右投手 今井達也(作新学院)
戦前は履正社・寺島(ヤクルト)、横浜・藤平(楽天)、花咲徳栄・高橋(広島)の3人に注目が集まったが、大会が始まると一気に話題をかっさらったのが、作新学院の今井達也(西武)であった。制球難で秋春と県大会8強止まりだったが、コントロールのコツをつかむと一気にグレードアップ。6年連続の甲子園出場をつかんだ。迎えた初戦は地方大会で選抜準優勝の強打の高松商を破った尽誠学園が相手。しかし、今井の力感のないフォームから繰り出す伸びのあるストレートがコーナーにビシバシ決まると、尽誠の打者は手も足も出ない。プロのスカウトに「これはものが違う」と言わしめる投球で完封勝利を飾った。その後も花咲徳栄・高橋や木更津総合・早川といった大会屈指の好投手に投げ勝ち、伝統校に54年ぶりの優勝をもたらした。現在は西武ライオンズの若きエースとして球界の頂点に立つ日をファンは待ち望んでいる。
左投手 寺島成輝(履正社)
1年生時からエース格として、1つ上の溝田・永谷(ともに2014年の選抜準優勝に貢献)を押しのけて登板していたが、甲子園のマウンドには縁がなかった。しかし、3年時の春季大会で苦手の大阪桐蔭を倒して勢いに乗ると、春季近畿大会も制覇。最後の夏の大阪大会は圧倒的な投球で優勝を飾った。縦回転でスピンの効いた真っすぐを武器に甲子園ではまず高川学園を2安打1失点で完投。2回戦では横浜・藤平(楽天)とのライバル対決を再び1失点完投で制し、大きな関門を通過した。最後は常総学院の巧みな攻めに屈したが、大会に登場した左腕投手では頭一つ抜けた存在であった。
捕手 古賀優大(明徳義塾)
4番捕手として明徳義塾の4年ぶりの4強入りに大きく貢献したのが古賀優大だった。選抜では龍谷大平安の強力打線に15安打7失点を喫して大敗したが、この夏はエース中野を好リードした。決め球のスライダーを有効活用し、境・嘉手納を順当に下すと、準々決勝では同じ四国の鳴門と対戦。お互い手の内を知り尽くした相手の打線を封じ込め、見事完封勝利に導いた。準決勝では敗れはしたものの、優勝投手の今井から2安打をマーク。打撃、リード、強肩とも高いレベルを見せ、明徳義塾の歴史でも屈指の好捕手であった。
一塁手 入江大生(作新学院)
エース今井が復調するまでは主戦格として起用されていたが、大会では4番として3試合連続ホームランを放つ大車輪の活躍を見せた。初戦で尽誠学園の好左腕・渡辺から一発を放つと、3回戦の花咲徳栄戦では2試合連続のホームラン。相手エースの高橋昴(広島)が出てくる前に大量点を奪って試合を決めた。極めつけは準々決勝の木更津総合戦。大会屈指の左腕・早川の甘く入ったストレートを逃さずとらえて先制2ランを放ち、優勝へ向けての大きな関門を突破した。自分のポイントに来たボールを逃さず放り込む、天性の長距離ヒッターであった。
二塁手 有村恒汰(常総学院)
試合巧者・常総学院のしたたかな野球を体現したトップバッター。2回戦の中京戦ではスクイズや犠飛など確実に打点を挙げる業師ぶりを見せると、3回戦では大会初登板の履正社の左腕・山口の出鼻をくじく2塁打を放つ豪快さも見せた。相手の決め球のストレートを狙い打ち、二塁打、3塁打と長打を連発して相手にリズムをつかませなかった。木内監督が勇退されたあとも、相手のスキを突くスタイルは健在であり、常総学院らしい好選手であった。
三塁手 小西慶治(東邦)
強打・東邦の6番打者として3試合で14打数8安打の大当たりを見せ、ポイントゲッターぶりを発揮した。選抜の関東一戦で特大の一発を放ったように、持ち前のパワーを発揮しつつ、逆方向へのうまう打撃も光った。劇的な展開となった八戸学院光星戦では4番藤嶋(中日)が凡退して嫌なムードになった中で、ライトへのコンパクトな打撃でタイムリーを放ち、逆転サヨナラ勝ちを呼び込んだ。県大会ではもう一つ当たりの出なかった東邦打線だったが、甲子園では3試合で31得点と大当たり。その中心にいたのが小西であった。
遊撃手 松尾大河(秀岳館)
パワー野球で甲子園を席巻した秀岳館打線の核弾頭が松尾大河(横浜)だった。筋骨隆々の体から放たれる強烈な打球で常葉菊川、いなべ総合と東海地区の実力校を撃破。準々決勝では常総学院の好左腕・鈴木から一発を放ち、2001年夏のリベンジに燃える相手を返り討ちにした。腰の据わった秀岳館らしい打撃であった。ショートの守備でも強肩と広い守備範囲を武器に投手陣を援護。走攻守3拍子揃ったプレースタイルで秀岳館の春夏連続の4強入りに貢献した。
左翼手 天本昴生(秀岳館)
強打の秀岳館にあって、高い打撃センスで5番打者を務めた好打者。初戦の常葉菊川戦で4打数4安打と大当たりを見せると、その後もコンスタントにヒットを量産し、4試合で15打数8安打を大爆発した。準々決勝では1番松尾と同じく常総学院の鈴木から先生の一発を放ち、選抜に続いてホームランを記録した。182㎝と大柄な体格からチームトップのスイングスピードで快打を連発し、内外角問わずに対応できる打撃は上の世界でも十分通用するものであった。
中堅手 手束海斗(鳴門)
2年連続で初戦敗退と苦しんでいた鳴門に勝利を呼び込む先制2ランを放った4番打者。2年生時から4番を務める男が、開幕戦の緊張感が漂う中で大仕事をやってのけ、エース河野(日本ハム)に大きな援護点をもたらした。長距離砲にありがちな粗さはなく、コンパクトな打撃でヒットを量産。渦潮打線の中心打者として8強入りに貢献した。準々決勝では明徳義塾との四国対決に完封で敗れたが、思い切りのいいスイングを最終打席まで貫いた。
右翼手 塩谷洋樹(盛岡大付)
強打の盛岡大付が全国を初めて震撼させたのがこの大会だったのではないだろうか。その打線の中心にいたのが塩谷洋樹だった。1回戦は九州国際大付の藤本、2回戦は創志学園の高田(巨人)と好投手が相手だったが、ともに2桁安打で粉砕。特に2回戦の創志学園戦では150キロ右腕の高田からレフトポールを直撃する2ランを放ち、ストレートにめっぽう強いところを見せた。「15三振取られてもいいから10安打打ってこい」という監督の指示にフルスイングで応えた。3回戦でもホームランを放ち、挙げた打点は9。わんこそば打線の破壊力を存分に見せつけた。
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