強力打線を封じた軟投派左腕
ベスト8を前に、春夏連覇を目指した広陵や夏連覇を狙った明徳義塾、平安・近江・智辯和歌山の選抜8組などV候補が8強を前に敗退。そんな中、大会前の前評判はそう高くなかったが、大会が進むにつれて存在感を増してきた2校が、準々決勝の第1試合で激突することとなった。

大会前には全く注目されていなかった左腕がここにきて、皆の耳目を集めていた。伝統校・江の川は1995年以来8年ぶりの選手権出場。軟投派左腕・木野下は全くノーマークの投手だったが、江の川が2回戦の中越戦、3回戦の沖縄尚学戦と2試合連続完封を達成し。島根県勢の8強入りは和田毅(ソフトバンク)を擁した浜田以来の快挙であった。
その中身がまた素晴らしく、120キロに満たない速球と90キロほどのスローカーブを駆使して緩急で打者を翻弄。スピード全盛の時代に一石を投じるような投球内容に皆が全興味を持っていた。また、打線もヒットは少ないが、チャンスを確実にものにする。中越戦は山野がサイド右腕畔上を打って勝利。沖縄尚学戦では好投手・廣岡から北島が決勝打して番狂わせを演じた。ともにタイムリーは1本での勝ち抜きだったが、逆に相手にとっては不気味さを感じさせる戦いぶりである。
一方、聖望学園は好投手・松村が決勝で優勝候補の浦和学院・須永(日本ハム―巨人)に投げ勝って勝利。決勝でも春日部共栄を完封して大会でも注目の好投手として臨んだ。2回戦の香川西戦では下位打線を打つ田島・松村のバッテリーがホームランを打つなど22安打17得点と大勝し、甲子園初勝利をマーク。
3回戦では伝統校・天理に先手を取られるも、中盤に打線が逆転。センター中心にコンパクトにはじき返す打撃で5回までに先発全員安打をマークする猛打ぶり。松村も要所を締めて、7-3と勝利を収めた。強力打線とエースの投球ががっちりかみ合い、力強い戦いぶりでの8強進出である。
9回裏、自らのバットで決めた!
2003年夏準々決勝
聖望学園
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
| 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1× | 2 |
江の川
聖望学園 松村
江の川 木野下
さて、好調の聖望学園打線が江の川の左腕・木野下をとらえ切れるかだが、初回いきなり連続死球と犠打で労せず1アウト2,3塁のチャンスを迎えると、4番川本の内野ゴロの間に3塁ランナーがホームイン。木野下の無失点記録は開始早々あっけなく途切れ、聖望学園が先制に成功する。
聖望学園としては好調なスタートを切るが、立ち上がり、制球に苦しむ木野下からさらに得点を重ねたいところ。2回表、先頭の7番大久保が高めに浮いたカーブを流し打ち、犠打で2塁へ進むと、1番桑原が今度はストレートをうまく流し打ち、2アウトながら1,3塁とチャンスを築く。1塁ランナーが盗塁に成功し、一打2点の場面を迎えるが、2番小薗のとらえたあたりはセカンドの正面。追加点を挙げるには至らない。
すると、その後は猛打を振るっていた聖望学園打線が沈黙していく。緩いスローカーブをどうしても待ちきれず、3回はクリーンアップがいずれもフライを打ち上げて無得点。4回表にも6番尾崎のヒットを皮切りに2アウト3塁と木野下を攻め立てるが、9番松村が三振。再三得点圏に走者を進めたが、あと一本が出ない。
一方、聖望学園・松村の球威に押されていた江の川だが、守りから作った流れに乗って、またまたワンチャンスを活かす。4回裏、2つの四球に暴投が絡み、2アウト2,3塁のチャンスを迎えると、初戦で決勝打の7番山野が打席へ。アウトコースのスライダーを引っかけたような当たりは3塁線への微妙なコースに飛ぶが、サード前川が捕球しきれず。タイムリー内野安打となり、江の川が早い段階で同点に追いつく。
こうなると同点ながらなんとなく試合は江の川のペースに。ロースコアの展開でしか勝てないチームにその展開に引きずり込まれると相手は嫌なものだ。ただ、聖望学園もセンターの好守などもあり、勝ち越しは許さず試合は終盤へ。
9回表、聖望学園は当たっている8番田島がヒットで出塁するも、痛恨のバントミスでゲッツー。投手・木野下の見事なダイビングキャッチだったが、聖望学園としては惜しいチャンスを逃した。
その裏、江の川は6番北島がたたきつけて内野安打。自分たちの打撃でチャンスを作ると、打席にはここまでノーヒットの9番木野下。松村の投じた高めのカーブを逆らわずにはじき返した打球は左中間に弾み、江の川がサヨナラ勝ち!島根県勢として実に80年ぶりのベスト4進出を決めたのだった。
まとめ
その後、準決勝でダルビッシュら擁する東北に敗れたが、見事な進撃。チーム打率1割台での4強進出もまた記録的だったが、自分たちの野球を崩さず戦い抜いた姿にこういう野球もあるのだと気づかされた。
一方、聖望学園は2度目の出場で見事8強へ進出。初出場時は鳥谷(阪神)というスター選手がいながら、初戦突破ならなかったが、今大会は全員野球で2勝をマーク。この5年後には選抜大会で見事準優勝を果たすのだった。


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