久留米商vs市尼崎 1983年夏

1983年

エースを救った終盤の逆転劇

池田の3季連続優勝なるかで注目された1983年の選手権大会。強力打線を誇る同校を止めるべく多くの好投手が出場を決めた。山本昌(中日)、星野伸之(阪急)など、のちにプロ野球で活躍する選手が多く出た世代だが、甲子園に出場したチームのエース達もまたハイレベルであった。

興南・仲田(阪神)、横浜商・三浦(中日)、箕島・吉井(近鉄)、創価・小野(近鉄)、高知商・津野(日本ハム)、中京・野中(阪急)、中京・紀藤(広島)、佐世保工・香田(巨人)、宇部商・秋村(広島)とそうそうたる顔ぶれが集結。そして、その中でも練習試合で対決した池田ナインが「最も速かった」と舌を巻いたのが、伝統校・久留米商のエース山田(巨人)であった。

第65回夏の甲子園 市尼vs久商 藤城本部委員のお話から、重松 ...

久留米商は第44回大会で準優勝を果たした伝統校。この年は山田を中心に戦力が充実し、選抜に続く連続出場であった。その選抜でも宇部商・秋村との投手戦を山田の完封勝利で下して1勝をマーク。打撃でも4番を務める山田だったが、その他のメンバーも1番主将の矢羽田をはじめとして実力は高く、タレントが揃っていた。夏の福岡大会を圧倒的に制して、連続出場を決めると、甲子園では初戦で小松明峰を9-0と圧倒。矢羽田の猛打賞の活躍などで5回までに9点を挙げ、まずは危なげなく初戦(2回戦)と突破した。

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一方、市立尼崎は激戦区・兵庫から初出場。当時から兵庫県は激戦区であり、前前年は報徳学園がエース金村(近鉄)を擁して初優勝を達成すると、前年も東洋大姫路が中島-豊田の好バッテリーを擁して4強入りと結果を残していた。そんな中、エース宮長に3番池山(ヤクルト)と投打の柱を擁した市立尼崎が快進撃を見せ、兵庫大会を鮮やかに勝ち上がっていく。小橋監督のもと、強気の野球で強豪校を次々に退けて初優勝を果たすと、甲子園では同じく2回戦からの登場で茨城東と対戦。4-4で迎えた9回裏のサヨナラ負けのピンチを強気の姿勢で守りきると、延長10回に決勝点を挙げ、初出場初勝利を挙げた。

試合を決めたのは途中出場の控え捕手!

1983年選手権3回戦

市立尼崎

1 2 3 4 5 6 7 8 9
2 0 0 1 0 0 1 0 0 4
0 0 0 0 0 0 0 3 5

久留米商

 

市立尼崎    宮長

久留米商    山田

第65回夏の甲子園 市立尼崎vs久留米商業 完全に敗戦濃厚からの ...

こうして、ともにベスト8を目指しての激突となった両校だが、チームの核としては久留米商の方が上。市立尼崎は主砲・池山が注目されていたが、やはり総合力では打倒・池田の有力候補だった久留米商の方が分があると思われていた。しかし、試合が始まるとペースの握るのは市立尼崎なのだからわからないものである。

1回表、立ち上がりの制球に苦しむ山田を攻めたて、市立尼崎は1番佐藤、3番池山のヒットに四球を絡めて1アウト満塁のチャンスを作る。ここで5番池田が山田の自慢とする速球が高めに浮くところを逃さずはじき返すと、打球はセンターの頭上をはるかに超える2点タイムリー2塁打となり、2点を先行。前評判が不利と言われていた市立尼崎が鮮やかな先制劇を見せる。

これでリズムに乗った市立尼崎・宮長が序盤3回を無失点に抑えると、4回表には再び5番池田が山田をとらえる。高めに浮いた速球を再びとらえると、今度は引っ張った打球がラッキーゾーンをはるかに超えてスタンドに飛び込むホームランに!大会屈指の剛速球右腕から2塁打に一発と、2本の長打を放つ大活躍を見せる。

市立尼崎は7回にも4番清水のタイムリーで1点を追加し、4-0。序盤・中盤・終盤と着実に得点を挙げ、投げては宮長が左腕から繰り出す伸びのある速球で押していき、好調だった久留米商打線を完全に封じ込めていた。同じ日の第1試合で池田が前年決勝のリベンジを狙う広島商を下しており、またしても打倒・池田のV候補が姿を消すのか…と球場のファンも思い始めていたことだろう。だが、そんな中、8回に入って久留米商打線が反撃に転じ始める。

終盤に入り、さすがに疲れの見え始めた宮長に対し、先頭の6番石貫が三遊間深い位置への内野安打で出塁。ここで、代打・重松がうまい右打ちを見せて無死1.2塁とチャンスを広げる。ここで9番塚本を宮長はショートゴロに打ち取るが、6-4-3併殺を焦った市尼の内野陣が1塁への悪送球してしまい、まず1点を返す。ここで1番矢羽田を打ち取り、2アウト2塁となったのだが、市尼にまたも痛恨の守りのミスが出る。2番中野が左中間を深々と破るタイムリー3塁打を放つと、外野からの送球がそれる間に中野もホームイン!一気に1点差に迫り、試合の行方はいよいよわからなくなった。

追い上げムードに変わった久留米商は、9回表に先ほど代打でヒットを打った重松が捕手に収まる。スタメン捕手の山口に代わっての起用だったが、重松は強気のリードで山田を引っ張り、9回を無失点に収める。4-3のスコアで試合は9回裏へ。こうなると、流れは久留米商のものであった。

この回、先頭の4番山田が見事な流し打ちで、左中間への2塁打を放つ。後続を宮長が気迫の投球で連続三振に切って取るが、野球が面白いのはここからであった。7番石貫を内角速球で詰まらせた打球は、完全に打ち取った当たりでレフトへ。しかし、必死に前進したレフト渡部だったが、ボールは飛び込んだグラブのわずか先で弾んでしまう。2塁ランナーがホームインし、同点。市尼にとっては、あとアウト一つで試合終了というところで、振り出しに戻されてしまった。

なおも2アウト1塁で打席には途中出場で大活躍の8番重松。宮長の投球に対し、先ほどの打席と同様に右方向への意識を持っていた。流し打った打球は、幸運にもライト戦ぎりぎりへ落ちるヒットに!クッションボールの処理を途中出場の前中が焦る間に、石貫は一気にホームを突く。バックホームされたボールは及ばず、歓喜のサヨナラ勝ち。劇的な幕切れで久留米商が選抜で果たせなかった8強入りを決めたのだった。

まとめ

久留米商はその後、準々決勝で岐阜第一を寄り切り、4強へ進出。最後は疲労の色が濃い山田が横浜商打線につかまって2-12と大敗を喫したが、V候補が次々に8強を前に姿を消す中にあって、ラスト3校まで残った戦いぶりは立派であった。公立の強豪校が多い激戦区の福岡県だが、やはり、その筆頭格は伝統を誇る久留米商であろう。

一方、市立尼崎は惜しくも8強入りは逃したが、初めての甲子園で大健闘を見せた。その後も、兵庫県内では存在感を放ち、名将・竹本監督のもとで金刃(巨人)、宮西(日本ハム)と好左腕を育て上げた。2016年夏にはエース平林を擁して、2度目の選手権出場を達成。初戦で八戸学院光星に惜敗したが、この試合も延長に及ぶ大激闘であった。そして、2026年、初出場の立役者となった池山は、ヤクルトスワローズの監督として新たな一歩を踏み出すこととなる。

第65回夏の甲子園 市立尼崎vs久留米商業 完全に敗戦濃厚からの展開。あの試合です。途中でテープ切れのダイジェスト追加編集版です。

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