宇部商vs日大三 2005年夏

2005年

強豪をうっちゃった一心野球

駒大苫小牧の57年ぶりの夏連覇や、大阪桐蔭が誇る、平田(中日)・辻内(巨人)の投打2枚看板の活躍に沸いた2005年の夏甲子園。その準々決勝の第4試合で、投打ともに高い実力を誇る東西の強豪校が激突することとなった。

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3年連続の甲子園出場となった日大三。前年の夏を経験した江原、中山、千田、後藤がそれぞれ1番、2番、3番、5番に座り、4番には西東京No.1と謳われた強打者・多田を据える。全国制覇時にも引けを取らない強力打線が完成し、小倉監督も自信を深めての甲子園であった。また、投げてはエース左腕の大越が安定。西東京大会では他を全く寄せ付けず、本戦でもV候補の一角を堂々と占めていた。

甲子園では、初戦で明徳義塾の出場辞退に伴って急遽代替出場となった高知と対戦。好投手・二神(阪神)が相手だったが、三高打線が火を噴く。2回裏に1番江原のホームランなどで4点を先行すると、終盤には4番多田にも一発が飛び出し、6得点。投げては、エース大越が必殺のスライダーを武器に14奪三振の力投。初戦の戦いぶりを見る限り、関東勢で最も優勝を狙えそうなのがこの日大三であった。

続く3回戦では2番主将・中山の活躍などで前橋商の好投手・富田も打ち崩し、9-6で勝利。打撃戦で最終回には相手の反撃にあったが、2番手の右腕・加藤の好救援があり、昨年超えられなかった3回戦の壁を突破した。4年ぶりの夏の甲子園制覇へ徐々に期待は高まっていた。

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その日大三と準々決勝でぶつかったのが、山口の伝統校・宇部商である。過去、甲子園で幾度も劇的なホームランを放って名勝負を繰り広げてきた同校は、名将・玉国監督の一心野球そスローガンのもと、今年も強力なチームを作り上げてきた。選抜では2回戦で優勝した愛工大名電に0-2と惜敗も、夏は山口大会を順当に勝ち抜いて甲子園へ。この年の中国地方では強力打線を誇る関西とこの宇部商が完全に2TOPと言えるほど、確かな強さがあった。

そのチームの中心は左腕エースの好永。決して剛球を操るタイプではないが、左腕投手特有の腰の横回転を活かした体重移動から勢いのあるボールを内外角に散らしていく。このタイプは実際に対してみると、想像以上に打ちにくいのだ。

また、打線も上位から下位まで非常に当たっており、初戦の新潟明訓戦ではなんと20安打をマーク。7-4でまずは順当に初戦を突破する。2回戦では静清工との機動力野球対決を、堅守と好永の好投で4-0と制すると、3回戦は昨夏の出場メンバーが多く残る強豪・酒田南に1イニング8得点の猛攻を見せて、11-2と圧勝。タイプの違う相手を、宇部商らしい野球でねじ伏せ、ベスト8へと駆け上がってきた。

最終回に見せた、強気の「2番強攻」

2005年夏準々決勝

宇部商

1 2 3 4 5 6 7 8 9
1 0 0 0 0 1 0 0 3 5
0 0 0 0 1 0 0 2 0 3

日大三

 

宇部商    好永

日大三    大越→加藤

迎えた東西強豪対決は、初回から宇部商が先制。大越の牽制悪送球も絡んでしまい、4番好永にタイムリーを浴びる。5回裏に初戦の1番から打順を下げていた7番江原の、今大会2本目となるホームランで追い付くが、直後の6回表に再び宇部商が勝ち越し。日大三としては、なかなか試合のリズムを掴ませてもらえない。

三高自慢の打線は、この試合も序盤からヒットは出ており、決して抑え込まれたわけではない。しかし、ランナーを背負っても強気にインサイドを突き、ボールを散らす好永の投球の前にどうしても大事なところで1本が出ないのだ。宇部商が2-1とリードし、試合は最終盤へ向かう。

しかし、夏の連戦を山口大会から一人で投げ抜いてきたタフネス左腕にもさすがに疲れが走る。8回裏、徐々にボールが高めにはいりだしたところをとらえ、日大三は満塁のチャンスを作る。ここで、打線には8番捕手の桑田。宇部商バッテリーがきっとインコースを突いてくると読みきってとらえた打球は、三遊間突破の逆転タイムリーに!ここにきて、この試合初めてのリードを奪った。

後は、このリードをエース大越が守るだけ。しかし、最終回の粘りに定評のある宇部商の怖さはここからだった。9番星山、1番井田の連打でチャンスを作ると、犠打も作戦としてはある場面で、2番上村に玉国監督は迷わず強攻策。これが、ライトオーバーの逆転三塁打となり、再度試合をひっくり返した。

この回、さらに好永が自らセンターへタイムリーを放って5-3とするが、9回裏に日大三も千田、多田が連打を放ち、最後まで食らいつく。しかし、最後は5番後藤がセンターフライに倒れてゲームセット。粘り合いを制した宇部商が強豪対決を制し、久しぶりの4強進出を決めたのだった。

まとめ

宇部商は土壇場9回に強攻策で試合をひっくり返すという、「らしい」勝ち方で準決勝への扉を開いた。かつての甲子園で、完全試合の危機から逆転ホームランで勝ったり、9回に1年生の逆転3ランが飛び出したりと、攻め気を忘れない姿勢で試合をひっくり返してきたが、その伝統はこの年代にも引き継がれていた。準決勝は、最終回に好永が自らの失策で力尽きて逆転負けを喫したが、この年の宇部商は、間違いなく2005年の夏を彩った好チームの一つであった。

一方、日大三はこの試合、12安打を放ちながらも3得点。終盤に一度は逆転したが、最後まで好永を崩しきるには至らなかった。スピードはなくとも、コントロールとキレ、丁寧さで強力打線を抑えきれるという、お手本のような好永のピッチングの前に行く手を阻まれたのだった。そして、日大三は、この翌年に斎藤佑樹(日本ハム)を擁する早稲田実に西東京大会決勝で敗退し、ここから苦しい時代を迎えることとなる。

2005 夏甲子園準々決勝 宇部商vs日大三1

2005 夏甲子園準々決勝 宇部商vs日大三2

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