2022年選手権2回戦 愛工大名電vs八戸学院光星(7日目第2試合)

2022年

大会7日目第2試合

八戸学院光星

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 0 1 0 1 0 3 0 0 0 5
1 0 0 0 0 0 4 0 0 6

愛工大名電

 

八戸学院光星   洗平比→宇田→渡部→冨井→洗平歩→冨井

愛工大名電    有馬→岩瀬→山田

2012年度に神宮大会、選抜と2度対戦経験のある強豪同士のマッチアップは終盤に大きく試合が動いた。エース有馬が打ち込まれる中、打線が意地を見せた愛工大名電が延長10回に美濃のサヨナラヒットが飛び出し、3度目の対戦で八戸学院光星から初勝利を挙げた。

試合

愛工大名電は初戦に続いてエース左腕・有馬が先発。一方、6投手を擁する八戸学院光星は1年生左腕・洗平比を指名した。仲井監督としては終盤まで試合がもつれることを考えての投手起用だったか。

愛工大名電は1回表、有馬が光星打線を3人で片付ける無難な立ち上がり。強力打線に対して、真っすぐ主体にどんどん押していく。これに対し、光星の左腕・洗平比は当たっている1番加藤に初球をとらえられてセンター前ヒットを許す。1アウト後を取るが、続く3番伊藤にフルカウントからセンターへヒットを許すと、センターがわずかにジャッグルするのを逃さない。1塁ランナーの加藤が一気にホームインし、名電が1点を先制する。

1点を追う展開となった光星だが、打撃に自信を持つだけあって、名電のエース有馬をじっくりと攻め立てる。3回表、2アウトランナーなしから先発の9番洗平比がストレートをレフト線に流し打ちして、ヒット。一瞬のスキをついて2塁を奪う好走塁も見せる。投げて打って走って、センス抜群の1年生だ。これに1番井坂がレフトへのタイムリーで応え、同点。伸びのある速球とチェンジアップの緩急で攻められていたが、決め球のクロスファイヤーにしっかり対応して見せた。

本格派左腕の有馬と光星打線の対決。何か2012年選抜の名電の左腕・濱田(中日)と田村(ロッテ)、北條(阪神)を擁した光星打線の対決を思い出してしまう。5回表、光星は先頭の7番佐藤が2球目の速球を叩いてレフトフェンス直撃の当たりを放つ。フェンスに当たってボールが転々とする間に、佐藤は一気にホームを駆け抜け、光星が1点を勝ち越し。思えば、2012年の試合も5番大森のランニング3ランで試合が決したのだった。

名電は2回以降、のらりくらりと投じる光星の洗平比を攻めあぐむ。再三走者を出すが、併殺打が出てしまうなど、なかなかチャンスを活かせない。投手力では名電が上回っているのは明らかだが、そのアドバンテージを活かせない展開が続く。そんな名電にとってはもどかしい状況が続く中、光星は終盤、有馬の攻略に成功する。

1アウトから2番手で登板していた宇田が四球を選ぶと、1番井坂はスライダーをうまく拾ってライト前に落とし、1,3塁のチャンス。4打席目に入り、各打者がストレート、スライダー、チェンジアップに対して、それぞれ狙い球を絞る。2番深野が初球攻撃でストレートをライト線に落とすと、守備がもたつく間に井坂も生還。点差が3点に広がると、さらに、3番中沢はスライダーをセンターに返し、大きな5点目を手にする。

続く4番野呂に四球を与えたところで、ついに有馬が降板。2番手に中日ドラゴンズで活躍した岩瀬仁紀の息子さんの岩瀬が登板する。これで勝負あったかと思われたが、岩瀬が1アウト2,3塁のピンチで後続をきっちり打ち取り、光星打線の勢いを止める。

光星としてはあとは持ち味の継投でかわしたいところ。しかし、絶対的な柱のいないことが、仲井監督にとっては不安材料であった。その裏、名電は先頭の4番山田が死球で出塁。マウンドからライトへ移っていた5番有馬もポテンヒットで続く。この回になって抜け球の目立ち始めた宇田を見て、仲井監督は3番手の渡部を送る。

初戦の創志学園戦は先発で試合を作った渡部だったが、この日は全く違う状況での登板となる。名電は6番市橋がフルカウントから甘く入ったスライダーを完ぺきにはじき返すと、打球は右中間を鋭く切り裂いていく。ランナー2人が脱兎のごとくホームを駆け抜けると、続く7番美濃はセンターへの飛球を放つ。これが内外野の間に落ちるテキサスタイムリーとなって1点差。甲子園の空気は完全に名電に傾く。

続く8番岩瀬の打席で名電は代打を送り、石村はきっちり犠打を決める。一打同点の場面を作ると、9番藤山は流し打ちのヒットで1,3塁とチャンス拡大。持ち味の攻撃力が完全に目を覚ましていた。マウンドに上がってまだいつもの自分の投球ができていない渡部。ここまで6打数5安打の1番加藤を抑えろというのは酷な状況であった。2球目の高めのストレートをはじき返すと、打球は高いバウンドでショートの横を抜け、名電がついに攻勢をとらえた。

こうなると、試合の流れは名電の傾いていくが、光星は4番手でマウンドに上がった冨井は踏ん張りを見せる。小柄ながら鋭いスライダー、カットボールで攻める右腕は、8回、9回とランナーを出しながらも、アウトコース低めを丁寧に突いて勝ち越しを許さない。一方、名電も3番手の右腕・山田が伸びのある速球で光星打線に立ち向かう。右打者のインサイドを突く制球力も光り、光星の打者の踏み込みを許さなかった。

同点のまま試合は延長戦に突入。光星は変わった山田の前に中盤まで快打を見せていた打線の勢いが止まる。投手としての実力的では有馬の方が上かもしれないが、4点差を追いついた勢いに乗って攻めの投球を見せる山田が、有馬を攻略した光星打線を封じ込めた。

すると、その裏、ついに熱戦に終止符が打たれる。登録投手のほとんどを使い切っていた光星は5番手で登板した洗平歩に代えて再び4番手で上がっていた冨井をマウンドへ送る。

必死の継投で名電打線の勢いをかわしに行く仲井監督だが、名電は先頭の5番有馬がフルカウントからのスライダーをとらえて左中間を破る。打球の行方を見て迷わず3塁を陥れると、光星は6番市橋を歩かせる。満塁策も考慮しながら7番美濃との勝負を選択した。しかし、フルカウントからの7球目のインサイドの速球をとらえた打球は前進守備の二遊間を破り、ゲームセット。名電が工藤公康を擁した1981年以来となる夏の甲子園2勝目を挙げ、3回戦進出を決めた。

まとめ

愛工大名電はエース有馬が攻略される苦しい展開だったが、その裏に打線が素晴らしい反発力を発揮。名電の継投策に惑わされることなく、好球必打で4点差を追いついた。亡きチームメートの思いが後押ししたかのような集中攻撃を前にさすがの光星も成す術がなかったか。3番手で登板した山田の投球も見事であった。

これまで夏に弱いと言われ続けた愛工大名電だったが、星稜に続いて八戸学院光星も撃破。夏2勝目を挙げたというだけでなく、部の歴史・空気を変える大会になりつつある。

一方、八戸学院光星は7回表まではほぼゲームプラン通りに試合を進められていたと思うが、最後は弱点と目されていた投手力の部分で不安が現実となってしまった。各投手が持ち味を存分に発揮してつないでいたが、打撃のレベルが上がる夏の甲子園ではやはり、柱となる投手の存在が必要だったのだろう。好投手を相手に2試合で12得点と、強打の光星は健在であったが、今年の戦いは2回戦で幕を閉じた。

【第104回選手権】愛工大名電 vs 八戸学院光星 ハイライト – YouTube

コメント

タイトルとURLをコピーしました