大阪桐蔭vs報徳学園 2008年夏

2008年

好左腕を攻略した重量打線

乱打戦が多かった2008年夏の甲子園。特に大会終盤は打線が爆発するチームが相次いだ。そんな終盤戦の火ぶたを切ったのが、準々決勝の第1試合、報徳学園vs大阪桐蔭であった。

両チームは一昨年秋の近畿大会決勝で対戦していた。1年秋からエース格の報徳学園・近田(ソフトバンク)が糸井との下級生バッテリーで中田翔(中日)が4番に座る大阪桐蔭打線を翻弄。わずか2安打1点に抑える好投を見せた。この2校は翌年の選抜でも当然、優勝候補に挙がっていた。

しかし、ここから両者とも苦しい時期を迎えることとなった。

報徳学園4-7大阪桐蔭/大阪桐蔭が6回に逆転 | 報徳学園 ...

大阪桐蔭は4番中田をはじめとしてタレント集団で全国制覇を目指したが、春は準々決勝で優勝校の常葉菊川に惜敗。夏は金光大阪・植松(ロッテ)に打線が封じられ、甲子園に手が届かなかった。迎えた新チームは、野手がほぼ総入れ替えとなったため、秋の大会で苦戦。PL学園に0-9とまさかのコールド負けを喫し、選抜出場は早い段階でなくなった。

捲土重来を期した夏は、コントロールのいいエース福島由と球威のある奥村の右腕2枚看板を、ショート浅村を中心とした堅守で支え、大阪大会では準決勝で箕面東に2-1,決勝で履正社に2-0といずれも守り勝ち。ディフェンス力の高さで2年ぶりの代表を掴んだ。迎えた甲子園本番では、打線が一転して好調に。2回戦で2ホームランを放った1番浅村(楽天)を中心に3試合で29得点の猛打を見せ、秋に屈辱を味わったチームが、全国制覇の狙えるところまで勝ち上がってきていた。

報徳学園高・近田、試練の先の輝ける場所 - スポーツナビ

一方、報徳学園も前年は春夏連続出場を果たすが、いずれも初戦敗退。投攻守の総合力では大阪桐蔭を上回ると思われていただけに、意外な結果であった。これで2002年選抜優勝から甲子園で5連敗となり、報徳学園・永田監督にとっては最も苦しい時期を過ごしていた。近田が最終学年となった秋は、そのエースが不調に陥り、秋の近畿大会では登板できず。平安に4-5と惜敗し、こちらも選抜醜状はならなかった。

最後のチャンスとなった夏は、復活したエース左腕をチーム全体で支え、兵庫大会決勝では神戸弘陵に延長サヨナラ勝ち。苦しむ名門が4年ぶりの出場を決めた。甲子園初戦では新潟県央工の溌剌とした野球に苦戦したが、6番氏家の同点2ランで試合を振り出しに戻すと、最後は4番井上がサヨナラ2ランを放って、甲子園での連敗をストップ。勢いに乗ったチームは2回戦でも智辯学園にサヨナラ勝ちし、3回戦の鹿児島実戦も打ち勝って8強入りを決めた。エース近田は苦しみながらも要所を締める投球で3試合連続の完投勝利を飾った。

報徳の攻撃をかわした継投策

2008年夏準々決勝

報徳学園

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 0 1 2 0 0 0 0 4
0 1 0 0 1 3 1 1 × 7

大阪桐蔭

 

報徳学園   近田→小野寺

大阪桐蔭   福島由→奥村→福島由

試合の焦点は、報徳の好左腕・近田を好調な大阪桐蔭打線がどう攻略するかであった。しかし、試合が始まると、元気なのは報徳打線であった。

いずれも4割以上の打率を残す4番井上、5番近田、6番氏家の3人が好調。2回表に、センター前ヒットの井上を2塁に進めると、2アウト後に7番中村がライトオーバーのタイムリー2塁打を放つ。コントロールのいい大阪桐蔭のエース福島由に対し、しっかり狙い球を絞って攻略する。

2回裏に大阪桐蔭の5番奥村が一発を放ち、いったんは振り出しに戻るが、中盤に再び報徳が主導権を握る。四球のランナーを2塁へ送ると、打席には5番近田。打撃もいいエースは内よりに入ったボールを素直に打ち返し、打球はセンターの頭上を越すタイムリー3塁打になる。投球も乗せかねないエースの一打。大阪桐蔭にとっては痛い一打だ。

さらに、攻撃の手を緩めない報徳は5回表、こちらも好調なラストバッター籾山のヒットを足掛かりに2アウトながら2塁のチャンス。打席には2年生の2番西郷を迎える。翌年に主将を務めることになる努力の男は、福島由のインサイドのボールが甘くなるのを逃さない。打球はライトスタンドへ飛び込む2ランとなり、4-1。夏までエースを援護できないと言われてきた打線が、成長した姿を見せる。

3点のリードをもらった近田。しかし、対する大阪桐蔭にも苦しい時期を這い上がってきた強さがある。この日は、これまでの試合と比較してコントロールが安定していた近田だが、そのぶん的が絞りやすくなったか。5回に9番福島由のタイムリーで1点を返すと、6回裏に猛攻を見せる。

先頭の萩原が引っ張る打撃でヒットを放ち、チャンスメーク。ここから報徳バッテリーのカウント球をことごとくとらえていく。5番奥村がタイムリー2塁打で1点差に迫ると、四球を挟んで8番有山が配球を読みきったように、しっかりボールをとらえて同点。さらに、3回戦で4安打を放って調子を上げてきた2番佐野がしぶい内野安打を放ち、一気に試合をひっくり返す。かさにかかった時の大阪桐蔭の攻めは、長距離砲の並んだ前年とは違う迫力があった。

投げては6回から右腕・奥村が継投し、報徳打線の勢いを寸断。球威のある速球と縦に割れるカーブで攻めるパワーピッチは、福島由とは全くタイプが違い、実に効果的な継投だ。ランナーを許しながらも、大事な場面ではボールの力が勝り、相手打者を封じていく。

この流れに乗った大阪桐蔭打線は、その後も追撃の手を緩めない。ここまで全試合完投で疲れの見える報徳・近田に対し、7回裏に4番萩原が今大会1本目となるホームランを放つと、8回裏には2番佐野からの3連打でもう1点。7回、8回といずれも得点は1点ずつだったが、ともに3安打を集め、報徳のエースを完全に攻略してみせた。

3点のリードをもらった福島由は8回から再登板し、報徳打線の狙いをかわす。最後はここまでエース近田を懸命に支えてきた3番糸井がセカンドゴロに倒れてゲームセット。大阪桐蔭が2005年以来、3年ぶりとなる4強進出を決めた。

まとめ

勢いに乗った大阪桐蔭は、その後、準決勝で横浜、決勝で常葉菊川と前年秋の神宮大会のフィアナリスト2校を下して、17年ぶりの優勝を達成。4番萩原の3試合連続ホームランなど、試合を重ねるごとに打線が勢いを増した。また、投げてはエース福島由が決勝で、横浜・松坂(西武)以来となる完封勝利を達成。1つ上の世代の長距離打者を相手に練習で投げ、コントロールの必要性を身に染みて感じた右腕が、最後に大きな仕事をやってのけた。ここまで3季連続で優勝校に敗れていた大阪桐蔭が、殻を突き破る大会になったのがこの2008年の大会であった。

一方、報徳はエースが力尽きて敗れたが、この大会の8強入りで、それまでの連敗の悪い流れを一掃できた。この試合でホームランを放った西郷が4番主将に就任した2009年選抜も4強入り。優勝候補の中京大中京に逆転勝ちをおさめ、準決勝では清峰のエース今村(広島)に大会初失点をつけるなど、印象に残る戦いを見せた。エースを中心に一枚岩の強さを見せた2008年の報徳学園もまた、印象に残る好チームであった。

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