日大三打線に立ちはだかった好投手列伝 1/9

コラム

名将・小倉監督に率いられ、数々の名勝負を繰り広げてきた日大三。

その代名詞ともいえる強力打線は豊富な練習量に裏打ちされた技術と体力、気力によって培われてきた。これは、その強力打線と対峙した歴代の好投手たちの戦いの記録である。

1999年選抜  2回戦 水戸商 3-0 日大三

甲子園100年:水戸商 1999年春/下 決勝・対沖縄尚学 ...

水戸商

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 0 1 0 0 0 1 0 3
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

日大三

三橋孝裕(水戸商)

小倉監督就任後、初めての甲子園出場となった1999年春。過去に選抜優勝経験もある母校を自身が率い始めてからは初となる秋の東京王者に導いた。

4番神宮大会でも準優勝を果たす。特に、準決勝では同年夏に横浜と延長17回の死闘を演じていたPL学園を15-5と圧倒。田中一、七野(横浜)、覚前(近鉄)、田中雅(ロッテ)を相手に豪快な逆転劇を演じた。決勝では日南学園に敗れたものの、チーム打率3割8分9厘の強力打線を擁し、本大会では堂々V候補の一角に名を連ねていた。

すると、選抜初戦では山岸(西武)・吉田と2年生の左右両輪を擁する福井商を相手に打線が本領を発揮。攻撃的2番の門間の逆転タイムリーをはじめ、10安打5得点でまずは無難に初戦を突破した。投げては秋の防御率が5点近かった2年生エース栗山が6安打2失点と力投。投打がかみ合い、順調に初戦を突破した。

その日大三を2回戦で待ち受けていたのが、関東5校目の選出となった伝統校・水戸商である。平成に入って常総学院に押され気味となっていた同校だったが、この年はアンダーハンドのエース三橋と勝負強い打線で、秋の大会をしぶとく勝ち上がった。甲子園では初戦で岩国を相手に4番小林の先制弾などで2回に3点を先行。これをエース三橋が守り抜き、見事初戦突破を果たした。

そして、迎えた2回戦の関東対決。前評判では圧倒的に日大三が有利だったが、三橋の投球が三高打線を翻弄する。長身を折り曲げるような投球フォームから繰り出す120キロ台の速球と80キロ台のカーブを前に、なかなかタイミングが取れず、凡打の山。長打は一本も無しの4安打、わずか95球で完封し、マダックス達成でベスト8進出を決めた。

三橋の場合、アンダーハンドから球持ちのいいフォームで投げるため、三高の打者はどうしても待ちきれずに体が前に突っ込んでしまっていた。スピードがなくても打ち取れるという、お手本のような投球。内外角のコースを丁寧に突くため、長打にできるような失投もほとんどなかった。結局、この大会で水戸商は準優勝を達成。関東屈指の古豪が甲子園で存在感を示した大会となった。

1999 春甲子園二回戦 水戸商vs日大三

1999年夏  1回戦 長崎日大 5-0 日大三

長崎日大 公式戦用ユニフォーム - mycrashtestlife.com

日大三

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
0 0 1 1 1 0 1 1 × 5

長崎日大

崎田忠寛(長崎日大)

選抜の2回戦敗退を受け、リベンジを期して夏の大会に臨んだ日大三。西東京大会決勝では国学院久我山の好左腕・河内を打ち込んで夏の代表校の座を掴んだ。それも0-4からの見事な逆転勝利である。3番杉本、4番小花に一発が飛び出し、力で試合をひっくり返した。2年生エース栗山も成長し、夏は選抜でできなかった上位進出も期待できた。

その日大三の相手は奇しくも同じ日大系列の長崎日大。しかも、長崎日大は前年夏が帝京、選抜が駒大高といずれも東京勢に敗退していた。3季連続の東京勢との対戦となり、3度目の正直での初戦突破を狙っていた。

試合は、栗山と長崎日大・崎田の両エースの先発で幕を開ける。1,2回と両エースが踏ん張り、0-0で試合は中盤戦へ。すると、3回、4回と長崎日大が1番的野、6番須江のタイムリーで先行。試合の主導権を握る。

ただ、そうは言っても日大三にとって2点のビハインドはさしたるものではない。小倉監督も「2周目からは捕まえます」と自信をのぞかせていた。だが、3回に迎えた1アウト1,2塁のチャンスでは3番杉本、4番小花が打ち取られて凡退。崎田のボールは角度があり、しかも右打者のインサイドにきっちり制球して投げてくるため、なかなか簡単に踏み込むこともできない。

1回、3回、4回、5回とヒットのランナーを出しながらも、無得点。すると、5回裏にも長崎日大は3番山中にタイムリーが飛び出す。チャンスで一本の出る長崎日大と出ない日大三。徐々にその明暗が分かれてくる。

試合は後半戦に突入。序盤の再三のピンチを乗り切った崎田は、6回から8回まで一人のランナーも出さないパーフェクトピッチングを展開する。選抜では自チームのミスもあって勝てる試合をサヨナラ負けで落としている。相当悔しい気持ちもあったのだろう。この夏は絶対に1勝をもぎ取るという強い気持ちを感じた。7回、8回にも1点ずつを加えて、5-0。うち4点はタイムリーであり、勝負強さが際立った。

日大三は最終回に粘りを発揮。1アウトから5番山下、6番高橋の連打で最後のチャンスを作るが、ここも崎田が踏ん張ってゲームセット!内外角を正確に突くコントロールが素晴らしく、6安打完封で東京勢へのリベンジを達成し、2回戦進出を決めた。小倉監督の日大三での甲子園初年度は力のあるチームだったが、春夏ともそれぞれタイプの違った好投手に行く手を阻まれる結果となった。

1999 夏甲子園一回戦 長崎日大vs日大三1

1999 夏甲子園一回戦 長崎日大vs日大三2

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