前年王者をねじ伏せた、荒れ球左腕
2005年の選抜甲子園は、大会前に剛腕・山口俊(DeNA)を擁する柳ヶ浦、前年夏の王者・駒大苫小牧、前年春の選抜準優勝・愛工大名電の3校が優勝争いに中心になると考えられており、昨秋の近畿王者の神戸国際大附はその3校に追随する存在とみられていた。蓋を開けると、柳ヶ浦は初戦で天理の前に0-4と完敗で姿を消す波乱の展開に。そんな中、2回戦最初のカードで夏春連覇を狙う駒大苫小牧と神戸国際大附の一戦が実現。強豪同士のがっぷり四つの戦いが期待された。

昨秋の試合で練習試合も含めて36連勝を記録して近畿王者に輝いた神戸国際大附はエース左腕・大西(ソフトバンク)と右腕・有元の2枚看板が確立。近畿大会では勝負強い打線の援護もあり、初優勝。好右腕・若竹(阪神)擁する育英を兵庫大会と合わせて3度破るなど確かな実力で優勝候補の一角に挙げられていた。
甲子園初戦は甲府工と対戦。2年連続出場となる伝統校の前に苦しみ、昨春の甲子園からマウンド経験豊富なエース三森の前に終盤まで無得点。7回にはエース大西が甲府工の1番小野に先制タイムリー2塁打を浴びた。しかし、8回に打線が勝負強さを発揮。1アウト2塁から3番を打つ2年生井内が同点タイムリーを放つと、続くチャンスに主将・堂本が勝ち越し2点タイムリー。大西は甲府工打線を4安打1点に抑えて、見事初勝利を挙げた。

一方の駒大苫小牧は昨夏見事に甲子園初優勝。昨夏横浜・涌井(楽天)からサイクル安打を放った林が1番主将となりチームを牽引。投手陣は速球派・松橋、技巧派・吉岡に加えて、捕手も務める1年生の田中将大(楽天)もおり、厚い投手陣を形成していた。
初戦はいきなり開幕戦に登場。1番林が3塁打・2塁打と2打席連続で長打を放つ活躍で序盤に挙げた2点を2年生右腕・田中がスライダーを有効に使った投球で守り切り、2-1と勝利。選抜での初勝利を飾った。
エースと主砲の活躍で北の王者に完勝
2005年選抜2回戦
神戸国際大付
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
駒大苫小牧
神戸国際大付 大西
駒大苫小牧 松橋→吉岡→田中

さて、神戸国際大附の荒れ球の左腕・大西を駒大苫小牧打線がいかに打てるかに注目が集まった。1回裏、いきなり1番の林に死球。大西らしいといえばらしい立ち上がりも続く送りバントを見事封殺。さらに、四球も出してピンチを広げるも得点は許さずに課題の立ち上がりを0点に抑える。
その後も4回まで毎回死球を出す荒れ具合だったが、速い投球テンポで投げ込む大西の前に駒大苫小牧はランナーを出しながらもペースを握られる展開。なかなか自分たちの間合いで打席に立てず、凡退を繰り返す。
すると、3回表、神戸国際大附の打線は速球一本やりの駒大苫小牧の右腕・松橋をとらえて4番正木が右中間への2点タイムリー2塁打で先制。4回には代わった技巧派右腕・吉岡もとらえ、満塁のチャンスで再び、4番正木が2点タイムリーを放つ。正木はこの日4打点の大活躍。神国の得点源の上位打線がきっちり仕事を果たす。
これで、大西は完全に波に乗った。荒れ球で踏み込みづらい中、速いテンポでストレートとカーブを投げて追い込む大西の前に駒大苫小牧打線が手も足も出ない。終盤になってもヒットが出ず、球場は徐々にざわつきだす。
一方、駒大苫小牧の3番手で上がった田中将大も素晴らしい投球。140キロ近い速球とスライダーをコースに決め、神国打線を中盤以降沈黙させる。試合は両チームヒットが出ず、完全に落ち着いた展開となる。
そして、9回裏に―ヒットノーランの期待がかかる中、先頭の2番辻がレフト前ヒット。前年Vメンバーが意地を見せる。しかし、このヒットも得点にはつながらず結局4-0で神戸国際大付が勝利。大西は1安打完封と会心の内容だった。
まとめ
神戸国際大附はその後準々決勝でも慶応の好左腕・中林を打って15-1と大勝。兵庫県勢は2002年から報徳学園、東洋大姫路、社に続いてこれで4年連続の4強入り。選抜で無類の強さを誇った。力がありながらもろさも目立つチームカラーの神国だが、この年はその実力をしっかり発揮して同校最高成績となるベスト4入りを果たした。ちなみに、2004年~2006年の3年間、無敵を誇った北の王者・駒大苫小牧を倒したのは、斎藤佑樹の早稲田実と、この神戸国際大附だけである。
一方、まさかの完敗を喫した駒大苫小牧だったが、この敗戦をばねに成長を遂げる。春の北海道大会では、当時新興勢力だった白樺学園にも敗北し、道内の連勝記録が止まる屈辱も味わったが、林主砲の元、かえってチームが結束する流れとなった。夏は投手陣がそれぞれ実力を挙げて好投。特に、2年生右腕・田中(楽天)の成長は目覚ましかった。
そして、何より選抜で1安打完封負けを喫した打線は、原点に返って走塁技術と攻撃時の集中力を磨き上げた。前年の先輩たちのように打ちまくって勝つ力はなくとも、序盤あるいは終盤に相手が隙を見せたところで、積極走塁を絡めて一気に流れを奪う攻めは、迫力満点。鳴門工戦の逆転勝利、大阪桐蔭との延長での勝利などは、まさにその持ち味が出た勝利であった。苦しい時期を乗り越えての57年ぶりの夏連覇は、前年の北国初優勝に勝るとも劣らない快挙であった。


コメント