3度目の出場でつかんだ甲子園初勝利
2000年夏の選手権大会2日目第1試合は、山形の新鋭・酒田南と島根の伝統校・益田東の顔合わせとなった。

酒田南は前年に続く2年連続の出場。選抜優勝の沖縄尚学に対して打撃戦を挑んで敗れたが、当時のスタメンが複数人残っており、打撃には自信を持っての連続出場だった。初出場時も、選抜優勝の天理を破った智辯学園が相手であり、これまで格上の相手に打ち負けた感があったが、今回は互角上の好勝負を期待できた。

対する益田東は4年ぶりの甲子園出場。前回は、大会屈指の本格派左腕・三東(阪神)を擁しながら、ルーズベルトゲームの末に東海大菅生に敗れていた。今回は、その時とは対照的な右アンダーハンドのエース・百合野が中心。しかし、守りをベースにした野球であることに変わりはなく、島根大会では準々決勝から3試合連続で1点差ゲームをものにしてきた。土壇場でしぶとく守り勝つ野球で初戦突破を狙っていた。
3塁ランナーの好判断で決勝点
2000年夏1回戦
益田東
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 2 | × | 5 |
酒田南
益田東 百合野
酒田南 伊藤→三浦

しかし、試合が始まるといきなり火を噴いたのは益田東の打線であった。酒田南のエース伊藤は右の本格派右腕だったが、2番三浦を四球で歩かせると、ストレートが高めに浮くところを益田東のクリーンアップが痛打。3番山口、4番澄川、5番中林と3者連続のタイムリー2塁打が飛び出し、いきなり3点を失う。
わけがわからないままに失点してしまった伊藤は初回でまさかの降板。山形大会を引っ張ってきたエースに代わり、2年生左腕・三浦が急遽マウンドに上がる。
ところが、この三浦がカーブを武器に好投。初回に4安打を放った益田東打線を2回以降は完全に沈黙させる。だが、酒田南打線の益田東の右アンダーハンドのエース百合野から再三ランナーを出すもあと一本が出ず、得点には至らない。
しかし、猛暑の甲子園はアンダーハンドで負担の大きい百合野から徐々にスタミナを奪っていく。また、味方打線が2回以降三浦の前に全く得点の気配が漂っていなかったこともプレッシャーを強めただろう。
7回裏、死球と2番古山のセカンドへの内野安打などで2アウトながら満塁のチャンスを作ると、捕逸でまず1点。さらに続く2,3塁のチャンスで4番北川泰がインサイドのストレートをうまく押っ付けてライトへ返し、2者が生還して同点に追いつく。
勢いに乗る酒田南は8回裏、今度は好走塁で得点をたたき出す。死球で出た6番梅津が百合野のモーションを完全に盗んでセカンドを陥れると、続く7番本多のプッシュ気味のバントは益田東のファースト山口が飛び込むも取れずオールセーフ。ここで8番真山の打ち上げた打球はファースト後方へのファウルフライとなるが、後ろ向きなのを確認した3塁ランナーの梅津が好判断でホームへ。酒田南がついに勝ち越し点を手にした。
さらにこの回、ラストバッターにもタイムリーが飛び出した酒田南は結局、2年生左腕・三浦が2回以降はわずか2安打に抑え込み、9回まで無失点投球でゲームセット。若い西原監督に率いられた山形の新鋭校が3度目の出場で念願の初勝利を手にしたのだった。


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