独断と偏見で選ぶ、2006年夏にベスト8へ進めなかったイチオシの好チーム

2006年

今治西(愛媛)

1 熊代 10 新居田
2 11 山本
3 青野 12 瀬野
4 福岡 13 浜元
5 崎原 14 藤沢
6 宇高 15 笠原
7 土居 16 桑原
8 越智 17 大城
9 奥田 18 渡辺

強力打線見せつけた伝統校

21世紀に入り、2004年選抜で初出場初優勝を果たした済美を筆頭に勢力図が変わり始めた愛媛県。2006年選抜では今治北が初出場で鮮烈な戦いを見せるなど、新興勢力の台頭が著しかった。しかし、そんな中、意地を見せたのが伝統校・今治西だった。過去、春夏通じて5度の甲子園4校入りを果たしていた強豪は、この年、熊代(西武)-潮の2年生バッテリーを4番宇高を中心とした強力打線が支える形で春の四国大会を3年ぶりに制し、大野監督も非常に手ごたえを感じたチームであった。

愛媛大会では、強力打線が火を噴き、準決勝では3年連続出場を狙った済美の剛腕・沢良木を終盤に攻略し、7-2と快勝。決勝で、今治北のエース西原(広島)を序盤から攻略し、11-2と大差で勝利を収めた。昨夏、今春の代表校を沈めた戦いぶりはチームに大きな自信をもたらした。特に熊代、宇高、崎原の3人で組む中軸の威力は破壊力十分。上位から下位まで穴のない打線が、全国クラスの好投手をどう打ち込むか、注目された。

1回戦

常総学院

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 2 0 0 0 0 5 0 8
0 3 3 1 0 2 1 1 × 11

今治西

 

初戦は強豪・常総学院と1回戦屈指の好カードとなった。全国制覇を果たした2003年夏以来の選手権出場となる常総は、木内監督に代わり、竜ケ崎一・藤代などを率いて甲子園出場を果たしてきた名将・持丸監督が就任。この夏もサイド右腕・飯田知を中心に常総らしいリズムのある守りで茨城大会を勝ち上がってきた。

しかし、そんな常総のディフェンスを今治西打線は力強く打ち砕いた。2回裏に9番福岡、1番土居のタイムリーで試合をひっくり返すと、同点に追いつかれた3回裏には4番宇高が右中間スタンドへ流し打ちで勝ち越し弾を放ち、常総学院を突き放す。6回には小柄な5番・崎原がこちらは引っ張ってライトスタンドへ2ランを放つなど、16安打で11点を奪取。スタメンの9人中6人がマルチヒットと打点を記録するという切れ目のない攻撃で常総投手陣を圧倒した。

また、この日3盗塁を記録したように機動力も非常に豊かなのがこの年の今治西の特徴。強肩捕手・小池(ロッテ)が相手だったが、容赦なく盗塁を仕掛けた。土居・越智の1,2番を中心にどこからでも走って打てる攻撃陣はまさに脅威的。試合は終盤に2年生エース熊代が満塁弾を打たれ、一時2点差に迫られたが、レフト土居の堅守で常総の反撃の目を断ち、11-8というスコア以上の差を感じさせる内容で勝利を手にした。

 

2回戦

今治西

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 1 8 0 0 2 0 0 12
2 0 0 0 0 0 0 0 1 3

文星芸大付

 

2回戦は同じく強力打線を擁する文星芸大付と対戦。1回戦では優勝候補の関西を相手に2度の大量ビハインドを跳ね返し、逆転サヨナラ勝ちを収めてきた。また、投手陣も初戦で10失点はしたものの、本格派右腕・藤本、将来性豊かな2年生左腕・佐藤祥(横浜)の2枚看板はともに実力の高い好投手であった。

試合は初回、熊代が相手打線につかまって2点を先行されるが、この試合でも今治西打線の破壊力はすさまじかった。3回までで早くも同点に追いつくと、4回表には8番潮から四球を挟む6連打などで一挙8点と打線が爆発。連打に加えて、確実に1つ先の塁を奪う走塁で文星サイドに行き着く間も与えなかった。

藤本の球威あるストレートも、佐藤の決め球のスライダーもことごとく打ち返し、先発全員安打、そして6番青野以外全員打点を挙げるという穴のない攻撃で大量12点を奪取。熊代も中盤からは調子を上げ、5回以降は無安打ピッチングで8回までスイスイ投げぬいた。投打ががっちりかみ合った今治西がいよいよ上位進出に向け、手ごたえを感じ始めていた。

 

3回戦

今治西

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
1 1 1 0 1 0 4 0 0 0 0 0 2 10
4 1 1 0 1 0 0 1 0 0 0 0 11

日大山形

第88回(2006年)全国高校野球選手権大会 3回戦 日大山形 対 今治西 1/5 – YouTube

第88回(2006年)全国高校野球選手権大会 3回戦 日大山形 対 今治西 2/5 – YouTube

第88回(2006年)全国高校野球選手権大会 3回戦 日大山形 対 今治西 3/5 – YouTube

第88回(2006年)全国高校野球選手権大会 3回戦 日大山形 対 今治西 4/5 – YouTube

第88回(2006年)全国高校野球選手権大会 3回戦 日大山形 対 今治西 5/5 – YouTube

25年ぶりのベスト8を狙う3回戦。相手は47都道府県で唯一夏の8強入りのなかった山形県代表・日大山形であった。前の試合の終了後に組み合わせ抽選があり、この試合に勝てば斎藤佑樹(日本ハム)擁する早稲田実との対戦となることが決定。これが影響したのかはわからないが、先の戦いでの疲労度も考慮し、大野監督はエース熊代ではなく、2回戦で最終回にマウンドに上がった新居田を先発に指名した。

しかし、これが日大山形打線に火をつける結果となる。1回表に先制点を奪うも、その裏に5番舟生に2ランを浴びるなど、4失点。その後、4番宇高のホームランなどで得点を挙げるも、すぐに返される展開が続き、2番手・浜元も奮闘を見せるが、3点のビハインドがなかなか縮まらなかった。試合の主導権は常に日大山形が握っている状況であった。

この展開を打破すべく、大野監督は6回から満を持してエース熊代を投入。すると、7回表に今治西打線が底力を見せる。

ランナーを一人置いた状況で、2番福岡に代打・桑原を送ると、日大山形の2年生エース阿部のアウトコース速球を真芯でとらえ、打球は左中間スタンドへ突き刺さる2ランホームランとなる。あっという間に差を1点に詰めると、さらに3番熊代もヒットで続く。宇高・崎原が打ち取られて2アウトとなるが、ここで6番青野がまたしてもアウトコース寄りのボールを引っ張り、打球はレフトポール際にライナーで飛び込む逆転2ランとなって、一気に試合をひっくり返した。一般的にはつなぎの打順である2番、6番に2ランが飛び出す破壊力。今治西打線の底力たるや恐るべしであった。

ただ、粘りがチームカラーの日大山形もあきらめない。8回裏に熊代をとらえて同点に追いつくと、試合は延長戦に突入。13回表に今治西が2点を勝ち越すが、熊代のスタミナも限界であった。その裏、先頭からの3連打で1点差に迫られると、最後は暴投と満塁からの犠飛でサヨナラ負け。壮絶な展開を制した日大山形が初めての8強入りをつかんだ。

ベスト8を前に涙を飲んだ今治西だったが、長打力・切れ目のなさ・確実性・機動力とすべての面において高いレベルの打線であり、この大会でも5本の指に入る攻撃力だったのではないだろうか。惜しむらくは熊代の負担を軽減することができなかったことだろう。翌年、スタミナを増した熊代を中心にチーム一丸となったナインは、3回戦でリベンジを狙う文星芸大付を下し、26年ぶりとなる8強入りを果たすのだった。

今治西vs文星芸大付 2007年夏 | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

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