスは作り続けている。7回裏、ようやく反撃が実を結ぶ。先頭の7番岡田の四球からチャンスメークすると、女房役の9番山瀬(巨人)がストレートを痛烈にとらえて左中間を破るタイムリー2塁打とし、1点を返す。スライダーをファウルした後でストレートに切り替えると読み切った山瀬の会心の一打であった。

なおも攻撃の続く星稜は2アウト1,2塁となって打席には3番知田清水のスライダーに対して、終盤になって徐々に左打者も目が慣れ始める。カウント1-2からカウントを整えに来たストレートをとらえると、打球はライトへのタイムリーとなってついに星稜が同点に追いつく。我慢の投球のエースに打撃陣が応えた。清水はここで降板し、岩崎が登板。岩崎は満塁とピンチを拡大するも、5番大高をセカンドフライに打ち取り、同点で耐えしのいだ。

追いつかれた履正社だが、序盤から奥川を攻め立て続けたことが8回に効果となって現れる。スライダーを見極め、ストレートにはタイミングが合う中で、星稜バッテリーもこの日は苦心の展開。履正社は先頭の5番内倉がインコース甘めに入ったスライダーを打って右中間を破る2塁打とすると、ここで履正社は犠打を選択。打って勝ち上がってきた履正社だが、ここは元来の手堅い顔がのぞく。

1アウト3塁となって主将の野口が打席へ。スライダーの制球に苦しむ奥川に対してセンターへの意識を失わない野口はカウントを取りに来たストレートを素直にセンターに返して勝ち越し点を奪う。決して簡単なボールではなかったが、重心がしっかり残ってセンターから逆方向へ打ち返す打撃はお手本と言えるものだった。

なおも犠打で2塁へ進塁させると。今度は9番岩崎が再びストレートをとらえてレフトへのタイムリーとし、5点目。投手が打者ということで星稜バッテリーにやや油断もあったか。この失点はなんとも重く星稜にのしかかった。履正社打線はこの回で6試合連続の2桁安打を達成。選抜で3安打完封を喫した姿を忘れさせるような猛打を浴びせた。

リードをもらった2番手の岩崎はカットボール主体の攻めで星稜打線に立ち向かう。8回裏には7番岡田にヒットは許すが、盗塁を野口が強肩で刺し、得点を許さない。対する奥川も9回表の履正社の中軸を気持ちのこもった投球で3人で抑え、試合はいよいよラストイニングへ。

9回裏、星稜は9番山瀬がスライダーをセンターに返して先頭打者出塁。点差が2点あるため、1番東海林には強攻策を選択も初球を打ってレフトフライに打ち取られる。しかし、好調の今井に代わってスタメンに起用された2番有松が意地のヒットでつなぎ、同点のランナーも出て、中軸に回す。最後まで食らいつく姿勢を失わない星稜だったが、最後は3番知田がインコースのカットボールを打たされてセカンドゴロ併殺でゲームセット。

履正社が強力打線で見事に選抜のリベンジを果たし、春夏12度目の出場で念願の頂点に輝いた。

まとめ

履正社はこれまでライバル大阪桐蔭の後塵を拝すことが多く、チーム力は全国トップレベルにありながら勝ち進めない時期が続いた。しかし、今年は奥川というライバルの存在がチーム力を大きく高め、歴史に残る強力打線で悲願の優勝を手にした。一発を放った4番井上を中心とした打線の振りの鋭さが、奥川をはじめとする数多くの好投手を飲み込んだ。また、大会を通して投げ抜いた清水岩崎の力投も素晴らしく、最後に星稜を下す原動力となった。

強力打線に目が活きがちだが、犠打を駆使する手堅さ、投手陣を支えた堅い守りも見逃せない。もともと手堅い野球が持ち味の履正社の土台は、「走塁・犠打・堅守」の3つであり、設備が整わない時期から激戦区・大阪をいかに勝ち抜くかという知恵が集約された野球であった。今大会で甲子園通算33試合を戦って逆転負けが1試合もないという数字は目立って取り上げられてはいないが、特筆すべき数字である。手堅さと力強さを兼ね備えた大阪の強豪が、新たな王者として聖地に君臨した。

 

対する星稜の戦いぶりも素晴らしかった。この日は奥川が苦しい投球となったが、打線が粘って反撃し、一時は同点に追いついて履正社を慌てさせた。奥川も打ち込まれはしたものの、投げるボールは甲子園の歴史上でも屈指のものであり、山瀬とのバッテリーは間違いなく大会No.1と呼べるものだった。

総合力の高さでは星稜史上でも最高のチームであり、3回戦の智辯和歌山戦の激闘は球史に残る戦いであった。名将・山下監督から指揮を受け継いだ林監督のもとで新たな伝説を作った2019年夏。石川県勢初の頂点が確実に近づいてきていることを確信させる戦いぶりであった。

2019年夏甲子園 決勝 履正社vs星稜 試合ハイライト – YouTube

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