筑陽学園vs山梨学院 2019年選抜

2019年

実力校同士の緊迫の攻防

2019年選抜大会は、2回戦で好投手・奥川(ヤクルト)を擁する星稜が習志野に敗退し、本命不在の様相を呈していた。そんな中、Cゾーンで実力校同士の好カードが演じられた。

筑陽学園は右腕の西・西舘と左腕・菅井とタイプの違う3投手を擁する投手陣と、中村・福岡と言った強打者を擁する打線がかみ合い、秋の九州大会を初制覇。続く神宮大会でも関東王者の桐蔭学園のコールド勝ちするなど、総合力の高いチームであった。

中村は父が西日本短大付の1992年夏の優勝メンバー、福岡は父が1994年夏の樟南の準優勝投手であり、サラブレッドを複数抱える意味でも注目された。初戦は、福知山成美の技巧派右腕を攻略し、3-2で際どく逆転勝ち。勝負強さを見せて勝ち上がってきた。

一方、山梨学院は夏春連続の甲子園。昨夏は高知商との大乱打戦で12-14と敗れたが、その打線の威力はすさまじいものがあった。特に4番野村は「山梨のデスパイネ」の異名を持つほどに、ツボにはまった時の打球は果てしなく飛んでいく。2番菅野、3番相沢との3人の並びは関東大会で対戦した投手達を震え上がらせた

投手陣の中心となるのは打線でも3番を務める相沢。際立ったボールはないものの、緩急とコントロールを武器に巧みに相手をかわすことができる。そのほかにも、左腕・駒井、サイド右腕の佐藤、技巧派の中込と多彩な陣容が揃う。初戦は神宮大会w買うで出場した札幌第一と対戦。初回から札幌第一投手陣を打ち込み、1回で2桁得点を上げると、その後も打ち続け、24-5とすさまじい猛打で2回戦進出を決めた。

終盤の追い上げをかわした、リリーフエースの熱投

2019年選抜1回戦

筑陽学園

1 2 3 4 5 6 7 8 9
1 0 0 0 0 0 1 1 0 3
1 0 0 0 0 0 0 1 0 2

山梨学院

 

筑陽学園   西→菅井→西舘

山梨学院   佐藤→相沢

先発は筑陽学園が安定感のある右腕・西、一方、山梨学院は右スリークオーターの佐藤を送った。

筑陽学園としてはスリークオーター気味の右腕に対し、左打者がカギを握る展開。1回表、その左打者の2番福島がセンターへのヒットを放つと、2アウト後に4番江原がレフト前への当たりを放つ。これを前進したレフト相沢が後逸する間に1塁ランナーが一気に生還。思わぬ形で筑陽学園が先制点を奪う。

しかし、攻撃力に自信を持つのは山梨学院も同様。1回裏、1番渡邊がストレートにうまく合わせてセンターへのヒットを放つと、セカンドゴロの間に2塁へ。ここで注目の3番野村が内角球を力でライト前へ持っていき、2塁ランナーが生還。すぐさま同点に追いつく。

いきなり得点を奪い合う展開となったが、2回以降は両先発投手が好投を見せる。筑陽学園・西が縦に落ちるスライダーを軸に立ち直れば、山梨学院の佐藤もストライクゾーンの横幅を広く使った投球で勝負強い筑陽学園打線を封じていく。互いにランナーを背負いながらも4回まで追加点を与えない。

どちらも複数投手性を敷くチームであるが、先に動いたのは筑陽学園。5回裏1アウトから当たっている1番渡邊が初回と同じような打撃で左中間を破り、2塁打で出塁する。2番菅野に警戒してボールが続くと、ここで江口監督が思い切って左腕・菅井にスイッチ。しかし、その菅井もストライクが入らず、四球を与えると、筑陽サイドは続けざまに投手を3番手の西舘に代える。思いきった継投であり、ある意味ではバタついた継投にも見えたが、ここを西舘が無失点でしのぎ、難を逃れる。

山梨学院とすれば、このスキを突きたかったところだが、チャンスをものにできなかった。徳陽学園としては、最後のカードを切った形にはなったものの、最も信頼できる抑えを送ったことで、退路を断って腹を決める形となった。

試合は同点のまま終盤戦へ。すると、今度は山梨学院に継投を考えるタイミングが訪れる。

7回表、筑陽学園は先頭の6番福岡が高めに入った速球をものの見事にとらえ、右中間突破の2塁打で出塁。1アウト後、8番石川はショートの頭上を越すヒットを放ち、1アウト1,3塁とチャンスを広げる。いずれも、キーマンと思われた左打者陣が結果を残すと、ここで1番中村がノーステップ打法でボールに食らいつき、レフトへのタイムリー!ついに勝ち越しに成功する。ここで山梨学院はついに佐藤をあきらめ、左腕・相沢にスイッチ。結果的に継投は遅れることとなった。

勢いに乗る筑陽学園は8回表にも攻勢をかける。先頭の3番弥冨が高めのスライダーをとらえて、ヒットで出塁。犠打で二塁へ進むと、5番野田はインサイドのボールを詰まりながらもライト前へ落とす。1,3塁となり、打席には先ほど2塁打の6番福岡。今度は左腕投手に対して、見事な流し打ちを見せ、レフトへのタイムリーとして1点を追加。大きな得点をたたき出す。ただ、後続は相沢がきっちり抑え、さらなる得点は与えなかった。

両者の点差は2点。しかし、強打の山梨学院にとっては全くあきらめる点差ではない。8回裏、先頭の4番相沢がスライダーをうまくとらえ、センターへのヒットで出塁。すかさず盗塁を決めると、5番岸本もショート深い位置への内野安打でつなぐ。犠打でそれぞれ進塁すると、7番栗田は四球を選び、満塁に。ここで8番小吹がショートゴロを打つ間に、3塁ランナーが生還し、1点を返す。

西舘は3人の投手の中で最も球威があり、縦に落ちるスライダーとの組み合わせで打ち取るタイプ。ただ、先発の西と比べると、球種は多くなく、山梨学院打線としても狙いは絞りやすかったか。9回裏、なおも反撃は続く。1アウトから強打の2番菅野がファーストへの幸運な内野安打で出塁。続く3番野村へにはもちろん強攻策を選択すると、ライトへの軽打を見せ、1,2塁とチャンスを広げる。

じわじわと迫りくる山梨学院の圧力。2アウト後、5番岸本には死球を与え、ついに2アウト満塁と胸突き八丁、絶体絶命の場面まで西舘は追い込まれる。しかし、最後は6番高垣を三遊間へのゴロに打ち取り、セカンドフォースアウトで試合終了!筑陽学園が初めての選抜でベスト8進出を決めた。

 

筑陽学園はまさに総力戦でつかんだ甲子園2勝目であった。2004年の夏の初出場時は、ダルビッシュ有擁する東北を相手に大量ビハインドを1点差まで追い上げながらも、捕まえきれなかったが、この代のチームは勝負どころをものにする強さを併せ持っていた。その後、準々決勝では優勝した東邦に2-7と力負けするも、夏は激戦の福岡を勝ち抜いて春夏連続出場を達成。正捕手だった進藤は、現在日本ハムファイターズに入団し、一軍で活躍すべく鍛錬の日々を送っている。

一方、敗れた山梨学院は10安打を放ちながらも2点どまり。この時期は個々の能力、特に打力はかなり高いレベルにありながらも、なかなか勝ち切れない時期が続いていた。この年の夏も連続出場を果たすが、初戦で熊本工・山口にサヨナラ弾を浴び、力尽きることに。春夏連続で九州勢に行く手を阻まれた。

ただ、この悔しい経験が、吉田監督のストックとして蓄積されていく。ここから4年後、好投手・林を擁して、山梨勢として悲願の全国制覇を果たすこととなる。

山梨学院9回裏攻撃 vs筑陽学園 センバツ高校野球 二回戦 敗退

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