今治西vs都留 2007年選抜

2007年

選抜を彩った好投手同士の投げ合い

中田翔(巨人)擁する大阪桐蔭がV候補筆頭だった2007年の選抜。この大会は多くの好投手が顔をそろえており、仙台育英・佐藤(ヤクルト)、常葉菊川・田中(DeNA)、報徳学園・近田(ソフトバンク)、帝京・大田(DENA)、大垣日大・森田、広陵・野村(広島)、千葉経済大付・丸(巨人)とのちに上の舞台で活躍する逸材たちが、優勝候補を倒そうと牙を研いでいた。

そんな中、1回戦で今治西・熊代(西武)と都留・小林というこれまた大会屈指の好投手の対決が実現。試合前は、前年夏も経験している優勝候補の今治西に対して、21世紀枠の都留が挑む構図が予想されていた。

今治西は前年ベスト16のチームから熊代(西武)-潮のバッテリーやショート福岡など複数のメンバーが残り、秋の四国大会では準優勝。決勝ではのちに神宮で優勝する高知と1-2と接戦を演じており、練習試合では中国王者の広陵にも競り勝つなど、秋は手ごたえを感じる戦いぶりであった。

エース熊代はフォームに躍動感が出てきており、何よりセンターラインに経験者が複数いる安心感がチームの強みでもあった。また熊代は4番としても打線の中核を担い、投打にわたってチームの軸となっていた。

対する都留は21世紀枠で初めての甲子園出場を達成。エース小林は中学時代に、のちに巨人のエースとなる菅野も一目置いたほどの逸材であり、伸びのあるストレートはプロのスカウトも注目するボールであった。また、チーム自体も関東大会で8強まで勝ち進んでおり、神奈川1位の桐光学園をくだすなど一般枠とそう変わらない実力を兼ね備えていた。

元来、山梨県勢は守りの良いチームが多く、ミラクル市川と言われて4強まで勝ち進んだ1991年の市川のように、しぶとく守って食らいつくチームが多い。都留も21世紀枠とはいえ、虎視眈々と大物食いを狙う不気味さがあった。

終盤のワンチャンスを活かした今治西に軍配

2007年選抜1回戦

都留

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 1 1 0 0 0 2
0 1 0 0 0 0 0 2 × 3

今治西

 

都留   小林

今治西  熊代

先手を取ったのは今治西だった。2回裏、先頭の4番熊代が高めのストレートを左中間に運ぶ2塁打で出塁。昨夏の甲子園でも見せた打撃センスを披露し、チャンスを作ると、1アウト3塁となって6番潮はきっちり犠飛を放ち、先制点をもぎ取る。ここまではV候補・今治西の展開かと思われた。

しかし、3回以降は21世紀枠の都留が押せ押せの展開となる。都留打線が熊代の得意とするスライダーにもよく目がついていき、毎回のように四死球やヒットでランナーを出す。そして、出塁すると毎回手堅くバントでスコアリングポジションに送る攻撃で今治西の守備陣に圧力をかけていく。

これは両チームにそう実力差はないなと思い始めた矢先、ついに都留が同点に追いつく。5回表、8番峰尾が意表を突くセーフティバントで出塁すると、ここで9番餌取はなんとエンドランを敢行。バッテリーを落ち着かせない攻撃でチャンスを拡大すると、1番橋本はコンパクトな打撃でレフト線へ運び、レフトが後逸する3塁打となって都留が同点に追いつく。

対照的に、3回以降小林の前にチャンスすらつかめない今治西打線。小林のストレートの伸びが素晴らしかったのもあるが、今治西打線の振りもあまり鋭いとは言えない。大会後の大野監督の話で、「冬場の振り込みのし過ぎでコンディションが落ちてしまった」とのコメントもあり、大舞台への調整はかくも難しいものかと感じさせられた。

完全にペースをつかんだ都留は6回表に4番小林が2打席連続となるヒットで出塁。送って1アウト2塁から6番奈良は基本に忠実なセンター返しで小林をホームに迎え入れ、とうとう都留が逆転に成功する。小林以外は目立つ選手はいないが、打撃も守備も堅実で基本を守る都留の戦いは全国の公立校に参考になるものであった。

一方、こちらも公立校ながら四国屈指の名門の今治西だが、如何せん小林の投球の前に付け入るスキがなかなか見当たらず、7回まで散発3安打に封じ込められる。決して大振りをしているようには見えないが、打球が詰まらされるのは小林のボールの伸びが素晴らしかったからだろう。相手を褒めるしかないような内容だが、攻撃のイニングはあと多くて2回と追い込まれていた。

なんとかした8回裏、今治西の攻撃陣が意地を見せる。1アウトから1番濱元がショートゴロに打ち取られるも、ショートのワンバウンド送球でファーストの足が離れ、セーフに。相手のミスで得たチャンスに2番武内、3番福岡がセンターから逆方向への打撃でつなぎ、1アウト満塁と最高のおぜん立てをする。

ここで小林は気合を入れて4番熊代を浅いセンターフライに打ち取るが、今治西には5番に勝負強い笠原が控えていた。低めながらややコースが甘くなったストレートを素直に打ち返した打球はレフトの前に弾み、2者生還。ここ一番で中軸が期待に応えた今治西が9回の都留の反撃を抑え、辛勝で2回戦へとコマを進めた。

まとめ

今治西は8回裏に少ないチャンスを活かして逆転に成功。大野監督は攻撃のタイムを有効に使うことでも知られており、8回の場面でも2番武内にしっかり意図を伝えてチャンスを拡大するヒットにつなげた。

ただ、2回戦では優勝した常葉菊川に17三振を喫して完封負け。やや低調になってしまった打線を大会中に立て直すのは難しかったか。大野監督も試合後に、「冬の練習の疲れが残ってしまった」とのコメントを残していた。しかし、猛練習で培った実力をハックした夏は初戦から12得点と打線爆発。3回戦では文星芸大付の好左腕・佐藤(横浜)を攻略するなど、4試合で40安打ときっちり結果を残して見せた。

一方、都留は敗れたものの、優勝候補に挙げられていた今治西を追い詰めた戦いぶりは称賛に値するものだった。特にエース小林は前評判に違わぬ投球で失点したイニング以外はピンチらしいピンチも見当たらないほどであった。守りもしっかり鍛えられており、山梨県らしい堅実な野球で甲子園に確かな足跡を残した。

【好投手列伝】愛媛県篇記憶に残る平成の名投手 2/2 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

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第79回選抜高校野球大会 1回戦 今治西 対 都留 4/5 – YouTube

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