2021年春の選抜甲子園振り返りまとめ

2021年

コロナウイルスの影響で遠ざかっていた甲子園大会が1年の時を経て戻ってきた。一つ上の世代の思いも背負って戦った選手たちによる2021年の選抜は、これまでにない「特別感」のある大会であり、私たちに幸福感と感動をもたらすには十分なものであった。

大会を通じて、最も注目を集めたのは、「球数制限」の適用だっただろう。本来なら2020年の選抜から導入予定だったが、今大会で初めて「顕在化」することとなった。トーナメントのやぐらの後半部に登場した中京大中京などにとってはかなり不利な日程になったことと、その中京大中京のエース畔柳(日本ハム)が準決勝の舞台で故障したことを考えると、一律で球数を制限するという現制度には再考の余地があると改めて感じさせられた。

投球数だけに執着することなく、球数を投げてもけがをしないような投げ方を教えること、日程感覚を空けること、議論を続けることによって怪我をさせるような投手起用をしにくい雰囲気を作ることが大事であり、総合的なアプローチで「怪我を防ぎつつも選手の実力を伸ばすこと」を考えなくてはいけないと思う。怪我の防止と選手の実力向上が両立できて初めて野球界の取り組みが意味あるものだったと言えるだろう。

そんな中でも、大会注目の好投手たちが躍動。先に述べた畔柳をはじめ、天理・達(日本ハム)、市立和歌山・小園(DeNA)ら本格派右腕や東海大相模の優勝左腕・石田(巨人)などがハイレベルな投球を見せた。絶対的エースが君臨するチームにおいても、控え投手の育成の意識が高まってきていたのは、球数制限の恩恵だろう。

地区別でみると、満遍なく多くの地域からベスト8進出校が出た。ただ、今大会から導入されたフリー抽選の影響で、市立和歌山・智辯学園・大阪桐蔭・東播磨と近畿勢4校が同じブロックに集結するなどやや偏りは見られた。夏の大会に比べて出場校の少ない選抜ではこういう状況もえてして起こりやすいかもしれない。例年以降も継続されるのか注目だ。

東海大相模は10年ぶり3度目の選抜制覇を達成。エース石田に石川、求と3人の投手を強力打線が支える構図は10年前の優勝とどこか重なるものがあった。関東5校目の選出ということもあって大会前の下馬評ではトップに来ることはなかったが、個々の能力の高さから不気味な存在だったのは間違いない。その大会初戦は奇しくも前年秋に敗退した東海大甲府との再戦になったが、互いの堅守が光る好ゲームを石川-石田の継投でものにし、波に乗った。

2回戦ではもう一人の右腕・求が先発して、鳥取城北打線を0点に抑える好投。甲子園慣れしている門馬監督だけあって、上位まで勝ち進むことを逆算しての投手起用だったのだろう。勝負所の準々決勝、準決勝ではエース石田のストレートがうなりを上げ、高めのボールで空振りを奪う投球で2試合連続完封を達成した。

そんな中で誤算だったのは主将・大塚の離脱であった。急性胃腸炎で体調不良に陥り、準々決勝から出場できない事態となってしまったのだ。しかし、2番を監督の綛田が、ショートを深谷がバックアップすると、危機感による意識の変化があったか、序盤から打てるボールにかみつく東海大相模の「アグレッシブベースボール」が目を覚ました。1番門馬は準々決勝からの3試合で13打数7安打と復調し、初回から東海大相模のペースで試合を運ぶことができた。

決勝は明豊との総力戦となったが、3人の投手をフルに使った継投と勝負強い打撃で2度同点に追いつく執念を見せる。最後は投手陣を支えた3番捕手の小島のサヨナラ打でゲームセット。これで県内最大のライバルの横浜と優勝回数で並ぶ通算5度目の全国制覇となった。

前回は東日本大震災の直後の優勝であったが、今回はコロナウイルス下で制限があり、しかも大会中に主将が抜けるアクシデントにもめげずに戦っての全国制覇。「逆境に強い」相模という新たなチームカラーが誕生したと言えるだろう。

春のセンバツ 東海大相模 10年ぶり優勝の瞬間 – YouTube

2021年選抜1回戦 東海大相模vs東海大甲府(2日目第3試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選抜2回戦 東海大相模vs鳥取城北(7日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選抜準々決勝 東海大相模vs福岡大大濠(9日目第2試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選抜準決勝 東海大相模vs天理(10日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選抜決勝 東海大相模vs明豊(11日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

 

明豊は川崎監督の就任以来、着実に実績を積み重ね、今回は大分県勢として久々の決勝進出を達成。近畿の強豪や中京大中京を下しての堂々の準優勝であった。

智辯和歌山時代に全国制覇の経験もある川崎監督が就任して強化を図っていたが、2015年夏はこの大会で準優勝を果たす仙台育英に1-12と完敗。平沢(ロッテ)の先制2ランに始まり、郡司(中日)、佐々木良、紀伊と強打者の並ぶ打線に大会新記録となる10本に2塁打を浴び、打線も相手エース佐藤世(オリックス)の速球とフォークに手も足も出なかった。

屈辱的な敗戦を喫したチームは智辯和歌山ばりの体力強化で下半身を作り上げ、鍛え上げた主力と打力で、複数投手制の投手陣を支えるスタイルを確立。2017年夏の8強に始まり、2019年選抜は4強、そして出場はかなわなかったが、2020年の代も秋の九州大会優勝を果たした。

迎えた選抜大会は初戦は投手陣の乱調もあって21世紀枠の東播磨に大苦戦。10-9とサヨナラ勝ちを収めたが、不安の残るスタートだった。しかし、試合を重ねるごとに投手陣が調子を上げ、落ちるボールが武器の左腕・太田と右腕・京本から右サイドの財原につなぐスタイルを確立。好投手・小園(DeNA)の市立和歌山、近畿王者の智辯学園と強豪相手に競り勝つ原動力になった。

また、智辯学園戦では猛威を振るった黒木、米田友の左の好打者2人を中心に毎試合オーダーを組み替える川崎監督の采配も見事に的中。中京大中京戦も相手の継投のスキを逃さず、一挙5得点を奪い、地力では上回る相手に試合を有利に進めた。また、準々決勝のレフト阿南の好プレイなど、内外野の堅守も素晴らしく、5試合を戦って無失策の守備陣は鉄壁であった。

決勝では東海大相模に競り負けたが、この数年で明豊というチームの戦い方は完全に確立されたと言っていいだろう。津久見高校以来となる大分県勢の優勝が実現する日もそう遠い未来ではないかもしれない。

【フルバージョン】第93回選抜高校野球大会 市立和歌山×明豊 (2021-03-26)① 1回~3回 – YouTube

2021年選抜1回戦 明豊vs東播磨(3日目第3試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選抜2回戦 明豊vs市立和歌山(7日目第3試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選抜準々決勝 明豊vs智辯学園(9日目第3試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選抜準決勝 中京大中京vs明豊(10日目第2試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

 

準決勝で敗れた2校も決勝を戦ったチームとそん色のないチームであった。

天理は2020年代のチームからエース達(日本ハム)と眼鏡の4番・瀬が残り、投打の軸はしっかりしたチームで奈良大会・近畿大会を勝ち抜いていった。しかし、近畿大会準々決勝では大阪桐蔭に前年秋のリベンジとなるコールド負けを喫し、出場は微妙な状況に。ただ投手力がウエートを占める選抜においてエース達の存在は大きく、2015年以来の選抜出場権を得た。

一度出場権を得れば、やはり達の投球がものを言った。初戦は中軸の長打力が光る宮崎商が相手だったが、達は自慢の速球を武器に10三振を奪う力投。打線も終盤に相手エース日高のスライダーをとらえて7得点し、7-1と快勝で初戦をものにした。

2回戦は2012年、2015年と2度選抜で敗れている関東王者の健大高崎との対決に。達は今大会一番の球威・スピードで健大打線をわずか2安打に抑え込めば、打線も4番瀬のタイムリーなどで4点を奪い、3度目の正直で勝利をものにした。続く準々決勝でも甲子園通算4度目の対戦となる仙台育英を相手に10-3で大勝。前年秋の地区大会王者を立て続けに倒し、優勝した1997年以来の4強進出を決めた。

しかし、準決勝はエース達が仙台育英戦で背中の張りを認めた影響で登板できず。代役の左腕・中川が東海大相模の強力打線をわずか2点に抑えたが、大会が進むにつれて好調になっていた打線が相模の左腕・石田に3安打に抑え込まれて決勝進出はならなかった。

ただ、近畿王者に輝いた前年のチームに比較して野手陣の力はやや落ちる印象で、エース達への依存度が高いと思われたチームが試合を重ねるごとに成長を見せ、4強に輝いたのは見事。5割を超える打率を残した9番政所をはじめとして下位打線が非常に元気だった。

以前は力がありながらも脆さも感じる天理だったが、同じく4強入りした2017年夏もそうだったように、近年の天理は粘り強い戦いぶりで前評判以上の進撃を見せるようになっている。中村監督のもとでしたたかさを増している奈良の名門が確実に復活の階段を上っている。

[2021年選抜]天理高 達孝太”直球勝負でネジ伏せる”対健大高崎(群馬県) – YouTube

2021年選抜1回戦 天理vs宮崎商(2日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選抜2回戦 天理vs健大高崎(6日目第3試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選抜準々決勝 天理vs仙台育英(9日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

 

天理と同じく、前年度のチームが前評判の高かった中京大中京。エース高橋(中日)-印出のバッテリーや核弾頭・中山(巨人)など個々のタレント力は群を抜いており、甲子園大会が正常に開催されていれば、松坂大輔の横浜以来の公式戦全勝も視野にいれていたチームであった。

そのチームと比較して、今年のチームは身の丈に合ったしたたかさが持ち味。前年と同じくプロ注目のエースである畔柳は高橋以上の剛球を武器に、初戦は専大松戸打線を6安打完封してまずは快調にスタート。球威のあるストレートは、ヒットを浴びても得点の香りはみじんも感じさせないボールであった。

初戦は3安打2点に終わった打線だったが、2回戦以降は本領を発揮。2回戦では球威がありながらもコントロールに苦しむ常総のエース秋本から四死球を絡めて着実に得点を挙げ、計15得点で圧勝を飾ると、続く準々決勝でもそつのない攻撃で序盤から着実に加点する。小技を絡めて相手のミスを得点につなげる中京の伝統は今年の世代にも生きていた。

特に2番打者として5割を超える出塁率でチャンスメークの役割に徹した杉浦や、1回戦で決勝のタイムリーを放った櫛田ら小柄な左打者のしぶい活躍は非常に見ごたえがあった。

しかし、準決勝では球数制限の影響で畔柳の投球数が限られる事態に。1回戦最終ブロックに入ったしわ寄せを受ける形となった。左腕・柴田が先発するも、中盤に明豊打線につかまり、2番手の畔柳も本来の調子ではなかった。打線は5点の差を追い上げるも、最後は1点が届かずゲームセット。優勝まであと2勝届かず、甲子園を後にしたが、名門校の強さは十分に見せつけた大会であった。

2021年3月26日 メ〜テレ『ドデスカ』中京大中京勝利の翌日 – YouTube

2021年選抜1回戦 中京大中京vs専大松戸(6日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選抜2回戦 中京大中京vs常総学院(8日目第3試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選抜準々決勝 中京大中京vs東海大菅生(9日目第4試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

 

ベスト8に進出した4校も実力校が並んだ。

仙台育英は初戦からいきなり明徳義塾とのV候補対決に。厳しい試合が予想されたが、古川からエース伊藤への継投で明徳打線をわずか1安打に抑えて初戦を突破。古川、伊藤ともに球威で相手打線を圧倒した。打線は10安打を浴びながら相手エース代木(巨人)の粘りの投球の前に1点止まりだったが、危なげない戦いぶりであった。

続く2回戦は打線が序盤から爆発。相手エース阪上が肘の故障で不調だったこともあるが、ストレートにめっぽう強い打撃で検討した左腕・楠本もとらえ、計13得点をたたき出す圧勝劇だった。投手陣も中盤に反撃を許したが、継投でしのぎ切り、13-5と大差でのベスト8進出を決めた。

続く準々決勝は前々年の神宮大会で敗れた天理が相手。投打ともに好調な仙台育英の有利が予想されたが、この日はエース伊藤の調子が思わしくない。2-2の同点から集中打を浴びて大量失点。打線も相手エース達のストレートに序盤からアジャストしているように見えたが、ビハインドがあまりに大きく、攻めきることができなかった。

投打ともにタレントは十分にそろい、現実的に優勝も目指せる戦力だった仙台育英。須江監督になって、元来の力強い戦いぶりに走塁面のスキのなさも加わってきており、手ごたえをつかんだ選抜大会だったが、今回はベスト8で幕を閉じた。

明徳義塾ー仙台育英 選抜高等学校野球2021 – YouTube

2021年選抜1回戦 仙台育英vs明徳義塾(1日目第2試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選抜2回戦 仙台育英vs神戸国際大付(6日目第2試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

 

福岡大大濠は前回出場した2017年に並ぶベスト8進出を達成。エース毛利の好投に加えて成長した打線の援護で2戦連続の九州対決を制した。

初戦は奇しくも、前年秋の九州大会で敗れた大崎が相手。しかし、両チームともにエースが登板しておらず、この勝負が本番という印象だった。この試合でエース毛利は貫禄の投球を見せる。ストレート、スライダーともに抜群の切れ味を誇り、大崎打線をわずか4安打に抑える好投。打線は大崎のエース坂本の前に2点のみだったが、それだけで十分と思わせるエースの快投だった。

続く2回戦は21世紀枠の具志川商と再び九州対決に。具志川商も前年秋に続く対戦であり、こちらは前年秋にエース毛利が実際に対戦して完封した相手だった。しかし、この日は成長した具志川商打線が毛利を打ち込んで、シーソーゲームとなる。この窮地を救ったのが野手陣の成長。捕手の川上が相手の盗塁を3度刺してピンチの芽を摘めば、打線も13安打で援護。最後は8番松尾の決勝ホームランが飛び出し、延長戦の末に8-4で勝利を収めた。

過去最高成績となるベスト4を目指した準々決勝。疲労の影響を考慮して控え投手の馬場を先発させたが、相模打線の圧力の前に初回から失点を重ねる展開となった。守りの野球が身上の大濠にとっては厳しい展開となり、最後は8-0と完封負け。前年から成長を見せた打線だったが、相手エース石田の速球に力負けしてしまった。

ベスト8進出という成績に手ごたえと課題の両方を感じて、戦いを終えた2021年選抜。好投手を次々輩出する福岡の強豪に打力が伴えば、全国制覇も夢ではなくなるだろう。

11回表の本塁打を含む怒涛の攻撃!福岡大大濠vs具志川商(選抜高校野球2021) – YouTube

2021年選抜1回戦 福岡大大濠vs大崎(3日目第2試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選抜2回戦 福岡大大濠vs具志川商(7日目第2試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

 

智辯学園は近畿王者として優勝候補マンマークで臨んだ大会で8強に進出。しかし、最後は明豊に先行逃げ切りを許し、手ごたえと悔しさを両校が残った選抜となった。

甲子園初戦の相手は奇しくも、前年秋の近畿大会決勝で戦った大阪桐蔭となった。高校球界の王者にリベンジを狙われる展開になったが、初回に相手先発の左腕・松浦(日本ハム)の制球難をついて4点を奪うと、左腕・西村が序盤から快調な投球で大阪桐蔭打線にほとんどランナーも許さない。中盤以降に反撃を許したが、8-6と打撃戦で振り切り、見事返り討ちを果たした。

続く2回戦は前年秋に公式戦はおろか練習試合でも負けのない広島新庄が相手。再び強敵が立ちふさがったが、今度は右腕・小畠が手元で動くボールを武器に内野ゴロを打たせる投球で2失点完投勝ち。打線も中盤以降、広島新庄の花田(巨人)、秋山の左右2枚看板から着実に得点を挙げ、8強進出を果たした。

しかし、準々決勝では西村が明豊の主将・幸に先頭打者弾を浴びると、どうにも波に乗り切れない。外しに行ったボールが甘く入るなど、ここを抑えればという場面でことごとくタイムリーを浴び、特に黒木には計2本のタイムリーを献上した。追いかける展開による焦りからか、打線もボール球に手を出すなど早打ちが目立ち、6-4で惜敗。実力は十分にあっただけに、惜しまれる敗戦となった。

ただ、大会前にV候補に挙げられていた2校を撃破した戦いは貫禄十分。前川(阪神)・山下の主砲2人が注目される中で、岡島や植垣ら脇を固める野手陣も活躍し、総合力の高さを見せつけての2勝は再びの優勝の可能性を大いに感じさせるものであった。

全得点シーン!激戦!!熱戦!!の今大会屈指の好カード 智辯学園vs大阪桐蔭 ハイライト(選抜高校野球 2021) – YouTube

2021年選抜1回戦 智辯学園vs大阪桐蔭(4日目第2試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選抜2回戦 智辯学園vs広島新庄(8日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

 

東海大菅生は粘り強い戦いぶりでベスト8に進出。ここ数年東京都内で王者として君臨していた実力を存分に見せつけた。

前年秋は変則左腕の本田が軸となったが、今大会はやや調子を崩していたこともあり、初戦は鈴木泰-松永-千田の継投策で聖カタリナ打線をかわすことに。しかし、各投手がきっちり自分の役割をはたして試合を作ると、打っては鈴木悠、千田と2本のアーチを好投手・櫻井から奪う。春夏通じて初出場の相手に主導権を渡さず、4-3というスコア以上に押し切った内容で勝利をものにした。

しかし、2回戦の京都国際戦は一転して苦しい試合となる。好左腕・森下から3回までに5安打を集めて2点を先行するが、4回以降ぱたりと快音が途絶える。中盤に集中打で逆転を許すと、ほとんど反撃のチャンスもなく最終回を迎えることに。

ただ、ここからが1点差負けを繰り返していたかつての菅生とは違うところ。最終回に森下のボールをようやく見極め始め、栄、千田の連打で作った満塁のチャンスで押し出し死球を選び1点差に。最後は代打・多井がライトオーバーに鮮やかな逆転サヨナラ打を放ち、劇的な勝利で8強入りをつかみ取った。

準々決勝は先発したエース本田が初回に3失点すると、打線も畔柳の前にわずか2安打に抑え込まれて完封負け。投打に力の差を見せつけられての敗戦となったが、投打で粘り強さと層の厚さを見せて奪った2勝の価値はなんら色あせるものではなかった。

場外2ラン!センバツ第1号を打った鈴木悠平選手(東海大菅生/2年)の春季大会本塁打[2021 春季高校野球 東京大会] – YouTube

2021年選抜1回戦 東海大菅生vs聖カタリナ(5日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選抜2回戦 東海大菅生vs京都国際(8日目第2試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

 

 

神戸国際大付属は初戦は好左腕・北海のエース木村(ソフトバンク)を相手に2点を先行されながらも、最終回に追いついてサヨナラ勝ち。選抜では2005年以来の勝利をつかんだ。ただ、エース阪上が故障で本調子でなかったのが痛く、2回戦は仙台育英に大敗。神戸国際大付として、ワンサイドゲームでの敗戦は初めてであり、投手陣の立て直しが求まれる結果となった。

神戸国際大付ー北海 選抜高等学校野球2021 – YouTube

2021年選抜1回戦 神戸国際大付vs北海(1日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

健大高崎はかつての「機動破壊」のイメージに加えて、長打攻勢も備わった強力打線で秋の関東大会を制覇。初戦は主砲・小澤の長打などで下関国際を圧倒し、6-2で快勝を収めた。しかし、2回戦は天理の剛腕・達の今大会一の投球の前にわずか2安打と沈黙。これまで経験したことのない角度と圧力のあるボールに屈することとなったが、この経験がまた健大高崎というチームを強くする糧になりそうだ。

健大高崎ー下関国際 選抜高等学校野球2021 – YouTube

2021年選抜1回戦 健大高崎vs下関国際(1日目第3試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

鳥取城北は初戦で21世紀枠の三島南では対戦。自慢のパワフル打線が13安打6得点を奪うと、投げてはエース廣田が鳥取城北の投手らしい、真っ向投げ下ろしのフォームで好投。2失点完投勝利をおさめ、2008年の八頭以来となる鳥取県勢の選抜勝利をつかんだ。

続く2回戦では優勝した東海大相模と緊迫した投手戦を展開。山内~廣田への継投で強力打線を1点に封じたが、打線にあと一本が出ずに惜敗した。しかし、全国クラスの強豪を相手に内容的には押し気味の試合となり、今後に向けて自信のつく戦いぶりであった。

第93回選抜高等学校野球大会 鳥取城北ー三島南 – YouTube

2021年選抜1回戦 鳥取城北vs三島南(2日目第2試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

具志川商は初戦は21世紀枠の八戸西との21世紀枠対決となった。投手力でやや不利と思われたが、打線が序盤から長身右腕・福島を攻略。積極的な走塁も光り、先発・新川の好投もあって8-3と快勝を飾った。続く2回戦でも前年秋に完封された福岡大大濠・毛利から4得点を挙げて延長戦に。敗れはしたものの、前年秋から投打ともに大きく成長した姿を見せた。

部員不足から復活し甲子園出場を果たした具志川商!vs八戸西との21世紀枠対決 ハイライト(選抜高校野球 2021) – YouTube

2021年選抜1回戦 具志川商vs八戸西(3日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

広島新庄は前年秋に練習試合も含めて無敗で戦い抜いた実力派チーム。秋山・花田(巨人)の左右2枚看板の投手力は大会でもトップクラスだったが、初戦はエース花田から秋山への継投で上田西打線を封じると、最後は花田が自らタイムリーを放ってサヨナラ勝ち。1回戦屈指の好勝負をものにした。

しかし、続く2回戦では智辯学園打線のしたたかさの前に2投手で5失点。ボールの力は通用したが、甘く入ったところを逃さない相手打線のしたたかさに屈した。広島新庄らしい機動力を活かした攻めも小畠の打たせて取る投球の前に2点に終わった。投打に高い実力を示しつつも、強豪対決に屈した。

広島新庄 シートノック(2021年3月27日 選抜高校野球) – YouTube

2021年選抜1回戦 広島新庄vs上田西(4日目第3試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

市立和歌山は初戦で県岐阜商との実力校対決に。今大会No.1の完成度を誇るエース・小園(DeNA)と松川(ロッテ)のバッテリーで県岐阜商打線に得点を許さずに試合を進めると、最終回に7番亀井がセンター前タイムリーを放ってサヨナラ勝ち。140キロ台後半の速球と高速系の変化球を交えた見事な投球だった。

しかし、続く2回戦は同点で迎えた7回に、ランナー3塁から小園が明豊・竹下にアウトコース寄りの変化球を引っ張り込まれて失点。打r線は3番松川以外の打者でなかなかチャンスを作れず1-2で惜敗した。全国で勝ち抜くには1にも2にも打力の向上が不可欠であると感じさせられた試合であった。

[2021年選抜出場プロ注目選手]強肩強打の紀州のドカベン!市立和歌山 松川虎生 – YouTube

2021年選抜1回戦 市立和歌山vs県岐阜商(4日目第1試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

京都国際は2年生主体のチームながら存分に実力を発揮してみせた。初戦は柴田のエース谷木の投球の前に苦戦したが、7回に1番武田の3塁打などで逆転。同点で迎えた延長10回に中川、辻井のタイムリーで勝ち越し、森下~平野への継投で5-4と競り勝った。相手の半分以下の6安打ながら、勝負どころで投打ともに踏ん張りを見せた。

2回戦でも格上の東海大菅生を相手に中盤以降はゲームを支配。最後はエース森下がつかまったが、下級生主体のチームにとっては大きな肥しとなる2試合であった。

2021年センバツ出場校紹介!京都国際 – YouTube

2021年選抜1回戦 京都国際vs柴田(5日目第2試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

常総学院は初戦は持ち味の打線が爆発して敦賀気比投手陣から9得点。終盤に追いつかれる苦しい展開を2番手の大川の踏ん張りでしのぐと、延長13回にエース秋本にバスターを命じて勝ち越し点を奪い取った。「木内マジック」ならぬ「島田マジック」を全国に見せつけた。

ただ、2回戦はエース秋本の制球難に付け込まれて序盤から大量失点。畔柳を相手に致命的なビハインドとなってしまった。初出場で準優勝した1987年の準々決勝で下した相手にリベンジを許し、島田監督初めての甲子園は2回戦で幕を閉じた。

2021年センバツ出場校紹介!常総学院 – YouTube

2021年選抜1回戦 常総学院vs敦賀気比(5日目第3試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

常総学院vs中京 1987年夏 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

 

大坂桐蔭、明徳義塾、敦賀気比、県岐阜商の4校は初戦から強豪校同士の好カードとなり、善戦及ばず惜敗となった。

 

大坂桐蔭は初戦で智辯学園とのリベンジマッチに挑んだが、初回にエース左腕・松浦が4失点を喫すると、2点差に追い上げた直後には守備ミスも絡んで3失点。終盤に打線が追い上げを見せたが、6-8で惜敗した。

これまでの大阪桐蔭にはなかなか見られないミスや制球難の絡んだ戦いぶりであり、3年のブランクの大きさを感じさせた。個々の能力が高くとも勝てるとは限らないのが野球の難しさである。

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明徳義塾はエース代木(巨人)が仙台育英打線に10安打を浴びながらも1失点で踏ん張る粘投。しかし、打線がわずか1安打に抑え込まれて0-1のスコア以上の差を感じる敗戦になった。巧打者揃いの明徳打線だけあって、仙台育英投手陣のストレートにコンタクトしていたが、差し込まれる当たりが目立ったのも事実であった。夏に向けて打力の向上が課題となった。

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敦賀気比は序盤に先発左腕・竹松がつかまる苦しい状況に陥ったが、野手兼任の右腕・本田が力投。終盤に下位打線の活躍もあって同点に追いつく粘りを見せた。最後は常総学院のバスターの前に散ったが、関東の強豪を相手に4点ビハインドを追いつく底力はあっぱれであった。

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県岐阜商は前年の交流試合も経験したメンバーが多く残り、投打に充実した戦力で好投手・小園(DeNA)の市立和歌山と真っ向勝負を演じた。4安打ながら6四死球を選んで塁上を賑わし、野崎~松野への継投で無失点ゲームを演じたが、最終回についに力尽きた。鍛治舎監督も積極的な采配で試合を動かそうとしたが、やはり大会No.1バッテリーの牙城はあまりにも高かった。

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北海、東海大甲府、大崎はいずれも過去に全国大会や前年秋の地区大会で対戦した相手との再戦に。ロースコアの好ゲームを演じたが、惜しくも一歩及ばなかった。

北海は2017年の選手権で敗れた神戸国際大付を相手に序盤2点を先行。木村も140キロ台後半の速球とスライダーで好投を見せたが、疲れの出た終盤に相手打線に捕まった。再三の好守で野手陣も盛り立てたが、4年前のリベンジはならなかった。

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東海大甲府は前年秋の関東大会で破った東海大相模との「TOKAIダービー」に。エース若山は強打の相模打線を相手に素晴らしいピンチングを展開し、野手陣も堅守でエースを支えた。特にショート中澤の守備は出色であり、スローイングの強さと正確さは一級品であった。延長で惜敗したが、初戦で消えるのはあまりに惜しいチームであった。

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大崎も福岡大大濠と前年秋の九州大会決勝の再戦に。序盤にエース坂本が2点タイムリーを浴びると、この2点がこの日の毛利相手では大きすぎた。坂本は落ちるボールを武器に以後は失点を防いだが、打線は4安打で1点どまり。投手育成の名人の清水監督だが、佐世保実時代の2013年の完封負け(0-1で樟南に惜敗)も含めて、打力不足に泣く戦いが続いている。

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上田西、柴田、専大松戸、聖カタリナの4校は初めての選抜の舞台で躍動。惜しくも敗れたが、甲子園に大きな足跡を残した。

 

上田西は持ち前の強力打線が封じ込められる中、エース左腕・山口が好投。広島新庄打線をスライダー主体の投球で封じ込めたのは見事であった。投手力に不安という前評判をかわしたピッチングは見ていて痛快であった。

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柴田もエース谷木が伸びのある速球を武器に好投。14安打を放った打線があと一歩攻めきれずに惜敗したが、京都国際との初出場対決は中身の詰まった好ゲームであった。

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専大松戸はエース深沢(DeNA)が剛腕・畔柳を相手に一歩も引かない投球を見せた。7回に決勝打を浴びてしまったが、3安打2失点の投球内容は相手を上回るものであった。本格派サイド右腕といってもいい、彼の今後が楽しみである。

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聖カタリナは序盤から東海大菅生に一発攻勢を浴びる苦しい展開となったが、エース櫻井はスライダーを中心に8回4失点でまとめて試合を作ることには成功した。「アルティメット・チャレンジ」を合言葉に掲げた攻撃陣は、終盤に積極果敢な打撃で菅生投手陣に襲い掛かり、最終回には一打逆転の場面を作ったが、最後は主砲・川口が3塁ゴロに打ち取られてゲームセット。投打に持ち味を出したが、常連校との甲子園経験の差が出た印象だった。

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下関国際、宮崎商の2校はそれぞれ強豪校を相手に力負けを喫したが、粘り強い戦いで終盤まで食らいついた。

 

下関国際は2年生主体の若いチームながら、3回から救援した2番手の左腕・古賀が終盤まで無失点の力投を見せた。古賀が踏ん張っている間に持ち味の機動力を活かした野球で追いつきたかったが、健大高崎のエース高松の投球の前に3安打2得点に封じ込められた。

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宮崎商は中村・西原ら長打力のある中軸を中心とした打力が持ち味であったが、天理のエース達の剛速球をなかなかとらえることはできなかった。ただ、味方打線の援護がない中でもエース日高はスライダーを武器に粘り強く投げ抜き、終盤まで試合を作った。

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21世紀枠の東播磨、三島南、八戸西の3校は今回は甲子園での勝利はならなかったが、はつらつとしてプレーで観衆を魅了した。

 

東播磨は持ち味の積極的な走塁を絡めて明豊投手陣を攻略。加古川北時代に選抜8強入りした福村監督仕込みの機動力でランナー3塁からゴロゴーでホームを陥れた。エース鈴木が強打の明豊打線相手に持ちこたえられなかったが、4点のビハインドを追いついて延長まで持ち込んだ善戦ぶりは見事であった。

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三島南はエース植松、3番前田(楽天)と投打の軸が躍動。特に前田の打撃センスは非常に非凡なものがあり、スカウトの目をくぎ付けにした。最終回に3失点して力尽きたが、鳥取城北と互角以上の好勝負を演じた。

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八戸西は具志川商との21世紀枠対決に。エース福島が序盤から具志川商打線につかまって苦しい試合となった。守備のミスも絡んでの失点はダメージが大きかったが、打線は終盤3イニングに4安打を集めて3点を返し、意地を見せた。

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