終盤までもつれにもつれた近畿対決
高校野球の歴史100年を数えた2015年の夏。その1回戦で大阪偕星学園と比叡山という近畿勢同士の顔合わせが実現した。

大阪偕星学園は元プロの山本監督が指導し、「リアルルーキーズ」のようなたたき上げの強化で強さを増してきていた。4番捕手の大黒柱・田端や天理から編入してきた長身の1番姫野、スタミナ抜群のエース左腕・光田など個性豊かで負けん気の強い面々が躍動。大阪大会準々決勝では前年夏王者の大阪桐蔭を3-2と下し、勢いに乗って代表の座を一気につかみ取った。

対する比叡山はエース村西(横浜)を擁して春夏とも優勝校に敗れた1999年以来実に16年ぶりの出場を果たした。近年は近江、滋賀学園、北大津などに押され気味だったが、この年は技巧派右腕・山崎を中心とした分厚い投手陣と切れ目のない打線で快進撃。決勝では好投手・小川を擁して3季連続の甲子園を狙う近江を5-0と圧倒し、久々の夢切符をつかんだ。
10回表、炎の6連打で熱戦に終止符
2015年夏1回戦
大阪偕星学園
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 計 |
| 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 4 | 7 |
| 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 3 |
比叡山
大阪偕星学園 光田
比叡山 山崎→大原→西村→中島

投打ともに大阪偕星にやや分がある中で、比叡山がどれだけ食いつけるかという構図。しかし、大阪偕星はエース光田が大阪大会4連投の影響で指のまめをつぶしており、スライダーのスピードがやや落ち気味なのが気がかりであった。
試合は1回表から大阪偕星の強打が火を噴く。2アウトから3番西岡が失策で出塁。4番田端が2塁打でつなぐと、5番を務める2年生岸がその迫力ある体格通りの痛烈なセンター前タイムリーで2点を先制する。王者を倒して代表切符をつかんだ自信が各打者のスイングにみなぎる。
しかし、粘って食らいつくスタイルの比叡山もすぐに反撃。2回裏にエース山崎が自らタイムリーを放って1点を先制すると、3回には上位打線の連打で同点に。大阪偕星の光田はストレートにはキレがあるが、やはりスライダーにスピードが乗らず、苦しい投球となる。
その後、比叡山・山崎はスライダー主体に針の穴を通すコントロールで大阪偕星打線をかわしていく。6回表に9番的場のタイムリーで1点を失ったものの、上位から下位までまるで穴のない打線を相手に7回3失点の投球は十分先発の役目を果たしたと言えるだろう。
なんとか反撃したい比叡山だが、1回から毎回ヒットを放ちながらも要所を締める光田の前に4回以降は得点を挙げられない。さすがに猛者ぞろいの大阪大会を勝ち抜いた優勝投手だけあって勝負所のコントロールを間違えない投球が続く。
だが、運命の9回裏、比叡山に最高の場面が訪れる。ヒットのランナーを犠打で進め、2アウト2塁となったところで打席には主将の河合を送る。これまでチームを支えてきたキャプテンがインサイドのボールを引っ張ると、打球は三遊間を抜けてレフトへと運ぶ同点タイムリーに!ナインの思いが伝わった一打にスタンドは大興奮となる。
ただこの9回裏の続くチャンスで決めきれなかったのが痛かった。8回以降苦心の継投策を見せていた比叡山投手陣がついに10回表で力尽きる。2アウトランナーなしから7番福田、8番光田の連打で1点を勝ち越すと、そこから3番西岡まで炎の6連打を見せて4点を勝ち越し。一気に試合の流れを強奪する集中打で試合は決した。
まとめ
それでも10回まで毎回安打を放った攻撃陣と粘りの継投で、V候補の大阪代表に食らいついた伝統校・比叡山の戦いぶりが甲子園ファンの胸を打ったのは間違いない。近畿勢同士の死闘は接戦の多かったこの年の夏の中でも屈指の名勝負であった。


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