ベスト8かけた伝統校対決
2019年の選抜2回戦の最初のカードは伝統ある公立校同士の対戦となった。

高松商は準優勝した3年前以来となる選抜出場。当時ほどのタレント集団ではないが、左腕エース・香川と右腕・中塚の2本柱を安定した守備と勝負強い打線で支える好チームであった。大会初戦では春日部共栄の注目の速球派右腕・村田を攻略。エース香川もキレのある速球とスライダーで相手打線を翻弄し、8-0と大差で初戦突破を果たした。

一方、市立和歌山は前年秋の近畿大会では8強ながらも優勝校の龍谷大平安相手に好ゲームを演じたことが評価されて選抜出場をつかみ取った。2年生エース岩本は、抜群のコントロールを誇る技巧派左腕であり、今大会は開幕戦で市呉を相手に好投。最終回に同点に追いつかれたが、8番片上のサヨナラ打で劇的な勝利を飾った。
流れを決定づけた先制の一発
2019年選抜2回戦
高松商
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 |
| 1 | 2 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | × | 6 |
市立和歌山
高松商 中塚→香川
市立和歌山 柏山→岩本

持ち味の異なる左腕エースを擁する両校の対戦。試合前の予想では打力で勝る高松商がやや有利かと思われた。
しかし、ふたを開けてみると先発はともに右投手の中塚と柏山であった。ともに前年秋の公式戦でよく投げており意外ではなかったが、この先発起用が結果的に試合の流れを大きく左右することとなる。
高松商の先発・中塚は1回裏、簡単に2アウトを取るが、3番緒方に真ん中寄りのストレートをフルスイングされると、打球は左中間スタンドに飛び込むホームランとなって先制を許す。初回に市立和歌山・柏山がストレートがシュート回転しながらもなんとか踏ん張って無失点に抑えただけに、この先制パンチは大きな意味を持った。
快調な流れから一転して長打を浴びてしまった中塚。2回裏にも6番山田、7番瀧谷に連打を浴びてピンチを招くと、9番壹岐にはセンターオーバーの2塁打を浴びて2失点を喫する。この回いずれも打たれたのはストレートであり、変化球でストライクを取れない状況で痛打されてしまった。立ち上がりは変化球でもストライクが取れていたが、初回の一発で明らかにリズムを崩してしまっていた。
一方、立ち上がりにコントロールがばらけていた市立和歌山の先発・柏山だったが、こちらは2回以降徐々に立ち直りを見せる。ストレートが徐々に低めのコーナーに決まるようになり、捕手・米田の好リードもあって高松商の強力打線を4回まで無安打に抑え込む。エース左腕・岩本を早く引きずり出したい高松商にとっては痛い序盤の攻防であった。
こうなると試合の流れが完全に市立和歌山に傾く。4回裏には5番米田、6番山田が連打を放ってついに中塚をKO。代わったエース香川からも満塁のチャンスを作ると、暴投に悪送球が絡んで労せず2点を追加。さらに9番壹岐が2打席連続となるタイムリーを放ち。この回6-0と大きく点差を広げた。
四国王者としてこのままでは終われない高松商は6回になってようやく得点が生まれる。荒れ球の柏山に対してじっくり選球して連続四球を選ぶと、5番浅野は真っすぐをとらえて満塁とチャンスを拡大する。ここで6番上田はストレートの詰まりながらもセンター前に落ちるタイムリーを放って2点を返す。なお追撃のチャンスだったが、ここで市立和歌山もエース左腕・岩本にスイッチ。この継投策が功を奏し、無失点で切り抜ける。
その後は高松商・香川、市立和歌山・岩本の投げ合いに。香川は腰痛の影響で本調子でない中でも懸命の投球で無失点に抑えたが、高松商打線もまた市立和歌山・岩本をとらえきれず。岩本は初戦ほどの出来ではなかったが、要所を締める投球で後半3イニングを無失点で締めてゲームセット。公立校同士の対決を制した市立和歌山がベスト8一番乗りを果たした。
まとめ
市立和歌山は続く準々決勝は習志野に逆転負けを喫したが、この大会でアベック出場した智辯和歌山とともにベスト8へとコマを進め、和歌山のレベルの高さを示した。半田監督のもとで好投手と安定したディフェンスを武器に、派手さはなくとも粘り強いチームを作り上げてきており、県内のライバル智辯和歌山とともに現在も熾烈な争いを繰り広げている。
対する高松商は序盤で右腕・中塚が思いのほかつかまってしまったが、やはりエース香川が腰痛の影響で満足のいく起用ができなかったことが痛かっただろう。この代はけが人が非常に多く、夏も連続出場を果たしたが、選抜のスタメンの何人かは外れる結果となった。四国王者として上位進出も期待されていただけに少々悔しい結果となったが、この年の春夏連続出場を見た1年生が今年甲子園でまた躍動する姿を見せている。


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