• 2022年選手権2回戦 国学院栃木vs智辯和歌山(8日目第3試合)

    大会8日目第3試合

    智辯和歌山

    1 2 3 4 5 6 7 8 9
    0 2 0 0 0 1 0 0 0 3
    2 0 0 0 0 2 0 1 × 5

    国学院栃木

     

    智辯和歌山  武元→塩路

    国学院栃木  中沢→平井→中川→盛永

    夏連覇を目指す智辯和歌山に対し、選抜で過去2度敗れていた国学院栃木は柄目監督を中心に十分な対策を練って挑んだ。王者の力を十分出させない、したたかな戦いを見せた国学院栃木が、会心の試合運びで王者に土をつけた。

    試合

    智辯和歌山は速球派のWエースの一角、武元が登板。これに対し、国学院栃木は大方の予想を裏切って左腕・中沢がマウンドに上がった。

    中沢は初回、2番多田羅の死球と3番渡部のヒットでいきなり1,2塁のチャンスを作るが、4番岡西をうまく打たせて併殺打に切って取る。開幕戦を経験した国学院栃木と違い、49代表で最後の登場となった智辯和歌山はやや肩に力が入っていたか。中沢は緩いボールをうまく使って智辯の力をいなす。

    すると、1回裏、国学院栃木は2アウトランナーなしから3番槙本、4番平井が連打。武元の速球に対しても初回から力負けしておらず、東海王者の日大三島投手陣を打ち込んだ打線に自信がみなぎる。5番鈴木が四球で満塁となると、6番長田は初球のストレートをはじき返して広く空いた三遊間を破り、いきなり2点を先行する。智辯和歌山に国学院栃木が挑むという試合前の予想は、もはや現実と乖離したものとなっていた。

    しかし、智辯和歌山もやられたままでは終わらない。2回表、先頭の5番青山がヒットで出塁すると、1アウト後に7番杉本、8番中塚が連打を放ち、まず1点。下位打線の方が力の抜けたいい打撃を見せる。さらに、続く9番山田が初球スクイズを成功させ、すぐさま同点に追いついて見せる。

    だが、国学院栃木の柄目監督にとってはこれはある程度想定内の出来事だったか。続く攻撃で先発の中沢にすぐ代打を送ると、今度は4番を打つ平井がマウンドに上がる。智辯和歌山は3回表に3番渡部のヒットを足掛かりに2アウト1,3塁のチャンスを作るが、6番武元が打ち取られて勝ち越し点を挙げられない。打者陣のスイングは明らかに智辯和歌山の方がは迫力はあるが、先手先手を打つ国学院栃木の采配の前に、なかなか主導権を奪う雰囲気が出てこない。

    4回表には今度は右腕・中川にスイッチ。8番中塚がセンターへヒットを放つも、9番山田の強攻が併殺打となって無得点に。投手をつなぎながらイニングを稼ごうという国学院栃木の作戦通りに試合が進んでいく。また、左打者の場面で右方向に偏ったポジショニングを敷くなど、なりふり構わない国学院栃木の姿勢が智辯和歌山にはプレッシャーになっていたかもしれない。

    それでも、5回までは先発の武元が立ち直って2回以降は無失点投球を展開。変化球を見せ球にして緩急を有効に使い、国学院栃木打線を封印する。智辯和歌山としてはもやもやした雰囲気は残るものの、5回までは2-2の同点で試合は終盤戦に突入した。

    すると、智辯和歌山は6回表、当たっている5番青山がヒットで出塁すると、6番武元の四球と犠打で1アウト2,3塁のチャンスを迎える。国学院栃木はすでに4番手で2年生エース盛永を登板出せており、もうカードは出し切っている。しかし、ここで国学院栃木はあえて前進守備は引かず、8番中塚をセカンドゴロに打ち取る。1点は失ったものの、最少失点で踏ん張るあたりに、試合前に考えていたゲームプランの徹底ぶりが垣間見える。

    力では上の相手に対し、中盤を終わってビハインドは1点。球場全体にアップセットの香りがぷんぷんする中、6回裏についに国学院栃木がつながる。

    この回、先頭打者の3番槙本がセーフティバントで出塁。思えば、2000年の選抜で近畿王者の育英を開幕戦で下した時も、初回の柄目監督のセーフティバントから主導権を握ったのであった。好機と見るやスピーディーにしかける国学院栃木野球。4番平井が2球目を叩くと、打球はサードの横を抜けるタイムリー2塁打となってあっという間に同点に追いつく。智辯和歌山としては守備に不安を抱えるサード青山のところにまた嫌らしい打球が飛んでしまった。

    ムードは完全に国学院栃木。5番鈴木がバスターから投手強襲の内野安打を放つと、打席には初回にタイムリーを放った6番長田。これまた初球のストレートをとらえて、レフトオーバーの2塁打を放ち、国学院栃木が1点を勝ち越す。ホームを狙った1塁ランナーは中継プレーで刺したが、智辯としてはショックの残る失点であった。3番から6番まで4連打で擁した投球数はわずか5球。電光石火の集中攻撃であった。

    智辯和歌山はここで2枚看板のもう一人、塩路をマウンドへ送る。中谷監督としては、試合後のコメントでもあったが、継投の遅れが悔やまれる結末であった。塩路は6回、7回と落ち着いた投球で国学院栃木を無失点に抑え、味方の反撃を待つ。

    智辯和歌山は8回、そう過去に智辯和歌山が何度も奇跡を起こしてきた8回に反撃を見せる。先頭の4番岡西が死球を受けると、5番青山の犠打が併殺になってチャンスが潰えかけるが、6番武元のセカンドゴロエラーと連続四球で満塁と攻め立てる。2回に同点スクイズを決めた9番山田に期待がかかったが、盛永は渾身の速球勝負で応戦。インサイドに投じられた角度のある速球に押され、山田の打球はレフトフライとなって、智辯和歌山は同点のチャンスを逃してしまう。

    すると、その裏、国学院栃木は先頭の4番平井が塩路の初球、高めに浮いた変化球を完ぺきにとらえ、打球はレフトスタンドへ飛び込むホームランとなる。試合の行方を決定づけるような打撃を智辯和歌山ナインはただ見送ることしかできなかった。智辯和歌山の力のある投手陣に対し、追い込まれる前の好球をしっかり仕留めた国学院栃木の攻撃は見事であった。

    智辯和歌山は9回表、先頭の1番山口がレフト線への痛烈な2塁打で出塁。このパワフルな1番打者のヒットが最終回の1本しか見れなかったのは実に惜しい。智辯和歌山の各打者の迫力に気圧されることなく、速球を投じ続けた盛永の前に、2番多田羅、3番渡部がともにフライを打ち上げ2アウト。回転の良いボールに対し、バットがボールの下っつらに入ってしまったか。最後は主将の4番岡西がショート後方へのフライを打ち上げて、ゲームセット。

    国学院栃木が見事な戦術で昨夏の王者を封じ込め、3度目の対戦で智辯和歌山から初勝利。同校としても初めてとなる夏の甲子園2勝目を挙げて、堂々ベスト16へ進出した。

    まとめ

    国学院栃木は智辯和歌山の打線の威力を封じ込めた継投にポジショニング、そして好機と見るや一気に攻め立てて打ち崩した攻撃陣と全てがはまって、王者を崩して見せた。試合前に徹底的に研究を重ねたデータ班、冷静かつ緻密な作戦を敷いた指揮官、それに応えた選手たちと全員の力でもぎ取った白星であった。

    県大会で11連覇中だった作新学院をサヨナラ弾で下し、開幕戦の勝利に続いて王者も撃破。無限の可能性を秘めた国学院栃木の進撃はまだまだ終わらない。

    一方、智辯和歌山は個々のポテンシャルでは、あるいは優勝した昨年より上だったかもしれないが、それだけでは勝てないのが野球の面白いところである。百戦錬磨の中谷監督も智弁ナインもそんなことはわかっていただろうが、やはり実際にグラウンドに立って受けて立つ雰囲気に引きずり込まれると、それを覆すことは容易ではなかった。

    王者・大阪桐蔭に唯一土をつけ、優勝候補の一角にあげられた夏は、あまりにもあっけなく幕を閉じてしまった。しかし、恩師・高嶋監督も4大会連続1点sな負けからスタートして最多勝監督にまで上り詰めたのである。来年以降の智辯和歌山の逆襲を全国の高校野球ファンが期待し、待っている。

    【第104回選手権】智弁和歌山 vs 国学院栃木 ハイライト – YouTube