横浜vs郡山 1998年選抜

1998年

伝統校に付け入るスキを与えなかった絶対王者

1998年の選抜は松坂大輔(西武)擁する横浜が圧倒的な力で優勝候補として注目されていた。順当に準々決勝まで勝ち上がり、迎えた対戦相手は2年連続出場の奈良の伝統校・郡山。関東と関西の地区大会優勝校同士の対戦となった。

1998年春準々決勝 横浜vs郡山 4/20 - YouTube

横浜は新チーム結成以降ここまで公式戦負けなしのチーム。エース松坂は2年夏のサヨナラ暴投の悔しさをばねに成長し、最速150キロの速球と高速スライダーで相手打者を翻弄。打線は小池、後藤(ともに横浜)、小山(中日)、松坂といった長距離打者もいれば、加藤・佐藤・松本といった小技の効く巧打者もおり、硬軟織り交ぜたハイレベルな野球で得点を重ねていた。

初戦は前年の選抜4強の報徳学園と対戦。V候補同士の戦いと注目されたが、投打に横浜が圧倒して6-2で快勝。松坂は最終回に2点を失ったものの、8回まで全く付け入るスキを与えず、改めてその実力の高さを見せつけた。2回戦ではエースで主軸の村田(横浜)が率いる東福岡と対戦したが、松坂は初戦以上の投球内容で2安打完封。村田に投手としての夢をあきらめさせるほどのピッチングで3-0と快勝し、まずは順当にベスト8進出を決めた。

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対する郡山は前年の選抜を当時2年生だったショート村田のトンネルで逆転サヨナラ負けするというショッキングな敗戦で終えていた。村田に加えて、竹村ー川原のバッテリーも残った新チームは秋の大会を順当に勝ち上がると、地区大会ではPL学園や報徳学園といった私立の強豪を倒して近畿大会を制覇。文武両道を掲げる公立の伝統校が自信を持って選抜の舞台を迎えていた。

甲子園初戦は奇しくも前年と同じ北海道勢の北照と対戦。エース竹村がいきなり先頭打者弾を浴びる苦しい展開となったが、ショート村田を中心に堅守で盛り立てると中盤に味方打線が奮起して逆転。3-2と接戦ながら試合内容では完全に郡山が圧倒し、リベンジの勝利を達成した。続く3回戦では前年夏8強の強打の徳島商にも打ち勝ち、近畿王者が堂々8強入りを決めた。

決死の重盗を阻止した「平成の怪物」

1998年選抜準々決勝

横浜

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 0 2 0 1 0 0 0 0
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

郡山

 

横浜   松坂

郡山   竹村

大戦前から下馬評は圧倒的に横浜優位。郡山としてはなんとか横浜をかく乱するような展開に持ち込みたいところだった。

すると、1回裏に早くも郡山にその機会が訪れる。1アウトから2番村田がライトへのヒットで出塁すると、2アウト後に4番川原はストレートを詰まりながらもレフト前に運ぶ。2アウトでランナーは1、3塁。ここで郡山は1塁ランナーの川原がスタート。捕手・小山はすかさず2塁へ送球するが、松坂がその送球をジャンプしてキャッチ。3塁ランナーをホームで刺し、郡山の先制点を阻む。

郡山にとっては過去最高成績となる4強入りを果たした第53回の選手権大会でも強豪・銚子商を相手に同様の重盗を行い、見事サヨナラ勝ちを収めていた。郡山にとってはお得意の攻撃パターンであったが、研究を重ねていた横浜ベンチととっさにジャンプした松坂のセンスが一枚上であった。

すると、2回表に横浜は先頭の4番小山がスライダーをとらえてセンターへのヒットで出塁。続く5番松坂も竹村のスライダーをとらえると、やや泳いだにも関わらず打球はぐんぐん伸びてレフトふぇんとを直撃する。ボールが転がる間に小山が1塁からホームインし、郡山が是が非でもほしかった先制点を横浜があっさりと手に入れた。

自らの手で先制点を得た松坂は2回以降快調なピッチングを展開。この日はストレートのさいそくこそ140キロ台中盤だったが、7分8分でも打者を圧倒するだけの力を持つ。相手打者の得意不得意を見極めたうえで前半は相手の得意コースからボール半個外して打たせて取り、中盤以降は苦手なコースで翻弄する。松坂の球威とコントロールがなければできない芸当で郡山の勝負強い打線を翻弄していく。

すると、横浜は4回表にも2アウトから盗塁も絡めて松本、小山がタイムリーし、着実にリードを広げる。結果的に得点は4点にとどまったが、計14本のヒットを放って塁上をにぎわし、機動力で郡山バッテリーを揺さぶり続けた。郡山のナインにとっては常に試合を支配されているような感覚だっただろう。

結局、松坂は9回を投げ切って4安打完封。のちに郡山の打者が「松坂は本気で投げているようには見えなかったが、それでも楽々完封された感じがした」と話したように、投打に圧倒的な力の差を見せつけた横浜がベスト4進出を決めた。

まとめ

その後、横浜は準決勝でPL学園、決勝で関大一と大阪勢を連破して選抜を25年ぶりに制覇。前年まで神奈川勢は5年連続で大阪のチームに敗れており、横浜自身も西日本のチームを大変苦手としていたが、この大会ではそのジンクスを打ち破って見事な優勝を果たした。投攻守走に全くスキのなかったこの年の横浜を超えるチームはそう現れないのではないだろうか。

一方、敗れた郡山はいかんともしがたい力の差はあったが、初回に重盗を仕掛けたように自分たちにやれることはやっての敗戦だったように思う。最近は天理、智辯学園の2強が元気なこともあり、2000年夏を最後に出場できてないが、名将・森本監督の築いた郡山野球をが今後も引き継がれていき、また甲子園の舞台に戻ってくることをオールドファンは待ち望んでいるだろう。

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