大会ベストナイン(2017年夏)

2017年

右投手 綱脇彗(花咲徳栄)

2017年夏の甲子園で優勝した花咲徳栄のすべての試合で先発マウンドを務めたのが綱脇慧であった。強力打線が目立つ花咲徳栄であったが、チームの躍進の陰に綱脇の好投があったことは見逃せない。前橋育英、盛岡大付、そして中村奨(広島)を擁した広陵と強打のチームを相手にアウトコースを丁寧に突く我慢の投球で主導権を与えず、チームに守りのリズムをもたらした。プロ入りこそならなかったものの、大学球界からは引手あまただった逸材。岩井監督の母校の東北福祉大で将来のプロ入りを夢見て腕を磨いているだろう。

 

左投手 長谷川拓帆(仙台育英)

広陵・平元や秀岳館の川端・田浦ら候補は多かったが、個人的には仙台育英・長谷川を推したい。ボールの力はあるが、制球に難ありとの声もあったが、本大会では腕をよく振って切れのあるストレートと縦横のスライダーをコーナーに決めて好投。大阪桐蔭戦の8回まで無失点投球を続けた。特に、大阪桐蔭戦は9回の場面が騒がれるが、あの展開に持っていけたのは間違いなく長谷川の攻めの投球があったから。大会の流れを変えたとも言える一戦の立役者となった。

 

捕手 中村奨成(広陵)

今大会文句なしのNo.1捕手。苦手なコースがないのかというくらい内外高低関係なく打ち返し、清原和博の持つ1大会通算のホームラン記録を塗り替えるパワーも見せつけた。バットをしならせて打つため、木製バットでも苦労はなさそうだ。捕手としても平元・山本の両左腕をよくリードし、強肩で何度となく走者を塁上にくぎ付けにした。おまけに走っても俊足で盗塁を決めるなど走攻守揃った万能型の選手。現在打てる捕手がいないと嘆かれるプロ野球に期待の新星が現れそうだ。

 

一塁手 野村佑希(花咲徳栄)

ミレニアム世代の逸材がまた一人甲子園で羽ばたいた。優勝した花咲徳栄の強打の4番打者として、十分な仕事をして見せた。相手投手としては太刀岡、千丸、西川の3人の左打者相手に神経をすり減らした後に野村を迎えたわけだからひとたまりもなかっただろう。ヘッドスピードの速さもさることながら、広陵・中村と同じようにグリップエンドを高く構えてそのまま振り下ろす打撃でインサイドのボールにも全く力負けしない。チャンスでの強さもあり、優勝したとはいえ早くも来年を楽しみにしてしまう逸材だった。

 

二塁手 千丸剛(花咲徳栄)

東海大菅生の児玉と悩んだが、花咲徳栄初優勝の最大の功労者ということで、選出。チームメイトからも完璧なキャプテンと言われる男は昨年の1番から2番に打順を上げて大活躍。今トレンドの「攻撃的2番」として1番太刀岡との俊足コンビでほぼ毎試合チャンスで強打者西川に回した。コンパクトな振りでミート能力が高く、甘く入れば外野の頭を超す長打力もある、相手としては実に厄介な打者。セカンドの守備でもショート岩瀬とともに内野を統率し、抜群のリーダーシップでチームを初優勝に導いた。

 

三塁手 亀岡京平(済美)

強打の済美復活を高らかに告げた今大会。体格のいい打者が並んだ打者陣のなかでも亀岡の存在感は圧巻だった。初戦は東筑・石田の外角球を軽々とライトスタンドへ運び、初ホームランを記録すると、2戦目はさらに爆発。1本目に津田学園・水谷の速球を多少泳がされながらもセンター左横に放り込むと、2本目もインサイドのボールに窮屈になりながらも前でとらえた打球がバックスクリーンへ。バットでとらえさえすれば、スタンドインしてしまうのではないかという破格のパワーを見せつけ、間違いなく大会序盤の主役の一人だった。

 

遊撃手 田中幹也(東海大菅生)

2年生ながら攻守でチームの4強入りに貢献。走攻守3拍子揃った逸材で、ミレニアム世代では報徳学園の小園と双璧ではないかという印象を受けた。特に守備の安定感は抜群。三本松戦ではサードの後ろに飛んだ打球をカバーしてアウトにするなど強肩と守備範囲の広さは出色。何より、ポジショニングの予測が良く、抜けたと思ったところに田中がいるといった印象だった。攻撃でも1番を打って打率5割とチャンスメーク。花咲徳栄戦では土壇場9回裏に2点差を追いつくタイムリーを放つなど勝負強さも見せた。こちらも野村と同じく来年が楽しみな選手だ。

 

左翼手 濱田太貴(明豊)

同じくミレニアム世代の、こちらは長距離砲。2回戦の坂井戦では右に左に長打を連発するなど内外のコースに関係なく打ち分けた。特に第4打席では1点ビハインドの場面で逆転2ランを放つなど、チャンスで好球を一振りで仕留める勝負強さも見せつけた。続く神村学園戦でもホームランを放つなど、力みのない構えから繰り出す打球速度はけた違い。捕手寄りのミートポイントのため、変化球への対応も長けており、ロングヒッター特有のもろさもなさそう。スキのない長距離砲だった。

 

中堅手 植田拓(盛岡大付)

選抜に続いて8強入りを果たした盛岡大付。総合力の高さを見せつけるチームにあって植田にはなかなか当たりが出なかったが、済美戦で1点ビハインドの9回に目を覚ました。済美・八塚の高めの速球を強引にたたいた打球はセンターバックスクリーンへ飛び込む起死回生の同点ホームラン。さらに延長10回にも3ランを放ち、終盤2イニングで2打席連続弾の脅威の活躍を見せた。身長160センチ台ながら、フルスイングでボールを飛ばす能力があり、プロ野球で身長の低い子供たちに夢を与えてほしいプレーヤーだ。

 

 

右翼手 神野太輝(天理)

名門・天理が甲子園で久々に躍動したのも、やはりこの男の2ホームランで流れに乗ったからだろう。初戦の大垣日大戦でチームが2年生右腕・修行の速球に苦戦する中で、高めに入ったボールを逃さず2打席連続スタンドイン。小柄ながらガタイのいい体格で「天理のバレンティン」と呼ばれるパワーを見せつけた。その後、当たりが止まりかけたが、準決勝広陵戦では一時同点に追いつく2点タイムリーに、9回は追撃のヒット。チームが苦しい場面で打つ4番の面目躍如の活躍だった。

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