2022年選手権3回戦 仙台育英vs明秀日立(10日目第1試合)

2022年

大会10日目第1試合

明秀日立

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 1 1 0 1 0 0 0 4
0 0 1 1 0 0 3 0 × 5

仙台育英

 

明秀日立   石川→猪俣→石川→猪俣→石川→猪俣

仙台育英   湯田→古川→斎藤蓉→高橋

投打に充実する強豪同士の一戦は明秀日立が先行し、仙台育英が追いかける展開に。終盤、明秀日立の継投策に惑わされることなく、逆転した仙台育英が2019年以来のベスト8進出を決めた。

試合

仙台育英は140キロカルテットの中からこの日は右腕・湯田を先発に指名。一方、明秀日立は初戦に続いて左腕・石川を先発マウンドに送った。

立ち上がり、湯田がスライダー主体の投球で明秀日立を3人で切ったのに対し、石川は先頭の1番橋本を3塁ゴロエラーで2塁へ進めてしまう。犠打で1アウト3塁となり、失点の危機を迎えるが、ここで3番秋元をスライダーで見逃し三振に切って取ると、4番齋藤陽もスライダーで打ち取ってピンチを脱する。

すると、直後の2回表、明秀日立は4番石川がスライダーをうまく拾ってライト線への2塁打で出塁。1アウト後に6番小久保が四球でつなぐと、7番武田がスライダーをうまく拾ってセンターに運び、1点を先制する。通常のチームなら嫌な空気を感じるが、投手層の厚い仙台育英はここでエース古川をマウンドに送る。仙台育英にとっては、これもある程度想定内の出来事だ。

しかし、初のベスト8入りへ強い思いで臨む明秀日立は石川が2回裏を3者連続三振で切って取ると、3回表にはヒットで出た2番本坊を2塁において、石川が自らタイムリーを放って2点目をたたき出す。主将としてチームの目標達成へ大車輪の活躍だ。一方、仙台育英にとってはまだ投手が控えているとはいえ、エースの古川が打たれての失点はこたえるものがあっただろう。

2点目を献上した仙台育英だが、東北の雄としてこのまま引き離されるわけにはいかない。3回裏、こちらもエース古川が自ら内野安打を放って出塁すると、9番には強攻策でレフト前ヒット。以前なら高校野球でこういう場面はほぼ送りバントだったが、野球の中身も変わってきている。ここから犠打で1アウト2,3塁となると、2番山田がスクイズを決めて1点を返す。以前と比べて細かい野球を極める仙台育英の真骨頂を見せる。

だが、緻密な仙台育英に対し、パワーで対抗するのが明秀日立。今度は4回表、先頭の7番武田古川のストレートをたたくと、打球は風に乗ってレフトポール際に飛び込むホームランとなって1点を追加する。下位打線でこのパワーなのだから、さすが関東トップクラスの打線だ。一方、流れを変えるつもりでエースをつぎ込んだ須江監督だったが、この日の古川は初戦と比べると、やや腕の振りが緩い。

局面を打開したい仙台育英はその裏、指揮官が自ら動く。先頭の4番齋藤陽が四球で歩くと、今度はきっちり送って1アウト2塁。6番遠藤はスライダーをとらえてセンターに打ち返し、1,3塁とチャンスを拡大すると、ここで須江監督が代打攻勢。7番住石の場面で代打・岩崎を送る。すると、金沢監督もエース猪俣を再びマウンドへ。お互いの監督が激しく動くが、ここは岩崎がストレートを素直にセンターに打ち返し、仙台育英に軍配が上がる。

さらに、続く8番古川の打席では再び、代打で佐藤を送る。4回裏で2者連続代打2人など記憶にない。アクシデントでそうなったことは過去にもあるかもしれないが、戦術でこの作戦は初めてではないか。投手陣だけでなく野手陣もめらぼうな層の厚さを誇っている。一方、明秀日立のエース猪俣も、圧巻の投球を見せた初戦の鹿児島実戦ほどの出来ではないようだ。

試合は、明秀日立1点リードのまま後半戦へ。6回表、明秀日立は仙台育英の3番手の左腕・斎藤蓉を攻め、8番のヒットに2四球を絡めて満塁のチャンスを作る。7,8,9番で満塁にするのだから怖い打線である。ここで1番平野にスクイズを決められて点差は再び2点。しかし、続く強打の2番本坊は打ちとり、さらなる追加点は許さない。

投手層の厚い仙台育英はもちろんのこと、この日は明秀日立も石川猪俣を小刻みに継投させ、両チームとも投手交代が非常に多くなる。交代と投球練習で試合が間延びし、選手たちも集中力を保つのが大変だっただろう。明秀日立2点リードだったが、どこかこのままで終わらないのではと感じさせる空気があった。

すると、7回裏、仙台育英打線がつながる。2度目の登板となっていた猪俣から1番橋本がヒットを放つと、塁上からしつこくプレッシャーをかける。2番山田がインサイドのボールをうまく腕をたたんでレフトへ運び、さらに3番秋元は四球を選んで満塁となる。ここで金沢監督は再び、石川をマウンドに送り、4番齋藤陽は三振に打ち取られるが、5番尾形への投球が押し出しとなって1点差に迫られる。

続く右打者の6番遠藤に対し、再び猪俣が3度目のマウンドに上がるが、やはり度重なるポジション変更のためか、いつもの投球ではない。遠藤に押し出しの四球を与えて、ついに仙台育英が同点に追いつくと、さらにこの日タイムリーを放っている岩崎が犠飛を放って仙台育英が逆転に成功する。必死でかわそうとした明秀日立だったが、じわじわ食い下がる東北の雄が逃げ切ることを許さなかった。

仙台育英は7回から初戦で先発した2年生右腕・高橋がマウンドへ。伸びのある快速球を投じる高橋に対し、明秀日立打線も豪快なスイングで対抗するが、バットがボールの下を通過する空振りが多く、なかなかとらえきれない。1点差のまま試合は最終回に突入するも、2番本坊・3番佐藤の上位打線が内野ゴロに打ち取られる。最後はこの日、3安打の石川がストレートをとらえて会心の当たりを放つが、打球はライトのグラブに収まって試合終了。

仙台育英が白熱の好ゲームを制し、ベスト8一番乗りを果たした。

まとめ

仙台育英は序盤にエース古川の不調で後手を踏む展開になったが、須江監督の積極的な選手交代で流れを引き寄せた。投打ともに豊富な選手層を誇るが、選手層の厚さは、すなわち作戦面の潤沢さにつながる。決して毎回うまくいくわけではないが、この日は交代した選手たちがしっかり監督の起用に応えた。

監督によってチームのカラーが変わるのは時代の常だが、今の仙台育英は須江監督とともに確実にステップアップを果たしている。悲願と言われた白河の関越え。コロナを乗り越えて観衆の戻ってきた、この2022年夏に達成できるか。

一方、明秀日立は積極的な投手交代で流れを引き留めようとしたが、最後は連続押し出しで同点に追いつかれることとなってしまった。猪俣の調子が初戦ほどでなかったことと、石川の決め球のスライダーに慣れさせないことが狙いであっただろうし、作戦として決して間違っていたとは言えない。しかし、交代を重ねるたびに、本来の投球が失われたように見えたのもまた事実であった。

序盤は互角以上の展開だったが、終盤は慌てる明秀日立とじっくり腰を据えて反撃する仙台育英のコントラストがくっきり浮き上がる展開になった。選手個々の能力が高く、パワーあふれる打撃と石川猪俣の左右2枚看板で、上位進出を十分狙えた明秀日立。しかし、常連校のしたたかさに屈し、初めての夏の甲子園は3回戦で幕を閉じた。

【第104回選手権】明秀日立 vs 仙台育英 ハイライト – YouTube

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