東海大四vs浦和学院 2015年選抜

2015年

セミファイナルで実現したリベンジマッチ

2015年選抜大会準決勝。第1試合で敦賀気比が6番松本の満塁弾2本で大坂桐蔭に11-0と圧勝し、昨夏のリベンジを果たしていた。あの王者があんな大敗をするのか…、異様な雰囲気と余韻が残る中、第2試合で浦和学院と東海大四が対戦した。

この2校は、神宮大会で対戦し、浦和学院が10-0と大勝していたが、第1試合の結果から、再びのリベンジかという期待も持ってみていた。

浦学、決勝逃す 東海大四に逆転負け 春の宿題夏へ | 浦和学院 ...

ただ、そうは言いながらもこの年の浦和学院の充実ぶりは素晴らしかった。左腕エース江口は目の病気があり、失明の危機もあったが、それを乗り越えての成長でチームを秋の関東王者へ導いていた。キレのある速球とチェンジアップの緩急を武器とし、マウンドさばきは冷静そのもの。神宮でも準優勝を飾り、全国屈指の左腕へと上り詰めた。

また、援護する打線も強力であり、3番津田、4番山崎の強打の中軸に加えて、5番幸喜、6番高橋、7番荒木も他校なら4番クラス。荒木は神宮でサイクルヒットを達成し、他校を震え上がらせる層の厚さを見せていた。選抜では初戦で昨年優勝の龍谷大平安と対戦。江口が相手エース左腕・高橋圭(ヤクルト)との投げ合いを制し、延長で2-0で勝利し、V候補対決を制した。その後も、2回戦では大曲工の強打を江口が封じ、準々決勝では県岐阜商の剛腕・高橋(ソフトバンク)を打線が終盤に攻略。初優勝した2年前よりも強いのではと思うほどの勝ち上がり方であった。

その浦和学院に神宮で大敗した東海大四は、組み合わせ抽選の結果、1回戦最終枠となり、1,2回戦と連続で21世紀枠との対戦になった。エース大沢は細身の体ながら、ボールに非常にキレがあり、コントロールも抜群。前年夏にスローボールで全国を沸かせた先輩エース西嶋と同様に、マウンド度胸も抜群で、彼も習ったようにスローボールを織り交ぜるしたたかさがあった。

初戦は豊橋工との投手戦になったが、満塁の7回に4番邵の打ち上げた打球が相手の落球を誘い、一挙3点で競り勝つと、2回戦では初戦で二松学舎大付を倒して勢いに乗る松山東を相手に8回に一挙3点の逆転劇を見せ、際どい試合を勝ち上がってきた。しかし、この2試合を通じて大沢の丁寧な投球とバックの堅守は際立っており、準々決勝では健大高崎を1-0でシャットアウト。当時、機動破壊で勢いに乗っていた強豪に対し、両者とも控え投手が先発する中、見事なゲームメイクで難敵を下した。自分たちの戦い方を貫き、いよいよ浦学とのリベンジマッチの舞台が整った。

強力打線封じたエースの粘投、そしてバックの堅守

2015年選抜準決勝

浦和学院

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 0 0 0 0 0 0 0 1
0 2 0 0 0 1 0 0 × 3

東海大四

 

浦和学院  江口

東海大四  大沢

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浦和学院としては昨秋に10得点をたたき出したように、大沢に対して嫌なイメージはなかっただろう。1回表に2番臺がいきなり流し打ちでレフトの頭を超す2塁打を放ち、チャンスメーク。この回は得点ならなかったが、球威はそこまでではない大沢に対し、強いスイングで攻勢をかける。

すると、2回表、下位打線が仕事を果たす。1アウトから怖い7番荒木、8番西野と当たっている二人がいずれもアウトコースのボールを右方向へ連打。技巧派投手が最も嫌な打撃で大沢を追い詰めると、8番江口は変化球を拾う技ありのタイムリーで1点を先制する。この段階では、浦和学院も大沢攻略のイメージをしっかり描けていただろう。

しかし、ここから浦学にとっては予想しない流れとなる。その裏、先頭の4番小川に死球を与えると、犠打と内野ゴロで三進。2アウト後に打席には投手の大沢が入る。先ほどのお返しとばかりに高めに浮いたスライダーをセンターに運び、すぐさま同点に追いつく。まるで先ほどの江口のタイムリーを見るような、鏡写しのような一打であった。

動揺した江口は、続く8番立花、9番渡瀬に連続四死球を与え、満塁のピンチに。制球力の高い江口としては信じられないような投球である。その動揺が伝わったか、続く1番富田の1,2塁間への打球をセカンド臺が捕球しきれず。逆転のランナーがホームを駆け抜け、東海大四が試合をひっくり返す。

追いつきたい浦和学院は、3回表、1年生からレギュラーの3番津田がレフトへの2塁打で出塁。しかし、4番山崎がレフトフライに倒れると、5番幸喜の打球はピッチャー大沢のグラブをはじき、ショート富田がつかんで、飛び出したセカンドランナーは戻り切れず。ツキが浦学から逃げていったような打球に、森監督も嫌な予感がしただろう。

3回まで5安打を放ちながら1点どまり。そうこうしているうちに大沢がいつものリズムを掴みだす。丹念に低めを突き、速球は8分の力でコーナーへ。ヒットを浴びても動揺を見せず、後続を淡々と打ち取っていく。試合後に森監督が、「本当に神宮でコールドで倒した時と同じ投手なのか!?」と目を疑うほどの打たれ強く、完成度の高い投球あった。

すると、6回裏、再び逆転した2回と同じような攻撃で東海大四が追加点を奪う。先頭の4番小川がヒットで塁に出ると、犠打と振り逃げで1アウト1,3塁に。守っている浦学ナインも、どこかいつもと違う試合のリズムに違和感があったのかもしれない。ここで、打席には当たっている7番大沢。初球を3塁線に絶妙な勢いで転がすと、セーフティスクイズ成功で貴重な3点目をGET!大きな大きな1点を奪い、リードを2点に広げた。

投打にタレントが揃う強大なライバルに対し、この日の東海大四ナインは、あの神宮の時とはチームとして別物に変貌していた。最終回も先頭打者の打球をレフト左近が好捕!その後、浦学打線に連打を浴びるも、最後まで大沢の冷静さは崩れなかった。最後は、この大会当たっていた1番諏訪の打球をセンター渡瀬がつかみ取り、ゲームセット。痛快なリベンジを成立させ、東海大四が初の決勝進出を決めた。

 

東海大四はその後、決勝では敦賀気比のあの松本に8回裏に決勝弾を食らい、1-3と惜敗で準優勝になったが、それでも大会前の下馬評をかわす快進撃であった。神宮の敗戦後、徹底して私生活から見つめなおし、チーム全員で同じ方向を向いて強化した成果が、最高の形で実を結んだ。この大会で東海大四の奪った1試合の最高得点は3点。打撃全盛だった近年の高校野球において、異例の勝ち上がりであったが、全国のチームに可能性を示した準優勝だったと言えるだろう。

一方、負けた浦和学院としては悔しい結果に。一度大勝した相手にこういう形で敗れてしまうのが、野球の難しいところである。その後、春季関東大会も制し、あの小笠原(ナショナルズ)・吉田(ロッテ)という150キロの左右2枚看板のいた東海大相模にも4-0と完勝をおさめていた。

しかし、好事魔多し。夏は、埼玉大会準決勝で伏兵の白岡に1-4とまさかの敗戦であった。そこまで埼玉はおろか関東でも無敗だったチームのあっけない幕切れに当時、呆然とした記憶がある。その白岡を倒して花咲徳栄が甲子園出場すると、3年連続出場を果たし、その3年目には埼玉勢として悲願の夏の全国制覇を果たすこととなる。いろんな意味でエポックメイキングな印象を残した、2015年の埼玉の高校野球であった。

 

東海大四-浦和学院 準決勝

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