21世紀屈指の強力打線が見せた快勝劇
日大三が優勝候補筆頭と目された2011年の選手権大会。強豪を次々退け、ファイナルにたどり着いた日大三の最後の相手は、当時みちのく勢初優勝を狙っていた青森・光星学院であった。

日大三は、神宮大会優勝、選抜4強と着実に実績を積み上げ、夏の西東京大会ではライバル早稲田実に競り勝って、甲子園にしっかり戻ってきた。シンカーの光る本格派右腕・吉永を畔上・横尾(日本ハム)・高山(阪神)の中軸を中心とした強力打線が支え、本戦では剛腕・白根(DeNA)を擁する開星や同じく強打を誇る智辯和歌山に競り勝ち、最も厳しいと言われたブロックを勝ち抜いた。
しかし、吉永は初戦で指のまめをつぶし、2,3回戦は計12失点と本調子ではなかった。ただ、そんな中でも打線は力強くエースを援護。準々決勝では習志野の多彩な投手陣をうまく攻略し、関西戦では好左腕・堅田をとらえ、終盤の猛攻で14得点と猛爆した。6番菅沼が大当たりしたことで、5番高山とのつながりがよく、下位からもう一つクリーンアップが現れるような破壊力を見せつけた。吉永もいい意味で力が抜け、準々決勝は甲子園初完封。準決勝でも好リリーフを見せ、盤石の内容で決勝進出を決めた。
一方、光星学院は、2000年代前半に甲子園を席巻し、4年間で3度夏の甲子園ベスト8以上を達成。しかし、2004年からは青森山田に覇権を奪われ続け、2009年までで出場できたのは、坂本勇人を擁した2006年の選抜のみであった。苦しい時代が続いていたが、2011年の選抜で久々の復活出場。秋の東北大会では田村が1試合3ホームランを放つ活躍を見せ、「NEW光星」をアピールした。
選抜では智辯和歌山に接戦で敗れたが、夏は強打を武器に県大会では青森山田を15-11と撃破し、連続出場を達成。エース秋田と川上(ヤクルト)の2枚看板のいる投手力が安定し、打線は川上、田村、北條のクリーンアップを中心に長打力を兼ね備えていた。本戦では徳島商・龍田、東洋大姫路・原(ヤクルト)と好投手を攻略。投げては、秋田が投げるたびに制球力を増し、準決勝では強打の作新学院を6安打完封して、初の決勝進出をつかみ取った。
相手エースを粉砕した、弾丸3ラン
2011年夏決勝
光星学院
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 0 | 0 | 3 | 0 | 1 | 0 | 5 | 2 | × | 11 |
日大三
光星学院 秋田→李
日大三 吉永

決勝は強打を誇る両チームの打線を、エースがどう封じるかが注目された。ただ、中軸はともに強力であるが、下位打線までの並びの見ると、日大三に分があるのは否めなかった。
2回までは両チームともに無得点での試合の入りであった。吉永は球速は130キロ台でやはりマメの影響はあったが、回転のいいボールをコーナーに投げ分け、光星の強力打線を封じる。対する光星・秋田もこの日の抜群のコントロールを武器に日大三打線に立ち向かう。しかし、ボール半個でも甘く入ると鋭くはじき返されるため、秋田には確実にプレッシャーがかかっていただろう。
その影響が如実に出たのが、3回裏。2アウトランナーなしから3番畔上に死球を与えると、4番横尾には逆方向へのうまい当たりでつながれる。制球ミスの許されないプレッシャーが手元を狂わせたか、また、スラッガータイプではあるが柔らかさを併せ持つ横尾の打撃技術も素晴らしい。ここで打席には5番高山。猛者ぞろいの日大三打線の中でも最もポテンシャルの高いと言われた左打者が、秋田の甘く入ったスライダーをバット一閃。打球はあっという間にバックスクリーンに飛び込む3ランとなり、日大三が一気に主導権を握った。
反撃したい光星打線は6番金山がホームラン性のファウルを放つなど、たびたび日大三打線をヒヤッとさせる打球を放つ。しかし、コーナーを丹念に突く吉永の前にいい当たりがことごとく正面を突き、田村や金山の痛烈な右打ちもライトライナーとなってチャンスが広がらない。
試合は日大三が4点リードした7回に、一気に動く。神経をすり減らして投げてきた秋田のボールが甘く入り、畔上、横尾、高山クリーンアップが3者連続でタイムリーを放つ。仕上げは、ここまでエースをリードしてきた捕手・鈴木の2ランホームラン。チームNo.1のガッツマンが一発を放ち、完全に試合の大勢が決した。
吉永は最後まで粘り強く丁寧に投げぬき、強打の光星打線を5安打で完封。「10点取って0点に抑えて勝つ」という小倉監督の理想をまさに体現する11-0の勝利で、絶対王者が2度目の夏全国制覇を果たした。
一方、光星学院は準優勝には終わったが、この大会で最高成績を更新。田村、北條の2年生コンビが残った新チームは、翌年の甲子園でも大活躍を見せ、3季連続での甲子園準優勝という金字塔を成し遂げた。青森の歴史の転換点ともなったこの大会は、仲井監督にも大きな自信を植え付けたのは間違いないだろう。


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