報徳学園vs広陵 2002年選抜

2002年

2回戦最終カードで実現した伝統校対決

大会前、報徳学園が圧倒的な優勝候補として注目されていた2002年の選抜大会。2回戦最後のカードで、ともに選抜優勝経験のある強豪同士の好カードが実現した。

報徳学園vs浦和学院 2002年夏 | 世界一の甲子園ブログ

前年秋の神宮大会を制した報徳学園。最速147キロを誇るエース大谷(ロッテ)を中心に、投打にタレント揃い。打線は、俊足と長打力を兼ね備える1番尾崎(日本ハム)、打率7割を誇る3番松下、スラッガー長畑の上位打線に加え、下位にも前山、木下、石井、大谷と他チームなら中軸クラスの打者が並ぶ。神宮大会では大谷を一度も投げさせずに、控え投手陣だけで優勝と、末恐ろしい選手層も見せつけた。

1回戦では前年夏の優勝校・日大三と対戦。初回に大谷の立ち上がりをとらえられて、2点を失うが、徐々に打線が追い上げて同点とすると、7回に女房役の荒畑が決勝弾を放つ。最も、打撃で期待できなかった正捕手に飛び出した一発にチームは沸きに沸いた。一方、大谷はしり上がりに調子を上げ、2失点で完投。前年夏の優勝メンバーの幸内をして、「あれは打てない」と言わしめるほどの威力のある速球を武器にまずは難敵を退け、1回戦突破を果たした。

広陵、優勝候補に屈す【2002年4月2日 第74回選抜高校野球大会2 ...

その報徳学園の前に2回戦で立ちはだかったのが、伝統校・広陵。1991年に青年監督として甲子園初采配で優勝を果たした中井監督だが、その後はなかなか甲子園に手が届かなかった。しかし、2000年にエース川本(巨人)、4番若林の投打の両輪を軸に久々の出場を果たすと、そこから3年連続で出場を果たす。

前年は、神宮Vの東福岡に初戦で敗れたが、その時からメンバーに入っていた黒川、黒田、中林が成長し、秋の中国大会では4強進出。優勝した関西にも2-3と惜敗であり、実力は高く評価されていた。初戦は東海王者の中京大中京が相手だったが、中林が初回に2ランを放ち、先制。機動力豊かな中京打線に対し、2年生エース西村(巨人)が重い速球を武器に、出塁そのものをなかなかさせず、5安打で完封した。試合前は中京有利の声もあったが、終わってみれば広陵の強さが光った試合だった。

 

相手のミスを突く試合巧者ぶりを発揮

2002年選抜2回戦

広陵

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 0 0 0 0 2 0 0 3
0 0 2 1 0 0 2 0 × 5

報徳学園

 

広陵     西村→重森

報徳学園   大谷

V候補筆頭の報徳学園に広陵が挑む構図かと思われたが、試合が始まると広陵が押し気味。西村のボールはスピードこそ130キロ台だが、手元で伸び、しかも球威がある。タレントぞろいの報徳上位陣が初回、簡単に3者凡退に打ち取られる。

一方、本格派投手にありがちな立ち上がりの脆さが、大谷にもある。初回はなんとか無失点で切り抜けたが、2回表に広陵の下位打線に捕まる。先頭打者をセカンドのエラーで出塁させると、続く打者の犠打は失敗させたものの、6番藪根にはストレートをライト前に運ばれる。続く7番中塚の打席で中井監督がエンドランをかけると、これに中塚が応え、広く空いた三遊間を破るタイムリーに!この回、8番白浜にもヒットが飛び出し、序盤から大谷をとらえていく。

ただ、このリードが力みにつながったか、西村が3回裏に乱れる。先頭の7番木下に粘って四球をもぎ取られると、8番前山の打席でこちらもエンドランを敢行。ショートの横を抜くヒットとなり、俊足の木下は3塁を陥れる。続く9番荒畑はプッシュ気味のスクイズを決めて、まず同点。さらに1番尾崎が送って2,3塁となると、2番橋本の打席で暴投が飛び出し、報徳が逆転に成功する。

リードした報徳は3回裏にも、先頭の4番長畑がセンターへのラッキーな2塁打で出塁。犠打で3塁へ進むと、6番石井がカーブをきれいにためて右方向へ打ち返し、3点目を上げる。西村の調子は決して悪いわけではなかったのだが、今大会当たりに当たることとなる、報徳の下位打線の男たちが、西村攻略のきっかけを作り出した。

一方、2回に幸先よく先制した広陵だが、4回までに7安打を放って大谷に襲い掛かりながらも、拙攻で残塁の山となる。毎回のようにランナーを出しながらも、犠打の失敗など、攻撃が思うようにいかず、そうこうしているうちに、大谷のボールも走り出してきた。この序盤の攻防をもう少しうまく運べていれば、結果は違ったかもしれない。

報徳リードのまま、試合は終盤戦へ。6回まで8安打で1点どまりだったが、7回についに大谷から得点を奪う。

この回、1アウトから4番中東がサード強襲のヒットで出塁。5番槇原が四球でつなぐと、打席には女房役の6番藪根が入る。大谷のアウトコースのストレートをとらえた打球は、バットの真芯を食ってぐんぐん伸びる。背走したセンター木下の頭上をあっという間に破り、ランナーが次々に生還!点が入るときはこういうものなのか、打者3人で瞬く間に試合を振り出しに戻した。この日の大谷は得意の速球をとらえられ、変化球を使いながらうまく切り抜けてきたが、ここにきて再び広陵打線の餌食となった。

しかし、前述した報徳下位打線の威力が発揮されたのはここからである。

7回裏、追いついてもらった西村に対し、先頭の6番石井が高めのスライダーをとらえて左中間を破る2塁打で出塁。続く7番木下がサード前へ絶妙のセーフティを決めると、これを処理した西村が1塁へ悪送球し、報徳がすぐさま勝ち越しに成功する。さらに、その間に木下が一気に3塁を奪うと、8番前山はストレートにやや差し込まれながらもセンターの前に落とす技ありの一打。2点のリードを追いついてもらった直後に再び2点リードを許す格好となった。

西村は結局、この回が終わったところで降板。強力打線を相手によく投げたが、暴投やバント処理ミスなど投球以外でもったいない部分が多かった。他のチームなら少し力を抜ける下位打線で、次々に中軸クラスの打者が登場する報徳打線の分厚さに、神経をすり減らしながら投げていたのだろう。

一方、再びリードをもらった大谷は、結局広陵打線に12安打を浴びながらも3失点で完投。最終回も二人のランナーを背負ったが、最後は先制打を浴びた中塚をレフトフライに打ち取り、苦しい試合を制した。

 

報徳はその後も、浦和学院・須永(日本ハム)や福井商・中谷といった好投手を攻略。上位から下位まで切れ目のない打線が強力援護し、大会が最終盤になるところで、ようやくエース大谷も復調した。終わってみれば強豪ばかりを相手にタフな試合を戦い抜いた報徳の強さが際立った大会であり、選抜史上でも上位クラスに入るほどの実力を持つ優勝校だっただろう。今の優勝校が神宮に集う制度になってから、神宮と選抜の両方を制覇したのは、あの松坂大輔の横浜と2022年の大阪桐蔭、そしてこの年の報徳学園だけである。

一方、広陵も投打に全く引けをとらず、見事な戦いぶりを見せた。大谷から12安打を放った打線、エース西村の投球と、ともにハイレベルであり、報徳になんら引けを取るところはなかった。思えば、この試合あたりから広陵が現実的に優勝を狙えるチームになってきたと感じた記憶がある。この年は、夏も連続出場を果たし、実に22年ぶりの選手権出場となった。再び優勝校の明徳義塾に敗れるのだが、翌年の選抜で最上級生となった西村を中心に優勝を果たすこととなる。

2002年(H14)選抜 2回戦 報徳学園対広陵

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