ベスト8への道を切り開いた逆転劇
2008年夏の3回戦第1試合はともに初めてのベスト8入りを狙うチーム同士の対戦となった。
聖光学院は前年から4季連続の甲子園出場。スラッガー黒羽を中心に関根、菅野ら経験者をそろえた打線と佐藤竜、仲田、横山(楽天)と質量ともに豊富な投手陣がかみ合い、夏の福島大会を勝ち抜いた。甲子園では初戦で初出場の加古川北と対戦。初回に菅野の満塁走者一掃打が飛び出し、佐藤竜の好投もあって9-2と大勝。初の8強入りへ向けて順調なスタートを切った。

対する市立岐阜商は過去の甲子園でいずれも無得点で敗退。福井、明徳義塾、沖縄尚学と強豪校を相手に完封負けを喫した。しかし、県大会決勝で名門・県岐阜商に競り勝ったチームは甲子園でも物怖じすることはなし。7番西田の勝ち越し2ランで得たリードを原→吉村の継投で守り切り、見事甲子園初勝利を手にした。
左腕エースの好投で快勝
2008年夏3回戦
聖光学院
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 4 | 0 | 0 | 0 | 5 |
| 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
市岐阜商
聖光学院 佐藤竜
市岐阜商 原→吉村

試合は初戦と同様に聖光学院が佐藤竜、市立岐阜商が原の先発となった。
総合力で聖光学院がやや有利かと思われたが、先手を取ったのは市立岐阜商だった。2回裏、4番捕手と攻守の要の加藤が佐藤の甘めに入ったボールをとらえ、レフトへ先制のホームランを放つ。決め球のスクリューが来る前に早めの勝負で長打を放った。
さらに、3回裏にはヒットの8番西川をきっちり2塁に進め、2番臼井が今度はセンター横を破るタイムリー2塁打を放ってもう1点を追加。序盤は聖光学院がやや受けてたってしまったか、初勝利で勢いに乗る市立岐阜商が押せ押せで進める。
しかし、序盤3回を終えて落ち着いたか、4回表に入って聖光学院が反撃に転ずる。主砲・黒羽が死球で出塁すると、送って2アウト2塁から斎藤監督が勝負に出る。6番四家に代打・斎藤を送ると、原のストレートをとらえた打球はライトへ抜けて2-1。監督の起用に見事に応えた一打だった。
1点差となって今度は市立岐阜商に重圧がかかったか。グラウンド整備の終わった6回表に一気に聖光打線がつながる。
1アウトから四球で出塁の5番菅野を2アウト覚悟で送ると、7番安田は芸術的な逆方向への2塁打で菅野を返し、同点。さらに、8番佐藤竜、9番竹沢のバッテリーコンビが市立岐阜商の動揺を見透かしたかのようにタイムリーを連ねて一気に試合をひっくり返す。結局、この回7番からの4連打で一気に4得点。聖光学院らしいつながりの良さがでたイニングだった。
リードをもらった佐藤竜は4回以降は危なげない投球で3安打に封じ、2失点完投。スクリューボールを武器に9三振を奪い、会心の内容で投げ切った。聖光学院としては2004年、2007年と2度はじかれていたベスト8の壁を3度目の正直で破った一戦だった。
まとめ
聖光学院はその後、準々決勝で筒香(レイズ)擁する横浜に大敗したが、このベスト8進出はチームに自信を与えたのは間違いない。その後、2010年、2014年、2016年も合わせて計4度のベスト8進出を達成。すっかり上位常連のチームとなった。
一方、敗れた市立岐阜商だったが、4度目の出場でうれしい甲子園初勝利を達成。伸び伸びとしたプレーで観衆を沸かせた。岐阜県勢はその後も県岐阜商、大垣日大、中京学院大中京などがしのぎを削り、ハイレベルな争いを展開。1990年代から2000年代前半の低迷が嘘のように、甲子園で勝利を積み重ねている。


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