2年生左腕に立ちはだかった強力打線
2013年の夏は初戦で神宮王者・仙台育英と選抜王者の浦和学院が激突するなど波乱の様相で幕を開けた。また、この大会から抽選形式が変更となり、勝ち上がるたびに抽選をし直す方法となっていた。展開が読みづらい状況のなか、好投手vs強力打線の好勝負が1回戦で実現した。

大分商は県内屈指の伝統校ながら、夏は実に16年ぶりとなる出場。2年生エース笠谷(ソフトバンク)は九州屈指の本格派左腕であり140キロ台の速球とスライダーで三振を奪える。一方、打線は左打者が多く並び、機動力豊か。準決勝では同じく2年生エース佐野(オリックス)を擁する大分との接戦を7-6とサヨナラ勝ちで制し、大一番をものにした。久しぶりの全国の舞台でオールドファンも気合が乗っていた。

一方、修徳は9年ぶりの夏出場。この年は東東京ではちょうど帝京時代が終焉し、関東一・二松学舎大付の2強時代が幕を開けるちょうど間の時期であった。そんな中、修徳は投打ともに総合力の高いチームに仕上がり、しぶとく勝ち抜いてきた。西林・遊佐・桜井とタイプの違う3投手で継投し、飯野・山下ら好打者の並んだ打線が大量点を奪取。また、こちらもスタメンのほとんどが盗塁を決めており、まさに全員野球・全員攻撃のチームカラーで、8強入りした2004年に続く快進撃を狙っていた。
後半、一気の攻めで試合を制す
2013年夏1回戦
大分商
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
| 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 1 | 4 | × | 8 |
修徳
大分商 笠谷→中野
修徳 西林→桜井→遊佐

修徳は制球力のある右腕・西林、大分商はもちろん2年生エースの笠谷が先発のマウンドに上がった。西林は立ち上がりヒットこそ許すものの、大分商打線の左打者陣の内角を果敢に突き、バックも堅守で機動力を絡めた大分商の攻撃をしのぐ。一方、笠谷はしなやかなフォームから繰り出す力のあるボールで強打の修徳打線を序盤は完全に封じ込めていく。
序盤はやや大分商が押し気味に進める展開に。右スリークオーターの西林のボールはやはり左打者には少し相性が悪いか。2,3回といずれも3塁までランナーを進められる。すると、3回裏2アウトランナー2,3塁から大分大会で打率5割を記録した注目の強打者福地が高めに浮いたボールをセンター返し。これがランナー二人を返す2点タイムリーとなって、大分商が2点を先制する。
これに対し、大分商の笠谷は序盤は絶好調。ヒット1本は打たれたものの、球持ちのいいフォームから繰り出す速球とスライダーで修徳打線をきりきり舞いにする。打者よりでボールを離すため、どうしても各打者が差し込まれてしまい、快打が出ない。さしもの試合巧者・修徳をもってしても攻略困難なほど笠谷の投球は素晴らしかった。
しかし、中盤に入ると、修徳の強力打線が目を覚ます。4回裏、先頭の1番小沢が四球を選ぶと、2番森田がきっちり送る。ここで2塁ランナーの小沢は3番飯野への投球で三盗を敢行。左投手の一瞬のスキをついて第2リードを大きく奪い、見事に3塁を陥れた。続く3番飯野はセカンドへのゴロを放ち、セカンド乙津の懸命のバックホームも高くそれる。小沢が好スタートでホームに生還。両者の間の流れを変える、地味ながらも大きな1点が入った。
これで勢いに乗った修徳は5回表に投手を2番手の左腕・桜井にスイッチ。これは左打者の多い大分商打線に実に効果的であり、クロスで逃げていく速球と変化球に全くタイミングが合わない。序盤攻勢に出ていた大分商打線の勢いを完全に鎮火させる投球を見せた。
すると、修徳はここから毎イニングヒットのランナーを連ねていく。笠谷も2度にわたってけん制アウトを奪うなど踏ん張りを見せるが、勢いづいた修徳打線はなおも襲い掛かる。そして、6回裏、グラウンド整備後の流れの変わりやすいイニングで試合が動く。先頭の9番桜井が自らライトへのヒットを放って出塁。しかも、笠谷の生命線のスライダーをとらえての一打だ。ここでも阿保監督は犠打で確実に進塁させると、2番森田は真ん中高めに入ったスライダーを強振!これがレフトスタンドへ飛び込む逆転2ランとなって、ついに修徳がリードを奪った。
この攻撃で完全に流れを掴んだ修徳は7回裏、8回裏と打線がつながり計5点を追加。ついに九州屈指の好左腕をマウンドから引きずり下ろした。一方、投げては地方大会では出番の少なかった桜井が3回1/3を無安打に抑える好投。彼の投球で守りのリズムを作り、攻撃の勢いに変えて見せた。最終回は予定通り、3番手の右腕・遊佐にスイッチ。終わってみれば、狙い通りの試合展開で8-2と大分商を下し、2回戦進出を決めた。
まとめ
修徳は2回戦では3季連続出場の鳴門と対戦。四国随一の破壊力を誇る打線に5点を先行されるが、じわじわと相手エース板東(ソフトバンク)を追い詰め、終盤についに同点に追いついた。延長10回に遊佐が打たれ、サヨナラ負けにはなったが、自力で上回る相手を全員野球で追い詰めた試合内容は素晴らしいものであった。
一方、大分商は序盤の攻勢時にもう少し得点が欲しかったところだが、致し方ないだろう。エース笠谷を二巡目以降で攻略した相手打線を褒めるべきだ。その後は、2023年の選抜出場のみだが、2015年夏はエース森下(広島)を擁して県決勝まで進むなど、安定した実力を見せている。昭和から県内を牽引してきた強豪校だが、今も県内での存在感は随一だ。


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