金沢vs習志野 2011年夏

2011年

大会No.1投手と試合巧者がぶつかった好カード

今大会 No.1の速球投手・釜田(楽天)を擁する金沢と試合巧者・習志野の対戦。3回戦屈指の好カードの火ぶたが朝一番切って落とされた。

金沢のエース釜田は選抜大会にも出場。加古川北を相手に序盤150キロ台の速球を連発するも、中盤以降息切れ。真っすぐを狙い撃ちされ、4失点。打線も相手エース井上の緩急に対応できず、2安打完封負けを喫した。

 

その後、変化球で試合を組み立てるうまさも覚え、県決勝では前年の経験者が残る遊学館を85と撃破した。甲子園1回戦では伊勢工と対戦。伊勢工の好左腕・中川(中日)を相手に越田が先制2塁打と3ランで全打点を挙げる活躍。釜田も会心の内容で5安打完封勝利を収めた。

 

2回戦では昨夏8強の注目右腕・斎内(阪神)との好投手対決。失策から先制点を許すも釜田が粘り強い投球。打線も1番櫻吉、3番中村がそれぞれ2本のタイムリーを放つ活躍。斎内のスプリットを左打者が完璧に攻略した。

一方の習志野は市立船橋を永年率いた名将・小林徹監督のもと千葉大会をしたたかに勝ち抜く。春季関東大会で神宮優勝の日大三をコールドで下し(日大三エースの吉永は投げていなかった)、自信をつけたチームは一番宮内を中心とした機動力野球で相手を寄せ付けなかった。県大会ではベンチ入り20人全員が出場する層の厚さを見せた。

 

5人の投手陣と勝負強い打線を擁する習志野は本大会でも優勝候補の一角。1回戦では静岡との伝統校対決でまさかのプレーが出てくる。左腕・原崎のモーションの大きさを見切り、満塁から3塁走者の宮内がホームスチール。驚きのプレーで追加点を挙げ、エース泉澤も会心の投球で4安打1失点で完投した。

 

2回戦は同じく試合巧者の明徳義塾と対戦。2001年夏以来の対戦は習志野が返り討ち。序盤から明徳の左腕エース尾松を落ち着く間もなく攻略。積極的な走塁も絡めて4回途中でKOした。投げては2年生の長身右腕・大野が角度を活かした投球で好投。相手4番の北川(楽天)に一発を浴びるも要所を締めて3失点完投勝利を収めた。

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2011年夏3回戦

金沢

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 0 1 0 0 1
0 0 1 0 0 0 1 0 × 2

習志野

 

金沢    釜田

習志野   在原→木村光

さて、焦点は習志野の打線がいかに金沢の剛腕・釜田を打つかだが、試合前の映像を見て小林監督もお手上げ状態。153キロの速球と137キロの高速スライダーとおよそ高校生レベルとは思えない投手を前に百戦錬磨の名将も策がなかった。

 

しかし、習志野の打者たちはいつも通りに試合へ。小林監督の決めた打順の意味を個々人が考えて理解し、試合の中で落とし込む。3回はこの日の先発左腕・在原のヒットを足掛かりに3番福山がストレートを逆らわずに流してタイムリー。先手を取った。

 

一方、この日の先発左腕の2年生在原は緩急を活かした老獪な投球。左の好打者が並ぶ金沢打線を封じていく。ランナーは背負っても粘りの投球が光る左腕の前に6回まで無得点に終わる。しかし、7回ランナー2塁のチャンスを作ると、1番櫻吉がレフト前にポトリと落とす技ありの同点タイムリー。これで櫻吉は今大会放った3本のヒットがすべてタイムリーと抜群の勝負強さを見せる。

 

だが、試合の流れを簡単に渡さないのが、習志野。この日2番に入った片桐がランナー12塁のチャンスにスライダーを引っ張ってレフト前へ勝ち越しタイムリー。速球狙いだったが、そのタイミングで振ったところにちょうど良くスライダーが来た。金沢としては不運だったが、しっかり狙いをもって打席に入った片桐の勝利だった。

 

9回表金沢は当たっている下位打線でチャンスを作り、1アウト13塁のチャンス。ここで継投した習志野の木村光はセーフティースクイズを取ると、飛び出した3塁ランナーを冷静に封殺。最後まで冷静さを失わなかった習志野が大会No.1の速球投手との投手戦を制した。

 まとめ

その後、習志野は準々決勝で日大三と対戦。今度は登板してきたエース吉永の前に打線が沈黙。スクイズを封殺されるなど小技も通じず、投手陣も5人すべて登板したが、5失点と打ち込まれた。しかしながら、公立校で唯一の8強入りで強豪3校を倒した戦いぶりは見事。千葉に習志野ありと全国に知らしめた。ただ、この時のベンチ入りメンバーが多く残りながら翌年は準決勝で柏日台にコールド負け。高校野球はわからないものだ。

 

一方の金沢は13回目の出場で初の夏2勝をマーク。同じ石川の強豪でありながら星稜に甲子園での実績で大きく水を開けられていたが、この大会で最高成績を残した。注目投手の斎内を破るなど、この大会は存在感を示す大会となった。浅井監督の丁寧な野球が実を結んだ年だった。

【好投手列伝】石川県篇記憶に残る平成の名投手 2/2 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

 

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