大会ベストナイン(2025年選抜)

2025年

右投手 織田翔希(横浜)

大会前、超高校級右腕として注目されていた新2年生右腕・織田。しかし、大会序盤は相手打線に捕まる苦しい投球が続いた。150キロ台を記録する速球はキレも抜群で、いわゆる本物の速球だったが、中盤に入ると明らかにスピードが落ち、市立和歌山・沖縄尚学といった常連校の打線に捕まる場面が見られた。どこか、まだ自分自身で出力の調整がうまくいっていないような印象を受けたが、リリーフしたエース左腕・奥村頼や打線の援護で、なんとかベスト8まで進出した印象だった。

しかし、大会が終盤に突入すると、うまく肩の力が抜けたのか、徐々に安定感を増していく。準々決勝の西日本短大付戦あたりから、逆に中盤に入ってボールが走るようになり、7-8分の力で切れ味の増した速球を投じるようになる。すると、準決勝の健大高崎、決勝の智辯和歌山と今大会最高峰の攻撃力を擁する両チームに対して、いずれも好投を披露。打者の左右を問わずにインコースを突ける制球力も光り、簡単に踏み込みを許さない投球で、チームに栄冠をもたらした。

今大会の5試合の経験は、今後、織田が成長するうえで大きな糧になっただろう。あの松坂大輔に匹敵するポテンシャルの持ち主と言われる若き右腕が、どこまで上り詰めていくのか、楽しみでもあり、末恐ろしくもある。

織田翔希 甲子園初登場 初回全投球

左投手 石戸颯汰(浦和実)

初出場の浦和実を4強に導いた技巧派左腕。足を高く上げた独特のフォームから繰り出す、キレのあるボールを武器に相手打線を翻弄した。足を着いてからの間がある点も打ちにくさを増しており、タイミングが合わないため、突っ込んだり、詰まらされる当たりが続出した。技巧派なのだが、かわすという印象は薄く、堂々とストライクゾーンに投げ込んで、相手打者がとらえきれていないので、ある意味本格派のような印象も受ける不思議な投手であった。

初戦でミートのうまい滋賀学園打線を6安打で完封すると、2回戦の東海大札幌戦、準々決勝の聖光学院戦ではいずれもロングリリーフで無失点投球を見せた。厳しい場面でも自分の良さを見失わず、淡々と打ちとる姿は、全国の高校生投手に「目指すべき指標」を見せる結果となっただろう。夏は、激戦の埼玉大会に挑むこととなるが、再び甲子園に戻ってくる日を楽しみに待ちたい。

U18日本代表候補 浦和実業・石戸颯汰 打てない120キロ! 変則フォームで打者を翻弄!  高校野球 ドラフト候補 甲子園 選抜 野球 侍ジャパン

捕手 山田凛虎(智辯和歌山)

中学時代から注目されていた好捕手が、2年生ながら智辯和歌山のレギュラーを掴み、期待通りの活躍を見せた。プロの世界を経験した中谷監督の指導の下、エース渡辺をはじめとする多彩な投手陣を好リード。インコースをうまく使った攻めを見せ、内外の出し入れで相手打線を封じ込めた。4試合中3試合の完封勝利は、山田のインサイドワークの勝利と言えるだろう。また、強肩でもチームに貢献し、2回戦ではエナジックスポーツの機動力野球を封じ、盗塁阻止などで相手の勢いを封じ込めた。

打線では、強力クリーンアップの後の6番を務め、17打数8安打と好調を維持。打点は2とそこまで多くはなかったが、山田が出塁した後に、勝負強い7番大谷・9番黒川への流れで、下位打線から得点を奪えたのも、今大会の躍進につながった。まだ2年生であり、さらなる成長も見込める逸材。少なくとも来年までの2年間は、智辯和歌山のディフェンス力は安泰か。

智弁和歌山、山田凜虎スローイング

一塁手 三島陽之介(浦和実)

大会前は打力が不安視されていた浦和実だったが、準々決勝までの3試合で34安打23得点を記録。その中心となって活躍したのが、不動の4番に君臨した三島であった。4試合で18打数9安打6打点と大爆発。どっしりとした構えから繰り出す力強いスイングで、2塁打が3本、3塁打が1本と長打力を発揮し、相手に圧力をかけた。また、広角に打ち分ける技術も卓越したものがあり、特に左中間方向への打球は流し打ったとは思えないほどのスピードがあった。

滋賀学園、東海大札幌、聖光学院と投手力の高いチームを相手に結果を残したのもポイントが高い。中でも、タイブレークに突入した聖光学院戦では、自らの犠打を決め、1イニング8点の猛攻につなげた。献身的な姿勢も併せ持つ主砲が、打の主役としてチームを牽引した選抜であった。

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二塁手 イーマン琉海(エナジックスポーツ)

初出場のエナジックスポーツを勢いづけたのは、間違いなく彼のバッティングと走塁だっただろう。初戦は1点リードの3回に左中間を突破する3塁打を放ち、快足を飛ばして3塁を奪うと、2点目のホームを奪取。終盤にも大量点に絡む内野安打を放つなど、4安打の活躍で初出場初勝利に貢献した。50メートル5秒8の俊足は、相手守備陣にこれ以上ない圧力をかけていたことだろう。

そして、2回戦の智辯和歌山戦は、ある意味では初戦以上のインパクトを残した。エース久高が捕まり、4回までに8点を失う苦しい展開となったが、エナジック打線はあきらめない。イーマンはこの試合でも4安打を放ち、さらに2盗塁も決めて、塁上を縦横無尽に駆け抜ける。得点差があった試合だが、そんな印象をかき消すほど、イーマンの打撃と走塁は智辯和歌山にプレッシャーをかけ続けた。

2試合で10打数8安打の打ちまくった、今大会最高のリードオフマン。沖縄尚学など強力なライバルが控える沖縄大会を勝ち抜けるのか、彼の活躍に注目だ。

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三塁手 為永晧(横浜)

硬軟織り交ぜた攻めで、数々の好投手を攻略した横浜打線。奥村淩、阿部葉、奥村頼、小野と好打者が並ぶ中にあって、潤滑油的な存在となったのが、2番の為永であった。2回戦から1番奥村淩、2番為永、3番阿部葉の並びになると、得点力がUP。出塁率の高い奥村淩が塁に出ると、犠打あり、エンドランあり、盗塁のサポートあり、四球での繋ぎありと、状況に応じた攻めで、3番阿部葉にチャンスを広げて繋いでみせた。

また、サードの守備でも投手陣を強力にバックアップ。健大高崎戦で相手が犠打を試みた場面で、小フライをダイビングキャッチするなど、名門のホットコーナーを守り切り、5試合で無失策であった。攻守で繋ぎの役割を果たした仕事人が、横浜優勝の原動力になったことに、異論のある人はいないだろう。

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遊撃手 加藤大成(健大高崎)

2年連続の優勝を狙って乗り込んだ2025年の選抜。しかし、昨年のエース左腕・佐藤龍はTJ手術となり、右腕・石垣も脇腹の負傷で本調子ではなかった。そんな中で、打線がどこまで投手陣を援護できるかがカギを握っていたが、2番ショートの加藤が攻守でチームに貢献した。

初戦は、明徳の好左腕・池崎の前に苦戦を強いられたが、加藤はただ一人複数安打を記録。4回にはラッキーな内野安打で相手守備陣を乱し、先制点に繋げた。その後も、敦賀気比、花巻東と強敵との対戦が続いたが、いずれも犠打やタイムリーで得点に絡む活躍を見せた。上位打線からの得点が多かった今大会の健大高崎にあって、加藤の役割は欠かせないものであった。

ただ、準決勝の横浜戦では初回のヒット1本に終わり、打線全体でも9安打を放ちながらも1点どまり。選抜初優勝を果たしてからの公式戦の中で、初めて力負けと言える試合内容だった。夏は万全の態勢で、2年連続の出場からの選手権初優勝を狙うこととなるが、加藤の活躍は必須になるだろう。

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左翼手 安田悠月(西日本短大付)

今大会、強力クリーンナップと言えば、西日本短大付と言えるほど、活躍が目立った3人衆。3番斉藤、4番佐藤と強打者が並んでいたが、中でも5番安田は2回戦で、観衆の目を引く大活躍を見せた。

1回戦の大垣日大戦では中軸3人がいずれもタイムリーを放つ活躍で6-0と完勝すると、2回戦では一昨年の選抜覇者の山梨学院と対戦。相手投手が落ち着くを取り戻す前に攻め立て、2アウト1,2塁で打席に立つと、5番安田が打席に入る。相手投手の変化球をうまくとらえた当たりは、ライトの前に弾み、ダイビングしたライトが届かずに外野を転々。打者走者の安田までホームを駆け抜けるランニング3ランとなって一気に試合のペースをつかんだ。

さらに、最終打席でも2点タイムリー3塁打を放つなど、この試合3安打6打点を記録。強打の西短の印象を決定づける活躍で、初勝利から一気に8強まで勝ち上がる原動力となった。

大会第4号は西短5番安田悠月のライトへの先制ランニング本塁打【2025.3.24第97回選抜高校野球2回戦第2試合 西日本短大付vs山梨学院】#第97回選抜高校野球#西日本短大付#山梨学院#甲子園球場

中堅手 阿部葉太(横浜)

今年の横浜の顔と呼べるキャプテンシーを見せ、走攻守でチームに貢献。ハイレベルなプレーで観衆を魅了した。成績もさることながら、その内容が素晴らしく、相手にとって、ここはやめてくれという場面でことごとく結果を残して見せた。2回戦の沖縄尚学戦ではエース末吉に代わって、先発した右腕・新垣に対し、1回表に会心の当たりで3ランホームランをマーク。沖尚にとっては、最少失点でイニングを消化していきたいところで、一挙に大量点を奪ってみせた。

準々決勝、準決勝でも2試合連続でタイムリーをマークすると、決勝では智辯和歌山のエース渡辺から勝ち越しの2点タイムリーをマーク。アウトコースの完全にボール球のコースだったが、外に来ることを読み切ったように踏み込んで打ち、レフト線に落とす芸術的な打撃を見せた。あのボールを打たれては、智辯バッテリーとしてもお手上げだっただろう。さらに、6回表には5番荒井のセンターへの痛烈な当たりをダイビングキャッチ。攻守で智辯に引導を渡すプレーを見せ、優勝への流れをぐっと引き寄せた。

単純に打つ、守るだけでなく、ここ一番で自チームのベンチが何を求めているか、相手が何を嫌がるかを分かったうえでプレーしている、名門の主将。高校野球において、大人が混じってプレーしているかと錯覚させられるような、洗練されたプレーヤーだった。

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右翼手 福元聖矢(智辯和歌山)

昨夏から上位打線を務めていた実力者が、この選抜は4番としてチームを牽引。2回戦までは無安打と鳴りを潜めていたが、準々決勝からの3試合で13打数8安打4打点と素晴らしい活躍を見せた。復調の兆しとなったのが準々決勝の広島商戦の第1打席。好投手・大宗のボールをやや詰まりながらも、しっかり引き付けて振り切る打法で、ライト前に落とし、大会初ヒットで長いトンネルを抜けた。これで肩の力が抜けたか、準決勝では好左腕・石戸を相手に4打数4安打と大暴れ。チームを2018年以来の決勝戦へと導いた。

決勝では、横浜との名門対決となったが、4-11とまさかの大敗。ターニングポイントとなった6回の攻防で、2番手左腕のスライダーをとらえきれずに三振を喫した。カウント2-2からの交代という難しい局面であり、致しかたない面があったが、悔しい打席になっただろう。それでも8回にはライト頭上を襲うタイムリー3塁打を放ち、強打・智辯の4番として意地を見せた。夏の優勝へ向けて、彼の活躍はなくてはならないものになるだろう。

【センバツ注目選手】福元聖矢(智弁和歌山)【2025ドラフト候補】

 

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