日大三vs広陵 2010年選抜

2010年

後のドラ1投手同士の投げ合い

2010年選抜準決勝第1試合。ともにプロ注目のエースと強力打線を引っ提げた優勝候補同士が雨が降りしきる中で激突した。

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広陵は3年ぶりの選抜出場。本格派右腕・有原(日本ハム)を擁し、中国大会4強ながら地力を高く評価されて選出された。有原はやや立ち投げのフォームから角度も威力も抜群の速球で相手打線をねじ伏せ、コーナーに決まった時はほとんどの打者が手が出ないようなボールであった。打線は、巧打者・福田(オリックス)をはじめとしてミート力の高い打者が並び、主砲には2年生スラッガー丸子がどっかり座る。非常に得点力の高い攻撃陣である。

初戦は立命館宇治との乱戦に。エース有原がまさかの不調であったが、4番丸子が3安打2打点の大活躍で援護し、7-6と接戦をものにする。続く2回戦は宮崎工の変則左腕・浜田(中日)に打線が苦戦するも、今度はエース有原が快投を見せ、2安打で完封。9回裏に2年生・三田のサヨナラ打が飛び出してベスト8へ進出した。続く準々決勝でも勢いに乗る三田が先制タイムリーを放つなど、前年夏の王者・中京大中京を圧倒。ほとんど流れを渡すことなく、4強の座を勝ち取ってみせた。

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一方、日大三は夏春連続の甲子園出場。2006年に斎藤佑樹(日本ハム)の早稲田実に連続出場を止められて以降、なかなか出場できなかったが、2009年夏に関谷ー吉田(ともにロッテ)のバッテリーを中心に久々の夏の甲子園出場を果たした。その時のメンバーから左腕・山崎(オリックス)、ショート吉沢が残った新チームは高い打力を武器に秋の東京大会で4強に進出。優勝した帝京に4-5と競り負けたが、こちらも実力が高く評価され、逆転での選出を勝ち取った。

初戦は21世紀枠の山形中央が相手だったが、2年生左腕・横山(阪神)を平岩、吉沢の2本の2ランなどでKOし、大量14得点で一蹴。続く2回戦は向陽の技巧派右腕・藤田に苦戦するも、エース山崎の好投で3-1と競り勝つと、準々決勝では再び打線が爆発して10-0と圧勝。山崎は初戦の序盤は苦戦したが、それ以降は角度のある速球を武器にほとんど得点を許さず、安定感抜群の投球を見せていた。エースの好投と強打がかみあい、日大三が力強く4強まで勝ち上がってきた。

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雨中の激闘制し、決勝へ

2010年選抜準決勝

広陵

1 2 3 4 5 6 7 8 9
2 0 0 0 0 2 1 0 4 9
2 0 1 0 0 1 0 10 × 14

日大三

 

広陵    有原→上野→川崎

日大三   山崎→熊坂→吉永→吉沢

ともに左右の本格派エースをどう攻略するかが焦点である。機動力豊かな広陵と長打で圧倒する日大三というタイプの違う打線がお互いのエース攻略に挑んだ。

1回表、広陵は1番福田が巧打で出塁すると、続く2番豊田にはエンドランを指示。これがうまくはまり、ライトへのヒットでいきなり1,3塁とチャンスを迎える。3番三田死球で満塁となるも、4番丸子はうまく打ち取って投手ゴロ併殺。しかし、続く打者の場面で山崎が2者連続で暴投を投じてしまい、広陵が労せず2点を挙げる。雨の中でなかなか普段通りの制球がきかなくなってしまったか。

しかし、条件は広陵も同じ。1回裏、今度は日大三打線が有原を捕まえる。1アウトから2番荻原がエラーで出塁すると、2アウト後に4番横尾、5番山崎が連続タイムリー。2人とも有原の速球を力負けせずにしっかり振り抜き、タイムリーにつなげる。

相手のミスから得点を得た広陵と力で点を奪った日大三。同じ2点でも、後者のほうが手ごたえを得た得点だったか。日大三は3回裏、強打の2番荻原が左中間スタンドへのホームランを放ち、一歩前へ出る。ここまではどちらかと言えば日大三のムードであった。

ところが、雨の中で指のかかりがいまいちと判断したか、小倉監督はエース山崎を4回までであきらめ、5回から継投策に入る。5回はなんとか無失点で抑えたが、当時はまだ経験の浅い3番手の2年生右腕・吉永に対して、広陵打線も6回から反撃開始。先頭の6番藏舛の2塁打に四死球を絡めて満塁のチャンスを作ると、この日当たっている2番豊田が流し打ちで1,2塁間を破り、2者が生還。広陵らしいそつのない攻めで試合をひっくり返す。

逆転された日大三も6回裏に7番畔上のタイムリーですぐさま同点に追いつくも、エースがマウンドにいる広陵とすでに降板した日大三では安心感に差は出てしまっていただろう。7回表、広陵は4番丸子が吉永の速球を完ぺきにとらえると、打球はライトスタンドへ飛び込む勝ち越し弾となって、広陵が再び一歩前へ出る。2年生の主砲に待望の一発が飛び出し、7回裏も有原が日大三打線を無得点に封じる。決勝進出までいよいよあと2イニングである。

ところが、降りしきる雨はさらなるドラマを用意していた。8回裏、日大三は山崎のこの日4本目となる内野安打と四球で1アウト1,2塁とすると、続く代打・根岸は投手前にセーフティバント。これを足元がぬかるんだか、有原が悪送球してしまい、山崎が同点のホームを駆け抜ける。両者の立場が一瞬にして入れ替わった瞬間だった。

グランド上のボールが止まりやすく、投球のボールも滑る。そんな状況の中、追いついたものと追いつかれたものの勢いの差は歴然。ここから日大三打線がとめどなく広陵を飲み込んでいく。3番平岩の四球を挟んでなんと8連打が飛び出し、この回一挙10得点の猛攻。シーソーゲームが一転し、広陵にとってみれば、日大三の背中があっという間に見えなくなってしまった。

最終回、広陵も日大三の4番手・吉永の制球難に付け込み、4四球を選んで4点を返すが、やはり9点差はあまりにも重かった。最後は準々決勝まで大当たりの3番三田が三振に取られ、ゲームセット。強豪同士の好カードは思わぬ形で、日大三に軍配が上がった。

 

日大三はその後、決勝で島袋(ソフトバンク)擁する興南と再び激闘を演じる。延長12回まで及んだ死闘となったが、今度は日大三守備陣にミスが出てしまい、大量5失点で敗退。惜しくも準優勝に終わった。しかし、この悔しさをばねに成長した吉永、横尾、畔上らが成長し、翌年のチームはほぼ無双状態。選抜こそ九州国際大付に敗れたが、神宮・夏の甲子園・国体はすべて優勝し、日大三史上でも最強と呼べるチームへ成長した。

一方、広陵にとっては雨の中で気の毒な試合内容となってしまった。可能であれば、万全のグラウンドコンディションで試合をしてもらいたかったというのが率直な感想である。夏も連続出場を果たすが、初戦で2年生エース斎内(阪神)を擁する聖光学院に0-1と敗退。この年は興南が春夏連覇を果たすが、その打倒・興南を果たしうる有力チームだっただけに、もう少し見ていたかったというのが正直な感想であった。

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