福井商vs津田学園 2002年選抜

2002年

大会随一の速球派を打ち砕いたグランドスラム

報徳学園が圧倒的な優勝候補として呼び声高かった2002年の選抜大会。大会が2回戦に進み、ベスト8の5番目の座をかけての戦いは、伝統校vs新鋭校という対照的な顔合わせになった。

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津田学園は1996年以来6年ぶり2度目の選抜の舞台。23歳の八木監督に指揮されたチームが伸び伸びとした雰囲気が持ち味で、速球派右腕・多田を擁して、前年秋の東海地区にて準優勝を飾った。迎えた甲子園本番でも生き生きとプレーし、初戦の札幌日大戦ではエース多田が今大会最速となる144キロを記録して8-2と大勝。同校史上初の甲子園1勝を記録していた。

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一方、福井商は県下きっての伝統校であり、この選抜が4季連続の甲子園出場。しかし、前年は2年生だったエース中谷の不調や大会中のけが人勃発などで春夏ともに満足のいく結果は残せなかった。旧チームからメンバーが多く残ったこの年の代は、「勝って強くなる」という北野監督のスローガンのもと秋の濃く信越大会を制覇。甲子園初戦では21世紀枠の松江北を5-3と危なげなく下し、まずは幸先のいいスタートを切った。

前年のリベンジ果たす、エースの力投

2002年選抜2回戦

津田学園

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 2 0 0 0 2
4 2 0 0 0 1 0 1 × 8

福井商

 

津田学園  多田

福井商   中谷

速球派右腕・多田を福井商打線がどう攻略するかが焦点だったが、試合の大勢は序盤で決してしまった。

1回裏、福井商は先頭・渡辺のヒットなどでいきなり無死満塁のチャンスを迎えると、打席には4番の赤土が入る。北野監督の長所を伸ばす指導で開花したスラッガーは只野真ん中寄りの速球をとらえると打球は左中間スタンドに飛び込むグランドスラムとなって4点を先制。コースが甘かったとはいえ、スピードは十分乗ったボールであり、赤土を賞賛すべき打撃であった。

これで地力が出るようになった福井商は2回裏にも3番齋藤、4番赤土の連続2塁打で2点を追加。相手が気落ちしたところで一気に畳みかける攻撃はさすが伝統校と思わせるものだった。

2回で6点のリードをもらった福井商・中谷は持ち味の強気の投球が冴え、相手の懐を容赦なく攻めて得点を与えない。2年生時から実力は高く評価されていた本格派右腕だったが、前年選抜では2試合ともに途中KOを食らっていた。最終学年となり、こちらもようやく本来の力を発揮でき始めていた。

この日は完全に赤土DAYであり、6回に犠飛で打点を挙げると、極めつけは8回裏。再び多田の速球をとらえると打球は再びスタンドに飛び込むソロホームランとなって、なんとこの日2発7打点の大暴れ。期待の主砲が完全に打撃開眼した一日となった。

松井秀喜や桑田真澄に並ぶタイ記録を打ち立てた主砲と4安打2失点で完投したエースが投打の軸としてきっちり機能した福井商が準優勝した1978年以来24年ぶりの8強進出を決めたのだった。

まとめ

福井商はその後、準々決勝で明徳義塾との乱打戦を10-8で制し、4強入り。明徳がこの後、夏の全国制覇まで負けなしで突っ走ったことを考えても価値ある勝利であった。準決勝で大谷(ロッテ)擁する報徳学園の前に力尽きたが、この大会の福井商はらしさ全開で久々の上位進出を決め、古豪復活を高らかにアピールしてみせた。

一方、津田学園はこの試合では敗れてしまったが、記念すべき初勝利を挙げ、多田の速球とともにフレッシュな印象を残した。その後、2017年まで出場はなかったが、久々に出場を果たしたチームも笑顔が非常に印象的であり、当時の伸びやかな雰囲気がそのまま残っていたのは歴代の指導者のおかげだったのだろう。今や三重県内屈指の強豪として高校野球ファンを楽しませている。

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