大会ベストナイン(2023年選抜)

2023年

右投手 林謙吾(山梨学院)

山梨県に初のタイトルをもたらしたエース右腕。ストレートは、目立ったスピードはなくとも、抜群の切れとコントロールを誇り、来るとわかっていてもなかなか打てないボールであった。また、無駄な力が入ることがなく、リリースの瞬間に力を込める投げ方のため、開幕試合から6試合という過酷な日程の中でも投げ切ることができた。

それでも、大会終盤はさすがに疲れが感じられ、広陵戦、報徳学園戦と最後の2試合は、初回の投球を見ると、まったくボールが来ていなかった。しかし、その状況下でもコントロールは失うことなく丁寧に投げていくと、中盤以降は完全に立ち直って、完投勝利を達成。この立て直しにこそ、投手・林の底力を感じさせた。

過去、東海大甲府や市川が6度ベスト4入りを果たしていた山梨県勢だったが、今大会で見事山梨学院がブレイクスルーして見せた。この勢いに乗って春夏連覇達成なるか、連戦の多い夏こそ林の真価が発揮される舞台だ。

【山梨学院】① 林謙吾選手が3回戦vs光で9奪三振のピッチング – YouTube

左投手 前田悠伍(大阪桐蔭)

無双状態だった昨年の選抜と比較すると、本調子とはいいがたかった大阪桐蔭の前田。しかし、完成度の高い投球とその経験値を生かした投球のまとめ方は、やはり大会出場の左腕投手の中では群を抜いていたといえるだろう。初戦の敦賀気比戦は速球がなかなか走らずに敦賀気比打線に8安打を浴びながらも1失点で完投勝ち。大事な場面でコントロールを間違わない、貫禄の投球で優勝経験校対決を制した。

3回戦は押され気味の展開の中で、能代松陽打線を封じ込めて1-0と薄氷の勝利に貢献。打線がわずか2安打に抑え込まれる苦しい試合だったが、前田の投球がチームに安心感を与えた。そして、準々決勝は今大会一番といえる投球内容。3度目の対戦で初勝利を目指す東海大菅生に対し、伸びのある速球にスライダー、チェンジアップを交えて毎回の11三振を奪い、2年連続の4強入りを決めた。

準決勝は報徳学園の驚異的な追い上げに合う中、その勢いを止めきれずに8回に勝ち越しを許して敗退。昨夏の下関国際戦に続き、リードを守り切ることができなかった。しかし、今大会は調子が上がりきらない中でも、「大人の投球」でチームを引っ張り、昨年とはまた違った姿を見せてくれた。世代No.1と謳われる左腕が、最後の夏にどんな戦いを見せるか、今から楽しみでならない。

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捕手 堀柊那(報徳学園)

大会No.1捕手の評は伊達ではなかった。抜群の強肩とインサイドワーク、そして3番打者として強打も見せ、攻守でチームをけん引。2002年以来の決勝進出に貢献した。

今大会3人の持ち味の違う右腕が登板した報徳投手陣。球威のあるエース盛田、角度を武器にする今朝丸、多彩な変化球とボールの出し入れと勝負する間木と3人のそれぞれの良さを堀が引き出し、試合を作った。また、相手の盗塁阻止の意欲すらかき消す強肩は圧巻の一言。不利な体勢からでも矢のような送球をセカンドに送り、相手の機動力を封じた。初戦の健大高崎戦をワンサイドの展開で勝てたのは堀の強肩によるところが大きかっただろう。

また、打撃では広角にきっちり打ち分ける打撃で20打数8安打の打率4割とこちらも好結果を残した。長距離砲ではないが、ポイントまで呼び込んでしっかりミートできる打撃は大崩れの心配が少ないといえるだろう。近年打てる捕手が減っている球界において、プロも注目の存在になっていきそうだ。

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一塁手 真鍋慧(広陵)

昨年から注目のスラッガーとして期待されていた広陵の主砲が、最終学年の選抜でしっかり結果を残して見せた。もともと長打力と速球への強さには定評があったが、今大会では変化球にもしっかり対応し、2回戦・準々決勝と2度の猛打賞を記録した。

特にその良さが出たのは、準々決勝の専大松戸戦。注目の好投手・平野を序盤で攻略したこの試合ではセンターから逆方向への打撃で2度にわたって外野の頭を超す2塁打を放った。この逆方向への長打が出だすと、いよいよ真鍋を止めるのは難しく、ヤクルトの三冠王・村上宗隆を思い起こさせるような打撃であった。

準決勝は山梨学院との接戦に敗れ、惜しくも4度目の選抜制覇はならなかったが、前年から着実にステップアップを見せた真鍋と広陵。英数学館にまさかの敗退を喫した昨夏のリベンジを果たし、再び聖地へ帰ってこれるのか、注目の戦いが始まる。

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二塁手 林純司(報徳学園)

永田監督の時代から全員野球を掲げてきた報徳学園。大角監督になったから初めての選抜の舞台で、その全員野球の象徴ともいえる活躍を見せたのが林であった。3回戦の東邦戦で初スタメンに抜擢されると、ホームランを含む3安打を記録。すると、ここから下位打線ながら攻撃の起点となり、準決勝までの3試合連続の猛打賞をマークする圧巻の打棒を見せた。

グランド整備用のトンボを使ってのスイングでしっかり振り切る姿勢を磨く報徳学園。決して体格に恵まれた選手ではなくとも、バットを振りきれることで長打を生み出す同校の強みを体現したのが今大会の林の打棒であった。

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三塁手 武藤匠海(作新学院)

昨夏、連続出場が11で止まった作新学院。しかし、今大会はその攻撃的野球で2試合連続の打撃戦を制し、見事8強入りをつかみ取った。中でも、5番武藤はパンチ力のある打撃で、初戦の大分商戦は2打数2安打の4打席全出塁と大活躍を見せた。もともとバントのサインがほとんど出ない作新学院にあって、高い打撃技術で好球をしっかりとらえられる武藤の存在は非常に大きかった。

そして、作新学院の今大会のハイライトとも呼べるシーンが英明戦の最終回。終盤に相手の3番百々に逆転弾を浴び、敗色濃厚となっていた9回表。そのホームランを放った百々がリリーフのマウンドに立っていた。しかし、四球でランナーを出すと、ここで作新サイドはもちろん強攻策を選択。武藤は百々の甘く入った速球を逃さず捕まえ、打った瞬間にそれと確信する逆転2ランを放って勝負を決めた。

作新学院らしい野球で得た今回の選抜での2勝。夏に向けて投手力を整備できれば、夏の快進撃も期待できそうだ。

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遊撃手 進藤天(山梨学院)

主将兼ショートとして好守で山梨学院を牽引したチームリーダー。

大会序盤、東北・ハッブス、氷見・青野、光・升田と実力派右腕との戦いが続き、序盤はなかなか打線がつながらない展開が多かった。しかし、中盤以降、相手の球筋を見極め、センターから逆方向への打撃で活路を開いたのが主将・進藤のバットであった。1~3番が封じられても、岳原・佐仲・進藤の3人がもう一度攻撃の起点んを作り直せるのが山梨学院打線の強みである。

また、ショートとしても広い守備範囲と強肩を活かした送球でたびたびエース林をバックアップ。連投で疲れがたまるエースの球数を減らしたという意味でも、初優勝に大きく貢献したと言えるだろう。次は春夏連覇という未知への挑戦になるが、ここからどうチームを牽引していくか、進藤のタクトに注目が集まる。

山梨学院 進藤天 高3春 甲子園での打席とショート守備(対東北高校戦) – YouTube

左翼手 酒井駿輔(東海大菅生)

2年ぶりの出場で前回大会に並ぶ8強入りを果たした東海大菅生。大会前にひと騒動あった中でも、きっちり結果を残したところにチームとしての底力を感じさせた。

初戦は21世紀枠の城東と対戦。1,2回と先手を取られ、苦しい展開となったが、その中で酒井を中心とする上位打線が機能した。1番沼澤、2番大舛がともに浅いカウントからの好球をとらえてチャンスを拡大すると、ここで酒井は城東の先発・清重の高めに浮いたボールをとらえた打球は、右中間を破るタイムリー3塁打に!電光石火の攻撃で一気に試合の流れをつかむと、豊富な投手力を武器に悠々と逃げ切って見せた。

続く3回戦は九州王者の沖縄尚学と激突。この試合は相手がエース東恩納の先発を回避してきた。リリーフで出てくることは目に見えていただけに、是が非でも先取点が欲しいところ。菅生は4回裏、2番大舛がヒットで出ると、ここでも酒井はセンターへの巧打でチャンスを広げる。このチャンスで得た虎の子の1点を守り切り、強豪相手に貴重な勝ち星を挙げた。

ともに力で圧倒した戦いではなかったが、しぶとい戦いぶりで手にした2勝に、東海大菅生というチームの地力を感じさせた。そして、その中心にいたのが3番を務める酒井であった。

【2023センバツ】東海大菅生×城東 – YouTube

中堅手 高塚涼丞(高知)

北信越王者・北陸、2019年夏の優勝校・履正社と下し、存在感を示した高知。昨年と同じ16強ながら、前年を大きく上回るインパクトを残した。

打線は3試合で放ったヒットは17本だったが、得点は11を挙げ、非常に効率が良かった。3番高塚は初戦で北陸投手陣から計2安打を記録。いずれも得点に結びつくヒットとなり、勝利に大きく貢献した。左打席からのシュアな打撃はさすが3番打者と思わせるものであった。

そして、2回戦の履正社戦では大仕事をやってのける。序盤に履正社・福田の制球難に付け込んで先制点を奪うも、その荒れ球に苦しんで7回までなんと無安打に抑え込まれる。しかし、8回裏に初ヒットが飛び出すと、リリーフしたエース増田も攻め立てて満塁とチャンスを拡大する。ここで、3番高塚は基本に忠実なセンター返しを見せると、貴重な逆転タイムリーとなって土壇場で試合をひっくり返した。2安打の高知が8安打の履正社に勝つ。これぞ野球の面白さであり、高知の見事な逆転勝利であった。

3回戦は専大松戸との接戦に敗れたが、この試合でも高塚は2塁打1本に打点付きの内野ゴロ1つときっちり中軸としての仕事を果たして見せた。投打にスター選手はいなくとも、つなぐ意識で活路を見出す高知の野球を、高塚がしっかり示してくれた選抜であった。

《 高知高校 8回表に3番高塚涼丞、4番山平統己の連続2ベースで同点とする!》高知 4- 6 専大松戸|3回戦 第95回記念選抜高校野球大会 2023年3月27日(月) – YouTube

右翼手 齋藤陽(仙台育英)

昨夏の甲子園初優勝時から4番を務めてきた斎藤陽。今大会打線がなかなか繋がらない試合もあったが、斎藤陽の4番としての存在感はやはり圧倒的であった。

もともと長打を連発するタイプではないが、左右広角に打ち分ける打撃技術は、安定感がある。しっかりポイントまで引き付けてミートするため、内外の出し入れに強く、初戦の慶応戦は打線全体で2得点と苦労する中、すべて流し打ちの3安打をマークした。球場が慶応ムード一色となる厳しい試合をサヨナラで制すことができたのも、どっしり主砲の座に座る斎藤陽の存在がチームに安心感を与えたからだろう。

そして、劇的な展開となった準々決勝の報徳学園戦。2点ビハインドで迎えた9回表、相手外野陣のミスで1点差に迫ると、続く打席には斎藤陽が入る。この打席でも斎藤陽は冷静であった。報徳の3番手右腕・今朝丸の角度のあるボールに対し、きっちり流し打ちで攻略。土壇場で同点タイムリーを放ち、延長戦に持ち込むことに成功した。最後は逆転サヨナラ負けを喫したが、インパクトのある戦いを刻んで見せた。

次は夏連覇を目指すことになるが、高いハードルを越えるためには、斎藤陽の活躍は必要不可欠と言えるだろう。

仙台育英 齋藤陽選手 2023年 選抜甲子園 慶応義塾戦で魅せた流しの3打席連続安打 – YouTube

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