相手の強力打線を互いに封じた、息詰まる投手戦
3度目の夏の花咲徳栄と2度目の鶴岡東。ともに2011年以来となる出場で、夏初めてのベスト8を狙う2チームが、2015年選手権大会の3回戦で顔を合わせた。

鶴岡東は強力打線と左腕・福谷の好投で山形大会を勝ち抜くと、初戦では序盤から打線が鳥取城北の投手陣を攻略。上位から下位まで満遍なく16安打と打ちまくり、9得点を奪った。投げてはエース福谷がリードを守り切り、夏の甲子園初勝利を挙げた。
2010年代に入ってからの山形県は群雄割拠の時代となり、2013年は日大山形が県勢初の4強入りを果たし、2014年も山形中央が2勝を挙げてベスト16入り。ライバル校の躍進を目の当たりにし、鶴岡東も1勝を挙げただけでは満足できない状況であった。

一方、花咲徳栄もまた県内最大のライバル浦和学院が2013年の選抜でついに初優勝を飾り、2015年の代もまた秋春の関東大会を制して選抜でも4強入りするなど完全に後れを取っている状況であった。ところが、夏の県大会準決勝でその浦和学院が無名の白岡に1-4とまさかの敗戦を喫する。決勝でのその白岡の勢いをしのいで勝利した花咲徳栄が4年ぶりの出場権を勝ち取った。
初戦は青森の三沢商と対戦。これまた青森大会決勝で選抜出場の八戸学院光星を下し、勢いに乗るチームだったが、久々宇、大滝(西武、登録名は愛斗)を中心とした打線が15得点と爆発する。投げては3年生エース鎌倉から2年生左腕・高橋(広島)への継投が決まり、まずは無難に3回戦進出を決めた。
虎の子の1点たたき出した女房役
2015年夏3回戦
鶴岡東
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | × | 1 |
花咲徳栄
鶴岡東 松崎→福谷
花咲徳栄 鎌倉→高橋

試合前予想では総合力でやや花咲徳栄が上回るかと思われたが、鶴岡東の先発は予想に反してエース左腕・福谷ではなく、右腕の松崎であった。
この松崎がキレのあるスライダーを武器に好投。花咲徳栄打線の想定を上回る好投を見せ、埼玉大会を制した強打が鳴りを潜める、5回まで放ったヒットはわずか2本であった。
これに対して、花咲徳栄の先発・鎌倉を想定していた鶴岡東打線は序盤から鎌倉をとらえ、1,3,4,5回とノーアウトから出塁するが、要所要所で飛び出す花咲徳栄バックの好守備に阻まれ、得点を挙げるには至らない。
試合は0-0と拮抗した展開で7回に進み、7回表に鶴岡東が先にチャンスを迎える。1アウトから9番松崎、1番田辺が連打を放ち、1,2塁と得点圏にランナーが進塁。ここまで無失点できた鎌倉だったが、ここで岩井監督は鎌倉をあきらめて高橋を投入する。ここで高橋は相手の狙いを外して、スライダーで2者連続三振を奪い、ピンチを脱する。
するとその裏、ここまで押されっぱなしの花咲徳栄が4番大滝のヒットを皮切りに1アウト1,3塁と絶好のチャンスを迎える。ここで打席には7番捕手の笹谷。下位打線のキーマンとされていた打者が松崎の高めに浮いたスライダーをキレイにセンターに返すと、打球は二遊間をぬけるタイムリーとなって待望の先制点を手にする。
残り2イニングで1点を追いかける鶴岡東だったが、捕手の笹谷に打たれたのは攻撃面でも痛かった。自らタイムリーを放った男は配球面でもさえわたり、2年生投手の持ち味を存分に引き出す。結局、鶴岡東打線に7安打を許しながらも得点を許さず、虎の子の1点を守った花咲徳栄が選手権では初めてとなる8強入りを果たした。
まとめ
花咲徳栄は続く準々決勝で小笠原(中日)、吉田(オリックス)の強力2枚看板を擁する東海大相模と対戦。サヨナラで敗れはしたものの、終盤までリードを奪い、この大会の優勝校を最も苦しめたチームとなった。この年の戦いで手ごたえをつかんだか、ここから5年連続で出場し、2017年には県勢初の夏優勝を達成。花咲徳栄時代の華々しい幕明けであった。
一方、敗れた鶴岡東も2016年、2019年と甲子園に出場。2019年には選抜準優勝の習志野を破るなど、同校初の2勝を挙げ、再び歴史を塗り替えた。左腕エースと強力打線で勝ち上がる伝統はこの年も継続されており、今や山形県内では屈指の存在感を誇るチームとなっている。


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